カーボンオフセットの企業の取り組み事例|実行するメリットを解説

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カーボンオフセットの企業の取り組み事例|実行するメリットを解説

温室効果ガスの排出対策として、カーボンオフセットを検討する企業が増えてきました。

本記事では、カーボンオフセットの詳細と、具体的な取り組み方法について説明しています。

事例や注意点も解説していますので、導入を検討されている企業担当者の方は、ぜひご一読いただき参考にしてください。

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カーボンオフセットとは

カーボンオフセットとは、排出した温室効果ガスを、削減や吸収に寄与する何らかの方法で相殺する取り組みを指します。

経済活動における温室効果ガスの排出量を自社の取り組みだけでゼロにすることは難しいと言えます。そのため、どうしても排出してしまう分に見合った温室効果ガスの削減活動をすることで、排出量を埋め合わせるという考え方です。

カーボンオフセットでは、カーボンクレジットを購入して温室効果ガス排出量を相殺することで、埋め合わせを実施します。カーボンクレジットとは、温室効果ガスの排出削減・吸収を定量化して取引できるよう、国から認証されたものです。カーボンクレジットの購入で、誰でもカーボンオフセットの取り組みが可能となります。

日本国内では、2015年より環境省が「カーボン・オフセット宣言」を開始しました。カーボン・オフセット宣言」は、カーボン・オフセットの取り組みにかかわる情報提供をすることを支援する仕組みです。環境省の公式サイトには各団体の取り組みが掲載されており、カーボンオフセットの具体的な取り組みが見られます。

 

■カーボンニュートラルとの違い

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と除去・吸収量をプラスマイナスでゼロにしようとする取り組みです。

温室効果ガスの排出をゼロにするのは現実的に不可能なため、排出量と同じ量を吸収・除去することで、差し引きでゼロにするというのがカーボンニュートラルの考え方です。

パリ協定において宣言された「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5度までにおさえる」を達成するには、2050年までにカーボンニュートラルが不可欠という報告がなされています。それを受けて120以上の国と地域が取り組みを進めており、日本政府も2020年に「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」と宣言しました。

カーボンオフセットは、経済活動における温室効果ガスの排出に対して、削除・吸収活動の実施や活動に投資して、排出量の全部または一部を埋め合わせる活動を指します。その活動内容から、カーボンオフセットは組織内におけるカーボンニュートラルを実現する手段の一つ、といった位置付けとなります。

カーボンオフセットが企業にとって重要な理由

2023年1月現在、企業がカーボンニュートラルに取り組まなければならない法的な義務はありません。しかし、経済活動の高まりとともに温室効果ガスの排出が増え、世界的にも排出削減・吸収へ社会全体での取り組みが求められています。

日本国内でも同様で、企業や団体に対して温室効果ガスの削減活動の強化が期待されています。

企業がカーボンニュートラルを実際に目指そうとする場合、再生可能エネルギーの導入や省エネ対策など、どれだけ工夫したとしても炭素排出を物理的に完全にゼロにするのは現実的と言えません。

そこで、カーボンオフセットを利用して排出量を埋めるだけの対策を取れば、実質的にカーボンニュートラルを実現できます。

企業がカーボンオフセットに取り組むメリット

企業がカーボンオフセットに取り組むメリットとして、2つの要因があげられます。

一つ目は環境への取り組みを周知しやすいことがあげられます。カーボンオフセットは、クレジットの購入からスタート可能です。クレジットの購入によって、環境問題へ取り組む企業として周囲に認知されます。

また、ブランディングの向上の面も、取り組むメリットの一つです。クレジットのついた製品の販売や、脱炭素推進企業として周囲へのPR活動により、企業イメージの向上につながります。

カーボンオフセットを取り入れることはESG投資においてもプラスに働くため、経営存続へ寄与できるでしょう。

カーボンオフセットの取り組みのパターン

カーボンオフセットに取り組む方法として考えられるのは、おもに次のパターンがあります。

  • クレジットの購入で排出量分をオフセット
  • クレジット付きの商品・サービスを販売
  • 寄付を募ってカーボンオフセット

それぞれについて、詳しく説明します。

 

