【インタビュー】株式会社TBSスパークル 「共存、協調から更なる一体化へ。~社内を活性化させるオフィス改装~」

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【インタビュー】株式会社TBSスパークル 「共存、協調から更なる一体化へ。~社内を活性化させるオフィス改装~」

2019年に報道・ドラマ・バラエティなどの制作を主に行っている11社が統合して設立された株式会社TBSスパークル。設立時の2019年と今年の2度にわたってオフィス改装を行いました。今回は、2度目のプロジェクトメンバーであるSDGs推進委員会の皆さんにインタビューを行いました。

 

~インタビューメンバー紹介~

ブランディング企画室・SDGs推進委員会委員長 宮﨑晶子様 / エンタテインメント本部ドラマ映画部 佐藤敦司様 / エンタテインメント本部バラエティ部 武久侑馬様 / ニュース情報本部デジタルクリエーションラボ室 山口薫様

社内の一体化を目指したオフィス改装

第一期オフィス改装を経ての今回の第二期に至りますが、2度目の改装に至った背景を教えていただけますか。

宮﨑:背景は大きく2つありまして、一つはTBSグループの経営方針ですね。簡単に言うと、TBSグループとして放送以外の事業を飛躍的に成長させるという方針があり、スパークルとしても、これまでの放送事業中心から、さらにクリエイティブを拡張するために、部署の壁を超えてもっと自由に交流して、これまでの価値観を超えたイノベーションを起こしていく必要がある、ということがありました。

もう一つが、合併によって1300人という大きな会社になり、社会的責任を果たすためにSDGsに取り組まないといけない、オフィスリニューアルによって、社内のSDGsへの意識を高めていこう、という狙いがありました。 SDGs推進委員会が中心となってやることで、社内の「更なる一体化」と「SDGs」、この2の目的を達成することを目指しました。

 

山口:第一期のオフィス改装では、部署内での交流は増えたかもしれないのですが、会社全体として横のつながりや、関わりが増えたりすることは、あまり多くなかったんですね。

なぜかというと、ブロックごとに部署が存在していたので。自分も違うブロックに行くことはほとんどありませんでしたし、実際関わりも多くありませんでした。

第二期はそういったものをすべて一体化する、1つにするということが、目的として大きくあったのではないかと思っています。

部署ごとにブロックをわけるのではなくて「働き方によってブロックを分ける」ということに軸を置いていて、実際に横の繋がりをより増やすことができたのではないかなと思っております。

武久:第二期のオフィスリニューアルは意図していなかった成果も出たのかなと思っています。会社としては一体化という目的で最初始まったと思うのですが、リニューアルを進める過程で実は社内で結構揉めたんです。

新しいルールがどんどん検討される中で、ある部署ではこのルールは成立しない、このルールは受け入れられない、といった今まで潜在していたけど見えなかった様々なものが表面化してきて、それを一度に均すチャンスになったのかなと。

リニューアルのプロセスのなかで、本来もっと早く出てくるべき問題が、ようやく我々の中で散見されるようになってきて、正さなければならない、直さなければならない、我々の考えを変えなければならない、という流れになり、これが一体化に向けた1番大きな収穫だったのではないかなと思っています。

宮﨑:今回、目玉としてもう一つ、「LOUNGE18」というカフェのような交流スペースを作りました。

これも当初はかなり否定的な意見も多く「仕事をする場にカフェが必要なのか」とか「本当に執務席が足りるのか」といった懸念の声もありました。

これは、オフィス利用実態調査を、アイリスチトセさんと一緒にかなり綿密にやって「基本5年後までは座席は足りる」ということをデータで示して、納得していただいた経緯もありましたね。

一体化のための交流が目的なので、カッコよすぎず心地よい場所、を目指しました。最近はイベントでも使っていただいていますし、先日の社員アンケートでも、好意的な意見が大多数で、作って良かったな、と正直ホッとしました。

今回リニューアルを行ったSDGs推進委員会は、どういう組織なのですか?

宮﨑:SDGs推進委員会は、名前の通り、SDGs達成に貢献するために作られた委員会で、コンテンツ企画会議とハーモニー会議の2つの会議があるのですが、コンテンツは、SDGs達成に貢献するコンテンツを作ること、ハーモニーは社内のSDGsを進めていく目的で設置されたものなんです。

今回オフィスリニューアルを担当したのは、ハーモニー会議で、メンバーは幹事5人と、各部署から選抜された社員、部長・副部長クラスを中心におよそ30人がいます。この会議の最初のタスクが、今回のオフィスリニューアルでした。委員会には役員もいたので、経営とのバランスをとりながらではありますが、基本的には、全てのことを委員会で決めていきました。

オフィスデザインや空間に対して、SDGsの要素としてどういったものが含まれるのでしょうか?

