帰属意識は企業にとってなぜ重要?高める5つの方法を解説
働き方
メンバー全員が目標達成のために一丸となって動ける強い組織にするには、組織への帰属意識が大切だと言われています。しかし近年は働き方が多様化し、企業や組織にとらわれずに転職や独立を選ぶという方も増えてきました。企業への帰属意識が低下すれば優秀な人材が流出してしまい、企業の地盤が弱体化することも考えられます。
本記事では、帰属意識のメリットと低下する原因、帰属意識を高める具体的な方法について解説します。従業員の帰属意識を高める方法が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
帰属意識とは
帰属意識とは心理学用語の一つで、特定の組織や集団に属している意識や感覚を指します。企業においては、従業員が「自分自身が会社組織の一員である」「会社の仲間として所属している」といった考えを持つことです。
帰属意識は、所属する集団への満足感・信頼感・愛着や関心などによって大きく左右されます。これらの感覚を強く感じられ、今後も所属し続けて貢献したいと思っている場合、その方の組織に対する帰属意識は高いと言えるでしょう。
また、帰属意識は忠誠心とは少し意味合いが異なり、上下の力関係が求められないのも特徴です。
従業員の帰属意識が高まることで得られるメリット
従業員の帰属意識の高まりによって、次のメリットが得られます。
- 離職率の改善
- 仕事に対するモチベーションの向上
- 生産性・業務効率の改善
それぞれについて、詳しく見ていきます。
■離職率の改善
帰属意識の高まりは、離職率の改善につながります。
組織に魅力を感じなくなり、所属し続けたいという意識が低くなれば、より良い条件を求めて転職を考える従業員が増えることも考えられます。また、帰属意識の低い従業員は組織の改善提案にも消極的な傾向があり、周囲へ悪影響を及ぼす可能性も否めません。
一方、帰属意識の高い組織では、従業員は所属することそのものに満足し、組織へ貢献したいと考える方が多くなる傾向が見られます。結果的に組織や企業へのエンゲージメントが向上し、従業員の流出を防げるでしょう。
■仕事に対するモチベーションの向上
帰属意識が低くなると、組織にとって自分は必要ないと感じてしまい、業務遂行への意識も低下します。愛着や関心が薄れることで働く意義を失い、ネガティブ思考に陥りかねません。
帰属意識の高い状態であれば、組織への貢献を望む気持ちも強くなります。組織の業績を自分ごととして捉えられるため、周囲と協力して目標達成することに誇りをもって取り組むようになるでしょう。
帰属意識が高いと、組織に所属して働くこと自体に満足感を得られる状態となるため、モチベーションの維持向上が期待できます。
■生産性・業務効率の改善
帰属意識が低下すると、周囲のメンバーへの興味関心が薄れ、必要最低限のコミュニケーションしかとらないようになっていきます。業務改善のための議論が交わされなくなるだけではなく、必要な情報が共有されない懸念も考えられるでしょう。
積極的にコミュニケーションをとる帰属意識の高い状態であれば、経営方針や企業理念も共有できているため、その考え方が現場でも生かされます。
日々の伝達も滞りなく行われることで、生産性や業務改善もうまく進められるようになるでしょう。
帰属意識が低くなる5つの原因
帰属意識の低下を招くおもな原因は次のとおりです。
- 減少傾向にある終身雇用
- 多様な働き方の普及
- 従業員同士のコミュニケーション不足
- 仕事内容や成果に対して正当な評価がされない
- 企業や仕事のビジョンが不透明
それぞれについて、詳しく解説します。
■減少傾向にある終身雇用
これまでの日本では、入社してから定年まで勤めあげる終身雇用制度が多く採用されていました。しかし、業績悪化や組織再編などの影響により、終身雇用制度が崩れつつあるのが現状です。
実際に、大手企業でも同一企業で働き続ける人材は減少傾向にあり、安定雇用より業務の成果を重視する風潮となっています。
終身雇用のメリットとして、安定して企業に所属できることで帰属意識を高められる点があげられます。短期間で転職や退職する従業員が増えると、長期にわたる帰属意識を高める施策が取れません。終身雇用の減少が原因で、従業員の帰属意識を教育するのが難しくなってきていると言えるでしょう。
■多様な働き方の普及
