健康経営についてわかりやすく解説|メリットや健康経営優良法人の認定基準などを紹介

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健康経営についてわかりやすく解説|メリットや健康経営優良法人の認定基準などを紹介

経済産業省が経営戦略の一環として健康経営への取組みを推進しているため、導入する企業も増えています。一方で、健康経営に興味がありつつもどのようなものなのかよくわからず、具体的な施策を進められない企業も多いようです。

そこでこの記事では、健康経営をよく知らない方に向けて意味やメリット、導入方法などを解説します。記事の後半では健康経営に対応した補助金や助成金も併せて解説するので、自社で導入を検討する際に役立ててください。

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目次

健康経営とは

日本で健康経営への取り組みがスタートしたのは2009年頃です。発祥はさらに遡ること1992年で、アメリカのロバート・H・ローゼンが自身の著書で提唱したことがきっかけです。

その後、徐々に世界各国で取り組みが広がり、2013年には政府が2030年に向けた施策を掲げてから特に注目を集めるようになりました。

東京商工会議所が2018年に実施した調査では、健康経営に取り組んでいる企業の割合が20.8%と、まだメジャーとは言えないことがわかります。ただし、「近い将来実践予定がある」または「いずれ実践したい」と回答した企業は63.0%にのぼり、今後も増えることが予想されます。

出典元:東京商工会議所健康づくり・スポーツ振興委員会「健康経営に関する実態調査」

健康経営に取り組む前に、まずはその定義と企業における導入意義への理解を深めましょう。

 

■社員の心身の健康に配慮した経営戦略

健康経営とは、国による「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。具体的には、社員の健康管理に対して経営的な視点で戦略的に取り組むことを指します。

企業における健康管理とは、経営と社員の心身の健康管理を両立させることを指します。身体だけでなく、メンタルヘルスケアも求められるのです。

社員に健康投資するためにはコストがかかりますが、モチベーションアップや生産性向上など、組織を活性化させることが見込めます。その結果、業績向上や株価向上も期待できます。

 

■ウェルビーイングとの違い

健康経営と混同されやすい言葉に、「ウェルビーイング(Well-being)」があります。

ウェルビーイングは心身、社会的に良好な状態で満たされている状態を指し、企業がこれに取り組むことで社会をよくしようという概念です。健康経営と異なるのは、心身の健康に加えて社会的な健康も取り入れられている点です。また、健康経営は「企業にとって社員が健康であることは、経営面においてプラスに働く」という考えのもとおこなう経営戦略の一つであるという点も異なります。

健康経営
  • 企業による経営戦略の一つ
  • 心身の健康を目指す
ウェルビーイング
  • 社員の健康が良好であることを示す概念
  • 心身の健康+社会的な健康を目指す

健康経営には、定期的なストレスチェックや健康診断などの具体的な施策を盛り込む必要があります。そのため、健康経営はウェルビーイングの概念を取り入れながら進めることになります。

ウェルビーイングに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

健康経営に注目が集まっている背景

健康経営は日本に先駆けて、世界ですでに広まっている概念ではありました。しかし、ここ最近日本で健康経営に注目が集まるようになったのは、日本社会ならではの背景が影響しています。

 

◾️人手不足が深刻化しているため

近年、健康経営に注目する企業が増えている背景には、経済産業省をはじめとする行政機関が推進していることも関係しています。このほかには、少子高齢化や働き方に対する価値観の多様化なども影響しています。

健康経営に取り組む企業が増えている背景の一つは、深刻な人手不足です。日本の生産年齢人口は少子高齢化の影響を受け、年々減少傾向にあります。これを受け、人手不足を課題に抱える企業が増えています。

生産年齢人口は今後も減少が予測されており、すぐに人手不足を解消することは難しいのが現状です。企業が事業を継続していくためには、限られた人材を効率的に活用する必要があります。

しかし、人手不足の状況下では、従業員一人当たりの業務負担が増え、健康リスクが高まります。企業には、従業員に心身ともに健康で長く働いてもらうための取り組みが求められているというわけです。

 

◾️定着率を向上させるため

従来は仕事に重きをおく傾向が強く、長時間労働や休日出勤も珍しくありませんでした。しかし、現代は働き方に対する価値観が多様化し、ワーク・ライフ・バランスを重視する人が増えています。

