オフィスにおけるオープンスペースとは?導入のメリットや成功させるためのポイント
オフィスレイアウト・デザイン・設計
時代の流れに伴い、オフィスの在り方が変化しており、ワークスペースのレイアウトを見直す企業が増えています。レイアウトを工夫することで、従業員の満足度や生産性を向上させ、組織全体の強化につなげることができます。
近年、特に注目を集めているのは「オープンスペース」と呼ばれるレイアウトです。オープンスペースの導入を検討する際は、レイアウトの変更が企業や従業員にどのような影響を与えるかを把握しておくことが大切です。
本記事ではオフィスにおけるオープンスペースとは何か、企業が導入するメリットは何かなどを解説します。オープンスペースを導入する際の課題も解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
オフィスにおけるオープンスペースとは
近年は、オフィスにオープンスペースを設ける企業が増えています。オープンスペースとは壁やパーティションで仕切られておらず、広く開放された空間のことです。
オフィスにおけるオープンスペースとは、ワークスペースをはじめとするさまざまな用途に使用される空間で、リフレッシュスペースやコミュニケーションスペースと呼ばれるケースもあります。
オフィスのオープンスペースは、企業や従業員に多くのメリットをもたらすとして注目されています。
オフィスにオープンスペースを導入するメリット
従来のオフィス空間は、壁やパーティションで仕切られており、閉鎖的な側面がありました。一方、オープンスペースは開放的で、従来のオフィス空間にはないさまざまな魅力があります。
◾️社内コミュニケーションの活性化につながる
従業員同士のコミュニケーション不足を課題に抱えているオフィスでは、オープンスペースの導入が効果的です。
オフィスのレイアウトは、そこで働く人のコミュニケーションに大きく影響します。部屋ごとに仕切られた従来型の空間では、コミュニケーションが制限されやすい側面があります。違う部屋の従業員とコミュニケーションが必要になった場合、移動しなければなりません。
オープンスペースを導入すると、部署やチームの垣根を越えて多くの従業員が同じ空間で働くことができます。その結果、気軽にコミュニケーションが取れるようになり、社内のコミュニケーションが活性化されることが期待できます。
◾️スペースを有効活用できる
オフィス内のスペースを有効活用するためには、オープンスペースを導入すると良いでしょう。
オフィスのスペースには限りがあり、レイアウトによっては無駄なスペースが発生するケースがあります。
例えば、従来の固定型では、従業員全員の席を用意しなければなりません。しかし、営業職のような外回りが多い職種は、常に席を使用するわけではないため、部屋によっては空席が目立つことがあります。
そこで、オープンスペースにフリーアドレスを導入し、席数を減らすと、ワークスペースを縮小できます。
オープンスペースはレイアウトの自由度も高く、目的に応じてさまざまなスペースに変更することも可能です。
◾️コスト削減が期待できる
固定費の増加を課題に抱えている場合は、オープンスペースの導入によって解消できる可能性があります。
近年は原料費の上昇や円安などの影響により、物価の高騰が続いています。物価の高騰により経費が圧迫され、キャッシュフローの悪化につながりかねません。キャッシュフローを改善するためには、経費の削減が必要です。
オープンスペースを活用すれば、間仕切りされたスペースよりもコストを削減できる可能性があります。壁やドアの設置を最小限におさえられるため、材料費や工事費を削減できるでしょう。
また、オープンスペースでフリーアドレスを導入すると、全従業員分の席が不要になります。ワンフロアで多くの従業員が働けるようになるため、オフィスの縮小によって家賃を削減できる可能性もあります。
オフィスにオープンスペースを導入する際の課題
オフィスにオープンスペースを導入すると、コミュニケーションの活性化やコスト削減などのさまざまな効果が期待できます。一方でいくつかの課題もあるため、事前に対策を検討しておく必要があります。
◾️プライバシーの確保が難しい
オープンスペースの課題の一つは、従業員のプライバシーを十分に確保できない可能性があることです。
従業員が快適に働ける環境を整えるには、プライバシーの確保が重要です。従来型のワークスペースは、壁やパーティションで間仕切りされているため、一定のプライバシーを確保できます。
しかしオープンスペースには間仕切りがないため、従業員は広く開放的な空間で仕事をしなければなりません。その結果、周囲の視線が気になって集中力が低下したり、監視されていると感じたりするケースがあります。
◾️感染リスクが高まる
