オフィスの解約方法|解約予告から移転までの流れや注意点を解説
オフィス移転
オフィスの移転をおこなう際は、同時に現オフィスの解約手続きも進める必要があります。しかし、オフィスの解約は一般的な賃貸住宅の解約と違い、手続きや検討するべきことが多いです。きちんと準備をしないと予定通りに解約が進まず、移転に間に合わないということも起こり得ます。
そこで本記事では、オフィスの解約の基本的な流れやかかる費用、注意点を解説します。移転は完了までに何ヶ月もかかるプロジェクトです。スムーズな解約手続きのために参考にしてください。
目次
オフィスを解約する前に確認しておきたいこと
実際に手続きを始める前に、まずは次の2つをおこないましょう。
- 解約する目的を整理する
- 解約予告期間を把握する
■解約する目的を整理する
そもそも何のためにオフィスを解約する目的を明確にしましょう。事前に目的の整理ができていないと、移転にともなう検討事項の判断基準がブレやすくなってしまいます。
たとえば、現オフィスの解約の目的がコスト削減にあるなら、今よりも規模の小さいオフィスや郊外の物件にするなど、ランニングコストをおさえられるオフィスが必然的に選択肢に入ります。働き方の変革が目的ならば、ワークスタイルに適した柔軟性あるオフィス環境構築に重きを置くことでしょう。
移転は事業の今後を左右するため、自社内で目的のすり合わせと各自の認識齟齬がないようにしっかり話し合うことが大切です。
コスト削減に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■解約予告期間を把握する
オフィスは、即日解約することはできません。退去する際は、数ヶ月前に管理会社に対して解約予告をする必要があります。
解約予告期間は3ヶ月〜6ヶ月前などが一般的ですが、契約によって異なるため賃貸契約書で確認してください。オフィスの移転タイミング次第で、賃料の二重払いが発生する可能性があります。コスト削減の観点からも事前に解約予告期間を把握しておきましょう。
賃貸契約書を紛失した場合は、オーナーや契約時に仲介を依頼した不動産会社にコピーの発行を依頼します。原本の再発行には書類の準備や手数料が必要なため、解約予告期間の確認だけならコピーで十分です。
オフィスを解約する際の5ステップ
オフィスを解約してオーナーに引き渡すまでには、大きく分けて5つのステップがあります。
- 移転先オフィスの選定
- 解約予告
- 取引先企業への移転連絡
- 法的機関での手続き
- 引越しや原状回復工事業者の手配
それぞれのステップについて詳しく解説します。
■ステップ1:移転先オフィスの選定
新しいオフィスの選定は解約予告前に済ませておくのが基本です。先に解約日を決めてしまうと、万が一移転準備が間に合わなかった場合に問題となってしまいます。
オフィスを選ぶ際は企業の目的を達成できるかどうかに加え、次の要素も検討しておきましょう。
- 立地:事業戦略や業務・通勤の利便性を満たせるか
- 面積:将来性まで考えて業務に支障が出ない広さか
- コスト:ランニングコストは経営の負担にならないか
1~3月や9~12月は年度の切り替わりでオフィスの移転が増えます。そのため、4~8月であれば解約されて空室となった物件を比較的探しやすいです。
候補となるオフィスが複数見つかった場合は、決めていた選定基準に従い絞り込みをおこないます。移転目的に沿ってどの要素を重視するか事前に決めておくと、選定がスムーズに進みます。
■ステップ2:解約予告
オフィスの選定が終わったら、オーナーに対し賃貸借契約書に記載されている期限で解約予告をします。規定の書類に従って予告しなければならないケースがあるため、契約時に利用した不動産会社で確認を取ってください。
規定の書類がない場合は自社で書類を作成します。書類には次の項目を含めるようにしてください。
- 解約予告の通知日
- オフィスの賃貸人の名称
- 解約するオフィスの名称・住所・番号・面積
- オフィスの解約を伝える文章
- 原状回復をして引き渡しが完了する日
- 通知後の支払い方法
- 明け渡し前の内覧
- 敷金や保証金の扱い
■ステップ3:取引先企業への移転連絡
オフィスを解約して移転すると、住所だけでなく固定電話の番号まで変わるケースがあります。スムーズに新オフィスでの業務をおこなえるよう、取引先などの関係者には事前に通知しておくことが大切です。余裕をもって対応できるよう、移転の1ヶ月前には移転先の住所・電話番号・営業開始日などを連絡しておきましょう。
連絡手段は、メールだけでも問題ありませんが、取引先によってはそっけない印象を持ちます。慣例に重きを置いているところや重要な取引先には、手紙でも通知をしておくと無難です。
オフィス移転のお知らせに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■ステップ4:法的機関での手続き
移転先オフィスの賃貸契約とは別に、事業を継続するためのさまざまな手続きが必要です。提出期限が定められている書類もあるため、事前にチェックリストを作成して漏れがないように気をつけましょう。
【オフィスを移転する前におこなう手続き】
移転前おこなう手続き | 手続き先 | 提出する時期 |
郵便物届出変更届 | 移転後に最寄りの郵便局 | 移転先や移転日が決まり次第 |
防火対象物使用開始届 | 移転先のオフィスを管轄する消防署 | 使用開始する7日前まで |