近年の社会情勢の変化に合わせて、働き方が多様化しています。リモートワークやテレワークの普及で出社することが減り、会社に行かなくてもどこでも働けるというワークスタイルが一般化してきました。そもそも組織に所属しないで「フリーランス」という働き方を選ぶ方も多くみられます。
また、ワーク・ライフ・バランスを重視する働き方が一般的となり、会社へ所属することよりも個人の生き方が重視されるようにもなってきています。
多様な働き方が普及することによって、組織に所属するスタイル自体が見直されており、帰属意識が育みにくくなっていると言えるでしょう。
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■従業員同士のコミュニケーション不足
帰属意識を高めるには、従業員同士のコミュニケーションが重要です。
リモートワーク・テレワークでの勤務が常態化してきた近年、コミュニケーションの機会が減少したことを課題と感じている企業が増えています。
これまでのように直接顔を合わせての会話から、ITツールでのコミュニケーションへ変化してきました。
雑談や日常的な会話といったインフォーマルコミュニケーションは、人間関係やメンタルにも好影響であり、帰属意識の高まりに寄与すると考えられます。そういった気軽なインフォーマルコミュニケーションの時間があまり取れないことで、組織への帰属意識が高まらずに居心地のよさを感じにくい状況となることが考えられます。
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■仕事内容や成果に対して正当な評価がされない
懸命に組織へ貢献しようと努力しても正当に評価されないと、帰属意識は高まりません。
自身の働きに対して適切な評価や周囲からのサポートがあると、満足感やエンゲージメントの向上へつながります。
逆に、成果を出しても給与や労働条件の変わらない状況が続き、業務へのサポートが感じられないとモチベーションの低下を招き、合わせて帰属意識も低くなるでしょう。
場合によっては離職や転職につながる可能性もあるため、従業員の状態には細心の注意を払うことが求められます。
■企業や仕事のビジョンが不透明
企業理念や経営方針が不透明で、従業員から共感を得られない場合も帰属意識の低下を招きます。
帰属意識を高めるには、従業員全員が共感できるビジョンを持って同じ目的に向けて進むことが求められます。ビジョンや目的があいまいな場合、従業員は達成を目指す意味がよくわからなくなり、組織に対する違和感が芽生えるでしょう。
果たすべき役割に意味を感じなければ、帰属意識は高まりません。結果的にモチベーションの低下や離職につながる可能性があります。
従業員の帰属意識を高める5つの方法
では、従業員の帰属意識を高めるにはどういった施策が有効なのでしょうか。ここでは、次の5つの方法について解説します。
- 働き方・待遇の改善
- インナーブランディングの実施
- 社内イベントの開催
- コミュニケーションツールの導入
- オフィスデザインやレイアウトの変更
■働き方・待遇の改善
従業員の働き方や待遇・福利厚生の充実は、帰属意識を高めるのに効果的です。
ただし、単純に賃金を引き上げるだけでは一時的な効果にとどまり、継続的に賃上げしないと帰属意識の向上が持続しません。賃金の引き上げだけではなく、労働環境の改善や労働時間の見直しなど、全体的な改善が求められるでしょう。
また、ワーク・ライフ・バランスを重視する方が増えている現状を見据えて、子育てや介護に対する休暇や時短勤務の対応など、生活事情に応じた環境を充実させるのも重要です。
■インナーブランディングの実施
インナーブランディング(従業員に向けたブランディング活動)も、帰属意識を高めるには有効です。
インナーブランディングの目的として、企業理念やビジョン、価値観の共有があげられます。社内報や社内ポータルサイトなどを使い、従業員に向けてさまざまな情報を発信することで、自社のことを深く知ってもらえるでしょう。
また、インナーブランディングには社内の情報交換やコミュニケーションを促し、連帯感を高める効果もあります。
インナーブランディングで従業員をファン化し、企業の考え方を全員に浸透させることで、帰属意識が一層高まります。
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■社内イベントの開催
