カーボンニュートラルをオフィスで推進!意味から具体例まで紹介
サステナブル・SDGs
近年の平均気温上昇で、環境問題が世界的に取りざたされています。日本国内でも2020年の「2050年カーボンニュートラル宣言」を受け、さまざまな取り組みが各所で見られます。
とはいえ、オフィスにおいてどのような形でカーボンニュートラルを取り入れるか、迷われている担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事ではオフィスでのカーボンニュートラルを検討されている企業に向けて、言葉の意味やメリットなどを紹介しています。具体的な施策や利用できる補助金も取り上げているため、カーボンニュートラルの導入を積極的に考えている担当者の方は、ぜひ参考としてください。
目次
企業におけるカーボンニュートラルの重要性
カーボンニュートラルへの取り組みは、企業における経営課題の一つと言えます。
最近では、サステナビリティを軸に経営や情報発信をする企業が増えています。サステナビリティ経営を実現するためには、企業は経済活動と合わせて環境・社会の保護の実現を求められるようになりました。
サステナビリティを実現するためには、企業をあげてSDGsに取り組む方法があります。企業がカーボンニュートラルに取り組むことで、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」と、目標13「気候変動に具体的な対策を」への取り組みが可能です。また「パリ協定」「2050年カーボンニュートラル宣言」「地球温暖化対策推進法」など、世界的に脱炭素への動きが加速しています。
環境保護の実現を目指す企業にとっては、カーボンニュートラルへの取り組みは企業の価値を高める上でも必要不可欠です。
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素・メタン・フロンガスなどの温室効果ガスを全体としてゼロにしようという取り組みです。
温室効果ガスの排出をゼロにするのは、現実問題として不可能です。そこで、排出せざるを得ない量と同じ量を吸収・除去することで、差し引きでゼロにしようというのがカーボンニュートラルの考え方の基本となっています。
パリ協定において掲げられた「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5度までにおさえる努力」を達成するには、2050年までにカーボンニュートラルが不可欠という報告がされています。
そういった背景から、日本政府は2020年10月に「2050年までに温室ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言しました。なお、2021年1月現在で日本を含む124カ国と1地域が、2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいます。
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットとして、次の項目があげられます。
- 社会貢献になる
- 光熱費・燃料費を低減できる
- 新規事業の開拓につながる
- 金融機関から低金利で融資を受けられる
- 事業の長期的な継続に寄与する
■社会貢献になる
企業が地球環境に配慮した取り組みを積極的に推進することで、社会に大きく貢献でき、企業のイメージ向上にもつなげられます。
環境改善への取り組みは企業の周辺環境の改善にもつながり、地域社会への貢献ともつながります。また環境負荷の低減に取り組むレポートの作成・公表で、取引先や消費者からの信頼性向上が期待できるでしょう。
経済産業省では、カーボンニュートラルへ具体的に取り組んでいる企業を「ゼロエミ・チャレンジ企業」として公表しています。またカーボンニュートラルへの取り組みの実績がメディアで取り上げられる、自治体から表彰される、といったメリットも考えられます。
カーボンニュートラルへの取り組みがひいては社会への貢献となり、企業のブランドイメージの向上にもつながるため、広告宣伝効果も見込めるでしょう。
■光熱費・燃料費を低減できる
カーボンニュートラルへの積極的な取り組みで、エネルギーコストの削減が実現できます。
企業として取り組むカーボンニュートラルとして、具体的には次の取り組みがあげられます。
- 太陽光発電の導入
- オフィス全体の節電対策
- 省エネ効果の高い機器の導入
- 働き方改革によるオフィスワークの削減 など
太陽光発電や省エネ効果の高い機器の導入などは、イニシャルコストはかかりますが、長期的に考えればエネルギー費の削減へつなげられます。