政府も働き方改革を主導しており、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得義務など、働く人の労働環境が改善されつつある状況です。それにも関わらず労働時間が長く、満足に休日が取得できない企業では、より良い環境を求めて人材が流出する可能性もあります。

労働環境の悪化が原因で体調を崩す従業員が出て、離職者が増えれば、人手不足をさらに加速させることになるでしょう。定着率を向上させ、人手不足に歯止めをかけるためにも、企業は健康経営への取り組みが必要です。

 

◾️医療費を抑制するため

近年は、医療費が日本の財政を圧迫し続けています。その背景には、高齢化が深く関係しています。直近では、令和5年3月分から一部の都道府県で健康保険料率が引き上げられました。たとえば東京都では、保険料率が9.81%から10%に引き上げられています。

医療費の増大は、国民に健康保険料の引き上げという形で反映されます。国民の健康保険料の引き上げは、従業員を雇用する企業にとって決して無関係ではありません。従業員の健康保険料は、企業も一部を負担しているためです。

健康な国民が増えて医療費を抑制できれば、健康保険料が引き下げられる可能性もあります。企業には健康経営に取り組み、従業員の健康を増進することで、健康保険料と密接な関係にある医療費を削減したいというねらいがあります。

健康経営に取り組むメリットと効果

ここでは健康経営に取り組むメリットと効果を解説します。自社にどのくらいの影響があるかをイメージしてみてください。

 

■労働生産性の向上

社員の健康は業務効率に影響します。心身が健康だと仕事へのモチベーションが高まりやすく、満足度アップや組織の活性化などの好影響が期待できるためです。

企業は社員の健康を守るためだけでなく、企業の成長を守るために健康経営に取り組む必要があると言えます。体調不良による欠勤や長期休業を減らすための対策などが求められるでしょう。

健康経営の効果はすぐに得られるとは限りませんが、長期的に見ると労働生産性の向上につながると考えられます。

生産性を向上できるオフィス環境に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

 

■企業ブランディングの強化

健康経営を推奨している経済産業省は、優れた取り組みを実践している企業を認定する制度をスタートさせています。

名称 特徴
健康経営銘柄
  • 経済産業省と東京証券取引所が共同で平成26年度からスタートした制度
  • 東京証券取引所の上場企業から優れた取り組みを実践している企業が選定
  • 選定された企業はアドバイザーとして健康経営の普及に貢献する役割を担う
健康経営優良法人・健康経営優良法人ホワイト500
  • 平成28年度からスタートした制度
  • 上場企業以外の大企業が選定対象
  • 上位500社は「健康経営優良法人ホワイト500」に認定
健康経営優良法人・健康経営優良法人ブライト500
  • 健康経営に対して優れた取り組みを実践している中小企業が選定
  • 上位500は、「健康経営優良法人ブライト500」に認定

健康経営銘柄は、東京証券取引所の上場企業に限定されていました。しかし、平成28年度からは上場企業以外の企業が選定対象の新たな制度がスタートしています。

健康経営銘柄や健康経営優良法人に認定されると、外部に社員を大切にしている企業だと印象付けることが可能です。その結果、企業のブランドイメージの向上につながります。働きやすい企業という印象は、人材市場でも有利に働くでしょう。

 

■社員の離職率の低下

厚生労働省の調査によると、2020年の入職率は13.9%、離職率は14.2%だったことがわかっています。前年の離職率は15.6%なので減少しているものの、依然入職率を上回っている状況です。

※出典元:厚生労働省「令和2年雇用動向調査」

離職率が増えるとブランドイメージが低下するだけでなく、新たな採用活動や配置転換なども求められます。企業へのダメージは決して少なくないため、離職率の低下に向けた対策が必要です。

経済産業省の調査によると、優れた健康経営に取り組んでいる企業は、2019年の離職率が低い傾向にあることがわかっています。また、有給休暇取得率も、全国平均を上回っています。

離職率 有給休暇取得率
全国平均 11.4% 56.3%
健康経営優良法人2021 5.4% 65.6%
健康経営銘柄2021 3.3% 70.8%

※出典元:経済産業省「健康経営の推進について」

健康経営は社員の離職を防ぎ、定着率を高める手段として有効と言えます。

 