従来の間仕切りがあるスペースでは、室内で働く従業員の人数が限られるため、特定の部屋で感染症が発生してもオフィス全体への拡大を防ぐことができます。
一方でオープンスペースには間仕切りがなく、多くの従業員が同じ空間で働きます。そのため、誰かが感染症にかかるとウイルスが空間全体に広がり、感染リスクが高まります。
企業には、従業員の健康を守る義務があります。特に感染症が流行する時期は、企業としてより一層の感染対策が必要です。
オフィスにオープンスペースを導入する際には、感染リスクを減らすために適切な対策を講じましょう。
◾️集中力が低下しやすい
オープンスペースでは同じ空間で多くの従業員が働くため、周囲の視線や雑音が気になりやすい側面があります。このような環境では集中力の低下を招き、業務効率に悪影響を及ぼしかねません。
オープンスペースを導入後、従業員から個人ワークに集中できない、Web会議がしづらいといった不満が出てくる可能性があります。
オープンスペースの導入を成功させるためのポイント
オフィスにオープンスペースを導入後、従業員から労働環境に関する不満が出てくる可能性もゼロではありません。従業員からの不満が多い場合、オープンスペースの導入効果を十分に得られないでしょう。
オープンスペースの導入を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
◾️集中できるエリアを設ける
オフィスにおけるオープンスペースの課題の一つは、個人ワークやWeb会議に集中しづらいことです。
対策としては、従業員が気分や業務内容に応じて働く場所を選べるように、タイプの異なる複数のエリアを設置するのが良いでしょう。例えば集中エリアやミーティングエリア、フリーエリアなどを設けるのが効果的です。
集中エリアは、一般的なワークスペースから離れた場所に設置すると、周囲の視線や雑音を程よく遮断できるため、従業員が集中して業務に取り組めます。
このほかには、個室ブースを設置する方法もあります。詳細は「オープンスペースにあると便利な席や家具」で紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
◾️家具や植物を間仕切りとして活用する
従来型のワークスペースとは異なり、オープンスペースには壁やパーティションがないため、周囲の視線が気になりやすい側面があります。
このような課題を解消するためには、空間を完全に仕切らず視線を遮る方法を検討しましょう。家具や植物の配置次第では、周囲の視線を程よく遮断できる空間を作ることが可能です。
例えば対向式レイアウトを採用している場合、前の席の従業員と視線が合いやすくなります。デスク上に観葉植物を設置すれば、空間を完全に間仕切りすることなく、程よく視線を遮断できるでしょう。
背面式レイアウトを採用している場合は、従業員の背後に家具や植物を設置すると、プライバシーを確保しやすくなります。
◾️従業員の意見を取り入れる
オープンスペースの導入は、一部の部署や従業員だけでプロジェクトを進めるのではなく、全従業員を巻き込みましょう。
オープンスペースを導入後、従業員から想定外の不満が出てくる可能性もあります。不満の数や内容によっては、企業側ですべて対応しきれないこともあるでしょう。企業が対応しきれなかった場合、従業員の不満がさらに募り、満足度の低下につながるおそれもあります。
従業員に快適に働いてもらうには、実際に現場で働く従業員の意見を取り入れることが大切です。事前にアンケートやヒアリングを実施し、従業員のニーズを反映すれば、満足度の高いオープンスペースを実現できるでしょう。
オープンスペースにあると便利な席や家具
従業員にとって快適なオープンスペースを実現するためには、席や家具の工夫も必要です。ここからはオープンスペースにあると便利な席や家具をご紹介します。
◾️個室ブース
オープンスペースでは多くの従業員が働くため、周囲の視線や雑音が気になりやすいです。このような環境では、個人ワークに集中できない従業員が出てくる可能性があります。特に、Web会議では静かな環境が必要です。
個人ワークに集中したい従業員やWeb会議に対応するためには、個室ブースを設置する方法があります。個室ブースとは、壁や扉がある独立したスペースで、オープンスペースに設置すると、周囲の視線や雑音を遮断できます。
ブース内は照明やコンセントなどが整備されているため、個人ワークやWeb会議にも対応できます。なお、個室ブースを設置するメリットや設置方法は、以下の記事でご確認ください。
オフィスに「集中ブース」を設置するメリットとは?設置方法やおすすめブースもご紹介
◾️ファミレス席
オフィススペースには限りがあるため、必要なスペースを十分に確保できないケースもあるでしょう。近年は、会議室不足を課題に抱える企業も増えています。
