サードプレイスオフィスとは?基礎知識から導入事例までを徹底解説
働き方
働き方改革が推進されている中、企業の取り組みによって働く環境が大きく変化しつつあります。最近では、働き方改革の一環として「サードプレイス」に注目が集まっています。
自社で導入が検討されているものの、サードプレイスがどのようなものかわからないという人もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、サードプレイスオフィスの基礎知識や効果が期待できるメリットなどを解説します。
課題や解決策、導入事例も併せて解説するので、自社で導入する際にぜひ役立ててください。
目次
サードプレイスとは
まずは、サードプレイスとは何かを解説します。
■快適に過ごせる第3の場所
サードプレイスとは、快適に過ごせる第3の場所を指します。カフェや公園など「心安らげる」と感じる場所であり、快適に過ごせてリラックスできる場所はどこでもサードプレイスと言えます。
ビジネスシーンにおいては「サードプレイスオフィス」と呼ばれ「社員が心地良く働ける第3の場所」を意味します。サードプレイスオフィスが注目されるようになった背景にあるのは、働き方の多様化です。自宅やオフィス以外のワークスペースが選択肢に入るようになったことから、企業にとっては第3の業務スペースに対して目を配る必要が出てきました。
社員が働きやすい環境を作ることは企業にとって重要です。施策の一環としてサードプレイスオフィスの取り組みも検討する価値があるでしょう。
■ファーストプレイス・セカンドプレイスとの違い
サードプレイスは第3の場所を指すため、第1の場所であるファーストプレイスと第2の場所であるセカンドプレイスも存在します。それぞれの違いは次のとおりです。
- ファーストプレイス:プライベートな時間を過ごす自宅
- セカンドプレイス:職場や学校など多くの人と関わり、組織の一員として過ごす場所
- サードプレイス:ファーストプレイス・セカンドプレイス以外の居心地が良いと感じる場所
つまり社員にとってはファーストプレイスが自宅、オフィスがセカンドプレイス、それ以外の心地良く働ける場所がサードプレイスということになります。
サードプレイスオフィスの導入で期待できる3つのメリット
ここからは、サードプレイスオフィスの導入で期待できる効果を具体的に解説します。
■1.生産性の向上
サードプレイスオフィスを導入すると、個々の社員が快適だと感じる場所で業務を進められるため、生産性の向上が期待できます。
近年は自宅でのテレワークを導入する企業も増えました。しかし、自宅でのテレワークは、家事や子育てなどで業務に集中できないケースもあります。サードプレイスオフィスを設置すれば、自宅とは別の場所でテレワークができるため、業務に集中しやすい環境に身を置けます。
また、毎日同じ場所で業務をおこなうと、行き詰って上手く進まないこともあるでしょう。サードプレイスオフィスがあると気分転換になり、業務がはかどる可能性が高まります。
■2.発想力の向上
自宅や既存のオフィスとは異なるサードプレイスオフィスで業務をおこなうと、新鮮さを感じて新しい発想が生まれやすくなることがあります。
一口にサードプレイスオフィスといってもタイプはさまざまです。シェアオフィスやサテライトオフィスでは普段交流がない人との出会いが増えるため、脳に良い刺激を与えられます。新鮮な場所に身を置くことで頭をリフレッシュでき、新たなアイデアが生まれるかもしれません。
シェアオフィスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
サテライトオフィスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■3.緊急時のリスク分散
災害が発生した際には既存のオフィスが使用できなくなる可能性があるため、万が一に備えて何らかの対策が必要です。オフィスが無事でも、交通機関の麻痺によって社員が出勤できなくなる可能性もあります。
サードプレイスオフィスがあると、既存のオフィスが被害を受けたときや社員が出勤できないときでも代わりに使用できます。緊急時でも事業を継続できるため、BCP対策として有効です。
なお、BCP対策に関してはこちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
サードプレイスオフィスの設置場所
サードプレイスオフィスには、おもに次のタイプがあります。
- シェアオフィス
- サテライトオフィス
- ワーケーション
- 社内のサードプレイスオフィス
