出社したくなるオフィスの特徴とつくり方|ポイントや事例を交えて解説
オフィスレイアウト・デザイン・設計

近年、テレワークの普及に伴い、企業はコミュニケーション不足を解消し、自然なチームワークを促進するために、従業員が自発的に出社したくなるオフィスづくりに取り組んでいます。
本記事では、その特徴やメリット、具体的なアイディアを紹介します。出社したくなるオフィスづくりのポイントや成功事例も参考にしてみてください。
目次
出社したくなるオフィスづくりの重要性

出社したくなるオフィスづくりを推進することで、出社する従業員が増え、コミュニケーションの機会が増加する、チーム意識や新しいアイディアが生まれるなど、さまざまなメリットがもたらされます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
チームとしての意識が生まれやすい
基本的に、リモートワークでは一人で作業をするため、従業員同士のコミュニケーションが不足しがちです。チャットでの必要事項のみの連絡や短い雑談だけでは、チームとしての連帯感を構築するのに時間がかかるという課題に悩む企業も少なくありません。
一方、出社して従業員同士が直接会ってコミュニケーションをとれるようになると、業務内容の報告・連絡・相談がしやすくなるだけではなく、雑談によって相互理解が深まります。従業員同士の信頼関係が構築されれば、チームとしての信頼感や一体感も生まれやすくなります。
エンゲージメントが上がる
企業理念や「企業らしさ」が表現されているオフィス空間に身を置くことで、そこで働くことそのものの価値の再認識につながります。企業理念を深く理解し、快適なオフィス環境で働くことに誇りを感じることができれば、従業員の帰属意識は高まり、生産性の向上や離職率の低下も期待できるでしょう。
一般社団法人 日本オフィス家具協会の2017年のアンケートによると、労働者の71.4%が「オフィス環境の良し悪しは、仕事に対するモチベーションに影響する」と回答しています。
今の時代を反映したリアルなオフィスの価値については、こちらのインタビュー記事もぜひ参考にしてください。
【インタビュー】株式会社ファイアープレイス「つながりをデザインする会社が考えるこれからの働き方とは?」
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新しいアイデアが生まれやすくなる
出社することで従業員同士のコミュニケーションが増え、意見交換が活性化されます。何気ない雑談が刺激となり、新しいアイデアが生まれることもあるでしょう。
また、チャットやメールのような文面だけでは伝わらないニュアンスも対面の会話で表現し合えるため、会話の中でアイデアやイノベーションが創出される可能性が高まります。
技術や知識を伝達しやすい
直接対面で話すことができれば、困りごとや認識の違いに気づいた際に、相手にすぐに伝えられます。メールやチャットの文章で伝えるよりも、技術や知識を細かく丁寧に伝えられるため、問題解決までの時間短縮が可能です。
お互いの表情や反応を直接確認しながら教えられれば、教える側にとっても教えられる側にとってもスムーズに技術や知識の伝達ができます。
業務効率(生産性)の向上が期待できる
テレワークでは、快適に仕事をするための設備や環境が整っていない場合があり、従業員の生産性が低下することがあります。その点、オフィスにはデスクやオフィス機器などの設備が整っており、快適に仕事ができる環境が提供されます。設備が整ったオフィスで作業することで、従業員の業務効率が向上し、生産性の向上が期待できるでしょう。
出社したくなるオフィスの特徴

働きやすさや生産性などの観点から、出社とテレワーク、どちらのワークスタイルも「選べる」というスタンスの企業も増えています。どちらを選んでもよい中で、「出社したい」と従業員が思うオフィスはどのようなオフィスなのか、特徴を詳しく解説します。
働く場(ワークスペース)の選択肢がある
出社したくなるオフィスには、執務席以外にも、働く内容や目的に合わせて自由に選択できるワークスペースがあります。たとえば、一人で集中して仕事ができる場所、快適にオンライン会議ができる場所、交流やアイデア出しに適した場所など。
柔軟な働き方ができるオフィス環境を整え、オフィスの満足度を高めることは、従業員の生産性や出社意欲を引き出す要素につながります。
雑談やコミュニケーションがしやすい場所がある
出社したくなる理由の一つに、従業員同士が直接顔を合わせられることが挙げられます。オフィス内にミーティングにも利用できる飲食・カフェスペースがあれば、コミュニケーションの機会を設けやすくなるでしょう。
従業員同士の会話や意見交換が活性化すれば、チームや部署を超えたコミュニケーションも生まれ、協力し合える体制が構築される可能性もあります。
リフレッシュできる場所がある
リフレッシュできる場所や、リラックスしながら休憩できる場所がオフィス内にあれば、より快適に働きやすくなります。作業の合間にリフレッシュスペースで休憩できると、集中力のアップにつながり、生産性の向上につながるという好循環も生まれます。
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出社したくなるオフィスづくりのポイント

従業員が自発的に出社したくなるオフィスにするには、従業員のニーズの把握や柔軟な働き方への対応が必要です。出社したくなるオフィスづくりのポイントを見ていきましょう。
従業員のニーズを把握する
従業員にアンケートやヒアリングを実施し、ニーズを把握しましょう。結果をもとに、どのようなオフィスなら出社したくなるのかを分析します。
出社したくなるオフィスの事例にはさまざまな取り組みがありますが、他社で成功している方法がそのまま自社で通用するとは限りません。自社に合ったオフィスづくりに取り組むことが重要です。まずは自社の従業員のニーズをしっかり把握し、分析することが必要です。
柔軟な働き方に対応する
近年、従業員がその日の気分や作業内容、スケジュールに合わせて、働く場所や時間を自由に選択できる「ABW(Activity Based Working)」という働き方が増えてきました。これにより、それぞれの従業員に合った環境を提供しやすくなり、生産性の向上が期待できます。
出社したくなるオフィスづくりに取り組む際は、こうした柔軟な働き方に対応することも大切です。集中して作業したい日はオフィスの個別ブースやデスク、話し合いや意見交換をしたいときはカフェスペースやボックス席、気分転換や雑談をしながら新しいアイデアを考えたいときはジムやライブラリー、リフレッシュスペースが利用できるといった柔軟な働き方に対応しているオフィスは理想的です。
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出社したくなるオフィスの仕掛け・アイデア4選

