【インタビュー】アスクル株式会社 ~「ミライベースプロジェクト」で実施した本社リニューアルと働き方の変化とは~

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【インタビュー】アスクル株式会社 ~「ミライベースプロジェクト」で実施した本社リニューアルと働き方の変化とは~

オフィス向け備品など多くの商材が翌日に配達が可能なことで知られるショッピングサイトを運営する「アスクル株式会社」。今回はコロナを起点に新しい働き方実現への取組みとしてプロジェクトを実施し、本社をリニューアルした同社にインタビューを行いました。

 

~インタビュイー紹介~

アスクル株式会社

人事総務本部ファシリティーマネジメント部長
田辺 典子様

本社リニューアルにいたるまでの経緯とプロセス

本日はよろしくお願いいたします。

早速ですが会社概要からお聞かせいただけますでしょうか。

アスクルは事業所向けに仕事に必要なものを明日(あす)届ける(来る)ことを約束し、中小事業所に大企業並みのサービスを提供する、ということをミッションに1993年にオフィス用品通販サービスを開始しました。2012年には個人向け通販「LOHACO」を開始しています。仕事場とくらしと地球の明日(あす)に「うれしい」を届け続けるというパーパスに基づき、BtoBBtoC事業を推進しています。サービスの特徴としては、ご注文の当日・翌日にお届けするということ、一度にまとめてお届けするということ、また置き配や日時指定も承ることであり、これらのサービスを実現するために全国に10ヵ所の物流センターを構えています。

貴重なアスクルカタログ第一号

通販サービスの会社でありながら物流システムも持ち合わせているのですね。

2021年の本社リニューアルのプロセスについてお伺いできますでしょうか。

事業継続、人材確保及び人材の離脱防止を図る取り組みとして、アスクルが目指すニューノーマル時代の新しい働き方を目指し、本社リニューアルを行いました。新型コロナウィルスの感染拡大に伴って浸透したテレワークの併用を前提とした働き方の実現を目的としています。

時間軸としては、20206月に「ミライベースプロジェクト」といったプロジェクトを立ち上げて新しい働き方に踏み出し、そして約1年後の20215月にオフィスのリニューアルを完成させました。プロジェクトが発足してから断捨離フェーズ、評価基準の準備フェーズ、それから第二フェーズとして機能や変更の実装フェーズという形でオフィスの本格的なリニューアルを行いましたが、第一段階の断捨離フェーズが特に大変だったのを覚えております。

コロナをきっかけにスタートしたプロジェクト

このプロジェクト自体は以前から計画があったものですか、それともコロナを受けて働き方が変わったことでプロジェクトが始まったのでしょうか。

後者ですね。コロナでテレワーク中心の働き方に振り切ってしまったので、コロナを皮切りに今まで溜まっていたものを進めてしまおうということになりました。

プロジェクトはどのような体制で推進したのでしょうか。

PO(プロジェクトオーナー)には人事総務の執行役員が入りまして、PM(プロジェクトマネージャー)では総務の担当責任者2名、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)で各部署の担当者4名。この時に私も総務に異動となりPMOという立場でプロジェクトに参加させていただいておりました。大きな横串のプロジェクトとなっておりましたので、各部門から数名ずつ参加し、計32名でプロジェクトを進めました。

メンバーの選定はどのようにされたのですか。

どうしても断捨離の段階で各部門のキーマンに動いてもらわなければならず、各統括部長の方から数人ずつをアサインしてもらいました。

各テーマに関して、ソフト・ハードの施策も考えておりまして、プロジェクトメンバーで新しいオフィスに求めるコンセプトや機能の役割を議論して、それに沿った企画の立案をしていきました。安心・安全・秩序を踏まえてどういったことをするのか、リアルなコミュニケーションをするためにはどういった仕掛けが必要なのか、また全体を変えるにあたってイノベーションや価値創出の場も必要になりますが、そういった場をどのように構築するのかといったところをプロジェクトメンバーで議論を進めて実装フェーズに持って行ったという過程がございます。

「つながり」を体現したオフィスコンセプト

プロジェクトメンバーで議論して決めたオフィスのコンセプトはどのようなものでしたか。

リアルでもオンラインでも人が集い、結びつくことができる仕事場にしていくということで「ASKUL CROSSING」というコンセプトを導き出しました。これは「会社とのつながり」「仲間とのつながり」「アプリとのつながり」の3つの視点から再構築を図ろうというものです。

ASKUL CROSSING」をなしえるために具体的にどのようなことをオフィスに盛込んでいったのでしょうか。

例えば、エントランスはアースリングジャンクションといった形で設け、アスクルのパーパス&バリューズを表現するためにエントランスをジャングル化させました。ここで多様な植物を共存させ、豊かで自然あふれる地球の尊さを感じて人の生命力を感じられる空間を作っています。AIサウンドによるサウンド生成システムで明日の天気に合わせた音楽の生成をして、エントランスで「地球の明日の365曲」という音楽を流し、視覚でも聴覚でも五感で地球の明日を感じられる空間にしています。あとはアスクル坊やの横には、会話を生み出すということを目的に、シーズナルツリーの設営を行っております。ここは社内でも人気の場所になっていて、ここで写真を撮ったりですとか、ご来社いただいたお客様ともここでコミュニケーションが生まれたりする場にもなっています。

アスクルのパーパス&バリューズを表現したエントランス

また、執務室エリアにはハイカウンターを置いて、今までは社員がちょっと集まる場所というものがなかったので、立ちミーティングなど人が集まる仕掛けを取り入れています。また、11階奥はカフェスペースとなっておりまして、仲間と集うオアシスをコンセプトにリニューアルいたしました。元々は1人で座れる場所としてリニューアルしましたが、昨年コロナが5類になってからは何人かで座ることができるテーブルも用意して、個人でも複数人でも使えるエリアにいたしました。

