【商品開発ストーリー】オフィス家具コレクション「enKAK」~商品開発担当者へのインタビュー~

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【商品開発ストーリー】オフィス家具コレクション「enKAK」~商品開発担当者へのインタビュー~

nendoとコラボレーションした、働く場の価値を高めるオフィス家具コレクション「enKAK(エンカク)」の開発背景について、アイリスチトセ商品開発部商品開発チーム リーダー 栗田 知幸氏と同じく商品開発部商品開発チーム リーダー 比護 拓郎氏にお話を伺いました。

「enKAK(エンカク)」についてはこちら

デザインオフィスnendoとのコラボレーション

今まで当社は商品の企画からデザイン、製品化まで社内で行っていましたが、今回初めて社外のデザイナー(nendo)とモノづくりを行いました。コレボレーションすると決まった際の感想をお聞かせいただけますか。

比護:10年ぐらい前に「ネンドノカンド」という本を読んだことがあり、当時からnendoのデザインを商品開発の参考にしていたので、そのnendoとコラボレーションすると聞いた時は驚きと同時に、とても楽しみでした。

栗田:同じくnendoは世界的にトップクラスのデザイナー集団ですし、今回アイリスチトセとコラボレーションすることに対して、とても驚きました。プレッシャーはありましたが、徐々に楽しみになっていったことを思い出します。

初回のプレゼンでnendoから200ページを超える提案資料を頂きましたが、頂いた際にどのようなことを考えましたか。

栗田:まずは提案資料としてボリュームと完成度の高さに驚きました。
内容では、ひとつひとつのプロダクトというよりは、昨今の状況下におけるnendoによる新しいオフィス空間の提案という点に、面白さと新鮮さを感じました。

比護:ものすごい量のアイテムと、その世界観に圧倒されました。その後に「これらを全部商品化する…これは大変なことになってきた!」と思いました(笑)

今まで単品の商品開発を行ってきたもの対して、3年前にシリーズ家具として初めて「FOUNDER」を出しましたが、今回はそれよりも更にスケールが大きく、世界観を作り上げられるかといった点でしょうか。

比護:そうですね。

デザインコンセプトを製品化するにあたって大変だったことはありますか。

栗田:やはり最初にデザインを見た時、enKAKらしさでもあるのですが、使用されている板が薄くて、皆で「板薄いなぁ」と思っていました。(笑)
それでいて角(カク)のシャープさ、円(エン)のソフトさという世界感があって、その中でどうつくるか?というところからのスタートでした。
最終的に当初のデザインより板は多少厚めにはなりましたが、今まで当社としてトライしたことのない厚みをどうやって実現させるかというところが大変でした。

デザインの表情を崩さずにどうやって製品にするかということですね。

比護:全体的に栗田さんの話と共通していて…
板の薄さに加えて、enKAKでは板の継ぎ方も「留め継ぎ」というこだわりのある継ぎ方をしています。
簡単そうに見えますがそれを実現させるために創意工夫しており、製品化にたどり着くまで苦労しました。

栗田:実現させるための手法はいくつかあるのですが、やはり量産品として流していくことを考えるとノックダウンで出荷するので、現場での組み立てやすさ、費用感、クオリティと様々な兼ね合いの中で、それらを成立させる設計という点で難しかったですね。
今となっては当たり前にみたいになっていますけど…そこがやっぱり最初の難関でしたね。
量産、現場組立、金額のバランス調整に時間がかかりました。

開発者の立場から、是非注目してもらいたい点などありますか。

栗田:注目してほしいアイテムは、ミーティングチェアですね。
見た目はシンプルですがこの形に仕上げるまでかなり時間を要しました。
enKAKのミーティングチェアは背座が別体なのですが、それでいて背がストンと座面より下まで落ちたような、簡単なようで構造的にも難しいデザインです。
前例がほぼ無いものを製品化したので、商品開発部の立場としては印象に残るアイテムですね。
実際に見た目も綺麗でいい製品だと思います。
ローンチして、nendoさんのECサイト(nendo house) でこの椅子がトップに大きく載っているのを見て、「やってよかったな。」と思いました。

比護:照明(ランプ)です。アイリスチトセとして初めて出した照明でnendoさんのデザインらしく、シンプルでいて可愛いく、クオリティも高い。さらに電化製品で7色展開しているものはなかなかないと思います。たくさん売れて欲しいですね。

