出社したくなるオフィスとは?特長やオフィスづくりの注意点、事例を紹介
オフィスレイアウト・デザイン・設計

働き方の多様化に伴い、オフィスには「単に出社する場所」ではなく、「従業員が自ら出社したくなる場所」としての役割が求められています。出社したくなるオフィスに整えることで、従業員のモチベーションやエンゲージメント、生産性の向上が期待できます。本記事では、こうしたオフィスの特長やメリット、再構築時のポイント、成功事例などをわかりやすく紹介します。
目次
出社したくなるオフィスづくりのメリット

出社したくなるオフィスづくりを推進することで、出社する従業員が増え、コミュニケーションの機会が増加する、チーム意識や新しいアイデアが生まれるなど、さまざまなメリットがもたらされます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1. チームに一体感が生まれやすい
テレワークやリモートワークといった働き方の場合、一人で作業をするため、従業員同士のコミュニケーションが不足しがちです。チャットでおこなう必要事項のみの連絡や短い雑談だけでは、チームとしての連帯感を構築するのに時間がかかるという課題に悩む企業も少なくありません。
一方、出社することによって従業員同士が直接会ってコミュニケーションをとれるようになると、業務内容の報告・連絡・相談がしやすくなるだけではなく、雑談を通じて相互理解が深まります。従業員同士の信頼関係が構築されれば、チームとしての一体感も生まれやすくなります。
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2. エンゲージメントが向上する
オフィス出社は従業員のエンゲージメント向上につながります。テレワークやリモートワークはコミュニケーションの質と量が劣りがちですが、出社すれば対面での意思疎通ができるため、従業員同士の信頼関係が深まりやすくなります。
また、企業理念や「企業らしさ」が表現されているオフィス空間に身を置くことで、そこで働く価値を再認識できます。企業理念を深く理解し、快適なオフィス環境で働くことに誇りを感じられれば、従業員の帰属意識もたかまるでしょう。
さらに従業員のエンゲージメント向上は、生産性の向上だけではなく離職率の低下にも寄与します。
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3. 新しいアイデアが生まれやすくなる
新しいアイデアの創出には、従業員同士のコミュニケーションが欠かせません。オンラインツールを使ったテレワークでは、廊下での立ち話や休憩中の雑談のようなインフォーマルコミュニケーションが生まれにくいという難点があります。一方、オフィスでは、リフレッシュスペースや廊下などで異なる部署の従業員と接触する機会が頻繁です。
また、対面での会話ではチャットやメールのような文面だけでは伝わらないニュアンスも表現し合えるため、会話のなかで新しいアイデアやイノベーションが創出されやすくなります。
4. 技術や知識を伝達しやすくなる
技術や知識の伝達において、テレワークではメールやチャット、Web会議ツールなどを用いてコミュニケーションをとるため、画面越しだと相手の表情や反応がわかりづらい場合があります。
オフィスに出社すれば対面で教えられるので、相手の理解度を把握しやすく、技術や知識をスムーズに伝達できます。
5. 業務効率・生産性の向上が期待できる
オフィスにはデスクやオフィス機器などの設備があり、仕事に集中しやすい環境が整っています。基本的な設備に加えて、相談や情報を共有したいときに使えるコミュニケーションスペースや、一人で仕事に集中したいときに使える個室ブースなど、シーンに合わせて使えるスペースがあると、従業員の業務効率がアップし、生産性の向上が期待できます。
出社したくなるオフィスの特長