◾️認定企業になることでさまざまな優遇を受けられる

経済産業省は、健康経営に取り組む企業の健康経営優良法人制度を設けています。企業が認定企業になると、次のようなさまざまな優遇を受けられます。

  • 認定ロゴマークの使用
  • 各自治体のホームページや広報誌への企業名の掲載
  • 金利や融資の優遇
  • 保険料の割引 など

企業が認定ロゴマークを使用すると、社外の人に認定企業であることをアピールすることが可能です。また、認定企業になると自治体のホームページや広報誌で企業名が掲載されるため、認知度の向上につながります。

健康経営優良法人の認定を目指す企業も増えている

自社で健康経営に取り組む際には、健康経営優良法人の認定企業を目指しましょう。近年は、健康経営優良法人の認定企業を目指す企業も増えています。認知企業になると、認定ロゴマークの使用や保険料の割引などのさまざまな優遇を受けられます。

 

◾️健康経営優良法人とは

健康経営優良法人とは、優良な健康経営に取り組む企業を選出する制度です。認定制度は、経済産業省が2017年からスタートしています。令和5年3月に公表された「健康経営優良法人2023」では、16,000社を超える企業が認定されました。

経済産業省は、健康経営への取り組みを「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価を受ける環境を整備できるとして推進しています。

経済産業省が設けている認定制度には、健康経営優良法人のほかに健康経営銘柄があります。健康経営銘柄は、上場企業が対象です。一方の健康経営優良法人は大企業のほか、一般企業をはじめとするさまざまな組織が対象です。ただし、健康経営優良法人の対象企業は、従業員を一人以上雇用していなければなりません。

 

◾️健康経営優良法人の種類

認定制度の部門は、大規模法人部門と中小規模法人部門に区分されています。大規模法人部門で健康経営優良法人に選出された企業のうち、上位法人には「ホワイト500」の冠が付加されます。

「健康経営優良法人2023」で「ホワイト500」に選出された企業は、2,676社中491社でした。大規模法人部門には、上場企業の中から1業種1社を健康経営に優れた企業として認定する「健康経営銘柄」もあります。

中小規模法人部門で健康経営優良法人に選出された企業のうち、上位法人には「ブライト500」の冠が付加されます。「健康経営優良法人2023」で「ブライト500」に選出された企業は、14,012社中499社でした。

※出典元:健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「健康経営銘柄2023健康経営優良法人2023一覧」

 

◾️健康経営優良法人の認定基準

健康経営優良法人の認定企業になるためには、一定の基準を満たす必要があります。認定基準は、経営理念、組織体制、制度・施策実行、評価・改善、法令遵守・リスクマネジメントの5つの要素で構成されています。

大項目 中項目 小項目
1.経営理念
2.組織体制
3.制度・施策実行 従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討 健康課題の把握
対策の検討
健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりと

ワークエンゲイジメント

ヘルスリテラシーの向上
ワークライフバランス(過重労働の防止)
職場の活性化(メンタルヘルス不調の防止)
従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策 保健指導
健康増進・生活習慣病予防対策
感染症予防対策
過重労働対策
メンタルヘルス対策
4.評価・改善 保険者との連携
5.法令遵守・リスクマネジメント

※参考:健康経営優良法人認定制度【認定基準】

経営理念、組織体制、評価・改善、法令遵守・リスクマネジメントの4つの要素は、必須の認定要件です。制度・施策実行には中項目や小項目があり、より細かい基準が設けられています。

健康経営の具体的な施策例

健康経営では、基本的に従業員の健康維持や増進につながる取り組みを実施します。代表的な取り組み例は、次のとおりです。

  • オフィス環境の改善
  • 社員食堂の整備
  • 多様な働き方の導入
  • 喫煙所の廃止
  • 健康に関するセミナーの実施
  • 社内コミュニケーションの促進
  • 病気の治療と仕事の両立支援 など

 

◾️オフィス環境の改善

従業員の多くが日中の大半の時間をオフィスで過ごすため、オフィス環境の改善は健康経営を目指す企業が取り組むべき抜本的な問題です。健康経営を見越したオフィス環境改善の具体例は、たとえば昇降デスクの設置や、立ったままミーティングができるスタンディングスペースの設置が挙げられます。このように長時間座ったままの姿勢でいることを防ぐことで、従業員のフィジカル的なサポートができるだけでなく、気分転換にもなるはずです。

そのほかにも、オープンオフィスで開放的な空間造りを意識したり、オフィスにグリーンを取り入れたりすることで、心理的なリラックス効果を狙う企業や、サーカディアンリズムに対応した照明でより良い睡眠をサポートする企業もあります。

