スマートオフィスとは?メリット・デメリットや導入時のポイント、成功事例を紹介
オフィスレイアウト・デザイン・設計

スマートオフィスとは、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)やAIなどのIT技術を積極的に活用したオフィスのこと。スマートオフィスの導入は生産性や業務効率のアップにつながる他、多様な働き方を可能にします。スマートオフィスの概要やメリット・デメリット、導入時のポイントについて解説します。スマートオフィス化に成功した事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
スマートオフィスとは

スマートオフィスとは、IoTやAIといったIT技術を導入したオフィスのことです。高速ネットワークを活用して快適な働き方を推進し、業務の効率化や生産性アップが期待できる施策として注目されています。スマートオフィスの意味や注目されている背景を紹介します。
IT技術の導入でオフィスをスマート化
IoTやAlなどのIT技術を搭載したデバイスを活用し、快適な環境を構築するオフィスのスタイルであるスマートオフィス。導入のおもな目的は、業務の効率化や生産性アップなどです。
スマートオフィスを導入し、ネットワーク環境があればどこでも働けるよう整備することで、テレワークやフリーアドレスのように働き方の幅も広がります。
<スマートオフィスの具体例>
- テレワーク、ビデオ会議システムなどの導入
- 顧客管理・備品管理システムのデジタル化
- 照明や空調の自動調節
スマートオフィスが注目されている背景
スマートオフィスはオフィス環境を整えることで、業務効率の改善や従業員満足度を向上させる施策の一つとして注目され始めました。また、次のような要因も深く関係しています。
- 働き方に対するニーズの多様化:スマートオフィスの導入により働く時間や場所の自由度が高くなるため、多様な働き方に対応できる。
- 限られた人材の有効活用:スマートオフィス導入による業務効率化で従業員一人当たりの業務負担が減り、別の業務に集中できる環境を構築できる。
スマートオフィス導入のメリット

オフィスのスマート化により、さまざまなメリットが期待できます。またネット環境さえあれば働ける環境をつくることで、テレワークなど多様な働き方への対応が可能になります。
生産性や業務効率がアップする
スマートオフィス導入により自動化が進むと、オフィス環境や業務環境が整い生産性のアップや業務の効率化が期待できます。
<自動化の例>
- エアコンや照明、掃除ロボットなどにIoTデバイスやセンサーなどを導入し、調整や掃除を自動化。
- ITツールを導入し、在庫管理やメール仕分けを自動化。
また自動化にともない、業務プロセスそのものを見直すきっかけにもなります。
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テレワークなどの働き方の選択肢が増える
スマートオフィス化により働く時間や場所を選択できるようになるため、多様な働き方が可能になります。ネットワーク環境が整うことでテレワークはもちろん、出張先でもオフィスと同様の作業ができるように。
また、テレワーク導入は遠方に住む優秀な人材へのアピールポイントにもなるので、採用地域の拡大につながります。さらに、スマートオフィス化にあわせてオフィスをフリーアドレス化すれば、出社した従業員が集中しやすい環境も提供できるでしょう。
フリーアドレスとは、オフィス内の席を自由に選んで業務をおこなうワークスタイルです。ネットワークに接続されたデバイスがあればどこでも仕事ができ、自席に縛られず働けます。
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ランニングコストの削減につながる
スマートオフィスの導入には初期費用がかかりますが、長い目で見れば効率化により光熱費や賃料の節約になります。空調や照明のコントロールがIoTで最適化されると、従業員の働きやすさにつながるだけではなく、省エネ効果が高くなり光熱費も下がります。
在宅勤務やテレワークの推進によりオフィス内で業務をおこなう従業員数が減れば、オフィスの縮小が可能です。より小さく賃料の低い建物に移転する、オフィスの数を減らすなどの工夫で、賃料を大きく節約できるケースもあります。
スマートオフィス導入のデメリット

