ワーケーションのメリットとは?効果や導入時の課題と対策を解説

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ワーケーションのメリットとは?効果や導入時の課題と対策を解説

時代とともにライフスタイルが多様化する中、ワーケーションと呼ばれる働き方が注目を集めるようになりました。日本国内に広まった背景として考えられるのは、2020年7月に政府がワーケーションを普及し、観光促進に取り組む考え方を示したことが影響しています。

実際、自社にワーケーションを取り入れるべきか検討している企業も少なくないのではないでしょうか。

この記事ではワーケーションの定義をはじめ、企業側が得られるメリットについても詳しく解説します。

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ワーケーションとは?

まずは、ワーケーションとは何かについて理解を深めておきましょう。

 

仕事と休暇を両立させた働き方

ワーケーションは、日本では比較的新しい働き方として話題になっていますが、海外では実は20年以上前から存在しています。2000年頃にアメリカで発祥し、徐々に世界で認識されるようになりました。

言葉自体は、「Work(ワーク)/ 仕事」と「Vacation(バケーション)/ 休暇」を組み合わせた造語です。旅行先で仕事をすることを指しており、仕事と休暇を両立させる働き方を意味します。

オフィス以外の場所で仕事をする点では、リモートワークと変わりません。リモートワークは、自宅やカフェ、レンタルスペースなどリモート環境下で仕事をしますが、ワーケーションは休暇も兼ねているため、仕事をしながらバカンスもしっかり楽しみます。

 

ワーケーションの種類は4つ

国土交通省観光庁の企業向けパンフレットでは、4種類のワーケーションスタイルが示されています。

形態 種類 働き方
休暇型 福利厚生型 有給休暇を利用し、旅行先で仕事をおこなう
業務型 地域課題解決型 地域関係者との交流を通じて地域課題の解決策を考える
合宿型 職場メンバーと場所を変えて議論を交わす
サテライトオフィス型 サテライトオフィスやシェアオフィスで仕事をおこなう

ワーケーションの形態には、おもに休暇型と業務型の2つのタイプがあります。休暇型は有給休暇の合間に勤務日や勤務時間を取る働き方で、企業による福利厚生の一環です。仕事は休暇中におこなうため、行き先は社員側で自由に決められます。

業務型は、行き先を企業側が決める出張形式です。勤務時間には縛られますが、仕事が終わった後や休日は自由に休暇を楽しめます。休暇型が「休暇主体」なのに対し、業務型は「仕事主体」の働き方です。

また、ワーケーションに似たものに、ブレジャーまたはブリージャーと呼ばれる働き方があります。これは「Business(ビジネス)」と「Lesure(レジャー)」を組み合わせた造語で、出張の際に滞在を延長して休暇を取る働き方のことです。

休暇を楽しみつつ仕事をおこなうワーケーションとは性質が異なりますが、形態は業務型に分類されます。

 

サテライトオフィスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

ワーケーションが注目されている理由

ワーケーションは2000年頃にアメリカで発祥し徐々に世界に広まった働き方ですが、国内で注目され始めたのはここ数年のことです。

現在国内でワーケーションへの関心が高まっている理由は、おもに次の2つです。

  • 時代の流れとともに働き方が変化したため
  • 有給休暇取得率の低さが問題視されているため

一つ目は、ITの発達によって国内でも多様な働き方が可能になり、ワークライフバランスが推進されやすい時代になったためです。パソコンを使ってリモートワークができる職種であれば、働く場所をオフィスに縛られる必要がありません。

特にここ数年はリモートワークが浸透し始めたことも影響し、ワーケーションが場所にとらわれない働き方として注目されるようになりました。

二つ目は、有給休暇の取得率が低いことから、取得率を高める動きが出てきたことが関係しています。

厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査の概況」によると、労働者1人あたりの有給休暇取得率が56.6%だったことがわかっています。前年の56.3%から0.3ポイント上昇したものの、多くの方が与えられた日数の半分程度しか消化できていません。

 

出典元:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査の概況」

 

このように有給取得率の低さは長年に渡って問題視されていたため、労働基準法の改正によって2019年4月1日から、年5日の有給休暇の確実な取得が義務化されました。

 

国内では有給休暇の積極的な取得につながる可能性があるとして、ワーケーションが導入され始めた経緯があります。

 

ワークライフバランスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

ワーケーションのメリットと期待できる効果

ワーケーションの導入でメリットがあるのは、社員だけではありません。ここでは企業側が得られるメリットを解説します。

 

社員のモチベーション向上

ワーケーションを導入して企業が豊富な選択肢を提供することで、社員が自身のワークスタイルに合わせた柔軟な働き方を実現できます。

働きやすい環境はモチベーションの向上にもつながり、社員満足度のアップも期待できるでしょう。高い満足度をキープできれば企業への貢献意欲が強まり、離職率の低下も見込めます。

 

社員のメンタルヘルスケア対策

2015年12月1日からは労働安全衛生法が改正され、社員50人以上の企業に対してストレスチェック制度が義務化されました。制度の目的は社員のメンタルヘルス不調を未然に防止することのほかに、ストレス原因となる職場環境の改善につなげることです。

厚生労働省の「令和2年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間にメンタルヘルス不調を理由に1ヵ月以上休業または離職した人がいる事業所の割合は9.2%でした。

個人調査では、「ストレスとなっていると感じる事柄がある」と回答した方の割合が54.2%でした。ストレスを感じる社員が増えると、休業や離職につながるリスクがあると言えます。企業にとって、社員のメンタルヘルス対策は重要です。

 

出典元:厚生労働省「令和2年労働安全衛生調査(実態調査)」

 

休暇を兼ねたワーケーションはリフレッシュ効果があるため、社員のメンタルケアにつながると期待できます。最近では新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、国や自治体によってリモートワークが推進されました。

リモートワークはオフィスでの仕事に比べてコミュニケーションが希薄になるため、コロナうつが問題視されています。企業にとってはどのような働き方の社員に対しても、リフレッシュできる環境を整えることが課題です。

 

オフィス環境のストレスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

企業ブランディングへの寄与

各自治体は、ワーケーションの誘致に取り組んでいます。たとえば自治体の中には古民家をリノベーションし、デスクやチェアを揃えて仕事に集中できる環境を整えているところもあります。

スーパーやコンビニも徒歩圏内にあり、四季折々の風景を楽しめることが魅力です。ワーケーション向けの施設を新たに建設した自治体では、リゾートテレワークと銘打ったサイトを立ち上げ、観光情報やモデルプランを提供しています。

ワーケーションの誘致で期待できるのは、観光客が増えて地方における観光業の発展につながる可能性です。一方の企業側は自治体と協力すると社会課題の解決に寄与できるため、企業ブランディングにつながると期待できます。

自治体と協力する様子は、ワーケーション実施後にプレスリリースやSNSで発信すると効果的です。

 

人材市場でアピールできる

テレワークを導入している企業が増えている一方で、ワーケーションを導入している企業はまだ少なく、実施経験がある社員も少ないのが現状です。ワーケーションは、企業が社員にライフスタイルに合わせた働き方を提案できるだけでなく、外部に働き方改革への意識の高さを示すことが可能です。

ワーケーションへの取り組みが広く知れ渡れば、対外的なアピールポイントになります。新たな人材の確保や社員の定着に好影響を及ぼす可能性があるため、人材市場で有利に働くことが期待できます。

 

有給休暇取得の促進

2019年4月1日からは労働基準法の改正により、1年で10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、5日間の有給休暇取得が義務づけられました。違反した場合、社員に対する罰則はありませんが、経営者に対しては30万円以下の罰金が課せられます。

そのため、有給休暇取得の促進は企業にとって課題の一つです。休暇を兼ねているワーケーションは社員が有給休暇を取得しやすい状況を作れるため、取得率のアップが見込めます。

有給休暇の取得率を上げるためには、まずは社員にワーケーションを勧めてきっかけを作りましょう。

ワーケーション導入時の課題と対策

ワーケーションの導入には、社内制度の構築や社員への周知などさまざまな準備が必要なため、計画的に進める必要があります。また、社員は社外で仕事をするため、今まで以上のセキュリティ対策も必要です。

ここでは、ワーケーション導入時の課題と対策を解説します。

 

勤怠管理システムの整備

ワーケーションは社外で仕事するため、オフィスに出社する従来の働き方とは異なります。労働時間や勤務状況を把握しにくくなるため、勤怠管理は課題の一つです。

勤怠管理システムは、オンラインで労働時間の打刻ができ、スマホやタブレットに対応しているものが多いため、ワーケーションを導入しても勤怠管理で問題になるケースはほとんど防げるでしょう。

