WELL認証とは?取得するメリットや取得方法を解説

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WELL認証とは?取得するメリットや取得方法を解説

ここ最近はSDGsやESG投資などの話題の影響を受け、WELL認証を取得する企業が増えました。WELL認証とは、ウェルビーイングの観点からオフィスの空間を評価するグローバルな認証制度です。

従業員の健康に配慮した企業運営や取り組みは、近年の流れから必要不可欠なものとなりつつあります。そこでこの記事では、WELL認証の基礎知識やメリットなどを解説します。

WELL認証を取得する手順も併せて解説するので、自社で取得すべきか悩んでいる担当者はぜひ参考にしてください。

【インタビュー】「WELL認証取得がもたらす社内への好影響とは」

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WELL認証に関する基礎知識

まずはWELL認証とは何か、どのような基準で評価されるのかを解説します。

 

■WELL認証とは

WELL認証とはオフィス空間で過ごす人のウェルネスを重視し、スペースの効果的な使い方や生産性を向上させる仕組みなどを評価する制度です。

アメリカの国際WELLビルディング協会(IWBI)は、2014年に最初の基準となるv1.0を正式に公開しました。2020年9月15日からは、最新版のv2.0に移行しています。認証制度がスタートしてから2021年6月までに、世界97カ国で取得の動きが広まりました。

オフィスの評価制度には、WELL認証以外にLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)と呼ばれる基準もあります。

WELL認証とLEEDの大きな違いは、オフィスの何にフォーカスしているのかという点です。LEEDは、環境や資源への配慮といった環境の持続性にフォーカスしています。それに対しWELL認証が重視しているのは、オフィスで働く従業員です。

WELL認証では、従業員が身体的・精神的・社会的に良好な状態で働けるオフィスかどうかが評価されます。

日本では、2017年に大手建設会社が初めてWELL認証を取得しました。WELL認証を取得すると従業員の心身の健康に配慮したオフィスと認識されることから、今後日本でも取得の動きが活発化することが予想されます。

  

■WELL認証の評価項目

WELL認証では、10のコンセプトをベースに122の評価項目(中項目)と213のパート(小項目)が設けられています。WELL認証を構成する10のコンセプトと評価項目の数は、次のとおりです。

※画像出典:International WELL Building Institute

コンセプト 評価項目
必須項目数 加点項目数
空気 4 10
3 6
食物 2 12
2 7
運動 2 9
温熱快適性 1 8
1 8
材料 3 9
こころ 2 9
コミュニティ 4 14

コンセプトには環境の配慮が想定されるワードのほかに、食物や運動、こころといった心身の健康につながるワードも含まれています。

評価項目は、必須項目と加点項目の2種類に分かれています。認証を取得するためには、必須項目をすべてクリアする必要があります。

 

■WELL認証のランク

WELL認証には、プラチナ・ゴールド・シルバー・ブロンズの4種類のランクがあります。コンセプトの必須項目をすべてクリアすると、加点項目の審査がおこなわれます。その結果、加点項目の合計点数に応じたランクの認証が与えられる仕組みです。

ランクごとに必要な加点項目の合計点数は、次のとおりです。

ランク 加点項目の合計点数
プラチナ 80点以上
ゴールド 60~79点
シルバー 50~59点
ブロンズ 40~49点

    

■WELL Health-Safety Ratingの評価項目

020年6月にアメリカの国際WELLビルディング協会(IWBI)は、建物の新型コロナウイルス感染症対策を評価する項目としてWELL Health-Safety Rating(WHSR)をWELL認証とは別に新たに導入しました。

新たな要素(WHSR)では感染症対策の専門家によるアドバイスをもとに、オフィスで働く従業員やステークホルダーの健康を優先することが求められています。評価の基準となるコンセプトは次のとおりです。

  • 洗浄および消毒の方法
  • 緊急事態準備プログラム
  • 医療サービスのリソース
  • 空気質および水質管理
  • 利害関係者の関与とコミュニケーション など