 

◾️社員食堂の整備

たとえば社員食堂を設置している企業の場合、栄養バランスが考慮されたメニューを提供するのも健康経営の取り組みの一つです。多くの社員食堂では、外食するよりも一食の費用が安価に設定されていたり、お弁当の持ち込みを可能にしています。

お弁当を持参した人や、コンビニで買ってきた人など、様々な人が同じスペースで食事ができるため、従業員同士のフラットなコミュニケーションの場としても活用されやすくなります。

 

◾️多用な働き方の導入

コロナ禍を機に、リモート環境での業務を認める企業が増えました。それによって、感染症の対策だけでなく、遠方にいる有能な人材を採用することができたり、育児や介護に携わる人でも働きやすい側面があったりと、リモートワークの新たなメリットに気付かされた企業も多いのではないでしょうか。

リモートワークだけでなく、時短勤務制度の導入や、時間単位での有給休暇など、多用な働き方を導入することで雇用の機会が増え、従業員満足度にも寄与します。

 

◾️喫煙所の廃止

近年は煙草の受動喫煙が社会問題化しているため、喫煙所を廃止し、オフィスを完全禁煙化する企業も増えています。

受動喫煙という課題だけでなく、そもそも喫煙自体が健康リスクを高めるものであり、喫煙の機会を減らすことや、従業員の禁煙を促すことは、必要な人材の健康を促進し、長期的に活躍してもらうための重要な施策と考える企業もあります。

 

◾️健康に関するセミナーの実施

従業員の健康意識そのものを高めるために、健康に関するセミナーを実施する企業もあります。たとえばリモートワークの導入は、従業員の働きやすさには寄与するものの、プライベートな時間との切り分けが難しくなり、かえって従業員の残業が増えるという課題にもつながりました。

そのような課題を解決するために、健康の側面からワークライフバランスを考慮した働き方に関するセミナーや、生産性をあげるための食習慣づくり、あるいは就業時間後に簡単なヨガやストレッチのセミナーなどが、その具体例として挙げられます。

 

◾️社内コミュニケーションの促進

仕事をしている上で、業務内容だけでなく人間関係というのも従業員にとっては重要な問題です。どんなにやりがいのある仕事でも、人間関係に課題を抱えていると大きなストレスになり、しいては離職の直接的な理由になることも珍しくありません。

業務を円滑に進めるだけでなく、適切な相手に仕事の悩みを相談できることでストレスの緩和にもなるため、社内コミュニケーションの促進は健康経営にとって重要なファクターです。たとえばスポーツや趣味に関する社内でのサークル活動に費用的な支援をしたり、月に一度の従業員同士のランチ費用の支給などは、従業員同士のコミュニケーション活性化のために、比較的取り入れやすい施策です。

 

◾️病気の治療と仕事の両立支援

すでに紹介した多用な働き方の導入のひとつともいえますが、病気の治療と仕事の両立支援も企業にとって健康経営に向けた重要な課題です。以前の日本社会では、時間的な規律が厳しく、治療のために定期的に通院の必要がある場合などは仕事との両立が難しくなってしまうこともありました。一時的な労働時間の変更や、時間給の設定などは、通院の必要がある人でも働きやすくなります。

また、女性の活躍やライフステージが変化しても働きやすい環境を考慮し、ケガや病気の支援だけでなく、不妊治療などで通院を必要とする従業員のサポートに積極的な企業も増えています。

健康経営の基本的な取り組み手順

健康経営は経営戦略の一環なので、企業が主体になって進めていく必要があります。ここからは、健康経営を導入するための流れを解説します。

 

■1.社内外に周知する

健康経営を導入する際には、社内だけでなく社外にも周知します。

社内への周知
  • 全体通達での告知
  • アンケート調査の実施
社外への周知
  • プレスリリース
  • 株主総会

健康経営を実践するためには、社員一人ひとりの協力が必要です。社員には全体通達で告知し、健康経営への理解を求めましょう。事前にアンケート調査をおこなうと、社員の意見や健康への意識が把握できます。

経済産業省の健康経営銘柄や健康経営優良法人に認定されると、企業ブランディングの強化につながります。社外に周知する際には、公式ウェブサイト上でのプレスリリースや株主総会を活用すると良いでしょう。