最近では、他にもさまざまな便利な機能を兼ね備えた勤怠管理システムがあるため、自社に合うものを選ぶようにしましょう。

 

新しい人事評価システムの構築

ワーケーションでは上司が部下の様子を直接確認できませんが、それにより人事評価が下がることはありません。ただし、従来の基準やシステムでは適切に評価ができない可能性があるため見直しは必要です。

業務の様子が見えにくくなる分、より目標設定と達成度に重きをおいた評価をおこなうことになります。目標や業務工数の見積もりなどを含めた、職務実務書を作成するのも良いでしょう。

社員にとっては、働きやすい環境の中で適切に人事評価をしてもらえることで、満足度の向上や成長にも繋げられます。結果、生産性が高まることも期待できます。

 

セキュリティ対策の見直し

ワーケーションは社外で仕事をするため、職種によっては社内機密や個人情報を持ち出さなければなりません。情報が外部に漏れると企業に大きなダメージを与えるため、導入前にセキュリティ対策を見直しておきましょう。

ワーケーションの導入にともなってセキュリティ対策を見直す場合は、総務省のテレワーク・セキュリティ特設サイトが参考になります。特設サイトでは無料相談窓口が用意されており、テレワークマネージャーのサポートが受けられます。

 

参考:総務省「総務省令和3年度 テレワークマネージャー相談事業」

 

特に気をつけたいセキュリティ対策をご紹介します。

 

端末を紛失した際の対策

社員がパソコンやタブレットなどの端末を紛失するリスクはゼロとは言えません。万が一紛失すると社内機密や個人情報が第三者によって悪用される可能性があり、想定される被害は甚大です。

対策の一つに、モバイルアプリケーション管理で管理する方法があります。具体的には端末内のアプリのうち、仕事に必要なものに限ってアクセス権限の付与やデータ保護をおこなって管理する方法です。紛失した際には、対象アプリのデータを削除することで情報漏洩のリスクを避けられます。

 

安全性の高いネットワーク回線を使う

最近では、観光スポットやホテルなどのさまざまな場所に無料Wi-Fiが設置されています。無料Wi-Fiは誰でも気軽に利用できるメリットがある一方で、第三者による盗み見のリスクがあります。

特に注意が必要なのは、パスワードを入力せずに利用できるタイプです。パスワードが必要なものでさえ安全だとは限らないため、特に無料Wi-Fiは利用しないように周知徹底しましょう。

VPNのような秘匿性の高いネットワークを利用したり、企業からモバイルWi-Fiを支給し、ほかのネットワークを利用しないルールを作ったりなどの方法があります。モバイルWi-Fiの料金や対応エリアなどはプロバイダごとに異なるため、複数社を比較して自社に合うものを選びましょう。

 

情報管理ルールの策定と教育の徹底

企業側がワーケーションに向け強固なセキュリティ対策を施しても、社員が実践しなければ意味はありません。社内の情報管理ルールを策定した後は、すべての社員に周知徹底を図りましょう。

社員に周知する方法には、次のようなものがあります。

  • 対面での社内研修
  • e-ラーニング
  • メールマガジン
  • 社内報
  • ポスター掲示 など

ポスター掲示は見落とす社員がいることを想定し、オフィス内の休憩スペースや食堂などの人が集まりやすい場所から複数を選ぶと効果的です。

情報漏洩は企業だけでなく社員個人に対しても責任が問われる可能性があるため、万が一のリスクをきちんと認識してもらうことが大切です。

ワーケーションの準備は計画的に進めることが大切

ワーケーションを導入すると働き方の選択肢が増えるため、社員の企業に対する満足度のアップが期待できます。企業にとっては、企業ブランディングへの寄与や採用活動でのアピールなどのメリットもあります。

その一方で社外で仕事をするため、勤怠管理や情報漏洩リスクなどへの課題が多いのも事実です。システムの検討や導入に時間がかかることも想定し、ワーケーションの準備は計画的に進めていくことが大切です。

利用するインターネット回線は、セキュリティリスクに備えてVPN利用の徹底やパスワードを複雑にするなど対策が必要です。まずは自社にはどの種類のワーケーションが適しているかを検証し、スムーズに導入できるように一つずつ課題を解決していきましょう。

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