オフィスで様々な施策を行っているのですね。

先ほど断捨離フェーズのお話がございました。働き方に変化がないと紙や物の量も変化がないと思うのですが、社内でどのような変化があったのでしょうか。

やはりきっかけはテレワークかと思います。

テレワークになりハイブリットな働き方になったがために紙の使用が大分減りました。全部データ化し、保管をするものがなくなったので袖机も必要なくなったといった流れです。

カフェ風カウンター(画像上)とサステナブル商品を陳列しているエリア(画像下)

出社の価値を最大化させるオフィス

今は出社率の取り決め等ございますか。何割くらいの方が出社しているのでしょうか。

制限はありませんが、コロナで一斉にテレワークに切り替えた時はだいたい3割ほどの出社でした。そして現在も出社率はそこまで変化がない状況で実態としては34割となっています。

毎日出社したくなってしまいそうなオフィスの様に感じますが、半分も出社されてないんですね。逆にどういったタイミングで出社されるのでしょうか。

部門ごとに任せており、週に1回のところもあれば月に1回の部署もある、というような状況です。やはりエンジニア系の職種ですとほとんど来なくても仕事が回りますし、逆に人事、総務系ですと出社率が高い傾向にあります。

皆さんで何割出社しましょうというわけではなく、各部門の働くスタイルに合わせて柔軟に対応しているのですね。

総務の立場として、出社は推奨しているのでしょうか。

デスクを減らしてしまっているので、実際に全員が出社すると全員分の席はない状況ですが、テレカンポットですとか、ワイドモニターのような「自宅には無いが会社に行けばある」といったもので出社する価値を作っているので、本音としてはぜひ出社してご活用いただき社内を活気づけて欲しいという気持ちがあります。

テレカンポットなどを置いた仕事に集中できるエリア

出社する価値を高めるということですね。

補足となりますが、会社として出社しなさいというわけではありません。テレワークの働き方も認められておりますが、それで完結できない職種やタイミングもあります。そこで、例えばチームで一部の方は出社、一部の方はテレワークとなった場合にどちらかが孤独感を感じることがないように、会社にいる人もいない人も同じような一体感を持ち、シームレスに皆が繋がりをもって仕事ができるような仕掛けを施しています。

ありがとうございます。

先程全体の工程を聞いて感じたのが、コロナからの動き出しがすごく早いですね。コロナがあったのが2020年の頭、そして2020年の6月にはプロジェクトがスタートしている。しかも一時的ではなく、恒久的な切り替えですよね。

コロナ前にもリモートワークを週1回等実施していたので、それが初動の速さに繋がったのかもしれません。

リモートでできる環境も、制度もあったのですがコロナ前はどうしても浸透しなかった。ところがコロナになって一気に社内の意識が変わりましたね。

コミュニケーションの活性化と働く価値の向上に向けて

みんなで働きやすいやり方を模索した結果ですね。

オフィスをリニューアルしてからこれで3年目になるとは思いますが、何か変化でしたり、新な課題等はございますか。

そうですね、やはり一番の課題はコミュニケーションが生まれにくいということです。新卒の方も入ってくる中で、もっとコミュニケーションが生まれるしかけをしなくてはならないとは考えています。

ファシリティといったハード面とイベントのようなソフト面の組み合わせのような考え方しょうか。

対面で交流したいという要望も強まっていますし、そういった催しや社内のイベントが増えてきているように感じます。あとは仕事以外でも趣味でいろいろな社員と知り合っていただくために会社から補助を出しています。様々な部活動が立ち上がって、今までリモートでは会うはずもなかった、または仕事上関係なかった人たちと接する機会を設けるその仕組みが活発に動いているように感じます。

オフィスには社員同士がコミュニケーションを図るための様々な仕掛けが存在

 

同じ会社、同じ組織で働いているからには繋がりを活性化してエンゲージメントを高めるような動きが欲しいですね。

働く場所に関してすごく自由度高い印象ですが、働く時間に関してはいかがでしょうか。

9時から17時半が定時ですが、部署によりフレックス制度を活用しています。

コロナ前はどうしてもコアタイムを日中中心に置いていましたが、コロナになってそれも撤廃し、ご自身の裁量を重んじるように切り替えた結果、定着したという感じですね。いい意味で意識改革になりました。

自由度の高い働き方が用意されて、それを社員の方が自ら考えてうまく取り入れていったのですね。

ここで働き方をシフトさせないと事業が継続できないという危機感もありましたね。

最後の質問です。御社が考える働く価値の向上に向けて、何か今後の展望等ございましたらお聞きしたいです。

日々ファシリティをどうすればいいのかということは考え続けております。充実したファシリティがそろっていることで生産性・創造性を高めることにも繋がっていきますし、このオフィスの中でその価値を最大限に活かせる場としていきたいなという風に考えています。

やはり働き方も刻々と変わっていきますし、新しいシステムなども出てきたりするので、そういったものをうまく取り入れることで常にブラッシュアップしていけるといいですよね。

そうでうね。リニューアルしたものの使われていない空間もあったりしますので、その空間を使ってもらうために今後も施策をうっていきます。

アスクル様には何年もお世話になっていますが、頼んで明日来なかった経験がなかったので御社にとても興味がありましたし、どんな人たちがどのように働いているのかなと気になっていました。今回はオフィスに対する考え方や働き方を知ることができて、改めて御社の魅力を感じられた時間でした。

本日はありがとうございました。

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