健康保険組合の中には、企業の健康経営をサポートしているところもあります。健康宣言書を提出すると、健康宣言チャレンジ認定証が交付されます。認定証の取得は、健康経営優良法人に向けての第一歩になるので効果的です。

 

■2.担当者を決める

担当者がいないと責任の所在が曖昧になり、取り組みが具体的に進まない可能性があります。取り組みをスムーズに進めるために、専門部署の設置や担当者を決定しましょう。

新しい組織を作る際には、外部の健康経営アドバイザーに頼るのも一つの手です。健康経営アドバイザーは経済産業省の委託を受け、健康経営に携わる人材を育成する研修プログラムを修了した専門家です。

健康経営に関する知識が豊富なので、自社の取り組みに適したアドバイスが受けられます。また、担当者の健康経営に対する知識が乏しい場合は、健康管理研修を実施して積極的に学びの場を提供しましょう。

商工会議所では健康経営に関する相談も受け付けているため、課題の解決が難しい場合は問い合わせてみてください。

 

■3.目標設定をする

健康経営の目標は、自社が抱える課題を見極めてから設定しましょう。課題を洗い出す際には、次の健康に関するデータが参考になります。

  • 健康診断の結果
  • ストレスチェックの結果
  • 残業時間のデータ
  • 休職者の割合
  • 社内の医療費 など

「医療費の削減」や「生産性の向上」など曖昧な目標では健康経営を実践した効果が見えにくいです。収集したデータから課題を把握し、具体的な数字を出しながら細かく目標を設定しましょう。

たとえば、健康診断の受診率アップです。導入後に健康診断の受診率が上がれば、企業の対策が機能していると判断できます。

 

■4.イベントやセミナーを設ける

課題を洗い出して具体的な目標が定まったら、解決方法を計画して実践します。

社員の協力を仰ぐためにも、次のようなイベントやセミナーをおこなうと良いでしょう。

  • ノー残業デーの実施
  • 保健師による個別指導
  • 健康セミナーの開催 など

ここで、健康経営のために実践されている事例をいくつかご紹介します。

事例 内容
健康体操の実施
  • 毎週決まった曜日のランチタイムに体操で体を動かす時間を設ける
  • 時折、外部からインストラクターを招く など
複数から一つ以上の取組みを自由に選べる制度
  • 1日5000歩以上を目指す
  • 週2回は飲酒を控える
  • 週2回以上は主食以外の間食を封印 など
名札に記載した目標と1年後の結果を比較
  • LDLコレステロールの数値を下げる
  • 腹囲を○○cm未満にする など

健康体操を実施しているある企業では、社員の参加を促すためにスタンプラリー制度を導入しています。社員には1回の参加で1個のスタンプが与えられ、10個貯まると健康グッズに交換できます。

複数から一つ以上の取組みを自由に選べる制度を導入した企業では、1年後に社員の健康診断の数値が改善に転じたようです。社員に効果を実感してもらうためには、予め設定した目標と1年後の結果を比較する取り組みを実施すると効果的です。

 

■5.効果検証をおこなう

取り組みを実践した後は施策を分析し、どのくらいの効果が現れたかの検証をおこないます。たとえば、次のような項目の変動率に注目できます。

  • 残業時間
  • 社員の運動量
  • 休職者
  • 離職率
  • 欠勤率

取り組み後に効果が十分に現れていない場合は、原因を策定しつつ必要な改善施策を考えていきましょう。健康経営は、継続して実践することが大切です。

健康経営に役立つ補助金と助成金

健康経営に取り組む際にはデータの収集や管理などが必要なので、コストがかかります。国や独立行政法人では、健康経営で活用できる補助金や助成金を用意しています。

自社のコストをおさえるためにも、活用できる補助金や助成金がないかを確認しておきましょう。ここでは、健康経営に役立つ補助金と助成金をご紹介します。

なお、募集の有無や時期、条件は変わる可能性があるため、最新情報を確認するようにしましょう。

 

労働者健康安全機構のストレスチェック助成金

2015年12月1日からは、労働安全衛生法の改正によってストレスチェックが義務化されました。ストレスチェックには書類の準備から医師による面接指導、結果の集団分析などの多くの工程を踏む必要があります。

特にコストがかかるのは、医師や保健師などの人件費です。独立行政法人労働者健康安全機構(JDHAS)では、ストレスチェックに対する助成金が用意されています。

実施費用は社員1人につき上限500円(税込)、医師による活動費用は1事業所あたり1回の活動につき21,500円(税込)が支給されます。ただし、医師による活動は3回が上限です。

