BCP対策とはなにか基本から解説|6つのステップで策定・運用しよう

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BCP対策とはなにか基本から解説|6つのステップで策定・運用しよう

新型コロナウイルスの流行や度重なる自然災害などを契機とし、近年BCP対策の重要性が高まりつつあります。緊急時に、事業への影響を最小限におさえ速やかに業務をおこなえる状況を作るには、事前の計画と対策の立案が重要です。災害はいつどこで見舞われるかわからないため、BCP対策はすべての企業が検討すべき取り組みとも言えるでしょう。

この記事ではこれからBCP対策をおこなう企業向けに、基礎知識や実行する際のポイントなどをご紹介します。自社に合ったBCP対策を策定する際の参考にしてみてください。

BCP対策は、緊急時でも事業を継続できる方法をまとめた計画のことです。似たような言葉で「防災」「BCM」がありますが、BCPとは意味が異なります。ここでは、BCP対策の基礎を見ていきましょう。

 

■BCP対策とは

BCPは、「Business Continuity Plan」(事業継続計画)の略称です。事業を成長させる計画という意味ではなく、緊急事態の発生後であっても事業を継続させ、復旧を目指すことがBCPの役割です。

国内では東日本大震災以降、大規模な災害や景気悪化による倒産が多発したことで注目されるようになりました。緊急事態とは地震などの自然災害だけではなく、ウイルスによるパンデミックや停電、社員の不祥事なども含まれます。

緊急事態の発生は事業に大きな影響を与えるため、BCP対策を喫緊の課題として捉える企業も増えています。

 

■防災やBCMとの違い

BCPと同じような言葉で、「防災」や「BCM」がありますが、それぞれ定義が異なります。防災は「自然災害を防ぐ」という意味であり、事前対策にフォーカスした取り組みです。また、人の命や企業の財産を守ることが目的であり、BCPのように緊急事態発生後に事業を継続させる施策ではありません。

BCMの意味は「Business Continuity Management」(事業継続マネジメント)です。事業を継続させる計画のBCPに対して、事業をしっかりと機能できるように管理・マネジメントすることが目的です。

自社に合ったBCP対策を策定しても、BCMが機能していなければ緊急時の事業継続や早期復旧を実現できません。BCP対策とBCMはセットで検討することが重要です。  

 

■介護業ではBCPの策定が義務化

介護業では2024年までにBCP対策を策定することが義務化されています。法律上では2021年に施行されており、すべての介護サービス事業者は2023年度までに事業を継続させる方法の策定を終えていることが必須です。

介護業の場合、高齢者や基礎疾患を持っている人が多く、自然災害や感染症拡大の際に命に関わるリスクが高いと言えます。そのため、緊急時に介護サービスを継続させるBCP対策は非常に重要です。またBCP対策だけではなく、研修やシミュレーションの実施も含まれており、事業継続マネジメントのBCMも義務化されています。BCP対策・BCM義務化の法律に従わない場合、介護報酬の減算やトラブル発生時に法的責任を問われる可能性があります。

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BCP対策に取り組むべき3つの理由

BCP対策は企業にとって重要なタスクですが、なぜでしょうか。優先課題として取り組むべき理由を具体的に解説します。

 

■1.緊急時の事業維持・早期復旧のため

BCP対策により、緊急時でも事業を継続しながら早期の復旧を目指せます。あらかじめ緊急時の対応を定めているため、迷わず正しい行動がとれ、倒産や事業縮小のリスクを軽減できるでしょう。

BCP対策を疎かにしている場合、誤った行動や曖昧な対応によって事業への影響が大きくなることが懸念されます。想定以上に復旧に時間がかかるなど、損害が大きくなるリスクも高いでしょう。

BCP対策を明確に練り社員に周知しておけば、いざというときも素早く行動を起こせます。事業維持や早期復旧に向けた動き出しが早ければ、その分企業がダメージを受けるリスクを減らせます。

 

■2.企業ブランディングに影響するため

BCP対策に取り組むことで、企業のブランディングに貢献できます。BCP対策によるリスクマネジメント能力をアピールすることで、社外に対し「事業継続のための体制が整っている」「災害時でも事業への影響を最小限におさえられる」と認識してもらえます。

災害や緊急事態に強い企業としてブランディングできていれば、取引先や消費者から信頼され、競争力を高めることにもつながるでしょう。企業のイメージアップの観点からも、BCP対策に取り組む価値は高いです。

 

■3.経営戦略の見直しにつながるため

BCP対策の策定では緊急時に優先すべき事業を見極める必要があります。企業にとって重要度の高い課題を明確に優先度を設定する必要がありますが、その過程は経営戦略の見直しにもつながります。