働きやすさや生産性などの観点から、出社とテレワークやリモートワーク、どちらのワークスタイルも「選べる」というスタンスの企業も増えています。どちらを選んでもよいなかで、「出社したい」と従業員が思うオフィスはどのようなオフィスなのか、特長を詳しく解説します。
1. 働き方に合わせて選べるワークスペースがある
出社したくなるオフィスには、執務席以外にも、働く内容や目的に合わせて自由に選択できるワークスペースがあります。たとえば、一人で集中して仕事ができる場所、快適にオンライン会議ができる場所、交流やアイデア出しに適した場所などが挙げられます。
柔軟な働き方ができるオフィス環境を整え、オフィスの満足度を高めることは、従業員の生産性や出社意欲を引き出す要素につながります。
2. コミュニケーションをとりやすい場所がある
出社したくなる理由の一つに、従業員同士が直接顔を合わせられることが挙げられます。オフィス内に、ミーティングにも利用できる飲食・カフェスペースがあれば、コミュニケーションの機会を設けやすくなるでしょう。
従業員同士の会話や意見交換が活性化すれば、チームや部署を超えたコミュニケーションが生まれ、協力し合える体制が構築される可能性もあります。
3. リフレッシュできる場所がある
リフレッシュできる場所や、リラックスしながら休憩できる場所がオフィス内にあれば、より快適に働きやすくなります。作業の合間にリフレッシュスペースで休憩できると、集中力のアップにつながり、生産性の向上に寄与するという好循環も生まれます。
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4. 業務に集中できる場所がある
仕事に集中できるワークスペースや環境も、出社したくなるオフィスには必要です。個室ブースやボックス席などがあれば、周囲の視線や雑音を気にせず、落ち着いた環境で業務に取り組めるでしょう。
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5. アイデアを創出しやすい空間がある
従業員が「出社したい」と思えるオフィスには、自由に意見交換をしながらアイデアを出し合えるスペースも欠かせません。アイデアを可視化できるデジタルツールや、人数・スタイルに合わせて自由にレイアウトできる家具を配置したミーティングスペースの導入など、アイデアを生み出しやすい空間や共有できる環境を整えましょう。
6. オフィスならではの利便性がある
従業員に「オフィスだったらできる」と思わせることも、出社したくなるオフィスづくりに必要です。具体的には、次のような取り組みが有効です。
- 専門的な業務に合わせた作業スペースの確保
- 社内託児所の設置
- ラウンジスペースの設置
- 気軽に使える多目的スペースの設置 など
自宅にない利便性があり、オフィスで働くメリットを感じると、従業員の出社率は自然に向上するでしょう。
出社したくなるオフィスづくりの注意点

従業員が自発的に出社したくなるオフィスづくりには、目的の明確化と従業員のニーズの把握が欠かせません。出社したくなるオフィスづくりの注意点を見ていきましょう。
オフィス再構築の目的を明確にする
出社したくなるオフィスづくりに着手する際は、まず「何のためにオフィスを再構築するのか」という目的の設定からはじめることが大切です。目的があいまいなまま進めると、オフィスを再構築しても出社率が上がらないおそれがあります。
目的を明確にするため、「従業員がどのような働き方を理想としているのか」「それにはどのようなオフィスが必要なのか」を整理しましょう。
従業員の意見を参考にする
出社したくなるオフィスをつくるには、従業員の意見を取り入れることも大切です。「どんなオフィスだったら出社したいと思えるか」「不便に感じていることはないか」といった内容でアンケートやヒアリングを実施し、従業員のニーズを把握します。
結果をもとに、どのようなオフィスなら出社したくなるのかを分析しましょう。
出社したくなるオフィスの仕掛け・アイデア4選

