エンゲージメントとはなにか?意味や向上させる方法を徹底解説
働き方
企業におけるエンゲージメントとは、従業員の企業に対する愛着心や思い入れのことです。現在、多くの企業が優秀な人材を確保するため、従業員のエンゲージメントを高める取り組みをおこなっています。
本記事では、エンゲージメントの詳しい意味や目的、注目される理由を解説します。エンゲージメントを高めることで得られるメリットや実際の施策例、具体的な方法、取り組む際に利用できる支援なども紹介するので、参考にしてください。
目次
エンゲージメントが注目される理由
終身雇用が前提であったこれまでとは異なり、近年では転職が当たり前になっています。また、少子高齢化の影響から労働人口が減り、人材確保の難易度が上がっている現状もあります。
このような背景の中、働き方や働くモチベーションにも多様な価値観が生まれ、給与や出世よりも「仕事のやりがい」や「働く意味」を重視する人が増えてきました。
優秀な人材を長期的に確保することは多くの企業にとって重要な課題ですが、やりがいを求め、多様な価値観をもつ従業員たちを企業に定着させることが難しくなってきています。そこで注目されているのが、従業員のエンゲージメントを高める取り組みです。
エンゲージメントは、いわば企業と従業員の心理的なつながりで、従業員のエンゲージメントを高めれば、企業に対する愛着心や貢献意識を持って働いてくれるようになります。仕事へのやりがいにつながり、長く企業に定着してくれるようにもなるでしょう。
多様な価値観を持つ従業員が、一人ひとりやりがいを持って働けるようになるとともに、企業が優秀な人材を長期的に確保することにもつながるのがエンゲージメントなのです。
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エンゲージメントとは
エンゲージメントは「誓約」や「約束」という意味を持ち、ビジネスシーンの人事に関する領域では「従業員の会社に対する愛着や思い入れ」といった意味で使われます。
「従業員エンゲージメント」や「エンプロイー・エンゲージメント」とも呼ばれ、従業員一人ひとりが自社への愛着心や思い入れ、愛社精神を持って、企業とともに相互に成長していくイメージにも用いられる言葉です。
従業員のエンゲージメントを高める取り組みでは、従業員が企業への愛着心や思い入れを持つことを目指します。エンゲージメントが高まると企業理念への理解や共感を示し、ビジョンを実現するため、意欲的に貢献してくれるようになります。
■マーケティングにおけるエンゲージメント
マーケティングでのエンゲージメントは、「消費者が企業のサービスや商品に対して抱く愛着」を指し、「顧客エンゲージメント」とも呼ばれています。
消費者が企業に対して好意的な印象を持ち、その企業のサービスや商品を利用している場合、「顧客エンゲージメントが高い」と言えるでしょう。TwitterやFacebookのようなSNSでは、「いいね!」やコメントの数などが指標の一つになります。
エンゲージメントと従業員満足度の違い
エンゲージメントと似た言葉に「従業員満足度」があります。それぞれの言葉の定義は次のとおりです。
- エンゲージメント:企業への愛着心や思い入れを表す言葉
- 従業員満足度:企業の報酬や待遇、仕事環境などに満足しているかを表す指標
従業員満足度には、エンゲージメントのような会社に対する「愛着心」や「思い入れ」は含まれません。
エンゲージメントは従業員と企業の心理的なつながりを意味していますが、従業員満足度には心理的なつながりは含まれず、雇用条件に対して満足しているかという指標です。
また、エンゲージメントは、企業が優秀な人材にやりがいを持って長く働いてもらうことや、それによって生産性を上げることを目的としていますが、従業員満足度は企業の問題や課題を明らかにして分析し、改善を図るために調査する際に使われる指標です。
従業員のエンゲージメントを高めることで期待できる効果
従業員のエンゲージメントが向上すると得られるメリットは大きく分けて3つあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
■1 .チーム・組織の活性化
従業員のエンゲージメントが高いと、チームや組織が活性化して、前向きな風土が生まれます。自社に対して愛着心や思い入れがあると、熱意を持って仕事に取り組むため、積極的に問題の改善や新規の提案をしてもらえます。
企業の成長や目標の達成のために、積極的に協力し合う体制も生まれやすくなるでしょう。チームの結束力が強くなる、コミュニケーションが活性化されるなど、相乗効果によって問題解決力や業務効率が上がることも期待できます。
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■2 .生産性・業績の向上
エンゲージメントが高まると、従業員が積極的に仕事に取り組んでくれるようになるため、生産性が高まります。個人やチームの生産性が高まれば、企業全体の業績向上につながることもあります。
企業が目指しているビジョンやミッションを理解し、共感した従業員は自らやるべきことを見いだして自主的に行動できるようになります。モチベーションを持った従業員が長く働いてくれれば、仕事やサービスの品質もおのずと向上していくはずです。
