【インタビュー】株式会社Helpfeel「フルリモート・フルフレックス:働き方の実態とその魅力」
インタビュー
ソフトウェア、アプリケーションサービスの提供で現在急成長中のSaaS企業、株式会社Helpfeel。フルリモート・フルフレックス制度を採用する同社に、なぜそういった働き方になったのか、その実態や魅力などについてお話を伺いました。
~インタビューメンバー紹介~
代表取締役 洛西 一周様 / 採用担当 本行様
フルリモート・フルフレックスの経緯
本日はよろしくお願いします。
はじめに、御社の事業内容について教えていただけますか。
弊社は、クラウド上でソフトウェアやアプリケーションなどを提供するサービスを開発・展開している、所謂SaaS企業です。開発したシステムをサブスクリプションで導入していただき、企業の生産性向上に役立てていただく事業を展開しています。具体的には例えば、ユーザーは疑問に思ったことがあるとウェブサイトやチャットボットで検索・質問されると思うのですが、これを圧倒的に見つけやすくしたのが、社名にもある「Helpfeel(ヘルプフィール)」というカスタマーサポート向けの検索SaaSです。知りたいことが何でもパパッと見つかるFAQ(Frequently Asked Questions:顧客または社内から頻繁に尋ねられる商品やサービス、業務に関する質問)の検索エンジンを提供しています。弊社の主力商品で、一度使っていただくとその便利さに驚かれるのでは、と思います。
ありがとうございます。
続いて働き方の質問になりますが、御社は基本的にリモートワーク、フルフレックスのワークスタイルだと伺いました。このワークスタイルになったきっかけと、なぜそれを継続しているのかをお伺いしたいです。
当社はもともと米国で起業した経緯がありまして、その際に京都にいる日本のエンジニアと一緒に働いていました。それ故に時差もありますし、当然一緒のオフィスで会うこともできず…ということから創業時の2007年ごろからフルリモートを採用しています。当時は今のようにツールもなく、スカイプを使用しながら苦心していましたが、仕事を進める中でリアルタイムに情報を共有できるツールが必要になり、そのツールを自社開発していました。これらのノウハウが、2016年にリリースしたScrapbox(スクラップボックス)につぎ込まれています。
皆さんGoogle ドライブはお使いになったことはありますか。リモートで離れていてもみんなで一緒に編集作業ができますよね。まさにそれと同じようなもので、我々も創業時にそういったものを作っていました。リモートワークのためのツールを自分たちで作りつつ、自分たちもリモートワークをするというような感じでしょうか。「なんとかしなければ」と必死で、ある意味自分達が顧客のような形でしたね(笑)
創業時から社員間で距離もあれば時差もあり、その不便さを無くすためのツールを自社開発したことで御社のサービス・製品が生まれ、それらを利用したオンラインワークを継続した結果、今のワークスタイルに至るということですね。
そうです。ある意味必然的にですね。
拠点を日本に移されたのはいつでしょうか。
日本法人設立の前から日本に拠点がありましたが、親会社を明確に日本に移したのは2020年ですね。
ということは日本法人設立前からベースは日本で、社員も日本にいたということでしょうか。
そうです。
このような働き方でしたので、そもそも社員は京都にいなくてもいいし、日本中どこにいてもいいですよ、ということでフルリモートの採用を進めていました。
よくあることとして、コロナを起点にリモートに切り替え、そこで今までやっていなかったことをやるので色んな不具合が出るといった話を聞きますが、そういった観点ではなく、そもそもそういった働き方のなかで今まで進んでこられたということですね。
そうです。実は弊社はコロナになったあと1つの業務命令も出していません。会社の制度は何も変わっていないので。もちろん運用面では変わりましたが、就業規則的なものは何1つ変わらず…相当珍しいのではないでしょうか。
緊急事態宣言が出たときも、社員がより自主的にオフィスに来なくなっただけです。
お話を聞いて気付いたのですが、洛西様のキャリアの中で、出社をベースとした企業に勤めたことはありますか。
実はありません。
起業する前も個人事業主をやっていたりだとか、知り合いのベンチャー企業を手伝っていたりと、スタートアップ周りで働いていたので出社することが勤務形態のベースであるという意識もあまりなかったのかもしれません。
ということは比較対象というのも特になく、今のスタイルが御社のベース・基本なのですね。
そうです。とは言え強いて言うと、オンラインメインではありますが、「オフライン」も、例えば社員の熱量を高めたりするのにすごく大事なことなんですよね。実際にコロナ前だと採用した人はここ京都に2週間から1ヵ月くらい、このオフィスに毎日来てもらい、そこでチームビルディングをするというようなことをやっていました。そこである程度仲良くなってもらい人間関係を作ったあと、リモートに戻ります。
ある企業の代表の方が、「リモートワークは、コミュニケーションはよく取れるがチームビルディングが難しい」とおっしゃっていました。そこを形成せずにリモートをしてしまうとなかなか社員の距離感が縮まらず、一体感が生まれないと。
弊社はそのあたりの工夫はいろいろありますね。例えばオフ会といってチームごとに3ヵ月に1回ほどの頻度で、みんなで東京や京都に集まる活動をしています。かなり遠方からくる方もいて、オフ会のための交通費はかかりますが、オフィスの賃料は抑えられていると思います。
リアルでコミュニケーションが取れるオフ会は開催のための準備も入念でとても盛り上がります。
ブログで拝見しました。チームとしての盛り上がりみたいなものをとても感じました!