評価項目は全27項目で、15項目以上をクリアすればWHSR認証を取得できます。WHSRはグローバルな感染症対策の基準に準拠できるため、従業員やステークホルダーが安心できる環境作りに役立ちます。

WELL認証を取得するメリット

ここからは、WELL認証を取得するメリットを解説します。

 

■従業員の健康を維持できる

WELL認証を取得するための取り組みは、企業の健康経営の推進につながります。健康経営とは企業が従業員の心身の健康に配慮することで、生産性向上を目指す経営戦略の一環です。

経済産業省は健康経営に関する優れた取り組みをおこなっている企業に対して、健康経営優良法人として認定する制度を設けています。認定されると対外的にクリーンなイメージを与えられるため、企業ブランドの向上が期待できます。

健康経営に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

■企業としての価値が高まる

WELL認証を取得すると企業の社会的評価が高まり、企業ブランディングにつながる可能性があります。そのため、WELL認証は世界的に注目されています。背景として考えられるのは、ワークスタイルの多様化や慢性的な労働力不足です。

価値観の多様化が進むなか、従来のようなオフィスに出社するだけのワークスタイルではワーク・ライフ・バランスの実現が難しくなりました。また、離職率を抑制するためには、従業員の働きやすい職場環境の整備が必要です。

WELL認証の取得は従業員の健康や環境への取り組みが可視化されるため、社会から評価を得やすくなります。

  WELL認証取得がもたらす社内への好影響に関する事例はこちらの記事でも解説しています。

WELL認証は取得すべき?

ここからは、WELL認証は取得すべきかを解説します。

 

■企業の信頼度の向上には有効

WELL認証を取得すると企業に対する社会的評価が高まるため、社内外からの信頼度を向上したい企業は取り組んだほうが良いでしょう。

取得するまでには数年かかるケースもあり、登録費や認証費などのコストもかかりますが、従業員の健康維持や感染症対策につながるなどのメリットも多いため、取得に向けて取り組む価値はあります。特に社会的な評価は企業ブランディングにもつながり、ステークホルダーへのアピール材料の一つになります。

また、健康に配慮したオフィス環境を作ると従業員の満足度が高まり、離職率を抑制できるかもしれません。労働力不足が深刻ななか、WELL認証取得に向けた取り組みは優秀な人材を確保するためにも効果的です。

 

■日本企業にとっての課題もある

WELL認証の取得は企業にさまざまなメリットをもたらす一方で、日本企業ならではの課題もあります。そもそもWELL認証はアメリカの国際WELLビルディング協会(IWBI)が定めた制度であり、日本基準の評価項目ではありません。

そのため、取得するにはアメリカの基準に沿って取り組む必要があります。例えば、日本企業にとって障壁となっている項目の中に、屋内の全面禁煙があります。WELL認証では、屋内に喫煙スペースの設置を認めていません。

しかし、エリアによっては路上喫煙禁止条例があり、屋外喫煙が難しいため、喫煙スペースをどのように確保するかが課題の一つです。WELL認証の項目には日本企業ならではの課題が考慮されていないため、日本での普及に歯止めをかけている部分があります。

WELL認証を取得する手順

ここからは、WELL認証を取得する手順を解説します。

 

■必要書類を提出する

WELL認証を取得するためには、書類審査を経て現地審査を受ける必要があります。まずはアメリカの国際WELLビルディング協会(IWBI)に登録し、必要書類を揃えて提出しましょう。登録はオンライン経由でおこなえます。必須項目と加点項目を満たしていることを証明する書類を送信し、提出は完了です。

 

■書類審査の実施

書類の提出後は、IWBIの本部で書類審査がおこなわれます。書類審査の結果が通達されるまでの期間は、20~25営業日以内が目安です。結果を待つまでの間に不備を指摘された場合は、速やかに修正して再提出しましょう。

 

