オフィス緑化の効果やメリットとは?導入の手順やポイント、取り組み事例も紹介
サステナブル・SDGs

近年、オフィス環境や従業員のウェルネス向上を目的として取り組む企業が増えている「オフィス緑化」。オフィス緑化を進めることで、リラックス効果や生産性の向上、コミュニケーションの活性化などさまざまなメリットが得られます。本記事では、オフィス緑化の効果・メリットや、導入の手順・ポイントを解説します。オフィス緑化を成功させた企業の事例も紹介するので、参考にしてみてください。
目次
オフィスの緑化とは

オフィス緑化とは、オフィス内に観葉植物など自然の要素を取り入れ、オフィス環境の質を向上させる取り組みです。植物や緑が身近に感じられる環境には、リラックス効果があるといわれています。まずは、オフィス緑化の具体例や注目されている背景からみていきましょう。
オフィス緑化の具体例
オフィス緑化の施策は多岐にわたります。具体例は次のとおりです。
- 植物の鉢植えやプランターを置く
休憩室や執務室などに観葉植物の鉢植えを置くだけなので、作業が簡単です。商談室やエントランスに鉢植えを置くと、来訪客に好印象を与えられます。背の低い植物のプランターであれば、棚やデスクなどの空いているスペースにも取り入れやすいでしょう。
- 植物のプランターを吊るす
吊り下げタイプのプランターは、開放的な空間作りに役立ちます。また、床に鉢植えを置くスペースが不足しているオフィスにも設置できます。
- 壁面に植物を配置する(グリーンウォール)
壁面に植物を飾るグリーンウォールはおしゃれな雰囲気があり、インテリア感覚で取り入れられます。
- フェイクグリーン(人工植物)を取り入れる
フェイクグリーンでも、視覚的なリラックス効果が得られます。手入れの必要がないのもメリット。人工芝を敷けば、大胆なオフィスのイメージ変更が可能です。
オフィス緑化が注目されている背景
政府が推進する働き方改革により、企業が従業員の健康を経営視点で戦略的に管理する「健康経営」が重視されるようになりました。従業員のウェルネスを向上させる取り組みの一つとして、オフィス緑化にも注目が集まっています。
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オフィス緑化の効果・メリット7つ

オフィス緑化により、従業員のストレス軽減や、生産性の向上、企業イメージアップといった効果やメリットが得られます。おもな効果やメリットを紹介します。
1. ストレスを軽減させる
植物が視界に入ると精神の安定を示すα波が増え、血圧の低下と筋肉の緊張のほぐれにつながります。脳内のα波が増幅するため、心身ともにリラックスした状態になれるともいわれています。
リラックスした状態で仕事に臨めれば、社員一人ひとりのストレスを軽減でき、のびのびと働ける空間を作りだせるでしょう。
2. 目の疲労をやわらげる
植物の緑色は目の疲れをやわらげるといわれています。また植物が放出する水蒸気には、オフィスの湿度調整やドライアイの軽減効果を期待できます。
眼精疲労の症状は、頭や首、肩など体全体の不調として現れるケースもあるため、目の疲れをやわらげることは従業員のウェルネスに重要だといえます。特に長時間のパソコン作業になりがちな職種においては、オフィス緑化の必要性は高まるでしょう。
3. 空気がきれいになる
植物には、空気清浄効果も期待できます。空気中に漂う一部の有害物質を吸着・分解する作用があるため、オフィス環境の快適性向上につながるでしょう。
4. 生産性や能率性が上がる
オフィス緑化は、ストレスの軽減や環境の改善につながります。これにより、従業員の生産性や能率性、創造性といった能力面の向上も見込めるでしょう。
実際に観葉植物を設置する前後を比較して、設置した後、7.9パーセントも作業効率が改善したという企業の報告が上がっています(※)。導入後、一定の効果やメリットは確かに期待できそうです。
※参照元:オフィスにおける観葉植物によるメンタルヘルスケアと知的生産性の向上(屋内緑化推進協議会)
5. コミュニケーションが活性化する
オフィス緑化によりリラックスできる空間が生まれるため、自然と従業員同士の会話やコミュニケーションが円滑になります。
リラックスした心の状態は他の人に伝わるため、従業員同士の緊張関係がやわらぎ、より良好な関係値を築きやすくなるでしょう。やがてこれらのよい循環が、社内全体に伝染していき、コミュニケーションの活性化につながっていきます。
6. 企業イメージの向上につながる
オフィスに緑を取り入れることは、企業イメージにも影響を与えます。特に来客が多い企業では、清潔で自然を感じさせるオフィス環境が企業イメージを高め、信頼感を生むこともあります。
7. パーテーションや家具の代用になる
鉢植えのグリーンをパーテーションの代わりに使えば、空間に圧迫感を与えずに視界を遮る役割を持たせられます。
他にも、床にカーペットではなく人工芝を敷くと、オフィス全体を緑豊かなイメージに変えられるでしょう。さらに壁にグリーンウォールを設置すれば、おしゃれな空間を演出できます。
オフィス緑化を導入する手順とポイント