またテレワークを推進すればオフィスの光熱費がおさえられる上に、通勤にかかる二酸化炭素排出もおさえられるという、社会的なカーボンニュートラルにも寄与できます。
■金融機関から低金利で融資を受けられる
「ISO14001」「エコアクション21」の認証を受けると、多くの金融機関より低金利融資を受けられるメリットがあります。
ISO14001は、国際標準化機構が策定した環境マネジメントに関する国際規格であり、エコアクション21は、環境省が策定した環境経営の認証・登録制度です。いずれの規格も、大まかな内容は次のとおりとなっています。
- 環境経営の方針・目標を立てる
- 目標達成のための仕組みを作り行動する
- 結果を分析して評価する
- 評価を基に次の改善へつなげる活動を実施する
上記のPDCAサイクルを基本として、結果を環境経営レポートとして作成し公表するというのが一連の取り組みの流れです。
上記の認証を受けた企業に対して、通常よりも優遇された金利で融資する商品を取り扱う金融機関が増えてきています。規格認証には費用がかかるものの、低金利の融資が利用できるようになれば長期的にはコスト削減になります。
■新規事業の開拓につながる
カーボンニュートラルに取り組む中で、他の団体や企業との連携が進めば、これまでに実現できなかった新たなビジネスが生まれる可能性があります。
「ISO14001」「エコアクション21」といった第三者機関の認証を受けていれば、環境経営への取り組みを取引条件とする企業に対応が可能です。また、自治体の補助や入札審査の加点といった恩恵を受けられる可能性も高まります。
さらに「J-クレジット制度(温室効果ガスの排出削減量や吸収量を売買できる制度)」を利用すれば、環境問題へ積極的に取り組む事業者との新規取引が始められる可能性も期待できるでしょう。
■事業の長期的な継続に寄与する
環境経営に積極的に取り組むことで、企業の社会的な価値が高まり、投資家やさまざまなステークホルダーからの評価にもつながります。また、若手人材の企業選びに重要視される点の一つとして、環境問題に取り組む企業があげられます。
社会的評価の向上と若手人材の確保が従業員のモチベーションアップにつながり、事業の継続に大きく寄与するでしょう。逆に環境負荷の大きい事業を継続することで、エネルギー資源の物理的な減少や環境破壊による社会的信頼の失墜などによって、将来的に資源調達が難しくなるリスクを持ちます。
環境に配慮した経営を進めることで、エネルギー消費や環境負荷をライフサイクル全体で抑制できます。企業は環境配慮製品やサービスの提供により、長期的に持続可能な消費と生産を生み、事業の長期安定化を図れるでしょう。
オフィスでできるカーボンニュートラルへの取り組み
オフィス単位で取り組み可能なカーボンニュートラルは、大きく分けて次の3つが考えられます。
- 再生可能エネルギーの導入
- オフィスの省エネ対策
- カーボンオフセットの利用
■再生可能エネルギーの導入
調達が可能であれば、再生可能エネルギーの導入はカーボンニュートラルの取り組みとして非常に有効な施策です。CO2削減に取り組むには、省エネ対策よりも再生可能エネルギーへ変更する方が効率の面で有利です。
利用している電力の切り替え
太陽光・風力・水力・地熱などの再生可能エネルギー由来の電力に切り替える方法があります。
環境庁では、再生可能エネルギーの導入方法として「再エネ電気プラン」を紹介しています。再エネ電気プランの利用によって得られるメリットは、次のとおりです。
- 契約の切り替えだけで再生可能エネルギーの利用ができる
- CO2排出量は実質ゼロとなる
- 条件によっては環境省からの補助金が受けられる
- 企業の社会的貢献のアピール効果が狙える など
自社ビルを所有している場合は、再エネ電気プランへの移行は電力供給事業者への申し込みで切り替えが可能です。しかしながらテナントビルに入居している企業は、ビルの所有者と使用者が違うため、自社のみの電力供給先を切り替えるのが難しいという問題があります。再エネ電気プランの詳細は、環境省のWEBサイトでも確認できます。
※参考:環境省:再エネ電気プラン
自社で太陽光発電をおこなう
自社ビルの場合は、太陽光発電の設備を導入するという方法もあります。
屋上に設置可能なスペースがあれば、太陽光パネルと蓄電池を設置し、自家消費電力の一部を賄うことができるようになります。発電による電力のランニングコスト削減のほか、建物の省エネ性能向上で資産価値が高まる点もメリットです。