ここからは、出社したくなるオフィスづくりの具体的な仕掛けやアイデアを紹介します。自社に合う仕掛け・アイデアから取り入れてみてはいかがでしょうか。
1. 定期的にイベントを開催する
月1回など定期的に、学びやコミュニケーションの活性化につながるイベントを開催してみましょう。現在実施しているイベントも、従業員のニーズにより適した内容に改善することが重要です。
たとえば、オフィス飲み会をランチ会に変更する工夫が挙げられます。ランチ会にすることで、さまざまな時間帯の出社や働き方をする従業員たちが、気軽に参加しやすくなるでしょう。
2. 多様な業務スペースを設置する
ボックス席や個人の作業ブース、和風の作業スペースなど、従業員が各自で生産性を高められるやり方を選べるよう、多様な業務スペースを設置しましょう。
オフィスが入居するビルによっては、入居している企業やテナントが自由に使えるビルの従業員向け食堂が用意されている場合もあります。企業にとっては自社で社員食堂を用意する負担を軽減でき、従業員にとっては少ない移動で社内の人とリラックスしてコミュニケーションがとれる場になります。
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3. 食や健康に関するサービスを提供する
社員食堂で無料のモーニングサービスを提供したり、メニューに健康的な食材を使用したりするなど、従業員の食や健康への配慮も出社意欲につながります。
従業員の健康やウェルビーイングに配慮したオフィス環境については、こちらのインタビューも参考にしてみてください。
【インタビュー】アイリスチトセ株式会社「WELL認証取得がもたらす社内への好影響とは」
また、テレワークで問題となる運動不足を解決するために、ジムの設置もアイデアの一つです。作業の合間の気分転換や、運動によるリフレッシュで生産性の向上を目指すとともに、従業員の健康面への配慮にもつながります。
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4. リフレッシュスペースを設置する
リフレッシュスペースにライブラリーやカフェスペースを設置すれば、よりリラックスできる空間が整います。会社の文化として関わり合いを大切にしているのであれば、雑談がしやすく、コミュニケーションをとりやすいリフレッシュスペースを用意する工夫も取り入れましょう。
出社したくなるオフィスづくりの成功事例
最後に、出社したくなるオフィスづくりに成功した企業の事例を紹介します。従業員のニーズに合った設備やレイアウトを参考にしてみてください。
働き方の変化に対応したオフィスへ「株式会社ポプラ社」

児童書専門の出版社である「株式会社ポプラ社」は、新型コロナウイルスの流行拡大をきっかけにリモートワークを導入しました。それまでは出社率100%でしたが、在宅勤務が増えることでコミュニケーション不足が顕著化。その後始動した移転プロジェクトを契機に、オフィスレイアウトを変更し、コミュニケーションが活性化されるオフィスづくりを目指しました。
出社が必要な従業員が働きやすいよう、一人で集中して作業ができるブースや、少人数でWebミーティングができるブースを設置したほか、身長差があっても使いやすい上下可動式の作業台を用意し、より効率的に作業できる環境を整えました。使いやすさや働きやすさにこだわることで、出社したくなるオフィスを実現しています。
株式会社ポプラ社のインタビュー記事はこちら
【インタビュー】株式会社ポプラ社「オフィス移転プロジェクト ~コミュニケーションを活性化させる空間づくり~」
ゆとりのあるサードプレイスオフィス「セキュリティスタッフ株式会社」

交通誘導や施設警備などの警備事業を行っている「セキュリティスタッフ株式会社」は、オフィス移転をきっかけに、ゆとりのあるオフィス設計に変更しました。「サードプレイスオフィス」をコンセプトに、心地よく仕事ができるスペースを整えています。また、オフィス内には従業員が利用できるジムもあり、健康維持とメンタルケアを兼ねたリフレッシュが可能です。
セキュリティスタッフ株式会社のインタビュー記事はこちら
【インタビュー】セキュリティスタッフ株式会社「先を見据えたオフィスデザインとDXの推進」
出社したくなるオープンなオフィスへ「アイリスグループ目黒オフィス」

アイリスチトセ株式会社が所在するアイリスグループ目黒オフィスのコンセプトの一つは「社員が来たくなるようなオフィス」です。パーテーションを使用せず、癒し効果のある観葉植物を多く配置することで、リラックスしやすいオープンな空間を意識しています。
また、気軽に利用できるフリースペースや、軽食やドリンク、ビールサーバーが用意されたラウンジなど、コミュニケーションが生まれやすい環境づくりにも力を入れています。さらに、一人で集中して作業できる個室ブースも多く設置し、多様な働き方やニーズに配慮したオフィスをつくり上げました。
従業員ニーズに応える魅力的なオフィスづくりへ

出社率が上がると、従業員同士が直接顔を合わせてコミュニケーションをとる機会が増えるため、チームとしての意識が高まったり、新しいアイデアが生まれたり、エンゲージメントが向上したりと、さまざまなメリットがもたらされます。従業員のニーズや企業に求めることを調査・分析した上で、自発的に出社したくなるオフィスづくりを進めましょう。