導入コストがかかる、セキュリティリスクが高まるなど、スマートオフィス導入にはデメリットもあります。導入に際してのデメリットも押さえておきましょう。
導入コストが高額になりやすい
スマートオフィスの導入に必要な機器やサービスをすべて揃えると、導入コストが高額になりやすいでしょう。
<導入コストの例>
- スマートオフィスの環境整備にともなう、ICT機器の購入やシステム構築などの費用。
- インターネット接続の機会増加にともなう、セキュリティ対策強化のための費用。
- スマートオフィスの実現に向けた研修・教育の費用。
セキュリティリスクが高まる
スマートオフィス化によって従来よりもインターネット使用の機会が増えるため、これまで以上にセキュリティ対策の強化が必要です。また社外で働く従業員が増えると、従業員がデバイスを持ち出して社外のインターネットに接続する機会も増えるので、情報漏洩のリスクが高まります。
最近はさまざまなインターネット回線が登場し、セキュリティ対策が万全とは限りません。脆弱性がある場合、不正アクセスやウイルス感染などのサイバーリスクの危険もあります。
社内で浸透するまでに時間がかかる
スマートオフィスを導入しても、従業員が業務形態に慣れるまで時間がかかることがあります。従来のやり方に慣れており、新たなやり方に不満を持つ従業員が多いとスマートオフィスが定着しにくいでしょう。
さらに、スマートオフィス化にはデジタル機器を多く使用するため、慣れていない従業員は操作方法を覚えるところから始めなければなりません。場合によっては、新たな研修の時間も必要になります。
スマートオフィス導入を成功させるためのポイント

スマートオフィス導入を成功させるために、社内の現状の確認やセキュリティ対策の見直しといったポイントを押さえておきましょう。
ツール導入時に社内システムと連携可能か確認する
新しいツールを導入する際は、既存の社内システムと連携可能かどうかの確認が大切です。
必要なシステムをゼロから開発すると多大なコストがかかってしまいます。パソコンやスマートフォン、タブレットなどの既存のデバイスに対応可能なツールかどうか確認し、連携が可能であれば、導入コストを大きく削減できます。
また、従業員が実際にそのツールを使いこなせるか、メーカーのサポートが十分なツールであるかなども事前に確認しましょう。
セキュリティ対策を見直す
スマートオフィス化にともないインターネットの利用回数が増えるため、セキュリティ対策の強化が必要です。さらに、社外で働く従業員が増えるため、情報漏洩の対策も強化しましょう。
<セキュリティ強化の例>
- 業務で使用するデバイスのファームウェアやソフトウェアを最新の状態にしておく。
- ヒューマンエラーによるセキュリティリスクを低減するため、ITリテラシーを高める研修を従業員に実施する。
- デバイスの持ち出しやインターネットへのアクセスに関するルールを策定する。
助成金や補助金を活用してコスト削減する
コスト削減については、助成金や補助金の活用を検討してみましょう。国や自治体では、企業がデジタル環境を構築する際にかかる費用を助成・補助する制度を設けています。
代表的な補助金は、中小企業庁が実施する「IT導入補助金」です。2017年より始まった補助金で、「IT導入補助金2024」の補助額は最大450万円、補助率は1/2〜4/5。中小企業や小規模事業者がITツールを導入する場合の費用の一部補助が受けられるため、コスト削減方法の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
段階的に導入して浸透をはかる
スマートオフィスをスムーズに浸透させるには、小規模スタートがポイントです。すべてを一度に導入すると現場で混乱が起きやすく、スマートオフィスを十分に活用できない可能性があります。まずは一部の部署やチームなどに限定し、段階的に進めていくことで、現場へ浸透しやすいでしょう。
導入を決めたら、従業員に目的やメリットを説明して理解を得ることも大切です。本格的な導入に入る前に、従業員の不安を払拭しておく必要があります。
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相談先を確認しておく
自治体によっては、スマートオフィスを検討する事業者向けに相談支援をおこなっているところがあります。最寄りの役所が対応しているか調べてみましょう。ツールの導入に関しては、DX(デジタルトランスフォーメーション、企業のIT化)を取り扱うコンサルティング会社に相談し、プロセスを進めていく選択肢もあります。
スマートオフィス化にともないオフィスの移転を考えている場合は、移転の専門業者に相談し、フリーアドレス化などを踏まえたレイアウトも検討してみましょう。
アイリスチトセでも、クライアントのニーズや実運用時を踏まえたオフィスデザインを提案しています。オフィス移転やコンセプトの導入など、お気軽にご相談ください。
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スマートオフィスの導入事例