賃貸ビルを所有している企業では、ビルに太陽光発電設備を持つことで、環境対策に関心がある優良企業を誘致できるという面もあります。2023年以降も電気代の高騰が予測されているため、長期的には光熱費のコスト削減としても有効な施策といえるでしょう。
■オフィスの省エネ対策
テナントビルに入居している企業は、電力供給先の変更は現実的に難しいため、オフィスの省エネ対策に積極的に取り組むと良いでしょう。
従業員個人がそれぞれ環境対策の意識を持てば、CO2排出量の削減が可能となります。光熱費のコスト削減にも直接つながるため、従業員の環境問題への意識づけが非常に重要です。
オフィスの不要な電力消費を削減
不要な消費電力の削減は、オフィス内では取り組みやすい事例です。
- 人のいない場所の消灯
- 階段の積極利用
- エアコンの設定温度の変更
- 離席時のパソコン電源オフ など
ある程度従業員の意識に左右される要素があり、導入時は従業員への教育が必要です。
また「照明器具をLEDに変更する」「外灯・廊下などにセンサースイッチを導入する」など、人的作業を減らす対策もオフィスの電力消費削減には効果的です。
空調の効果を上げる工夫をする
オフィスでの省エネ対策には、空調の効果を高める工夫を取り入れるのも有効です。特に広いオフィスでは、大きな窓が設置されていることが珍しくありません。しかし、室内の熱の50~70%は窓を通して伝わると考えられます。
たとえば窓に遮熱フィルムを取り付ける、ブラインドを設置して遮熱効果を高めるといった工夫をすれば、空調の効果を高めることができます。
また、暖気は空間の上部に、寒気は空間の下部に集中しやすいものなので、サーキュレーターを活用すれば室内の温度を均一に保つことができ、これもやはり空調の効果を上げることに繋がります。エアコンの定期的な清掃や室外機の遮光でも効果が見込めるため、何らかの施策は取るべきでしょう。
働き方改革によるオフィス滞在時間の削減
オフィス内に従業員を滞在させないことも、カーボンニュートラル対策となります。具体的に次のような取り組みがあげられます。
- ノー残業デーの設定
- 定時退社の徹底
- 終業時の空調停止・一斉消灯
- 終業時間の調整(夏は時短、冬は拡大) など
オフィスに従業員が一人でもいるとフロア全体の光熱費がかかるため、どうしても残業が必要な従業員は一定の場所へ集めるという節電対策もあります。
またオフィス滞在時間を効率的に減らすには、テレワークの導入が非常に効果的です。オフィスへ出社する人数を減らせるため光熱費の削減になる上、通勤にかかるエネルギーの削減にもつながります。
断熱や遮熱目的のリフォーム
光熱費で大きなウェイトとなる空調費をおさえるためには、断熱や遮熱目的のリフォームを実施する方法もあります。具体的には、次の例があげられます。
- 遮熱シート・遮熱カーテン・遮熱ブラインドの設置
- 断熱効果のあるガラスの導入
- 外壁を遮熱・断熱効果のある塗料で塗装 など
ここまで大きなリフォームを施さなくても、「空調やクーリングタワーの定期的な清掃」「エアコン室外機の遮光や冷却水の散布」など、空調の効果を高められる施策はあります。
手がけられる部分はすぐにでも取り組み、そのうえで費用対効果を考えてリフォームを検討すると良いでしょう。
■カーボンニュートラルに配慮したオフィスへの移転
現在テナントビルへ入居している企業は、カーボンニュートラルに配慮したオフィスへの移転も視野に入れてみてください。
2022年12月現在、環境に配慮した「ZEB(Net Zero Energy Building、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」がさまざまな不動産業者によって開発されています。
ZEBはビル全体で消費されるエネルギーと創出されるエネルギーを合計し、一次エネルギー消費量を実質ゼロとする設計の建築物です。こうしたビルに移転することで、既存のオフィスに手を加えるよりも短期間で結果を見込める可能性が期待できます。
オフィスの移転に際しては、専門業者に任せると物件選択や工事などの手間がかかりません。
アイリスチトセの「オフィス移転トータルサービス」では、物件の紹介から内装のデザイン・工事、オフィス家具の選定、引越しまで、ワンストップでオフィスの移転が完了します。働き方改革に合わせたレイアウトや、生産性の向上を見込めるオフィス環境の提案も可能です。
事例集を無料配布していますので、オフィス移転に興味をお持ちの担当者の方は、お気軽にお問い合わせください。
■カーボンオフセットの利用
オフィス内での業務だけでは、排出した温室効果ガスの分を創出するには限界があり、カーボンニュートラルの実現が難しい可能性も否めません。そのような場合、カーボンオフセットの利用を検討すると良いでしょう。