話にあったミーティングチェアや照明ですが、実は今ホテル案件で引き合いが来ています。今まで当社の製品でホテルにピンポイントで「このアイテムをホテルに入れたい」といった要望はありませんでした。
オフィスアイテムなのにホテルで使いたいというのも意外ですしね。

栗田:オフィス家具のブランドとしてモノづくりがスタートしましたが、結構どこでも使えるというか…。
「オフィス家具ですよ!」と、とらわれずに色んな用途で使われて欲しいですし、使っていけるアイテムだと思います。
多様な方向にenKAKが今後どう成長していくかも楽しみですね。

今回開発に携われて良かったと感じたことはなんでしょうか?

比護:カタログ撮影にnendoさんと一緒に立ち会えたことです。全商品が形になって揃ったこと、それらがnendoさんご指名のカメラマンのもと撮影されていくことにとても感動しました。一流のプロの仕事を肌で感じられた貴重な時間でした。

栗田:nendoさんは世界的にも知名度のある会社なので、そのnendoさんの仕事の進め方を知れたことはよかったです。
また、佐藤オオキさんがデザインしたものに対して、お互いああだこうだと直接意見を交わしながらこだわってやれた、それは本当にいい経験になりましたね。

プロジェクト始動から2年がかりで発売となりました。何か感じるものはありますか。

栗田:やっとローンチしたか…というところではありますが、気持ち的には全然まだ終わってないですね(笑)
やっとスタートラインに立ったかなというところ。これからどんどん受注が入って出荷して納品されることを考えると、まだまだ緊張感はありますね。

比護:先行して、ある企業にenKAKを納品し、施工立ち合いさせて頂きました。
実際納まった形を見ると、先述したFOUNDERとenKAKが上手く共存していて、すごくいい感じになっていました。今後、FOUNDERとenKAKが融合した、色んな納入パターンを見られることを期待しています。

栗田:そこでもenKAKのコンセプト通り、円と角の効果が出やすいレイアウトで、enKAKが正しく使われていると思います。FOUNDERの家具とenKAKの割合も絶妙で、これから使用していく上でどんな相乗効果が生まれるのか、とても楽しみです。

開発者としてenKAKの注目してほしいところは?

栗田:全体としてブラントコンセプトの「円(エン)」と「角(カク)」という、相反するものでありながら、割とランダムに配置しても空間に違和感なく落とし込むことができるという点です。
コレクション全体としてレギュレーションやカラー、マテリアルに統一感を持たせたことで、相反するものを隣に組み合わせても逆にマッチします。そこから生まれる少しの不便さや違和感までもenKAKのコンセプトでもあります。enKAKが新しいアイデアやひらめきが生まれる場所になってくれたら嬉しいです。

比護:enKAK全般に言えることですが、デザインがシンプルで簡単に作れそうに見えますが、実はめちゃくちゃ難しいところです(笑)
例えば、ソファもすごくシンプルに見えますが、ステッチが蛇行したり、シワがよりやすかったりなど苦労しました。実はすごく大変だったと皆に伝えたいです(笑)

最後に一言お願いします。

比護:nendoさんと一緒にブランド作りをできたのはとても貴重な体験でした。商品開発は普段自分の担当する商品にフォーカスしがちですが、nendoさんの視点はずっと俯瞰的で、ブランドをどう作るかという目線でモノづくりをされていました。
今後そういった視点を常に意識しながら商品開発を続けたいと思います。

栗田:アイリスチトセに入社して、1からのブランドの立ち上げというのは初めての経験でした。
プロジェクトに関わる人の多さはもちろん、enKAKの立ち上げの為に、開発以外にも様々な分野で、社内外問わず様々な人を巻き込んで進められたことはとてもいい経験になりましたし、この経験を今後の商品開発にも活かしていきたいと思います。

商品開発担当者ならではの目線から、今回のプロジェクトを振り返っていただきました。
改めてenKAKコレクションの発売は、開発者に限らず、当社全てを巻き込んだプロジェクトであることを感じましたし、enKAKを皆で大切に育てていくことで、新たなアイデアや視野が生まれる、そんな予感を感じさせられる時間でした。

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