宮﨑:今回のオフィスリニューアルでは、主に2つのことにフォーカスしました。

一つが「働き方の多様化」で、具体的には「働く場所を自由に選べる」ようにしました。グループワークやソロワークというエリアを作り、目的や気分によって自由に場所を選べるようなオフィスにし、快適な環境で働くことで、仕事の効率も上がる、というのを実体験してみるということが1つ。

もう1つは「サステナビリティ」です。 一番大きかったのが、モノを捨てずにシェアする「SHARE DOCK(シェアドック)」という場所を作ったことです。これまでは番組を制作するときに使う備品や事務用品などは、各部署・各番組ごとに購入していたのですが、そうすると余ったら捨てる、番組が終わったら捨てる、ということで、結局ゴミになっていたんですね。

シェアドックは、余った備品や、使わなくなった文具などを捨てずに「シェアドック」に寄付し、それを必要な人が自由に持っていって使う、というものなのですが、やってみたら結構いい感じで回っているな、と。

ポイントは、最初からハードルをあげなかったことですね。それぞれの番組で購入することを制限するわけでもなく、とりあえず余ったものを使いまわそう、ということでやってみたことで、比較的抵抗なく受け入れてもらえたのかな、と思っています。

「働く」について考えるきっかけとなったオフィス改装

働き方というのは新型コロナの流行を境に変わりましたでしょうか。

武久:そうですね、かなり変わったと思います。コロナになって集団行動が減って、会社に来る来ないの選択も生まれて、テレワークというかたちも新たにでてきて、コロナでより働き方が自由になったと思っています。

話は少し脱線しますが、今回のオフィスリニューアルの成功点だと思うのは、オフィスがガラっと変わったので、どう働くのがベストなのか、みんなが1度考えるようになった。そこが大きなポイントのように思います。

ということはコロナとオフィス改装の時期が相まったことで、必然とみなさんが働くということに関していろいろ考えるようになったということですか。

武久:そうですね。語弊があるといけませんが、我々のような制作の人間は仕事に対してはよく考えますがそれ以外のことに関しては考えるのが苦手というか、日々仕事に追われているので…

どこで働くのかも与えられた方が楽に働くことができるという感覚の方が強かったと思います。

ただ、それが凝り固まっていくと自由度がどんどんなくなって、良くない方向に進んでいくのではないか、というのがあって、それが今回どこでも好きなところでのびのび働けるとなったときに「あ、そうなんだ。」と、ふと思わせることにポイントがあるのではないかと思います。

そういうこともあって今回のオフィス改装は、働き方の選択をたくさん与えてあげるというような形なのですね。

武久:そうですね。会社に来る、来ないという選択肢があっても、デスクが決まったところにあると来ないと目立ってしまう。

これは若手からすると嫌なことだと思うんです。自由に選べるはずなのに・・・。

今のようにどこでも働けるようになれば、働く場所の選択は権利として成立すると思うので、それがいいところかなと思います。自由に働けることによってみんなの自由が守られる。 

佐藤:僕も制作の人間なのですが、コロナ禍では、顔を付き合わせて直接会話をして作品を作ることはなかったのですが、オフィスリニューアルは、一人一人が働き方について考える機会を与えてくれました。

今まではみんなで会社にきて、みんなで働いて、みんなでじゃあ帰ろうという習慣が出来ていたのですが、今は持ち回り制であったり時間によって仕事を分担したり、働き方をだいぶ工夫するようになったと思います。

プロジェクトを通して、みなさんがどう働くのが良いか、働くとは何かを考えるようになり、それが波及していったということですね。

今回の改装プロジェクトで1番大変だったこと、またそれをどう解決したのかを教えていただけますでしょうか。

武久:大変だったのはやはり社員の意見の調整ですね。一本化と言いますか。多数決を取って社内の意識を統一するのが1番大変だったと思います。

部署ごとに考え方・働き方が違いますし、それでいてどこが優位、有利もないので。このフロアはこの人たちが使うから、こういう使い方したいという声もあって。

今まで聞いたことがない意見を聞けましたが、それをどう解決するのかは、ほんとにそれが大変で、幹事がとにかく何度も何度も場をもうけて調整したので、これは本当にその成果だと思っています。

宮﨑:いやいや、今座っている皆さんも大変だったと思います。

今までは部署ごとに働き方も異なっていたのでしょうか?