ブログ「フルリモート・フルフレックスで忘年会って、どうするんですか?」
主にオフィスがある京都と東京で開催されることが多く、しっかり幹事が仕切って行います。
最近、社員数が増えてきて、この前のテクニカルライターというチームのオフ会では40~50人近くの方がこのオフィスに来ました。
オフ会の様子
フルリモート・フルフレックスによるメリット
すごい徹底ぶりですね(笑)
そのような御社の働き方ですが、敢えて言葉にすると、リモートワークのメリットとは何でしょうか。
それでいうと明確で、「優秀な人に来てもらいやすい」。これに尽きます。
いくつか理由はありますが、まず、地方にいる優秀な人が来てくれるというのが1つ目、あともう1つはライフスタイル的なところです。特に弊社の場合、子育て中の30~35歳くらいの人が本当に多いです。子育て中、子供ができた、これから結婚、そういう優秀なアラサー世代の方たちをしっかり採用できるというのは圧倒的メリットだと感じます。
そういった、普段仕事をする上でディスアドバンテージになりそうなものを取り払うことで、働きやすい環境が生まれ、かつ御社も優秀な人材を採用することができるのですね。
はい、男女問わず。男性もそうですが、女性で子育てをしながら弊社で働いている比率は実に高いです。
採用の他に何かメリットはございますか。
そうですね。採用が圧倒的ではありますが、(社員の方が書かれているホームページ掲載の)ブログを見ていただけるとわかる通り、働いている人たちはフルフレックスということもあり、自分の時間が柔軟に調整できます。
オンラインの課題と、それを解決するためのオフラインの場
逆に、オフラインの方がいいと感じる点はどういったところにありますか。
チームビルディングや、他部署同士の交流ですね。
では、このワークスタイルで、課題として挙げるなら何でしょうか。
地方の社員と会う頻度が少ないということは、フルリモートの課題です。
それからこれはリモートワーク1番の難しさであり、注意しないといけない点が、中途半端にハイブリッドワークにすると、結局、意思決定者はほぼオフィスにいるので、行かない間にオフィスにいる者同士で話が進んでしまい、オンラインの人がハブられてしまうということです。なぜなら対面での話し合いが一番濃密で、それらがテキスト等では共有されないからです。リモートワークをしている人で、家にいる人は重要な意思決定に参画できず、重要な仕事を任せてもらえないので出世できないという感覚を持っている人が多いのではないかなと思います。
中途半端にオフラインにしてしまうが故に情報共有がされないからということですね。
はい。ただ弊社は基本がオンラインですので、そういったことはほぼないですね。
基本的に情報は記録として残しているからですね。
そうです。家にいるからここに入れないという感じはなくて、ヘッドクォーター(本社)がオンラインにあるような雰囲気は皆さん感じられているのではないかなと思います。
今のお話を聞くと、柔軟に対応できることが前提ですが、ベースを思い切ってオンラインならオンライン、オフラインならオフラインに振ってしまった方がチームワークとしてうまく機能するのかなとすごく思いました。
まさにナレッジ共有がポイントです。弊社の場合は部署間が離れると会いにくいという課題はあるのですが、一方で他部署の情報も全部共有されているので見ることはできるんですよね。よりフラットでオープンな形は感じてもらいやすいのではないかなと思います。
同席している本行は採用を担当しているんですが、他に気になることはありますか。
本行さん)そうですね。洛西さんのお話でも出ましたが、新しく入った方と顔を合わせる機会がないので「誰だっけ?」となったり、忘年会でも「すみません、どなたでしょうか…」ということがありますね。アイコンではわかるのですが。ですので、弊社の忘年会のバッジにはSlackのアイコンを使っています。オンラインの会社なのに首にかけるストラップは豪華に作りこんでいますね。
オフラインの場も重要視されていることが伝わります。
