ペーパーレス化の必要性とは?企業が取り組むメリットや推進する際のポイントを解説

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ペーパーレス化の必要性とは?企業が取り組むメリットや推進する際のポイントを解説

近年はペーパーレス化に取り組む企業が増えているため、自社での導入を検討している企業もあるのではないでしょうか。しかし、ペーパーレス化のメリットは理解できても、紙媒体の書類を長期間使用している企業では、導入に不安がある従業員もいるようです。

ペーパーレス化を上手くを軌道に乗せるためには、事前に課題を把握し、対策しておくことが大切です。この記事では、ペーパーレス化が推進されている理由や企業が取り組むメリットなどを解説します。

ペーパーレス化の現状や課題も併せて解説するので、自社で導入する際に役立ててください。

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ペーパーレス化が推進されている理由

現在、多くの企業はビジネスのデジタル化によるDX(Digital Transformation)を目指しています。DXとはAIやIoTなどのデジタル技術を活用し、業務プロセスの改善だけに留まらず、企業文化や企業風土を変革し、競争力の優位性を確立することです。

ペーパーレス化は、DXの取り組みの一つです。ペーパーレス化は企業単位だけでなく、国単位で推進されています。日本では1998年に電子帳簿保存法、2004年にe-文書法が施行されています。これにより電子帳簿保存法では国税関係の書類が、e-文書法では商法や税法で保管が義務づけられている書類の電子保存が認められました。

また、近年は働き方改革や新型コロナウイルス感染症対策にともない、テレワークを導入する企業が増えました。テレワークは従業員同士が離れた場所で働くため、データでのやり取りがメインになります。ペーパーレス化は、テレワークの環境を整備するためにも必要な取り組みの一つです。

 

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企業がペーパーレス化に取り組むメリット

企業がペーパーレス化に取り組むとコスト削減につながる、業務効率化が期待できるなどのメリットがあります。

 

■運用・管理コストの削減

紙媒体の書類をペーパーレス化すると紙が不要になるため、次のコストの削減が期待できます。

  • 紙代
  • 印刷代
  • 文書廃棄費用
  • 郵送代
  • 印刷機器のメンテナンス費用 など

データ化された文書は端末で閲覧できるため、会議の際にも人数分印刷する手間が省けます。また、紙媒体の文書を大量に保管している企業では、ペーパーレス化によって保管スペースの縮小が可能です。

ペーパーレス化を図るためには、ITツールの導入やセキュリティ対策などが必要です。イニシャルコストはかかりますが、運用や管理コストが削減できるため、長期的に見ると経費削減につながります。

 

■業務効率化の改善

ペーパーレス化すると書類をデータ化できるため、業務効率化を図ることが可能です。たとえば離れた場所で働く従業員や取引先の担当者には、ファイルを添付してメール送信すれば、書類を印刷して郵送する手間が省けます。会議でも端末で閲覧や共有ができるため、人数分の印刷が不要です。

また、稟議書で承認や決裁を仰ぐ際には、複数人の捺印が必要なケースもあります。担当者が出張やリモートワークで不在の場合、完了までに時間がかかることも珍しくありません。ペーパーレス化すると印鑑による捺印の代わりに電子印鑑を利用できるため、承認までの工程がスムーズになります。

 

■ブランディングの強化

ペーパーレス化は環境問題への取り組みの一環にもなるため、企業価値の向上が期待できます。紙を利用すると森林伐採や二酸化炭素の排出など、環境に負荷がかかっているのが現状です。

ペーパーレス化すると森林保護や二酸化炭素排出量の削減につながるため、環境問題への取り組みを社外にアピールできます。近年は、環境問題に取り組む企業の商品を積極的に購入する消費者も増えています。

また、就職活動でも、環境問題への取り組みが企業選びの基準の一つとなっているようです。ペーパーレス化の取り組みは社外へのアピール材料になるため、企業ブランドの強化も期待できます。

 

■セキュリティの強化

ペーパーレス化すると各種設定でリスクコントロールできるため、セキュリティレベルを上げることが可能です。紙媒体の場合、不正な持ち出しや改ざんなどのリスクがあるほか、管理方法がずさんな場合は、紛失する可能性もあります。リスクを軽減するためには保管庫に鍵をかける、持ち出しルールを策定するなどの対策が必要です。

ペーパーレス化するとアクセス権限や閲覧権限を設定できるため、さまざまなリスクを軽減できます。また、サーバー上にデータが残るため、書類そのものが完全になくなってしまう事態を避けられます。

 