ここからは設置場所別にサードプレイスオフィスのタイプを紹介するので、自社にはどのタイプが適しているかを検討する際に役立ててください。
■社外に設置する場合
社外に設置するサードプレイスオフィスには、次のようなものがあります。
- シェアオフィス
- サテライトオフィス
- ワーケーション
上記のサードプレイスオフィスは、社員の自宅の近くや本社から離れた場所に設置する方法があります。社員の自宅近くにあるシェアオフィスを導入すると、移動時間をおさえつつオンオフの切り替えがしやすくなるでしょう。
最近では、サウナやキャンプ場などの施設に併設されたシェアオフィスも登場しています。気分転換しながら業務に取り組めるため、集中しやすい環境作りに役立ちます。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、本社から離れた場所にサテライトオフィスを設置する企業も増えました。拠点を地方に分散化させることで、商圏の拡大やBCP対策などが期待できます。
そして、ワーケーションもサードプレイスオフィスとして活用できます。ワーケーションとは、働きながら余暇も楽しむという新しい働き方です。2019年4月からは、年5日の有給休暇取得が義務づけられました。サードプレイスオフィスとしてワーケーションを導入すると、有給休暇取得の推進にもつながります。
ワーケーションについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ワーケーションのメリットとは?効果や導入時の課題と対策を解説
■社内に設置する場合
サードプレイスオフィスは、屋外に設置するのが一般的ですが、社内にサードプレイスオフィスに似た空間を設置する企業もあります。社内に設置するサードプレイスオフィスの例は次のとおりです。
- カフェスペース
- バー
- ダーツ場
- ビリヤード場 など
企業のなかには、まるでアウトドアを楽しんでいるような気分を味わえる空間を設置しているところもあります。
社内に設置すると気軽に利用できるだけでなく、気分転換の場所としても活用できます。普段は直接関わることがない部署の社員同士が集うことで、社内コミュニケーションの活性化や新たなアイデアの創出につながる可能性も期待できます。
サードプレイスオフィスにおける3つの課題
ここからは、サードプレイスオフィスに関する課題を3つ解説します。
■1.セキュリティリスク対策
基本的にサードプレイスオフィスは自宅やオフィス以外の場所にあるため、既存のセキュリティレベルでは機密情報漏洩の危険性があります。たとえば、社員がセキュリティレベルの低いフリーWi-Fiを利用した場合、第三者による盗み見や改ざんを招くリスクが高いです。
現状のセキュリティ対策が不足している場合は、新たに見直す必要性があるでしょう。対策刷新後は社員へ周知徹底することも重要です。
■2.コミュニケーション環境の整備
オフィス外で業務をおこなう社員が増えた際に課題となりやすいのがコミュニケーションです。出社時に比べコミュニケーションが希薄になりやすいため、企業側で適切な環境を作る必要があります。コミュニケーション不足は、テレワークでも課題の一つとして浮き彫りになりました。
総務省の情報通信白書令和3年版によると、テレワークの課題としてコミュニケーション不足と回答した人の割合が28.6%だったことがわかっています。
課題 | 割合 |
テレワークに適した仕事ではないため | 36.3% |
勤務先にテレワークできる制度がないため | 27.9% |
会社に行かないと利用できない資料 | 22.8% |
会社でしかできない手続き | 19.4% |
社員同士のコミュニケーション | 17.8% |
上司からの確認・指示を得にくい | 10.8% |
※出典元:総務省「情報通信白書令和3年版」
コミュニケーション不足に陥ると、孤独感を覚える社員も出てくる可能性があります。特にチームで仕事をしている場合は業務進行に悪影響をおよぼすこともあるため、きちんとした対策が必要です。
■3.適正な勤怠管理システムの構築
サードプレイスオフィスはオフィスと離れた場所で業務をおこなうため、対面での評価・管理前提のシステムでは適切に対応できない可能性があります。特にシェアオフィスやワーケーションなどの自社施設でない場所は、きちんとシステムを整備しないと管理しにくいでしょう。
適切なシステムが整備されていないと、勤務状況や業務の進捗状況を把握しにくく、適正な人事評価がおこなえなくなる可能性もあります。既存の仕組みで対応できるのか、勤怠管理や人事評価システムの見直しが求められます。