ここからは、出社したくなるオフィスづくりの具体的な仕掛けやアイデアを紹介します。自社に合うものから取り入れてみてはいかがでしょうか。
1. 定期的にイベントを開催する
月1回など定期的に、学びやコミュニケーションの活性化につながるイベントを開催してみましょう。現在実施しているイベントも、従業員のニーズにより適した内容に改善することが重要です。
たとえば、オフィス飲み会をランチ会に変更する工夫が挙げられます。ランチ会にすることで、さまざまな時間帯の出社や働き方をする従業員が参加しやすくなるでしょう。
2. 多様な業務スペースを設置する
ボックス席や個人の作業ブース、和風の作業スペースなど、従業員が各自で生産性を高められるやり方を選べるよう、多様な業務スペースを設置しましょう。
また、オフィスが入居するビルによっては、入居している企業やテナントが自由に使えるビルの従業員向け食堂が用意されている場合もあります。企業にとっては自社で社員食堂を用意する負担を軽減でき、従業員にとっては少ない移動で社内の人とリラックスしてコミュニケーションがとれる場になります。
3. 食や健康に関するサービスを提供する
社員食堂でおこなうモーニングサービスの無料提供や、健康的な食材を使用したメニューの採用など、従業員の食や健康への配慮も出社意欲につながります。
また、テレワークやリモートワークで問題となる運動不足を解決するために、ジムを設置するのもアイデアの一つです。作業の合間の気分転換や、運動によるリフレッシュで生産性の向上を目指すとともに、従業員の健康面への配慮にもつながります。
従業員の健康やウェルビーイングに配慮したオフィス環境については、次の記事も参考にしてみてください。
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4. リフレッシュスペースを設置する
会社の文化として関わり合いを大切にしているのであれば、雑談がしやすく、コミュニケーションをとりやすいリフレッシュスペースを用意する工夫も取り入れましょう。リフレッシュスペースにライブラリーやカフェスペースを設置することで、よりリラックスできる空間が整います。
出社したくなるオフィスづくりの成功事例
最後に、出社したくなるオフィスづくりに成功した企業の事例を紹介します。従業員のニーズに合った設備やレイアウトを参考にしてみてください。
働き方の変化に対応したオフィスへ「株式会社ポプラ社」

児童書専門の出版社である「株式会社ポプラ社」は、新型コロナウイルスの流行拡大をきっかけにリモートワークを導入しました。それまでは出社率100%でしたが、在宅勤務が増えることでコミュニケーション不足が顕著化。その後始動した移転プロジェクトを契機に、オフィスレイアウトを変更し、コミュニケーションが活性化されるオフィスづくりを目指しました。
出社が必要な従業員が働きやすいよう、一人で集中して作業ができるブースや、少人数でWebミーティングができるブースを設置したほか、身長差があっても使いやすい上下可動式の作業台を用意し、より効率的に作業できる環境を整えました。使いやすさや働きやすさにこだわることで、出社したくなるオフィスを実現しています。
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ゆとりのあるサードプレイスオフィス「セキュリティスタッフ株式会社」

交通誘導や施設警備などの警備事業を行っている「セキュリティスタッフ株式会社」は、オフィス移転をきっかけに、ゆとりのあるオフィス設計に変更しました。「サードプレイスオフィス」をコンセプトに、心地よく仕事ができるスペースを整えています。また、オフィス内には従業員が利用できるジムもあり、健康維持とメンタルケアを兼ねたリフレッシュが可能です。
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出社したくなるオープンなオフィスへ「アイリスグループ目黒オフィス」

アイリスチトセ株式会社が所在するアイリスグループ目黒オフィスのコンセプトの一つは「社員が来たくなるようなオフィス」です。パーテーションを使用せず、癒し効果のある観葉植物を多く配置することで、リラックスしやすいオープンな空間を意識しています。
また、気軽に利用できるフリースペースや、軽食やドリンク、ビールサーバーが用意されたラウンジなど、コミュニケーションが生まれやすい環境づくりにも力を入れています。さらに、一人で集中して作業できる個室ブースも多く設置し、多様な働き方やニーズに配慮したオフィスをつくり上げました。
従業員のニーズを満たす「出社したくなるオフィス」づくりを

出社率が上がると、従業員同士が直接顔を合わせる機会が増え、チーム意識の向上や新しいアイデアの創出、エンゲージメントの向上など、多くのメリットが得られます。オフィス再構築の目的を定めた上で従業員のニーズをしっかり調査・分析し、自発的に出社したくなるオフィスづくりを進めましょう。