■3 .人材の維持・確保
愛社精神があってモチベーションが高い状態だと、従業員は長く勤めたいと思い、離職率が下がります。
エンゲージメントが高まって離職率が下がると、人材の採用コストが削減できるだけでなく、企業への貢献意欲が高い優秀な人材が定着してくれるというメリットがあります。
優秀な人材が定着すれば、新しく入ってくる従業員にも質の高い教育を受けさせることが可能です。登用した人材をさらに育成することで、企業にとって長期的な好循環を生むでしょう。
エンゲージメントの測定方法と指標
従業員のエンゲージメントは、モノやお金のように目に見えにくいため、どのような方法で測定するかを把握しておくことも大切です。ここからは、エンゲージメントの代表的な測定方法と指標を紹介します。
■エンゲージメントの測定方法
エンゲージメントを測定する際には、アンケートを用いるのが一般的です。アンケートによる測定方法には、センサスサーベイとパルスサーベイの2種類があります。
センサスサーベイ
センサスサーベイは、年に1回程度のペースで実施する調査のことです。質問項目は、50~150個程度と多い傾向にあります。アンケートの実施頻度は低いため、パルスサーベイに比べると従業員の負担はそれほど大きくありません。
質問の項目数を多く設定すれば、より多角的な視点での調査が実施できます。その一方で、アンケートを集計する担当者の負担が増えやすく、分析に手間がかかりやすいといった側面もあります。
パルスサーベイ
パルスサーベイは、週に1回または月に1回などの短期間のペースで実施する調査のことです。質問項目は、5~15個程度です。センサスサーベイに比べてボリュームが小さいため、回答する従業員やアンケートを集計する担当者の負担はそれほどないでしょう。
質問の項目数が少ないため、従業員からの高い回答率が期待できます。その一方で質問の項目数に限りがあることから、エンゲージメントの状況を細部まで把握するのが難しい側面もあります。
■エンゲージメント調査の指標
従業員エンゲージメント調査の指標は、次の3つがあります。
- エンゲージメント総合指標
- ワークエンゲージメント指標
- エンゲージメントドライバー指標
それでは、各指標を詳しく解説します。
エンゲージメント総合指標
エンゲージメント総合指標は、従業員が企業をどのように評価しているかを把握するための指標です。具体的な項目は、次のとおりです。
- eNPS(employee Net Promoter Score)
- 総合満足度
- 継続勤務意向
eNPSとは、従業員が友人や知人に企業をどの程度勧めたいと考えているかを質問する項目です。アンケートでは0~10までの11段階での評価のほか、記述式による回答欄を設けているケースが多い傾向にあります。
総合満足度は、従業員が企業に対する総合的な評価を質問する項目です。継続勤務意向とは、従業員が自社で継続して働き続けたいかを質問する項目です。
ワークエンゲージメント指標
ワークエンゲージメント指標はやりがいや取り組み姿勢など、従業員が仕事に対してどのくらい熱心かを測定するための指標です。具体的な項目は、次のとおりです。
- 熱意
- 没頭
- 活力
上記3項目の評価が高い従業員は、仕事にやりがいを感じ、充実していると判断できます。ワークエンゲージメント指標には、上記3項目を測定する方法のほかに、バーンアウトを測定する方法もあります。
エンゲージメントドライバー指標
エンゲージメントドライバー指標は、従業員のエンゲージメントを高める要素を測定するための指標です。具体的な項目は、次のとおりです。
- 組織ドライバー
- 職務ドライバー
- 個人ドライバー
組織ドライバーは働きやすさや人間関係など、企業と従業員の関係を質問する項目です。組織ドライバーの評価が高いほど、従業員は今の職場環境への満足度が高いといえます。職務ドライバーは、従業員の仕事に対する満足度や難易度などを質問する項目です。個人ドライバーは、従業員の資質が仕事に及ぼす影響について質問する項目です。
エンゲージメントの実際の測定手順
自社で従業員のエンゲージメントを測定する際には、スムーズに調査を進めるために、手順を確認しておくことも大切です。ここからは、従業員エンゲージメントの基本的な測定手順を紹介します。
■STEP1:調査目的の明確化
まずは、従業員エンゲージメント調査を実施する目的を明確にしましょう。調査目的の例は定着率を向上させたい、組織力をアップしたいなどです。目的を明確にすることで、質問項目を設定しやすくなります。
目的を明確にした後は、調査の対象や方針を決めていきましょう。エンゲージメント調査は、すべての従業員を対象にするのが望ましいとされています。しかし、調査対象は目的によって変動します。たとえば早期離職を低減したい場合は、入社1年目から3年未満の従業員に対象を絞っても良いでしょう。
■STEP2:質問項目の設定
調査目的や対象を明確にした後は、具体的な質問項目を設定していきましょう。質問項目は、調査目的に合わせた内容にすることがポイントです。エンゲージメント調査の質問例は、次のとおりです。
- 仕事にやりがいを感じていますか?