サードプレイスオフィスの課題に対する解決策
ここからは、サードプレイスオフィスの課題に対する解決策を解説します。
■セキュリティ対策の強化と教育
特に社外にサードプレイスオフィスを設置する際は、端末の盗難や紛失で起きる情報漏洩に関する対策が必要です。第三者がいる中で業務をおこなうことを考慮したセキュリティルールを策定しましょう。端末の盗難や紛失には次のような対策が有効です。
- 社員に生体認証付きの端末を貸与
- リモートワイプを利用
- ハードディスクの暗号化
- ソフトウェアやウイルス対策ソフトを定期的に更新 など
また、サードプレイスオフィス利用時のセキュリティポリシーを策定し、研修などを通して社員に浸透させるようにしましょう。
■コミュニケーションツールの導入
コミュニケーションが希薄化しないようツールの見直しもおこないましょう。コミュニケーションの活性化に役立つツールは、次のとおりです。
- 社内SNS
- チャットツール
- オンライン会議システム など
チャットツールの中に雑談用のチャットを設定すると、始業前や休憩時間に気軽にコミュニケーションが取れる環境を整備できます。
また連絡の取り方にルールを設けると、さらなるコミュニケーションの活性化につながります。連絡の頻度や連絡すべきケースなどを明確にしておくと、気後れせずにコミュニケーションを取りやすくなります。
■勤怠管理方法の明確化
既存の勤怠管理方法では不備がある場合、業務可視化ツールや勤怠管理システムなど新たな手段を導入してみましょう。
また、新たなツールやシステムを導入する際には、適切に人事評価できるかも併せて検討しましょう。たとえばワーケーションをサードプレイスオフィスとして利用する場合、業務と余暇の区分管理が難しくなります。業務の進捗状況や成果の把握が難しい場合、人事評価が適切におこなわれず、評価の不平等が生じる可能性もあります。
評価基準を明確にすることや公平に評価することは、社員のモチベーションにも関わる重要事項です。新たなツールやシステムを導入する際には、適切に人事評価できるかも併せて検討しましょう。
サードプレイスオフィスの場を提供している企業事例
ここからは、サードプレイスオフィスの場を提供している企業の事例をご紹介します。サードプレイスオフィスとして活用できる場を探す際の参考にしてみてください。
■ワークスタイリング(三井不動産株式会社)
ワークスタイリングは三井不動産が運営する企業のサードプレイスとして使えるコワーキングスペース施設です。
現在は全国約150箇所に展開しており、契約企業数は約800社におよびます。
ワークスタイリングの詳細は、こちらの記事で紹介しています。
【インタビュー】三井不動産株式会社-ワークスタイリング-「コロナで変わるワークプレイスの今後」
■セキュリティスタッフ株式会社
セキュリティスタッフ株式会社は愛知県岡崎市を拠点に駐車場警備やイベント警備などのあらゆる警備サービスを提供する企業です。2021年10月のオフィス移転をきっかけに休憩スペースやジムを設置するなど、3階のフロア全体をサードプレイスのように使えるフロアとしました。
セキュリティスタッフ株式会社の詳細は、こちらの記事で紹介しているのでぜひチェックしてみてください。
【インタビュー】セキュリティスタッフ株式会社「先を見据えたオフィスデザインとDXの推進」
■アイリスグループ東京本部
アイリスグループの東京本部では社員に自社のカフェテリアをサードプレイスオフィスとして提供しています。
カフェテリアのおもな役割は食堂ですが、休憩以外の時間帯も利用できるようにしました。その結果、仕事の合間のブレイクタイムやPCを持ち込んでの作業など、社員自らが工夫して利用するようになりました。このほかにも来訪者との雑談や社内懇談会など、さまざまなシーンで利用できる場所として付加価値を生んでいます。
まとめ:サードプレイスオフィスを導入して働きやすい環境を整備しよう
社員が働きやすい環境を整備する方法は複数ありますが、サードプレイスオフィスの導入も選択肢の一つです。サードプレイスオフィスは集中しやすい業務環境の整備に寄与するだけでなく、生産性や発想力の向上が期待できます。また緊急時のリスク分散としても有用です。
快適なサードプレイスオフィスを実現するためには、社員の業務内容やニーズを把握することも大切です。設置しても利用されなければ意味がないため、自社に適したサードプレイスオフィスは何かをしっかりと分析しましょう。
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