防火対象物工事等計画届出書 | 移転先のオフィスを管轄する消防署 | 内装工事の着工7日前まで |
防火・防災管理者選任(解任)届出 | 移転先のオフィスを管轄する消防署 | 移転の7日前まで |
消防計画作成(変更)届出 | 移転先のオフィスを管轄する消防署 | 移転の7日前まで |
【オフィスを移転した後におこなう手続き】
移転前おこなう手続き | 提出先 | 提出する時期 |
異動届出書 | 移転前と移転後の住所を管轄する税務署にそれぞれ提出 | 移転後はできるだけ早く |
自動車保管場所証明申請書 | 移転先のオフィスを管轄する警察署 | 移転後はできるだけ早く |
適用事業所所在地・名称変更届 | 移転先のオフィスを管轄する年金事務所 | 移転から5日以内 |
労働保険所在地等変更届 | 移転先のオフィスを管轄する労働基準監督署やハローワーク | 移転から10日以内 |
雇用保険事業主事業所各種変更届 | 移転先のオフィスを管轄するハローワーク | 移転から10日以内 |
本店・支店移転登記申請書 | 解約するオフィスを管轄する法務局 | 本店:移転から2週間以内 支店:移転から3週間以内 |
社用車でナンバープレートも変更する場合は、自動車保管場所証明申請書と一緒に
安全運転管理者変更届も提出します。
■ステップ5:引越しや原状回復工事業者の手配
オフィスの解約・移転には、引越しや原状回復のための専門業者の選定・手配も必要です。引越し業者には荷物の移送のみ請け負う業者のほか、移転先の選定から各種工事の手配までトータルでサポートしてくれる業者もあります。必要なサポートに応じて依頼する業者を選定しましょう。
原状回復の工事は、引渡し前に完了していなければなりません。工事にかかる期間は100坪未満の場合2週間〜1ヶ月、オフィスの状況によっては1ヶ月以上かかるケースもあります。解約予告日までに余裕をもって手配しておきましょう。
オフィスの解約にかかる5つの費用
オフィスを解約し、移転先で業務を始めるまでに次の5つの費用が発生します。
- 引越し費用
- 原状回復費用
- 不用品の廃棄費用
- 移転先オフィスの契約費用
- 移転先オフィスの内装費用
それぞれどの程度かかるのかを詳しく見ていきましょう。
■1.引越し費用
オフィスの引越し費用は従業員1人当たり2~3万円が目安です。実際には移転先までの距離・荷物の量・引越し時期などで変わります。決算期や新年度が近づくとオフィスの移転が増えるため、高額になるのを覚悟しておきましょう。
また、パソコンやプリンターなど精密機械が多い場合も費用は上がります。特に重要書類や備品の扱いには注意しましょう。紛失や故障のリスクを最大限おさえられるような対策が必要です。状況に合わせてオフィス移転サービスの利用も検討してみてください。
■2.原状回復費用
原状回復費用の目安は次のとおりです。
- 小規模オフィス(15~20坪程度):3~5万円/坪
- 中規模オフィス(~100坪程度:4~8万円/坪
- 大規模オフィス(100坪以上):8~12万円/坪
オフィスへ手を加えた程度や劣化状況によって金額は大きく変わります。実際にどのぐらいの費用がかかるかは、業者で見積もりを取りましょう。
業者を選ぶ際は相見積もりが基本です。オーナーが工事業者を指定する場合でも、他社の見積り結果があれば費用の妥当性を判断できます。どのような場合でも一度見積もりを依頼すると良いでしょう。
オフィスの原状回復に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■3.不用品の廃棄費用
オフィスの移転で生まれる不要なデスクやロッカー、パーテーションなどは基本的に産業廃棄物扱いとなり、粗大ゴミとしての処分はできません。専門の廃棄業者に依頼すると、4トントラック1台分で10~20万円程度の費用がかかります。この費用には車両費や人件費・養生費なども含まれます。
一部の自治体の処分場では産業廃棄物を受け入れていて、社員が不用品を持ち込むことが可能です。業種・資本金・従業員数などで、どこまで対応してくれるか変わるため、最寄りの自治体に問い合わせてください。
不用であるものの、まだ使えそうなオフィス家具がある場合は、業者による買取を検討しても良いでしょう。見積りをとって買取不可のものだけを廃棄すれば無駄がありません。
オフィス家具の廃棄方法に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■4.移転先オフィスの契約費用
新しいオフィスとの契約にはある程度の初期費用がかかります。契約費用の内訳と目安は次のとおりです。
費用項目 | 費用の目安 |
前賃料 | 家賃1ヶ月分 |
敷金 | 50坪以下で家賃3~6ヶ月分
50坪以上で家賃6~12ヶ月分 |
礼金 | 家賃2ヶ月分 |
仲介手数料 | 家賃1ヶ月分 |
火災保険料 | 年間で1万円程度 |
敷金は、オーナーが賃料滞納のリスクを避けるため高額になっています。
■5.移転先オフィスの内装費用
オフィスの内装費用とはレイアウトや内装の工事、インフラの整備、オフィス家具の購入にかかる費用のことです。内装工事は、50坪以下で1坪当たり5~10万円、50坪以上で1坪当たり10~15万円が目安です。
インフラの整備は、LAN回線・電気・電話回線、エントランスのセキュリティ整備などです。社員1人当たり5~10万円が目安で、テレワークを重視する企業はセキュリティ関連でさらに費用が膨らむでしょう。