- 企業の目標を理解していますか?
- 残業時間はどのくらいですか?
- 企業から適切に評価されていると感じていますか?
- 自分らしい働き方はできていますか? など
質問項目には、従業員の働きがいやモチベーション、企業への貢献度などを測定する項目を含めると良いでしょう。
■STEP3:調査の実施
質問項目を設定した後は、対象の従業員にアンケート調査を実施しましょう。調査方法は紙を使用したアンケート調査のほか、専用ページやメールを利用したオンライン調査もあります。
調査を実施する際には、対象の従業員に目的を伝えることも大切です。従業員に理解を得ておけば、回答率が上がり、より効果的な調査を実施できます。業務の関係で期日までに回答できない従業員がいることも考慮し、回答期限は長めに設定しておきましょう。
■STEP4:結果分析・課題の解決策の検討
調査の実施後は、アンケートを回収して分析をおこないましょう。調査結果をもとに、従業員のエンゲージメントの現状と課題を洗い出します。課題に対しては、適切な解決策を検討する必要があります。
たとえば、パソコンのスペックに不満を感じている従業員が多い場合は、新しいモデルへの買い替えを検討しましょう。適切な解決策を講じることで、エンゲージメントの向上が期待できます。
エンゲージメントを高める5つの施策例
実際にエンゲージメントを高めるためにはどうすれば良いのでしょうか。5つの施策例をご紹介します。
■1.企業理念やビジョンの浸透
従業員に向けた社内報や社内ポータルサイトなどで情報発信をして、企業の理念や目指すビジョンを浸透させる方法があります。
この際、従業員に伝えたいメッセージが業務の指示と矛盾しないように、正確に言語化して発信しましょう。企業が発信するメッセージに矛盾や誤解が生じると、従業員のエンゲージメントを高めるどころか不満や不安を与えてしまう可能性があるからです。
また、従業員に企業の理念やビジョン、価値観を共有し、理解を深めて共感や愛着心を持って行動してもらうための活動を「インナーブランディング」と言います。インナーブランディングの施策によって、企業理念やビジョンを浸透させることができます。
インナーブランディングに関する詳しい内容はこちらを参考にしてください。
■2.従業員が働きやすい環境づくり
それぞれの従業員が自分のスキルや能力、経験や得意分野を発揮して仕事ができるように、適材適所へ配置しましょう。
自分の能力や経験を活かして仕事ができることは、働きやすさや仕事へのやりがいにつながります。従業員が指示された仕事をこなすだけでなく、立場にあった適切な権限を持たせてもらい、自主的に仕事ができることもやりがいにつながります。
やりがいがある仕事や働きやすい環境は従業員の満足度を上げ、企業への愛着心も生まれやすくなります。
また、長時間労働の常態化のような問題があれば解消し、ワーク・ライフ・バランスの実現を図る必要があります。エンゲージメントを高めるためには、従業員の健康や安全にも配慮した働きやすい環境作りが大切です。
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■3.コミュニケーションの活性化
フリーアドレス制の導入やリフレッシュスペース・ミーティングスペースの確保などで、コミュニケーションの活性化を目指しましょう。
コミュニケーションや雑談の機会が増えれば、従業員同士の相互理解や情報共有、意見交換がおこなわれるようになり、協力し合える体制作りに役立ちます。
対面で話せる場だけでなく、チャットツールや社内SNSを活用し、さまざまな方法でコミュニケーションの機会を作ってみてください。
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■4.オフィスレイアウト変更やリノベーションを実施
快適な環境で仕事ができれば、従業員のストレスの緩和になり、働きやすさにつながります。コミュニケーションの取りやすいオフィスレイアウトで心理的安全性の担保ができれば、従業員同士の信頼関係や協力体制が構築され、生産性も向上するでしょう。