■クレジットの購入で排出量分をオフセット

クレジットの購入で、温室効果ガスの排出量分をオフセットする方法があります。日本国内でのクレジットの売買には、Jクレジット制度を利用します。

Jクレジット制度とは、企業や自治体などの取り組みで排出削減・吸収された温室効果ガスを「クレジット」として認証し、売却できるようにした制度です。

自社製品の生産や運送、会議・コンサート・スポーツイベントなど、あらゆる事業活動で発生する温室効果ガスを、クレジットの購入でオフセットします。

自社で発生した温室効果ガスを、他社が削減・吸収したもので埋め合わせる、カーボンオフセットの基本とも言える方法です。

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Jクレジット制度をわかりやすく解説!始めるメリットや注意点とは

 

■クレジット付きの商品・サービスを販売

自社の製品やサービスの販売時に、クレジットを付与して販売する方法も認められています。

企業が購入したクレジットを、一般消費者へ販売する商品につけることで、企業を通して消費者がカーボンオフセットを実施できます。企業活動としては温室効果ガス削減とはなりませんが、一般消費者のカーボンオフセットの手助けをすることで、企業イメージの向上につながる可能性が考えられるでしょう。

 

■寄付を募ってカーボンオフセット

イベントやキャンペーンなどを実施し、企業が一般消費者や取引先から資金提供を募り、その資金でクレジットを購入する方法もあります。

寄付を集めた企業がクレジットを購入しますが、排出した温室効果ガスの補填はしません。企業のカーボンオフセットに使われず、資金のみクレジットの創出者へ渡る形となるため、この形式は寄付型と呼ばれます。

企業のカーボンオフセットの具体的な取り組み事例

カーボンオフセットに取り組む企業の具体的な活動内容について、いくつか事例をご紹介します。

 

■森林保全活動

運送業や配送業では、業務で車両を使うことが必須となるため、温室効果ガスの排出は避けられません。

脱炭素に向けた取り組みとして「EV・天然ガスを利用したトラックの利用」「台車や自転車に置き換えた配達」「電車やタクシーなどに貨客混載する」などの取り組みで排出をおさえる取り組みをしています。

それでも削減困難な部分では、森林保全活動によって創出されたクレジットでオフセットに取り組んでいます。企業と自治体が協力して森林保全活動に取り組み、地域住民へ向けた自然体験・社会体験の提供を通じて、環境教育にも役立てることが可能となりました。

また、運送業に限らず、国内外の森林保全活動をクレジット化する事例も見られます。

 

■環境に配慮した商品の販売

製造業においても、製品の原料調達から製造・販売・廃棄・リサイクルに至るまで、温室効果ガスの排出が考えられます。

そのような中、すべてのサイクルで発生する温室効果ガスの排出量をカーボンオフセットで埋め合わせし、排出量を実質ゼロとした環境配慮型の商品を製造する企業の事例があります。

カーボンオフセットを実現した製品の提案によって、製品を利用する企業も環境保全に貢献できるメリットがあるため、販売力の強化といった面でも効果がある事例と言えるでしょう。

 

■自社ポイントでクレジットへ交換

販売・サービス業では、顧客へ環境保全の意識を促すことで、間接的なカーボンオフセットを実現している企業もあります。

一例では、自店で利用できるカードのポイントをカーボンクレジットと交換することで、顧客の環境への意識と顧客満足度を高められる取り組みをする企業も見られます。

製品を購入して貯められたポイントを利用することで、顧客の金銭的な負担が少なく、地球温暖化防止に貢献しているという満足感を与えることが可能です。

 

■改修工事で発生したCO2をオフセット

オフィスの改修工事にかかる温室効果ガスの排出量を、カーボンオフセットで削減する事例もあります。

改修工事を依頼する際に、カーボンオフセットを実施する業者であれば、環境保全を考慮した工事が可能です。具体的には「現場事務所の節電」「低排出ガスの重機・機器の使用」などがあげられ、排出量の埋め合わせでクレジットを利用する形となります。また、リフォーム工事のパッケージを、寄付型のカーボンオフセットとする企業もあります。