会議室不足を解消するには、オープンスペースにファミレス席を設置する方法があります。ファミレス席とは、テーブルを挟んでソファを設置したボックス席を指します。ファミレス席を設置すると、気軽に打ち合わせがしやすくなります。
また、ファミレス席は一般的なオフィスデスクとは異なるデザインなので、空間のアクセントにもなるでしょう。なお、ファミレス席を設置するメリットや課題については、以下の記事で詳しく解説しています。
オフィスにファミレス席を設置するメリットと課題|有効活用する方法や事例も紹介
◾️スタンディングデスク
オープンスペースを導入する際には、スタンディングデスクの設置もおすすめです。
近年、従業員の健康をサポートするために、ワークスペース内にスタンディングデスクを設置し、スタンディングワークを推進する企業が増えています。デスクワークが多いと血行が悪化し、健康に悪影響を与えるリスクがあるとされていますが、スタンディングワークは血行を促進し、健康維持や増進に寄与するとして注目されています。
オープンスペースにスタンディングデスクを導入すると、スタンディングワークができる環境を整えられます。また、スタンディングデスクは急な打ち合わせにも活用でき、会議室不足の解消にも役立つでしょう。
スタンディングワークの導入と効果については、以下の記事でご確認ください。
オープンスペースの導入に成功した企業の事例
オープンスペースの導入を成功させるためには、他社の事例を参考にし、必要に応じて自社に取り入れるのも一つの方法です。ここからは、オープンスペースの導入に成功した企業の事例をご紹介します。
◾️株式会社北海道キューブシステム
株式会社北海道キューブシステムは、北海道札幌市でシステムソリューションサービスを提供する企業です。同社は2024年2月のオフィス改装を機に、オープンスペースを導入しました。
オープンスペースには、フリーアドレスデスクの一般的なワークエリアのほか、ファミレス席やフリースペースも設置されています。一般的なワークエリアから離れた窓側には、ローパーティションを活用した集中エリアも設置されました。
スペース内に設置された家具は、スタンディングワークや急な打ち合わせにも活用できます。また、AIインタラクティブホワイトボードの導入により、ワークスペースで研修やイベント、プレゼンなどを効果的に実施できるようになりました。
株式会社北海道キューブシステム | オフィスデザイン・レイアウト事例
◾️アース環境サービス株式会社
アース環境サービス株式会社は、愛知県名古屋市で衛生・品質管理を手掛ける企業です。同社では2023年12月のオフィス改装を機に、オープンスペースとフリースペースを導入しました。
オープンスペースとフリースペースには、観葉植物をはじめとするグリーンが取り入れられています。フリースペースの床には、人工芝が採用されました。従業員は、フリースペースを仕事中のリラックスや休憩などのさまざまな用途で使用できます。
オフィス緑化はストレス軽減や集中力の向上などのさまざまな効果が期待できるため、近年はオフィスに取り入れる企業が増えています。自社でオープンスペースを導入する際には、オフィス緑化も検討してみましょう。
アース環境サービス株式会社 | オフィスデザイン・レイアウト事例
◾️アイリスオーヤマ株式会社(アイリスグループ東京アンテナオフィス)
アイリスオーヤマ株式会社(アイリスグループ東京アンテナオフィス)は、東京都港区にある当グループの東京本部です。東京本部では、2018年11月にオープンスペースを導入しました。
ワークスペースには、フリーアドレスデスクの一般的なワークエリアのほか、ソファ席や集中エリアも設置しています。集中エリアは、東京タワーを望める窓側に設置しました。隣の席との間にはローパーティションを設置し、個人ワークに集中しやすい環境を実現しています。
また、ワークスペース内には、間仕切りされた会議室も設置しています。会議室の壁にはガラスパーテーションを使用しているため、圧迫感がなく、透明性も確保できました。
まとめ:従業員のニーズに対応したオープンスペースを実現しよう
近年は、オープンスペースを導入する企業が増えています。オープンスペースを導入すると、コミュニケーションの活性化やコスト削減などのさまざまな効果が期待できます。一方でオープンスペースに対し、従業員から不満が出ることもあります。
オープンスペースは壁やパーティションで仕切られていないため、プライバシーへの配慮や感染対策が必要です。周囲の視線や雑音により、集中力が低下しやすいため、集中エリアや個室ブースの設置も検討しましょう。
従業員が働きやすいオープンスペースを実現するためには、従業員のニーズを反映することも大切です。従業員のニーズに対応したオープンスペースを導入するなら、ぜひアイリスチトセにご相談ください。豊富な実績をもとに、自社に適したプランをご提案させていただきます。