佐藤:スパークルができてまだ4年ですが、他の部署がどんなふうに働いているかとか、把握できていなかったので、各フロア、部署によって全く考え方や仕事のやり方が違うなと実感しました。

委員会のみなさんと共有してここは変えていこう、ここは守ろうということを考えることに苦労しましたが、結果としてみなさん最終的には納得いく形がとれたのかなと感じています。

宮﨑:そうですね、、、SDGsと一体化という2つの柱のもとに集まっているのに、みんなが自分たちの部の主張を繰り返したらきりがないですよね。

ただ、やっぱりオフィスって、どうしても陣地争いが起きてしまうんです、ロッカー一つにしても、ココじゃないとだめだ、とか、超細かいことまで・・・。

ありきたりですが、目指すのはここですよね、ということを常に掲げて、みんなで繰り返し意識していきながら、妥協点を探ることが1番大事なポイントだったのかなと思います。

これが、リモートだとなかなか難しいんですね。ただ、ここは幹事の5人がぶれることなく、本当に会議の何十倍もの時間を費やして準備をし、議論をしましたね。彼らがいなかったらこのリニューアルは出来ていなかったと思います。

TBSスパークル自体は1社ですが、いろんな会社が集まったような状態だったのですね。

武久WBCをやっているようなものです(笑)(日米決勝戦の試合中に取材を行っていました。)

いろんな人が集まって、攻防があって…。

私は元々佐藤と同じ制作会社にいたので、ドラマ部の働き方の大変さを間近で見ているので、偉そうですが、どうしても「こうしてあげないと」「こうしないと働きづらいだろうな」と彼らに寄ってしまう部分がありました。

でも全部寄せてしまうと成立しないだろうということで、どうしたら納得してもらえるかを相談させていただいて。ただ、そこでOKとなっても、部内に持ち帰ったら全然違う話で返ってきたり…そういう意味では、最終的によくこんな成立した結果が生まれたなと思います。

聞けば聞くほど大変そうなプロジェクトですね。

山口:まあなんて大変なプロジェクトなんだとは思いましたね。(笑)

みなさん、番組、ドラマ制作の本業を抱えながらだったので、そこが1番時間もかかるし、難しいところだったかなと思います。

2度目の改装がコロナと重なり、外的要因により働き方が変化し続ける中で、スパークルとしてこれからの理想の働き方と働く場を求めていく。そこのプロセスがとても魅力的で、この記事を読まれる方も参考になる点が多いのではないかなと思います。

宮﨑:テレワークでこれだけオフィスがガラガラになって、それをキープするのはそれこそサステナブルではないし、効率は悪いですよね。当たり前ですが、経営としては効率的なオフィスの使い方というものが頭にあったと思います。

当初は、オフィスの面積を削減する方向で話が進んでいましたね。

ただ、2030年に向けて成長していこう!と言っているのに、本当にオフィスを小さくするべきなのか、コロナ禍で先が見えない時代だからこそ前向きな改装にしたい、という強い想いがあって、最終的にメインオフィスは削減せず、外ビルの部署をメインオフィスに移すことで効率化を図りつつ、LOUNGE18のような交流スペースも確保することができました。

未来志向のオフィスを創る、という意味でもSDGs推進委員会でやる意味というのはあったと思いますし、経営陣が素早く対応してくれたことは感謝しています。

継続されていく働き方改革と意識改革

最後の質問です。御社のこれからの「働く」についてお伺いしたいと思います。改装を終え、新しくでてきた課題であるとか、もっとこうしていきたという想いなどがあれば教えていただけますか。

宮﨑:TBSスパークルはクリエイターの会社なので、何よりもまずクリエイターが働きやすい環境を整える、というのが1番で、ここがぶれてはいけないと思っています。

そのためにどうあるべきかは状況によって変わるし、これから思考錯誤していく中で、柔軟に変えていけばいいかな、と。今回のオフィス改革は一つの手段ですし、より一層やりがいや、働きがいが持てる会社にしていければと思っています。