直接的なカーボンオフセットにはなりませんが、環境問題を考慮した工事で作られたオフィスという企業イメージの向上につなげられるでしょう。

 

■カーボンオフセットに適したオフィス家具を導入

カーボンオフセットを利用したオフィス家具の導入でも、環境保全への貢献が可能です。

カーボンオフセットが100%達成されたオフィス家具を選ぶことで、原材料から廃棄・リサイクルに至るまでの環境貢献ができます。また、クレジットの付与されたオフィス家具の購入で、カーボンクレジットとして取り扱える上、温室効果ガスの削減へ寄与できます。

オフィスにおけるカーボンオフセットは、クレジットの購入に頼る部分が否めません。しかし、こういった家具を導入することで、カーボンオフセットの実現への足がかりとすることが可能です。

カーボンオフセットのクレジット売買方法

カーボンオフセットに利用できるクレジットの売買方法は、次のとおりです。

 

■クレジットを購入する方法

クレジットを購入するには、3種類の方法があります。それぞれの概要は、次の表のとおりです。

【仲介】

クレジットの仲介事業者を通じてクレジットを購入する方法です。購入価格は仲介事業者との相対取引で決定します。仲介業者には、活用ニーズに合致するクレジットの調達、カーボンオフセットに関するコンサルティングの依頼が可能です。

【入札

Jクレジット制度事務局が実施する入札に参加して購入する方法です。入札時期は年に1~2回程度で、入札参加にはJクレジット管理用口座取得が必須となります。入札価格が落札価格を下回った場合、購入できないリスクがあります。

【売り出しクレジットの一覧から選択】

「売り出しクレジット一覧」に掲載されているクレジットを、保有者から購入する方法です。購入価格はクレジット保有者との相対取引で決定します。売却希望のクレジットの量や具体的な特徴を、一覧から閲覧できます。

 

クレジット購入の際の注意点

クレジットを購入する際は、その活用範囲を事前に把握しておきましょう。クレジットには幾つか種類があり、購入するクレジットの種類によって活用範囲が異なります。自社に活用できないものを購入することのないように、事前の確認は重要です。

それぞれの活用先については、次の表をご確認ください。

なお、カーボンオフセットでの活用に関しては、2023年1月現在はいずれのクレジットも使用できます。もしその他の活用方法を検討する場合、購入するクレジットの種類によってはカーボンオフセットのものが流用できない可能性があります。それぞれの詳細については、環境省のサイトをご確認ください。

※画像引用:J-クレジットの活用方法

 

■クレジットを売却する方法

企業で創出した温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして売却したい場合も、3種類の方法となります。

【仲介】クレジットの仲介事業者を通じてクレジットを売却します。売却価格や売却方法は、仲介事業者との相対取引で決定されます。

【入札】

Jクレジット制度事務局が実施する入札販売で売却します。入札時期は年に1~2回程度で、落札価格が売却価格となり、価格は指定できません。入札による売却は「売り出しクレジット一覧」掲載後、6ヶ月以上経過したものが対象です。対象のクレジットはJクレジット事務局の口座に預ける必要があります。

【売り出しクレジットの一覧から選択】

創出した、あるいは創出予定のクレジット情報を「売り出しクレジット一覧」に掲載して購入者を募る方法です。売却価格はクレジット購入者との相対取引で決定します。売却希望のクレジットの量や具体的な特徴を、一覧に掲載できます。

クレジットの売却を考えている場合は、Jクレジット制度へ参加して事業計画を登録・実施し、クレジットの認証を受ける必要があります。

企業がカーボンオフセットに取り組む際の注意点

カーボンオフセットに取り組む際には、次の点に注意する必要があります。

  • カーボンオフセットは自社の努力が前提
  • わからないことは各機関に相談

それぞれの詳細を次に説明します。

 

■カーボンオフセットは自社の努力が前提

カーボンクレジットは、自社の努力ではどうしても足りない部分を埋める形での利用が前提です。

温室効果ガスの排出量をおさえる努力をしないで、クレジットによるカーボンオフセットのみ実施すると、単なるマーケティングの手段となってしまう懸念があります。クレジットさえ購入すればカーボンオフセットを実現できるとなると、見かけ上は排出量をおさえられるため、本来の目的を見失ってしまう企業が出てくる可能性も否めません。