■オフィス環境の改善

ペーパーレス化により書類を保管するスペースが減ると、オフィス環境の整備を図れます。オフィス内のスペースに余裕が生まれれば、カフェスペースやリフレッシュスペースなどのほかの活用方法が見出せます。省スペース化が実現できればオフィスを縮小し、賃料を削減することも可能です。

また、資料を共有化できるため、従業員同士が離れた場所で働いても業務を円滑に進められるようになります。フリーアドレス化やリモートワーク、ABWを実施しやすくなるため、働き方改革にもつながります。

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ペーパーレス化の現状と課題

総務省の「総務省  デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査(2020年3月)」によると、ペーパーレス化を導入している企業は60.4%だったことがわかっています。

日本は政府主導でペーパーレス化が推進されているものの、他国よりも遅れています。2021年12月11日には、ドバイの政府機関が世界初の完全ペーパーレス化を達成しました。世界でDX化が加速する中で、日本は国単位でも企業単位でも遅れをとっているのが現状です。

日本でペーパーレス化が遅れているのは初期費用がかかる、従業員にITスキルの差があるなどの課題があるのが理由としてあげられます。

 

■初期費用がかかる

ペーパーレス化を図るためには、ITツールの導入やセキュリティ対策などが必要です。データを共有するためには、すべての従業員にパソコンやタブレットなどのデバイスを支給しなければなりません。

ペーパーレスが軌道に乗れば、紙代や印刷代などのコスト削減が期待できます。しかし、ツールやデバイスなどに初期費用がかかるため、導入に踏み切れない企業もあるようです。

初期費用がネックになる場合は、IT導入補助金を申請できないか検討しましょう。IT補助金とは、中小企業や小規模事業者向けにITツールの導入費用をサポートする制度です。補助金が利用できれば、初期費用をおさえられます。

 

■従業員にITスキルの差がある

ペーパーレス化にともない、従業員はITツールを使いこなす必要があります。しかし、すべての従業員がITツールを使いこなせるとは限りません。たとえばデジタルネイティブ世代という言葉があるように、若い世代ほど新しいITツールにも馴染みやすく、従業員の年齢が高齢であるほど、ITツールに苦手意識を持つ人も多いようです。

ペーパーレス化をスムーズに進めるためには、すべての従業員が使用できるよう工夫する必要があります。たとえば操作スキルを身につけるために、事前に研修やセミナーを開催するのも手段の一つです。

また、ITツールはそれぞれ操作方法が異なります。トライアル期間を利用し、実際に操作する従業員が使いやすいツールを選ぶ方法もあります。

ペーパーレス化失敗のよくある要因

いざペーパーレス化の導入を進めてみても、何らかの理由によって導入が進まず、定着しないケースが見られます。中でも多く見られる要因は、次の3つです。

  • 管理やフローが煩雑になる
  • 新しいツールの習得に時間がかかる
  • 電子化が認められていないものがある

それぞれについて、詳しく説明します。

 

管理やフローが煩雑になる

詳細なルールを決めずにペーパーレス化を進めると管理やフローが煩雑となり、失敗につながるケースか見受けられます。

ペーパーレス化では、対象となる書類や業務フローや書類の管理方法などの詳細をルール化しておく必要があります。管理が一部の従業員に属人化してかえって煩雑化することが懸念されるためです。また、データ化する前の紙媒体の保管や処分方法も、合わせてルール化が必要です。

そのため、ペーパーレス化の導入は、はっきりとした目的意識をもって進めることが求められます。「すべての書類をペーパーレス化する」というように導入自体が目的となってしまうと、本来導入前に決めておくべき業務効率化のためのルール作りがおろそかになる可能性があります。

運用の枠組みを決めずに導入を急ぐことで、結果としてペーパーレス化の恩恵を感じられずに諦めてしまうことにつながります。

 

新しいツールの習得に時間がかかる

ツールの利用方法を習得するのに時間がかかることも、ペーパーレス化失敗要因の1つとして挙げられるでしょう。

ペーパーレス化は、これまでとは異なった方法で書類を管理する必要があるため、新しいITツールを導入して運用する企業が多く見られます。先ほど記載したとおり、従業員によってITスキルに差があるケースは避けられません。全員が一定レベルでツールを使えるようになるまでには、ある程度時間がかかるでしょう。

オフィスのDX化そのものをストレスと捉えられる従業員にとっては、スキル習得までモチベーションを保つ努力が求められます。ITリテラシーの不足によって「結局紙の方が便利だ」と考える従業員が多くなると、ペーパーレス化の定着は難しくなります。

 