まずは、最低限の安全と安心があること、あとは、とにかくコミュニケーション、働き方も人それぞれだし、環境も事情も人それぞれで、主婦だからこうだよね、とステレオタイプで考えると失敗します。

一人一人にカスタマイズするためには、とにかくコミュニケーションを大切にして、何のために働くのか、どのように働きたいのか、そのためにこれからどんな仕事をするのか、を共有して認め合うことが本当に大切だなと感じています。

働き方が自由に選べリモートが増える中で、難しいですが、だからこそリアルなコミュニケーションをこれまで以上に大切にしていかないといけない。それが今後の課題だと思っています。まだまだ働き方改革は各現場で進めているところですし、それをできるだけ後押しというか、小さなところからでも変えていくことは継続して進めていきたいですね。

山口:会社の方針としてあるように放送事業外収入を増やしていくためには、部署間を超えてチームで働くということが必要になってくるのかなと思います。今の組織は、どういった種類の番組を作るのかで分かれているのですが、今後放送事業外での収入を増やす上では、皆さんの得意なことを活かして仕事をすることが重要になると思います。

ですので、オフィスリニューアルを終えて働きやすい環境づくりはできましたが、そういった雰囲気になっているのかと言われると、まだまだかなと感じています。

そこに関しては我々も部署を超えた働き方ができるように環境づくりをより進めていかなければならないですし、社員ひとりひとりがそういった雰囲気を感じ取って、部署を超えたコミュニケーションをとることができるような、そういったオフィスになればいいなと思います。

武久SDGs委員会がこれからも続いていくとは思うのですが、名前を変えたほうがいいのではないかなと思います。(みなさん爆笑)

結構、会議に言われたままに参加して、話を聞いているだけ、という人が多いと思いますが、今回のリニューアルに向けての会議は、色んなギスギスではないですが、大変なことが多かった故に、素直にみんなが言いたいことを言えた会議だったと思うんです。

これはこれからも続けていって、1300人の中の30人一人ずつの考え方が伝播していって、最終的に1300人同じ意識、同じ考え方は難しいかも知れませんが、良いものをつくろうとやっていくためには結束というのが大切になってくると思います。

外部環境が厳しい状況にあっても、業界最大手の制作会社として、我々が原点となって世界に戦えるような大きな会社にしていけるような…。

これがきっかけになると思うので頑張っていきたいと思います。

佐藤:私のような中堅社員やベテランは、今まで決められたルールや敷かれたレールに乗せられてやってきたのですが、今回のプロジェクトのなかで若手社員の話を聞くようになってから、こういったラウンジの憩いの場ですとかソロワーク、グループワークですとか、目的に応じたフロアができたことでより仕事が楽しくなってきた、というよう意見を聞くことができたので、これからも若い人たちに対しても聞く耳をもって、変化していきたいと思っています。

宮﨑:そこは1番大切に感じていまして、やはりまだまだ若手が自分の思っていることを、素直に口にできない状況も結構あると思うんですけど、若手が自由にものを言いあって、彼らが責任感をもって実行して、それを上がちょっとだけフォローしてあげる。そんな場面をもっと沢山作っていかないといけないなと思っています。

折角1300人もいるので、若手も自ら積極的にいろんな人と交わって、自分が興味あることや、自分を活かしてくれる人を見つけていく、そこでプロジェクトの種が産まれる、オフィスがそういう場になればと思っています。    

ありがとうございます。

皆様の持っている想いや熱量があったからこそ、オフィス改装をきっかけにここまでチームがまとまり、これからのTBSスパークルの「働く」の価値向上、企業発展に継続してつながっていく。

そのように感じました。

宮﨑:今回パートナーとしてアイリスチトセの角田さんに就いていただいき、本当にありがとうございました。いつもこんな感じでおだやかで。我々のピリピリした雰囲気の中に入ってきただき、いろいろ大変な思いをしていただいていたとは思いますが、制約も多い中で非常にいいオフィスが出来たことを、本当に感謝しています。

 

TBSスパークルが設立して5年目を迎え、潜在的にくすぶっていた意見や問題が今回のオフィス改装を通して表面化。それらを避けることなく課題解決に導いたプロジェクトメンバーに、過程での苦労や今後の想いについてお伺いすることができました。

オフィス改装は、会社を良い方向へ導けるきっかけであることを、改めて感じたインタビューでした。

ありがとうございました!

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