■現地調査の実施  

書類審査に通過した後は、IWBIによる現地調査がおこなわれます。IWBI側とスケジュール調整し、現地調査の日程を決定しましょう。日程は、申込日から4週間以上先の日を希望できます。

現地調査では、3~4日かけて環境測定や各種チェックなどがおこなわれます。最終結果が通達されるまでの期間は、現地調査から9週間後が目安です。不備が指摘された場合は修正対応が必要なので、さらに期間が延びることもあります。

 

■3年ごとに再認証を受ける

WELL認証の有効期限は3年間と永続的なものではないため、定期的に再審査を受ける必要があります。また、認証を受けた後も、次の内容を1年に1回の頻度でIWBIに報告する義務があります。

  • 各種状況のログ
  • 測定記録
  • アンケート調査結果 など

上記の内容が適切に報告されていない場合、再審査を受ける資格を失うので注意しましょう。

WELL認証を取得するためのポイント

ここからは、WELL認証を取得するためのポイントを解説します。

 

■専門家の手を借りる

WELL認証を取得するための手続きは、必要に応じて専門家のサポートを受けましょう。取得までに必要な登録や書類の言語は、すべて英語です。また、審査を受けても、必ず認証を取得できるわけではありません。

審査結果が非認証になった場合は負担ばかりが大きくなってしまうため、一度目の挑戦で認証を取得するよう努めることが大切です。取得までのハードルは決して低くはないので、オフィスデザインの専門家からアドバイスを受けながら取得を目指したほうが良いでしょう。

 

■従業員の健康増進を目的としたサービスを考える

WELL認証を取得するには、従業員の健康に配慮したオフィス環境を目指すことが大切です。

たとえば、従業員の健康増進のためにオフィス内にグリーンを散りばめるオフィス緑化に取り組んだ企業もありました。オフィス緑化はストレスを軽減させ、コミュニケーションの活性化や集中力のアップが期待できるとして注目を集めています。

具体的なアイデアが創出されない場合は、WELL認証を取得した企業の事例を参考にするのも手段の一つです。

オフィス緑化に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

WELL認証に関するQ&A

最後に、WELL認証に関してよく疑問にあがるポイントをQ&A形式でご紹介します。

 

■登録企業数は?

WELL認証の日本の累計登録企業数は、2022年9月20日時点で102件です。

2016年以降の登録企業数は、次のとおりです。

登録企業数
2016年 1件
2017年 6件
2018年 14件
2019年 33件
2020年 68件
2021年 76件
2022年 102件

※出典:Green Building Japan「日本の登録・認証件数」

登録企業数は年々増加傾向にあり、今後も増加することが予想されています。

 

■WELL認証の種類は?

WELL認証は、建物ごとに2種類に区分されています。おもな種類は次のとおりです。

  • WELL Certification
  • WELL Core

WELL Certificationの認証は、建物全体や専有部が対象です。それに対しWELL Coreは、テナントビルの共有部分の認証がおこなわれます。また、上記の2種類に加えて、ポートフォリオ全体に対応したWELL Portfolioや、コミュニティスケールのウェルビーイングへの取り組みを評価するWELL Communityも用意されています。  

    

■認証を取得するのに必要な費用は?

WELL認証を取得するためには、登録費や認証費などの費用が必要です。各費用の相場は次のとおりです。

費用 相場
登録費 2,500USドル
認証費 6,500USドル~
現場試験費 6,500USドル~

 

各費用を合計すると最低でも15,500USドル、日本円に換算すると220万円程度の費用がかかります。(2022年10月27日時点)

まとめ:WELL認証を取得して環境や健康を守ろう

最近では、日本でもWELL認証の取得に向けて取り組む企業が増えています。実際に従業員のウェルビーイングを考慮した働き方をおこなうアイリスグループの東京アンテナオフィスは、2020年10月にWELL Health-Safety Ratingを日本で2番目に取得、そして2022年9月にはWELL認証のプラチナを取得しました。

【インタビュー】アイリスチトセ株式会社「WELL認証取得がもたらす社内への好影響とは」

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