助成金を申請するためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 労働者を雇用している法人または個人事業主であること
  • 労働保険の適用事業所であること
  • 常時雇用する従業員が派遣労働者を含めて50人未満であること
  • ストレスチェックの実施者が決定していること
  • 事業者と契約した医師がストレスチェックに関わるすべての活動または一部がおこなえる体制が整備されていること
  • 自社の使用者や労働者以外の者がストレスチェックの実施や面接指導をおこなうこと

※出典元:「ストレスチェック」実施促進のための助成金(労働者健康安全機構)

 

厚生労働省の働き方改革推進支援助成金

2020年4月1日からは、中小企業に対して時間外労働の上限規制が適用されました。厚生労働省では、時間外労働の削減や有給休暇の取得促進などの働き方改革をおこなう企業に対して助成金を支給しています。助成金は、生花の目標達成に応じて50万円~150万円が受け取れます。

働き方改革の対象となる取り組みは、次の項目のうち一つ以上の実施が必要です。

  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定などの作成・変更
  • 人材確保に向けた取り組み
  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  • 労務管理用機器の導入・更新
  • デジタル式運行記録計の導入・更新
  • 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新

※出典元:働き方改革推進支援助成金(厚生労働省)

 

厚生労働省の職場環境改善計画助成金

ストレスチェックの実施後の集団分析結果を活用する際にかかるコストは、厚生労働省の職場環境改善計画助成金が受けられる可能性があります。助成金の対象は専門家の指導費用で、1事業所あたり一律10万円です。

助成金の支給を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 労働保険の適用事業所であること
  • ストレスチェック実施後の集団分析を実施していること
  • 平成29年以降に専門家と職場環境改善指導に関わる契約を交わしていること
  • ストレスチェック実施後の集団分析結果のほかに、専門家から管理監督者による日常の職場管理で得られた情報や労働者からの意見聴取で得られた情報、産業保健担当者による職場巡視で得られた情報などを勘案し、職場環境の評価を受けた上で改善すべき事項に対する指導を受けていること
  • 専門家の指導に基づいて職場環境改善計画を作成し、それに基づいた職場環境のすべての改善または一部を実施していること
  • 職場環境改善計画に基づいて職場環境の改善が実施されたことの確認を専門家受けていること

※出典元:職場環境改善計画助成金(労働者健康安全機構)

オフィス環境のストレスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

健康経営に関するよくある質問

最後に、健康経営の取り組みに当たってよくある質問をご紹介します。

 

■健康経営はまず何から取り組むと良い?

導入にあたって何から取り組めば良いか迷う場合は、労働時間の短縮やストレス軽減につながりやすい業務の効率化からスタートしてみましょう。

たとえば、業務効率化ツールを導入するのも一つの手です。業務効率化ツールとはITを活用したシステムで、次のような機能が搭載されています。

  • ペーパーレス化
  • タスク管理
  • プロジェクト管理
  • チャット機能
  • 名刺管理 など

ツールを導入して部署間の業務依頼を専用フォームからおこなうようにすれば、タスク管理がより確実になるだけでなく、スムーズになります。

ペーパーレス化に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

 

■健康経営の相談先は?

健康経営に関する問題に直面したときには、商工会議所に相談してみましょう。商工会議所には、健康経営の専門家を派遣してくれる制度があります。すべての専門家は、健康経営エキスパートアドバイザーの有資格者です。

アドバイザーは、中小企業診断士や保健師などの資格も保有しています。1事業所あたり5回までなら、料金は発生しません。このほかには、健康経営向けのコンサルティング会社に頼る方法もあります。ただし、本格的な相談をする場合はコンサル料金が必要です。

健康経営は取り組みやすい課題から始めよう

健康経営は企業側が導入を決定しても、社員の協力が必要不可欠です。社内外への周知や担当者の決定などもおこなう必要があるため、計画的に進めていくことが大切です。

取り組む内容を検討する際には、社員にアンケート調査を実施して課題を洗い出しましょう。課題に適した取り組みに悩む場合は、すでに導入している企業の事例を参考にするのも一つの手です。

社員の心身の健康を保つとともに、企業のさらなる成長に繋げられるよう、この機会に健康経営への取り組みを検討してみませんか。

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