オフィス緑化を成功させるためのポイントを、導入の手順に沿って解説します。導入前の準備はもちろん、導入後のメンテナンスや手入れについても考慮しましょう。
1. 予算を決める|必要な費用を確認する
オフィス緑化を検討する際、まずは予算を決めることが大切です。オフィス緑化に必要な費用は、オフィス内の設置面積、植物の数と種類、メンテナンス依頼の有無、設置後のランニングコストによって異なります。
植物をレンタルする場合は、鉢植え一つ当たり1,000円前後〜(種類によって異なる)が目安となるので参考にしてください。
オフィス緑化における費用相場については、「オフィス緑化にかかる費用相場」の章でも解説します。
2. オフィス緑化の担当者を決める|外部委託も検討する
オフィス緑化では、植物を健康な状態に維持するための定期的なメンテナンスが必要になります。
どのようにしてオフィス緑化を進めるのか、社内担当者を決めておくとよりスムーズに導入できるでしょう。特定の企業によっては、外部委託者を専任するのが適切なケースもあります。
たとえば、人的リソースが限られている大企業の場合は、管理やメンテナンスに社内人員を割り当てなくて済むよう、外部委託者に依頼するのも一つの手です。
3. 植物を選定する|管理しやすい植物を選ぶ
管理しやすい植物を選ぶメリットは、メンテナンスなどの手間が少なくて済むことです。特にメンテナンスを業者に委託しない場合は、社内で管理しやすい植物を選ぶとよいでしょう。
管理しやすい植物の特徴は次のとおりです。
- 葉っぱが落ちにくい
- 水やりの回数が少ない
- 成長が遅く大きくなりにくい
- 少ない日光でも問題ない など
丈夫で枯れにくいオフィス向きの植物には、次のような小型観葉植物が挙げられます。
植物の名前 | 特徴 |
---|---|
サンスベリア・ハニー | 種類が豊富。個性的な形で人気が高い。 |
テーブルヤシ | 育てやすく、小さく可憐な花を咲かせる。 |
アロエ、パキラ | 水やりの回数や日光が少なくて済む。 |
ランニングコストをおさえたい場合や管理する手間を省きたい場合は、フェイクグリーンも検討してみるとよいでしょう。本物の植物とは異なり、水やりや温度管理、落ち葉の掃除などをおこなう必要がありません。また、虫が寄生する心配がないのもうれしいポイントです。光触媒を施したフェイクグリーンには、空気清浄や消臭効果などもあります。
4. 植物を配置する|動線の妨げにならないレイアウトを意識する
植物の設置スペースを確保し、具体的な配置レイアウトを決めることが重要です。やみくもに植物を設置すると動線の妨げになり、業務に支障を来す場合があるため注意しましょう。
動線を妨げないレイアウトで配置する方法として、次のような例が挙げられます。
- 棚やデスク上に置く
- 天井から吊るす
- 壁に設置する
- 床に敷く など
特にスペースが限られたオフィスであれば、天井から吊るしたり、壁に設置したりすることで、動線の妨げにならずに導入できます。
オフィスレイアウトに関する詳細は、次の記事でも解説しています。
関連記事▼
オフィスレイアウトの考え方とは|パターン別の特徴やポイントを解説
5. 管理・手入れのルールを策定する
オフィス緑化の導入後は定期的なメンテナンスが必要になるため、管理・手入れの方法や頻度などを明確にしておきます。管理計画やルールを策定すると、わかりやすいでしょう。
オフィス緑化にかかる費用相場