帰属意識を高めるには、従業員同士のコミュニケーションが鍵となります。
大小のイベントを開催することで対話の機会を増やし、他の従業員とのつながりを強化するのも、帰属意識を高める良い方法です。
全社的なイベントの開催は難しいという場合、ディスカッションのある勉強会の開催や、上司と1on1ミーティングを開催することでも効果があります。
こういったイベントの開催でこれまでコミュニケーションのなかった従業員同士のつながりが生まれ、社内の活性化が期待できるでしょう。
■コミュニケーションツールの導入
リモートワークやテレワークの導入で直接の対話が難しい会社では、ツールをうまく利用してコミュニケーションを取る方法があります。
チャットツールやオンラインミーティングツールを利用すれば、リアルタイムで遠方の従業員とのコミュニケーションも可能です。無料で利用できるものも数多くあるので、自社の利用方法に合ったツールを検討すると良いでしょう。
ツールの利用は、コミュニケーションの活性化に効果的です。しかし、ツールに頼りすぎて顔をまったく合わせない状態となる問題があります。上であげた社内イベントもうまく使い、実際に顔を合わせる機会を作るのも重要です。
■オフィスデザインやレイアウトを変更
オフィスのデザインやレイアウトを変更し、コミュニケーションを取りやすい形にするのも帰属意識の向上に良い影響を及ぼします。具体的には、次の施策を講じると良いでしょう。
- 企業理念やフィロソフィーを感じられるデザインを採用する
- フリーアドレス制を採用する
- オフィスラウンジを設置する
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企業理念やフィロソフィーを感じられるデザインを採用する
企業理念やフィロソフィー(経営哲学)を感じられるデザインとすることで、企業への帰属意識を高める効果があります。
コーポレートアイデンティティ(企業理念、コーポレートカラーやロゴ)を織り込んだエントランスやオフィスデザインを採用すると、企業に所属していることへのステータスが感じられます。また、デザイン性の高い空間とすることで居心地の良さや愛着を得ることも可能です。
企業理念を感じられるデザインと満足感を得られる空間の職場環境が実現できれば、帰属意識を効果的に高められるでしょう。
フリーアドレス制を採用する
フリーアドレス制を採用して、コミュニケーションの活性化を図る方法もあります。
フリーアドレスとは、従業員個人が固定された席を持たず、自由に移動して席を選べるスタイルです。
席が固定されていれば、就業中は席の近い限られたメンバーとのコミュニケーションのみとなります。フリーアドレスを採用すれば仕事する席を自由に選べるため、部署や役職を超えたコミュニケーションが取りやすくなります。
ただし、個人情報や機密情報を取り扱う部署にはフリーアドレスは不向きであり、帰属意識の向上に寄与しない可能性も考えられます。フリーアドレスで得られるメリットが多いと考えられる部署から、段階的に導入すると良いでしょう。
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オフィスラウンジを設置する
オフィスラウンジの導入を検討するのも、帰属意識向上には良い方法です。
オフィスラウンジとはオフィス内に設置されるラウンジスペースを指し、仕事や休憩などさまざまな用途で利用されます。
オフィスラウンジは、基本的に機能性よりも居心地やデザイン性が重視されて設計されます。従業員の憩いの場所として利用されることも多いため、リラックスした状態でのコミュニケーションができ、従業員同士のつながりを強化することが期待できるでしょう。
まとめ:帰属意識を高めるには従業員同士のコミュニケーションが大切
企業や組織への帰属意識が高まると、離職率の低下やモチベーションアップが期待でき、結果的に生産性や業務効率も改善します。しかし、近年は働き方が多様化していることもあり、帰属意識を高めるには企業として何らかの施策が求められます。
帰属意識を高めるには、上司部下や同僚とのコミュニケーションが大切です。コミュニケーションツールの活用やオフィスデザインの変更など、積極的にコミュニケーションを取れるようにして、社内の活性化を図ると良いでしょう。