そういったものでエンゲージメントが向上していきそうですね。
本行さん)そうなんですよ!普段そういったものが無い分、一気にそこで爆発するという傾向があります。オフラインの場は毎回盛り上がります。
話は変わりますが、社員の職種の構成はどのようになっていますか。
120人中、エンジニアが約30人くらいです。技術職という観点で見るともう少し多くて、40人。それ以外はビジネスサイドでバックオフィス系は7人くらいです。
一般的な企業イメージですとバックオフィスの方々は出社されているイメージです。
確かにそうですね。我々のバックオフィスはSaaSを活用し、完全にリモート・オンライン化していますので監査の方が驚いているくらいです(笑)
オフ会で使用するslackのアイコンを使用したネームタグ
オンライン企業における「オフィス」の意義
クライアント、企業様側がこちらに来社することはありますか。
ほぼないですね。
となると、御社にとってオフィスを構える意義はどういったものになるのでしょうか。
フルリモートですと、チーム内のコミュニケーション拠点というものがないので、オフラインで会ったときはすごい熱量になります。それを支えるものがオフィスだと考えています。
なるほど。「社員に熱量を与える場」ですね。
やはり出社すると、「この会社で働いている」という帰属意識が生まれますよね。それを保たせる意図もあるのでしょうか。
そうですね。あまりにも当たり前で、少し変な話ですが、やはり我々は人に会うと楽しい、という人が多いです。普段リモートだとたまに人と会ったときの嬉しさ、ありがたみを逆に実感するんですよね。人に会うと情報量が多すぎて頭がくらくらするなんていう人もいます(笑)
ありがとうございます。
今後、更にオフィスにこういったものを備えたいですとか、こういった空間を作りたいという思想はございますか。
それでいうと、我々はオープンな空間を大事にしています。せっかく出社したのに個室で区切られていては勿体無い。皆さん久々にオフィスに出社することになるので、可能な限りコミュニケーションが進むようにしたいです。いつでも誰でも来やすいよう、そのハードルを下げることが1番大切だと思います。
「オフィス=社員間のコミュニケーションを高める場」ということですね。
本社をこの立地にした意図などありますか。
精神的にも開放される良い景色だからです。わざわざ行くオフィスなので、そこが自宅よりも暗いと自宅の方が快適となってしまいます。そういう意味で、このオフィスは解放感があって自宅では味わえない景色、雰囲気がある…そういったところを重視しています。
オフィスからの風景。奥に京都五山送り火の大文字が見える。
自宅と同様な環境を整えるのではなく、オンとオフではないですけど、オフィスでは自宅では得られない体験価値を提供するということですね。
最後に何かお伝えしたいこと、この働き方のメリットや御社ならではの良さなどはございますか。
そうですね。我々はフルリモート・フルフレックスで働いているのでコミュニケーションに関しては非同期的です。ナレッジ的なものを社内でどんどんためていって、企業の中で知的資産を増やし競争力をあげるということ自体が、我々の企業競争力の源泉になっていて、それと働き方がリンクしています。自分たちが売っている商材だからこそ我々がある意味1番のテストケースと言いましょうか、顧客になろう、というようなモチベーションでやっています。最先端な働き方をしていると思っているので、ご興味ある方はぜひ(採用フォームから)ご応募ください(笑)
地方にいるからといって諦める必要はないですよ。開発でも営業でも、エリアを問わず働ける会社です。
会社の設立当初からフルリモート・フルフレックスを続けてきた株式会社Helpfeel。
その制度について詳しくお伺いし、社員さんの会社に対するエンゲージメントの高さに納得するとともに、オンライン、オフラインそれぞれの良さ、またその課題について改めて実感させられました。
本日はありがとうございました。