事業の優先順位や部署ごとのつながりなどが可視化されることで、今の経営を見直し新たな戦略を立案することが可能です。BCP対策事業成長の契機にもなります。

BCP対策を策定・運用する6つのステップ

BCP対策の策定から実際に運用するまでの流れは次のとおりです。

  1. BCP対策のプロジェクトチームを結成
  2. 事業継続で優先するべきことを決定
  3. 対策が求められるリスクの把握
  4. 復旧に向けた目標・プランの作成
  5. 作成したBCP対策の周知・訓練
  6. 策定したBCP対策の定期的な検証

ここでは、スムーズにBCP対策を導入できるように、各ステップの詳細を解説します。

 

■1:BCP対策のプロジェクトチームを結成

まずはBCP対策を策定するためのプロジェクトチームを作ります。事業継続や早期復旧の計画をまとめるBCPは社内のあらゆる部署に影響するため、各部署から人員を選出しましょう。

プロジェクトチームを取りまとめるのは、総務部になることが多いようです。総務部が事務局となり、プロジェクトチームの進捗管理や作業の調整などをおこないます。

 

■2:事業継続で優先するべきことを決定

プロジェクトチーム結成後、自社にとって優先すべき重要な事業はなにかを決めます。中核事業を決めておけば、緊急時にその事業を早期に復旧させ、全体の損害を減らせるメリットがあります。

優先的に復旧すべき事業は、売上がもっとも高い事業や企業ブランディングに必要な事業です。また納期などの関係により、早期に復旧できなければ損害が大きくなる事業も復旧優先事業です。

事業継続で優先するべきことは、最初に自社事業や業務をリストアップすることで全体像を把握しやすくなり、選びやすくなります。

 

■3:対策が求められるリスクの把握

復旧優先事業を決めたあとは、BCPで対応するリスクを理解しておく必要があります。リスクには、次のように外的リスクと内的リスクがあります。

外的リスク
  • 自然災害
  • 感染症
  • サイバー攻撃
  • 停電
  • テロ など
内的リスク
  • 個人情報の流出
  • コンプライアンス違反
  • 粉飾決済
  • 製品のリコール
  • バイトテロ など

外的リスクと内的リスクを把握し、どのような損害につながるのか分析することも重要です。具体的な状況を想定することで、計画もより具体的に詰めることができるようになります。

 

■4:復旧に向けた目標・プランの作成

BCP対策を策定する際は、復旧の目標値や発動基準・組織体制などのプランを作ることも大切です。いつまでにどの程度まで復旧すれば良いのか目標値を定めましょう。

復旧に向けたプランを作るときはどのタイミングでBCPを発動するのか、誰が行動するのかも細かく決めておきましょう。タイミングを見誤ると損害が大きくなる可能性があるため、注意して設定しておきたい点と言えます。

また、組織体制が曖昧な場合、緊急時の現場が混乱し、復旧が遅くなります。事業継続のための復旧目標値や動き出すタイミング、社員の動きを含めて具体的に定めておけば緊急時でも冷静に対応できます。

 

■5:作成したBCP対策の周知・訓練

作成したBCP対策は自社内でしっかりと周知し、繰り返し訓練することが大切です。計画を立てただけでは、いざというときに本当に対応できるのかわかりません。適宜社内研修や訓練を実施しましょう。

訓練は災害時のシナリオを作り、一室に集まってどのように動けば良いのかシミュレーションする「机上訓練」でも有効です。また緊急時には連絡が取りづらくなるため、社員の安否確認をおこなう報告訓練などの機会を設けると良いでしょう。

 

■6:策定したBCP対策の定期的な検証

BCP対策は定期的に見直して改善する必要があります。実際に訓練してみると、さまざまなところで不備が見つかり、事業継続や早期復旧に対して十分に対応にできない可能性があるためです。

また、時間の経過によって市場や売上推移に変化が起こり、優先すべき事業を変更する必要性が出てくるかもしれません。策定したBCP対策は定期的に検証し、最適なプランを保つようにしましょう。

BCP対策の策定に役立つ3つのマニュアル

BCP対策の策定の際に役立つ3つのマニュアルをご紹介します。どれも国が提供しているマニュアルです。それぞれ順に見ていきましょう。

 

■1.中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」

中小企業庁による「中小企業BCP策定運用指針」は、中小企業のBCP対策策定に役立つマニュアルです。BCP策定運用指針に沿って作業すれば、基本的なBCP対策の形を作れます。

また、入門、基本、中級、上級の4つのコースにわかれており、目的に合わせて選べることも特徴です。入門コースは、必要最低限のBCP策定・運用に役立ち、基本コースからは、より具体的な策定・運用に活かせます。

さらに、「策定を支援するコンテンツ」の無料ダウンロードや業種別の問い合わせ対応もおこなっています。中小企業に勤めている人は、「中小企業BCP策定運用指針」を活用しましょう。

出典元中小企業BCP策定運用指針

 