スマートオフィスの形は、企業によってさまざまです。自社での導入を検討していても、その進め方や効果をイメージしづらいことがあるかもしれません。導入事例を参考にすると、スマートオフィスの進め方や効果をイメージしやすくなります。
株式会社Helpfeel
株式会社Helpfeelは、クラウド上でソフトウェアやアプリケーションなどを提供するサービスを手掛けている企業です。同社では、フルリモート・フルフレックス制度を採用しています。しかし、従業員はさまざまな場所で働くため、物理的な距離や時差があり、不便を感じることもありました。そこで同社では、離れた場所でも従業員同士がスムーズに業務を進められるよう、リアルタイムで情報共有できるツールを自社で開発しました。
リモートワークはコミュニケーションがよく取れる一方で、チームビルディングが難しい側面もあります。そこで同社は3カ月に1回のペースで対面でのオフ会を開催し、チームビルディングをおこなった後、リモートワークに戻るといった工夫もしています。
【インタビュー】株式会社Helpfeel「フルリモート・フルフレックス:働き方の実態とその魅力」
東海大学
東海大学は関東を中心に、全国のキャンパスに多くの学部や学科を擁する総合大学です。東海大学では、2022年4月に「日本まるごと学び改革実行プロジェクト」と題した全学的な改組改編を実施しました。全学的な改組改編を機に、働き方改革の一環として事務組織も大きく変えています。大学事務では珍しく、フリーアドレス制を導入しています。フリーアドレス化を想定し、数年前には従業員のパソコンをノートパソコンに移行させています。
大学事務の場合、職務上、書類が必要な業務も少なくありません。しかし、改装を機に書棚の数を制限し、紙媒体の書類はパソコンとiPadに集約しました。ペーパーレス化によってコピー機の数も制限し、スペースを効率的に活用できています。
【インタビュー】東海大学「全学的な改組改編により始まった、東海大学の働き方改革」
セキュリティスタッフ株式会社
セキュリティスタッフ株式会社は、愛知県名古屋市にある警備会社です。同社は、2021年10月にオフィスを移転しました。オフィス移転を機に、業界では珍しく、すべての従業員にデュアルモニターを導入しました。デュアルモニターとは、モニターを複数同時に利用できるパソコンです。モニターが増えることで、複数の作業を同時に進められるため、業務効率化につながります。また、同社では、警備業に関する管理システムを自社で開発しています。
警備会社の中には、カーボン紙の複写型の伝票を使用しているところも少なくありません。同社では紙の伝票を廃止し、脱ハンコ、電子契約を取り入れるなど、デジタル化を推進しています。
スマートオフィスを推進し、快適なオフィス環境を目指そう

IoTやAIの発展によって実現可能となったスマートオフィスは、テレワークやフリーアドレスなどの多様な働き方を可能にしました。業務の自動化や効率化による工数やコストの削減も期待でき、より働きやすく生産性の高いオフィスを実現するためのカギとなります。
スマートオフィスのメリットを最大化するためには、オフィスや事業の性質に合ったツールを計画的に導入することが大切です。優先順位やセキュリティ上の注意点、扱いやすさやサポート体制を意識し、スマートオフィスを推進していきましょう。
アイリスチトセでは、オフィスの変更や移転の相談を承っています。スマートオフィス化によるレイアウトの変更やフリーアドレス化など、オフィスに関する疑問や気になる点があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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