カーボンオフセットとは、温室効果ガスの排出量を排出削減や吸収に貢献することで埋め合わせる取り組みを指します。自社の取り組みだけでは排出量に見合った埋め合わせ活動ができず、カーボンニュートラルが実現できないかもしれない場合は「J‐クレジット制度」を利用してカーボンオフセットに取り組みます。
J‐クレジット制度とは、他者が削減・吸収した温室効果ガスを「クレジット」として国が認可し、売買できるようにした制度です。売買は仲介事業者を介して実施、また売り出し後6カ月以上経てば入札での購入も可能です。
J‐クレジットで不足分を充当する分を購入することで、実質的にカーボンニュートラルの実現が可能となります。
オフィスのカーボンニュートラル向け補助金
カーボンニュートラルに取り組むにあたり、次にあげる補助金が利用できます。
- ものづくり補助金のグリーン枠
- 建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業
■ものづくり補助金のグリーン枠
経済産業省のカーボンニュートラルに向けた支援施策に「ものづくり補助金」のグリーン枠があります。
ものづくり補助金は、中小企業に対して設備投資を支援する補助金です。グリーン枠は脱炭素化に寄与する設備やシステムに対して利用でき、上限金額は上限2,000万円で補助率3分の2(2022年度)と、通常枠(上限1,250万円)と比較して高めに設定されています。
申請時には、事業計画とこれまでの温室効果ガス排出削減の取り組みを示す必要があります。
脱炭素に特化した事業を計画している企業にとってはメリットが大きく、申請する価値は高いと考えられるでしょう。
※参考:ものづくり補助金
■建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業
経済産業省・国土交通省・厚生労働省が連携して取り組む制度で、新築建築物および既存建築物のZEB化、既存建築物の省CO2改修に対する支援が受けられます。
受けた補助金は空調や換気などCO2削減に関する設備費に使用でき、ZEB化に対する補助金はかかった費用の3分の2(上限5億円)、省CO2改修支援では3分の1(所持する建築物によって上限金額が異なる)です。
停電時にもエネルギー供給が可能なレジリエンス強化型のZEBに対する支援が優先され、さらに再エネ100%となる事業には加点があり、採択されやすくなるメリットがあります。
ーボンニュートラルに関する相談先
カーボンニュートラルの取り組みに関して相談したい場合、次の窓口が利用できます。
- 中小機構「カーボンニュートラルオンライン相談窓口」
- 環境共創イニシアチブ「省エネお助け隊」
■中小機構「カーボンニュートラルオンライン相談窓口」
中小機構では、カーボンニュートラルの実現に関する相談を受け付けています。
- 受付時間:火曜日と木曜日の9時から17時まで
- 料金:無料
- 特徴:相談は1回60分、何度でも利用可能
ZoomかMicrosoft Teamsを使ってのオンライン相談なので、全国どこからでも相談が可能です。
経験豊富な専門家からアドバイスが受けられ、カーボンニュートラルにどのように取り組めば良いかわからない方や、補助金の相談をしたい方など、幅広い内容に対応しています。
■環境共創イニシアチブ「省エネお助け隊」
「省エネお助け隊」は、経済産業省資源エネルギー庁の「地域プラットフォーム構築事業」で選ばれた省エネ支援団体です。
全国81カ所に窓口があるため、全国対応が可能となっており、地域に合わせた内容の相談ができます。
- 受付時間:窓口によって異なる
- 料金:省エネ診断は10,120円(専門家1名)もしくは15,400円(専門家2名)、相談は無料、支援はかかる費用の1割
- 特徴:企業が抱える省エネに関するさまざまな悩みをカバーできる
省エネお助け隊は相談だけではなく、希望すれば具体的な支援まで実施してもらえるのが特徴です。
※参考:省エネお助け隊・相談窓口
まとめ:オフィスでもカーボンニュートラルへ積極的な取り組みを目指そう
環境問題への意識の高まりから、オフィスでもカーボンニュートラルへの取り組みが求められています。積極的に取り組むことで地球環境への貢献となり、企業のブランドイメージ向上にもつながります。
2023年以降も光熱費の高騰が予測されている現在、カーボンニュートラルへの取り組みでコスト削減も期待できます。オフィスでの取り組みは企業努力もさることながら、従業員の環境対策へ意識を高めることが非常に重要となるでしょう。