■2.経済産業省「事業継続計画策定ガイドライン」

経済産業省による「事業継続計画策定ガイドライン」は、BCPの基本的な考え方から組織体制、訓練、策定などBCP対策全体の流れがまとまっているマニュアルです。

システム障害やサイバー攻撃、情報漏洩などの問題発生時に、具体的にどのように対応すれば良いのかも解説されているため、BCP対策の策定を進めやすいでしょう。特にIT系企業には参考にしやすいマニュアルです。

出典元:事業継続計画策定ガイドライン

 

■3.内閣府「事業継続ガイドライン」

「事業継続ガイドライン」は内閣府の防災担当が作成しているマニュアルです。BCP対策がなぜ必要なのかや策定の手順などが細かく説明されているため、目を通しておくとスムーズにBCP対策の策定をおこなえるでしょう。

また、中小企業向けや一部の業界向けに作られているものではなく、あらゆる企業にとって役立つマニュアルになっているため、「事業継続ガイドライン」から目を通しておくと安心です。

ただし、2005年8月からリリースされた「事業継続ガイドライン」は、これまでに3度改定しているため、参考にするときは公式サイトで最新版をチェックすることが大切です。

出典元:事業継続ガイドライン

BCP対策を実行する際のポイント

BCP対策を進める際におさえておきたい4つのポイントをご紹介します。

 

■自社関連企業の対策状況を確認

BCP対策では、自社だけでなく取引先や関連企業のBCP対策にも目を向けることが大切です。関連企業のBCP対策が不十分なことで緊急時に事業がストップしてしまうと、自社にも大きく影響する可能性があるためです。

特にBCP対策の策定で選んだ中核事業の関連企業については、状況をよく調べておきましょう。企業によってはホームページでBCP対策について提示しています。また、万が一のときに備え代替企業に当たりをつけておくことも重要です。

 

■できる対策から実行

BCP対策は最初から完璧を求めずに、できるところからはじめましょう。BCP対策の策定には、さまざまな緊急事態に対応するプランの立案、自社関連企業の対策状況の確認など多くの工程が必要になります。とは言え短時間ですべてをまとめることは不可能です。

それでも緊急事態はいつ発生するかわかりません。複数の連絡手段を確保することやデータのバックアップ、もしくはクラウド化など今できる対策を模索しましょう。ささいなことでも日々BCP対策することで、企業の負うリスクを減らしていけます。

 

■BCP対策向けの補助金・助成金を利用

BCP対策に活用できる補助金や助成金もあります。うまく活用することで費用面の負担を減らせるため、適用されるものがないか確認しておきましょう。一例をご紹介します。

制度名 適用条件 上限額 助成率
BCP実践促進助成金 中小企業や個人事業主、小規模企業 1,500万円(下限額 10万円)

(上限1,500万円はクラウド化の助成額含む。クラウド化の助成上限額は450万円)

  • 中小企業者等:助成対象経費の1/2以内
  • 小規模企業者:助成対象経費の2/3以内
テレワーク促進助成金 テレワークの新規導入 事業所の規模が30人以上999人以下:250万円 2分の1
事業所の規模が2人以上30人未満:150万円 3分の2
IT導入補助金 ソフトウェア費・クラウド利用料(1年分)・導入関連費 【通常枠】

A類型:30万~150万円未満

B類型:150万〜450万円以下

2分の1以内

※出典元:令和4年度 BCP実践促進助成金 申請案内

※出典元:テレワーク促進助成金(令和4年度)

※出典元:IT導入補助金

この他にもさまざまな補助金や助成金があり、自治体が独自に募集しているものもあります。募集の有無や条件は変更になる可能性もあるため、自社のあるエリアの自治体に問い合わせて、適用できる補助金・助成金があるか確認しましょう。

 

■BCP対策の専門家に相談

BCP対策の専門家に相談するのもおすすめです。専門家は自然災害のリスク診断やサイバーセキュリティ対策など、BCPに関する必要な取り組みについて具体的にアドバイスしてくれます。自社に適した対策を提案してもらえるため、よりリスクヘッジを図れます。

BCP対策については次のような場所で相談可能です。

  • 中小機構の地域本部
  • 自治体の役所 など

どちらの専門家を利用する際も、原則無料のため気軽に相談できます。また厚生労働省では、介護施設や事業所向けにBCP作成支援の研修を実施しています。

まとめ:自社に合ったBCP対策で事業を継続させよう

BCP対策は災害時などでも事業を継続できるようにするための対策で、企業にとって重要な課題の一つと言えます。事前に対応方法を社内で検討しておけば緊急事態時に適切に動け、企業の損害を減らすことにつながります。

スムーズに、そして自社に合ったBCP対策をおこなうためには、できる施策から始めることが大切です。また策定後は社員に周知し、適宜訓練や定期的な見直しもおこないましょう。

自社に合ったBCP対策を考え、緊急事態時であっても早期復旧できるような事業継続プランを作成しませんか。

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