オフィス緑化の導入費用は、規模や植物の種類・数によって異なります。また、イニシャルコストとランニングコストも必要です。オフィス緑化の費用相場について詳しく解説します。
導入費用はオフィスの規模と植物の種類・数により異なる
オフィス緑化を導入する上で、オフィスの規模(設置面積)、必要な植物の種類・数、この2つを考慮することが必要不可欠です。
レンタルする場合、サイズが小さいものであれば、一つ当たり毎月1,000円前後〜の金額からレンタルが可能な専門業者もあります。フェイクグリーンであれば、メンテナンス代がかからず毎月のレンタル費用が安く済むケースもあります。
オフィスの規模が大きければ、必要な植物の数が増えるため、オフィス緑化にかかる導入費用も高くなるのが一般的な傾向です。ただ植物の種類や配置レイアウトによっては、費用を安くおさえられる可能性があるので、事前に確認しておきましょう。
イニシャルコストとランニングコストがかかる
イニシャルコストは、植木やプランターなどの導入時にかかる初期費用のことで、ランニングコストは、水や肥料などの植物の健康状態を維持するのにかかる費用のことです。オフィス緑化導入の際は、イニシャルコストとランニングコストの合計費用を考慮する必要があります。
参考までに、イニシャルコストとランニングコストの費用相場について、1坪当たりの設置面積に対して万単位で設定されることがほとんどのようです。建物の構造や植物の種類によっても異なるため、具体的な費用感は専門業者に相談してみるとよいでしょう。
専門業者に相談する際は、導入以降に毎月発生する費用をあらかじめ確認しておくと安心です。
オフィス緑化は専門業者に相談するのもおすすめ

オフィス緑化について不明点がある場合、導入時の流れから運用方法まで幅広く相談できる専門業者を利用してみるのも一つの選択肢です。
専門業者であれば、最適な植物を提案してくれる「グリーンコーディネーター」「園芸装飾技能士1級」といった専門スキルを持つプロが在籍している場合があります。また数々の企業のオフィス緑化をサポートしてきた実績があるため、成功させるためのノウハウも多数持っています。
レンタル申込時には専門のスタッフが訪問し、社内の空間にあった植物や配置レイアウトを決めながら、予算に合ったプランを提案してくれます。業者によっては、改装工事の依頼も可能なケースがあるので、新しくレイアウトを変更したい場合は、一緒に相談してみてください。
また業者を選定する際は、複数の業者にて相見積もりをし、金額やサービス内容を比較した上で自社に最適なものを見つけるようにしましょう。
オフィス緑化の取り組み事例
リラックス効果や生産性向上が期待できるとあり、近年多くの企業がオフィス緑化に取り組んでいます。オフィスに植物やグリーンを取り入れた企業の事例を紹介します。
アイリスグループ東京アンテナオフィス

アイリスグループでは、従業員の健康やウェルネス(※)向上に積極的に取り組んでいます。2022年9月には、国際的なビル評価指標「WELL Building Standard™(WELL認証)」の最高ランク「プラチナ」を取得しました。
窓がよく見えるレイアウトを意識しているため、窓越しに自然の空や緑が見え、自然光も十分に差し込みます。また、植栽やグリーンをオフィス設計の中に取り入れ、都会のオフィスビルでありながら自然を感じられる空間にしています。
※ウェルネスとは、健康を身体の側面だけではなく、より広義に総合的に捉えた概念です。
アイリスグループ東京アンテナオフィスのインタビュー記事はこちら
【インタビュー】アイリスチトセ株式会社「WELL認証取得がもたらす社内への好影響とは」
三井不動産株式会社 ワークスタイリング(サテライトオフィス)

「ワークスタイリング」は三井不動産株式会社が展開する、契約企業約800社、会員数約24万人、全国約150拠点に上る、日本最大級のサテライトオフィスです。拠点ごとに異なるコンセプトにこだわっており、観葉植物や植栽を効果的に配置してリラックスできる空間を演出しています。
三井不動産株式会社 ワークスタイリングのインタビュー記事はこちら
【インタビュー】三井不動産株式会社-ワークスタイリング-「コロナで変わるワークプレイスの今後」
アスクル株式会社

オフィス向け備品などのショッピングサイトを運営するアスクル株式会社は、2021年の本社リニューアルを機に、「つながり」をコンセプトにしたオフィスを目指しています。その一環として、エントランスをジャングル化し、自社のパーパス&バリューズを表現。多様な植物を共存させることで、豊かな自然あふれる地球の尊さや生命力を感じられる空間を作りあげました。
またBGMにもこだわり、視覚でも聴覚でも地球の明日を感じられるよう工夫しています。
アスクル株式会社のインタビュー記事はこちら
オフィス緑化で働きやすい環境を作りあげよう

オフィス緑化により、ストレスや目の疲労の軽減、生産性の向上、コミュニケーションの活性化など、さまざまな効果を期待できます。導入の際は、事前に予算や管理担当者を決めておき、動線の妨げにならないレイアウトで植物を配置することが重要です。効果やメリット、導入のポイントをしっかりと理解した上でオフィス緑化に取り組み、従業員が心身ともに健康的に働ける快適なオフィス環境を作りあげましょう。
オフィス緑化の導入を専門業者に依頼したいと考えているのであれば、ぜひアイリスチトセにご相談ください。グリーンを効果的に取り入れたオフィスデザインやレイアウトの提案はもちろん、オフィス移転・改修のトータルサービスも提供しています。