また、企業理念や考え方をデザインやレイアウトなどで表現する方法も有効です。企業理念やビジョンがわかりやすい形で、日常的に従業員の目に触れやすいようにしておくことで、企業への帰属意識を高めることも可能です。
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■5.公平な人事評価制度の導入
従業員に対し、実績や頑張りに応じた評価をして、給与や賞与などに反映させることも大切です。公平な人事評価制度がなければ、従業員は不満や不安を抱えやすく、エンゲージメントを高めることが難しくなります。
評価する人の主観は入れず、透明性を保って従業員が納得できる形を目指しましょう。たとえば、「360度評価」を取り入れる方法があります。360度評価とは、仕事上でその人と関係を持つ多方面の従業員が対象者となる従業員を評価する方法です。
従来の上司のみが部下を評価する方法とは異なり、多方面から多角的な視野で評価がおこなわれるため、公平で客観的な評価が得られます。
■6.研修やセミナーの開催
研修やセミナーなどを活発に開催すれば、従業員それぞれが常に新しいことを学び、成長しながら働けます。すると知識やスキルアップ、自己成長の側面からも、その企業で働くことに価値を感じるようになります。
また、従業員のエンゲージメントを高めるためには、適切な人事評価制度やチームビルディングが欠かせません。
そのため、従業員向けの研修やセミナーだけでなく、マネジメント層に対する人事評価やチームビルディングに関する学び、心理的安全性を構築するためのマネジメントを勉強する機会も必要になるでしょう。
エンゲージメントの向上施策で使える支援
エンゲージメントを高める施策を実施する際には、利用できる支援があります。2つの支援の詳細を説明します。
■厚生労働省「人材開発支援助成金」
人材開発支援助成金は、従業員の職業訓練開発を実施した際、訓練の経費や訓練中の賃金を一部助成してくれる制度で、次のコースで利用できます。
- 特定訓練コース:OFF-JTで4種、雇用型訓練で2種の訓練がある
- 一般訓練コース:20時間以上のOFF-JT訓練
従業員が専門的な知識やスキルを習得できるよう、企業が人材育成をするために使える支援制度です。
■東京都「中小企業人材スキルアップ支援事業」
中小企業人材スキルアップ支援事業とは、都内の中小企業または中小企業の団体が実施する短時間の職業訓練に対し、助成金を支給する制度で、次の2種類の支援があります。
- 社内型のスキルアップ:助成対象受講者数×訓練時間数×730円
- 民間派遣型のスキルアップ:助成対象受講者1人1コース当たり受講料等(税抜き)の2分の1
年内に申請できる額は、社内型と民間派遣型あわせて上限は100万円です。申請できる対象となる会社は、資本金の額や従業員の数で定められています。
※参考:東京都TOKYOはたらくネット「社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)」
まとめ:エンゲージメントを高めて人材確保の課題を解決しよう
多くの企業が抱えている人材確保の問題は、従業員のエンゲージメントを高めることで解決できる可能性があります。
従業員のエンゲージメントが高まると、自社への愛着心を持って自主的に問題解決をする優秀な人材が定着しやすくなります。優秀な人材が定着すれば、採用コストが削減できるだけでなく教育や仕事の品質が向上し、企業全体の業績アップへとつなげていくことも可能です。
エンゲージメントを高めるためには、アンケート調査で現状を把握し、自社にあった施策を実施することが大切です。従業員が働きやすい環境を求めているなら、ワーク・ライフ・バランスの実現を図る取り組みやオフィスのレイアウト・リノベーションなどで働きやすいオフィス作りをするという方法もあります。
コミュニケーション不足による課題があるなら、コミュニケーションの活性化を図る取り組みや、コミュニケーションが生まれやすい場を作ることも大切です。インナーブランディングで企業理念やビジョンを共有することや、研修・セミナーの実施、公平な人事評価制度の導入など、さまざまな施策を組み合わせることがおすすめです。
自社の現状にあった施策を検討し、従業員のエンゲージメントを高めて、優秀な人材が長く働きやすい環境作りをしましょう。