いずれも質や機能などにこだわるほど費用が上がります。他の費用との兼ね合いを考慮して予算内におさまるよう調整することが大切です。
オフィスの解約費用をおさえるコツ
オフィスの解約費用を試算すると、想定以上に高額に感じるかもしれません。解約・移転にかかる費用をおさえるコツを2つご紹介します。少しでもコストをおさえたいときにはぜひ参考にしてみてください。
■引越し業者は相見積もりで判断
引越し費用は業者によって異なるため、適切な金額で依頼ができるよう複数の業者に相見積もりを取るのをおすすめします。各業者のサービス内容やオプション、予約できる日程を確認しつつ、条件と合う業者を選ぶようにしてください。
業者によっては特別な特典・キャンペーンを実施しているので、依頼前に必ず確認しておきましょう。また、引越しの一般的な繁忙期(3〜4月)は通常時より比べて料金が高めなので、依頼時期には注意してください。
■移転先にフレキシブルオフィスを選択
フレキシブルオフィスとは、シェアオフィスやレンタルオフィス、サービスオフィスなどの総称のことです。従来の賃貸オフィスと違い、費用面で次のメリットがあります。
- 1日や1ヶ月単位で契約が可能
- 利用する運営によっては敷金・礼金不要
- 利用するオフィスによって内装工事が不要
- 家具が備え付けのため新規の購入費用を節約可能
敷金や礼金が不要なだけでも100万円単位の節約が望めます。さらに、退去時の原状回復工事費や各備品の購入費用も節約可能です。
将来的に社員の増減が起きた場合にも、フレキシブルオフィスなら必要なスペースに応じて契約の見直しが可能となります。テレワークに対応できている企業なら、複数箇所にオフィスを用意することで従業員が働きやすい環境作りができます。
フレキシブルオフィスの種類別の特徴
フレキシブルオフィスの種類と各特徴は次のとおりです。
オフィスの種類 | 特徴 |
シェアオフィス |
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コワーキングスペース |
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レンタルオフィス |
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サービスオフィス |
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セットアップオフィス |
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いずれのオフィスも、セキュリティや私物管理の問題をクリアできれば移転先として魅力的です。立地や提供されるサービスを比較し、自社の今後のためになるオフィスを選びましょう。
フレキシブルオフィスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
オフィスを解約する際の注意点
事前にオフィスの解約に際して知っておきたい3つの注意点をご紹介します。
- 解約時期により違約金がかかる
- 手続きが遅れると郵便物が届かない
- 入居審査は必ず通るとは限らない
■解約時期により違約金がかかる
解約予定オフィスの賃貸契約の内容次第では、解約時期によって違約金がかかるケースがあります。たとえば2~3年ごとの更新をしていて、途中解約は残存期間分の家賃や共益費まで支払うという契約をしている場合です。賃料のトータルが月額30万円のオフィスなら、更新まで2年残っていると720万円も余計に費用がかかります。
違約金については賃貸契約書に詳細が書かれています。内容に同意をして契約を結んでいるため従う義務があります。事前に契約内容を確認し、違約金が発生しないタイミングで解約予告をしましょう。
■手続きが遅れると郵便物が届かない
郵便物届出変更届は提出をしてから反映までに3~7営業日かかります。手続きが遅れると、移転先で業務を開始しても郵便が届かない可能性があります。移転日に確実に間に合うよう、余裕を持って手続きをおこないましょう。
処理状況については郵便局の公式サイトから確認可能です。
■入居審査は必ず通るとは限らない
賃貸の住居物件への入居と同様に、オフィスを借りる場合も審査があります。審査基準は物件ごとに異なり、必ず通る保証はありません。資本金の少なさや業績不振により審査に落ちてしまうケースがあります。
そのため、審査に通ってから解約予告をすることが安全で最適な手順となります。解約の際には、物件ごとに定められた解約予告期間(3ヶ月〜6ヶ月前)を、しっかり確認しておきましょう。
まとめ:スケジュールに余裕をもってオフィスの解約を進めよう
オフィスの解約は、原状回復工事や移転先との契約、移転先の内装工事など、事前に準備しておくことが多く、実際に解約をして移転完了するまでに数ヶ月以上の期間がかかる大きなプロジェクトです。
もちろん各種手続きに不備があるとオフィス移転の計画全体にも影響します。あらかじめ準備すべき内容が網羅的にわかる、チェックリストの提供ならびにサポート体制が整った、オフィス移転の専門サービスを活用するのも一つの手段です。
アイリスチトセではオフィス移転トータルサービスを展開しています。年間1,000件以上の実績から、適切なオフィス移転をプランニングできます。オフィス解約と移転を検討されている企業の担当者様に向けて無料のご相談も承っているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。