自社で排出量の削減努力をして環境を守るのが、カーボンオフセットおよびカーボンニュートラルにおける本来の目的です。その前提を忘れることなく、カーボンオフセットに取り組むことが重要となるでしょう。

 

■わからないことは各機関に相談

カーボンオフセットを最初からすべて自社で情報収集すると、時間がかかりなかなか実行までたどり着けません。

わからないことが出てきた場合は、関係機関へ早めに相談して進めるのが得策です。

Jクレジット制度についてわからないことがあれば、Jクレジットのサイトに関係連絡先が記載されていますので、参考にすると良いでしょう。

※参考:お問い合わせ | J-クレジット制度

また、中小機構や環境共創イニシアチブにも相談窓口があります。いずれも相談だけなら無料ですので、まず連絡してみることをおすすめします。

※参考:中小機構:カーボン ニュートラル – オンライン相談窓口

※参考:環境共創イニシアチブ:省エネお助け隊とは

カーボンプライシングの懸念点

カーボンクレジットのように、炭素(二酸化炭素)の排出量に価格をつけ、排出量に応じて企業や家庭に金銭負担を課す仕組みが「カーボンプライシング」です。

カーボンプライシングには「炭素税」「国内排出量取引」「インターナルカーボンプライシング」「国内クレジット取引」などの種類があります。

カーボンプライシングには、次にあげるリスクも懸念されています。

  • 企業の経済負担が増える
  • 家庭の経済負担が増える
  • 企業の国際競争力に関する懸念

それぞれについて詳しく見ていきます。

 

■企業の経済負担が増える

カーボンプライシングによって、企業に直接的な経済負担が課されることとなります。日本でも、2023年度から二酸化炭素排出に応じてコスト負担を求める「カーボンプライシング」を段階的に導入するとの方針が打ち出されました。

企業への金銭負担の増加で資金繰りに影響が出てしまい、逆に環境分野への投資の原資を奪ってしまうのではないかといった懸念があります。炭素の排出量で資金負担を強いられることから、生産コストも増大し、製品価格が上昇して競争力の低下も考えられるでしょう。

排出量取引は需要と供給で価格が変動するため、コストの予測が立てにくく、予算組みが難しい面も考えられます。

 

■家庭の経済負担が増える

企業の経済負担が増えるのと並行して、課程での経済負担も増加します。

炭素税や排出量取引で企業の金銭負担が増えると、製品やサービスに価格転嫁される可能性が考えられます。

さらに、家庭において電気・ガスは生活必需品であり、価格が上がっても需要を減らしにくいものです。この部分にもすべて炭素税が課されることになると、家計に大きな負担を与えることは避けられません。

今後の動向を見つつ、再生可能エネルギーへの転換や、安い電気・ガスのプランを検討するなどの対策が求められます。

 

■企業の国際競争力に関する懸念

カーボンプライシングは全世界で導入されているわけではなく、導入されている国でも負担金額はまちまちです。

たとえば、国際的な競争が求められる製品を作る企業では、炭素税の負担が少ない国と比較して価格的に不利となる可能性が高くなるでしょう。

カーボンプライシングのない国へ企業が進出し、国内の製造業がさらに弱体化する懸念もあります。

まとめ:カーボンオフセットの利用で環境保全に貢献しよう

企業におけるカーボンニュートラルの実現は、カーボンオフセットの利用なしでは実現できないといっても過言ではないでしょう。積極的な取り組みで環境に貢献でき、企業のブランディングにも寄与することが可能です。

しかし、温室効果ガスの排出量を減らす努力はせず、クレジットの利用だけでカーボンオフセットを実施するのは、本来の目的を見誤ってしまう可能性があります。何のためにカーボンオフセットをしなければならないか、本来の目的に沿った運用が重要だと言えるでしょう。企業内のカーボンニュートラルの実現方法として、カーボンオフセットへの適切な取り組みを心がけましょう。

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