電子化が認められていないものがある

社会全体でペーパーレス化が進んでいるとはいえ、ペーパーレスに対応していない書類もいくつか見られます。

税法や商法で保管を義務づけられている書類の電子データ化は、2005年に施行された「e-文書法」によって定められました。多くの書類で電子化は認められていますが、主務省令(法律を管轄する省が定める法令)によってペーパーレスの対象外となる書類もあります。

【電子化できない書類の一例】

  • 免許証
  • 許可証
  • 自動車検査証 など

また、法律でペーパーレス化が認められているものでも、取引先企業の慣例で紙の書類を使用することも見られます。業務内容によって電子化できる書類が少ない場合も、ペーパーレス化の優先順位が下がる要因となり得るでしょう。

オフィスでペーパーレス化を推進する際のポイント

ペーパーレス化を推進する際には対象書類を整理する、従業員に必要性を理解してもらうなどのポイントを押さえておくことが大切です。

 

■ペーパーレス化の対象書類を整理する

すべての書類がペーパーレス化の対象ではないため、まずは対象書類を整理することから始めましょう。ペーパーレス化の対象書類は、次のとおりです。

  • ビジネス文書
  • 請求書
  • 契約書
  • 注文書
  • 会議資料
  • パンフレットやカタログ
  • 販促物 など

書類のなかには、従来のように紙媒体での保管が必要なものもあります。e-文書法では、次の書類をペーパーレス化の対象外としています。

対象外の書類 代表例
緊急時に即座に閲覧する必要がある書類
  • 船舶に備える手引書
  • 災害対策マニュアル
  • 安全手引き など
現物性が高い文書
  • 免許証
  • 許可証 
  • 事業用定期借地契約 など

ペーパーレス化された文書は、停電や災害などの緊急時には閲覧できなくなる可能性があります。そのため、緊急時に必要な書類は、ペーパーレス化の対象外です。また、免許証や許可証などの書類は、現物が効力を発揮するため、従来のように紙媒体での保管が必要です。

 

細かいルールを決める

ペーパーレス化の実現には、運用ルールを詳細に定めておくことが重要です。ペーパーレス対象の書類と合わせて少なくとも次の項目を定めておくとよいでしょう。

 

【運用する上で決めておきたいルール】

  • 原本の管理方法
  • セキュリティの管理方法
  • データのファイル形式
  • ファイル名・フォルダ名
  • 版管理
  • ファイルへのアクセス権付与
  • 古いファイルの処分方法 など

運用ルールが明確になっていないと、社内への周知ができずにトラブルを生む可能性も否めません。大まかにでもルールを決めておき、細かい点は運用しつつ修正していくとよいでしょう。

 

■従業員に必要性を理解してもらう

ペーパーレス化は、経営層を含むすべての従業員からの理解を得たうえで進めていくことが大切です。事前に研修やセミナーを開催し、メリットだけでなく、導入後の業務にどのような変化があるのかも説明しましょう。

それによりペーパーレス化の必要性を理解でき、業務効率化が図れることがわかると、従業員のモチベーションアップも期待できます。従業員の理解を得られれば、オフィス全体でペーパーレス化に取り組むことが可能です。

 

■部分的な導入から開始する

ペーパーレス化を推進する際には、まずは部分的な導入からスタートしましょう。たとえば、部署ごとやプロジェクトごとなどの単位で推進するのも選択肢の一つです。最初からすべての書類をペーパーレス化すると、オフィス内で混乱を招く可能性があります。

その結果、ペーパーレス化が推進されず、取り組み自体が失敗に終わってしまうかもしれません。オフィス内の様子を見つつ、段階的に導入していくほうが従業員に負担をかけずに進めていくことができます。

 

■ITツールを活用する

ペーパーレス化には、ITツールが必須です。ツールは、目的や書類によって適したものが異なります。たとえば取引先との契約書は電子契約サービス、請求書は電子帳票システムなどです。

このほかには、書類の作成から保管、破棄までのすべての工程をデジタル化できる文書管理システムもあります。また、ペーパーレス化による業務効率化を目指すなら、従業員の使いやすさを重視して選ぶようにしましょう。

まとめ:ペーパーレス化は段階的に推進することが大切

ペーパーレス化は、多くの企業が目指しているDXの一つです。リモートワークやABWを導入し、働き方改革を推進するためにも、ペーパーレス化は必要です。初期費用がかかることが課題ですが、運用や管理コストの削減が期待できます。

また、企業ブランドの向上やセキュリティの強化にもつながるため、長期的に見ると企業のメリットは大きいものです。まずは従業員に必要性を理解してもらい、部分的な導入からスタートしてみましょう。

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