セットアップオフィスとは?居抜き物件との違いやメリット・デメリットを解説
オフィス移転

オフィスの移転を検討しているものの、どのようなタイプのオフィスを選べば良いか悩んでいる企業の担当者も多いのではないでしょうか。通常の賃貸オフィスは内装から考慮する必要があるため、時間も費用もかかります。
手間をかけずにオフィスを移転したい場合は、セットアップオフィスも選択肢の一つです。セットアップオフィスは内装工事が不要なので、スムーズに移転できます。
この記事ではセットアップオフィスとは何か、メリットやデメリットなどを解説します。セットアップオフィスの注意点や選ぶ際のポイントも併せて解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
セットアップオフィスとは

セットアップオフィスとは、内装が完成された状態でレンタルできるオフィスのことです。内装が施されており、オフィス家具も揃っている状態のため、身一つでも業務を開始することができます。テナントに入居するタイプの賃貸オフィスを利用する場合と比べると、手間も時間もかかりません。
たとえば賃貸オフィスの場合、入居時にオフィス家具の設置や壁紙の貼り付け、照明の設置などさまざまな内装工事が必要になります。また、内装工事のための業者選定や見積り依頼、工事内容の打ち合わせなどもおこなうため、入居には数ヶ月の期間を要します。
一方セットアップオフィスは基本的な業務環境がすでに整っているため、入居にかかる手間は少なくて済みます。入居後すぐに業務開始できるため、オフィス移転に手間をかけたくない企業やスタートアップ企業などに向いてるオフィスサービスです。
ほかのオフィスサービスとの違い

オフィスサービスには、セットアップオフィスのほかにもさまざまなタイプがあります。ここからはオフィスサービスの特徴をタイプごとに解説するので、セットアップオフィスとの違いを比較してみてください。
■居抜きオフィス
居抜きオフィスは、過去の入居者が使用していた内装や設備が残された状態でレンタルするオフィスのことです。内装が完成しており、オフィス家具やオフィス機器などが揃っている点では、セットアップオフィスと変わりません。
ただし、居抜きオフィスの場合は原状回復義務を引き継ぎます。契約書の内容によっては退去時に工事や修繕を求められる可能性があるため、注意が必要です。また、居抜きオフィスは働き方や社風など、過去に使用していた企業の以降が取り入れられている傾向があります。
そのため、居抜きオフィスを検討する際には、自社の働き方や社風などがマッチするか、見極めることが大切です。内装のデザインやカラーによっては、従業員やステークホルダーに与える印象が変化します。そのまま使用すると、企業ブランディングや生産性の向上など、自社が期待する効果が十分に発揮できない可能性があります。
オフィスデザインやカラーが企業に与える効果は、こちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてください。
オフィスデザインにおけるカラーと配色の決め方|色が与える効果とは?
■サービスオフィス
サービスオフィスは、オフィス家具や通信環境などの仕事に必要な設備が揃っている状態で利用できるサービスです。さらに電話対応や秘書代行などの、ほかのオフィスサービスにはないサービスが充実しています。
入居の際に敷金や仲介手数料などが不要なので、初期費用をおさえられます。駅の近くやビジネス街などに立地しているケースが多く、アクセスが便利です。サービスオフィスは、自宅でテレワーク環境を整えられない従業員を抱える企業や、好立地にオフィスを構えたい企業に向いています。
サービスオフィスのメリット・デメリット|ほかのフレキシブルオフィスとの違いとは?
■レンタルオフィス
レンタルオフィスは、仕事に必要な最低限の設備が用意されている貸事務所の総称です。個室は一人用から数十人用までさまざまなタイプがあり、自社専用で利用できます。一方で会議室やラウンジなどのスペースは、ほかの利用者との共有になります。
入居の際に敷金や仲介手数料が不要なケースが多いですが、入会金が必要です。法人登記が可能なレンタルオフィスも多いため、スタートアップ企業や少人数の企業に向いています。
■コワーキングスペース
コワーキングスペースは、基本的にフリーアドレス制のオープンスペースを複数の人や企業で共有するサービスです。
異業種や異業界の人と出会う機会が多いため、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。カフェのようにカジュアルなオープンスペースタイプのものが多く、他社との交流を活発化させたい企業や自宅以外の仕事場が欲しい個人事業主に向いています。ただし、コワーキングスペースには交流を促すための目的も大きいため、個室などが少ない傾向があります。集中するための環境やミーティングのための環境も必要と考える場合は、個別ブースやミーティングスペースの有無を確認しておきましょう。
■シェアオフィス
シェアオフィスは、複数の人や企業などでオフィスを共有するサービスです。基本的には、コワーキングスペースのようにフリーアドレス制で利用しますが、デスクだけでなく個室やミーティングルームなど、様々なワーキングスペースを利用できるのが特徴です。
コワーキングスペースと比較すると、一般的な事務所のようにビジネスに特化した内装のところが多いという違いもあります。
■バーチャルオフィス
バーチャルオフィスは、物理的に実態を有しない仮想事務所のことです。物理的なオフィスは存在しないため、仕事をする場所を別に用意する必要があります。電話番号と住所は借りられるため、郵便物の受け取りや銀行口座の開設などが可能です。
賃貸オフィスやサービスオフィスを利用する際には、月額数万円程度の賃料が必要です。しかし、バーチャルオフィスは月額5,000円~10,000円程度でレンタルできるため、毎月の固定費をおさえられます。
都心の一等地が住所のバーチャルオフィスも多いため、起業したばかりの経営者や自社のブランディング効果を狙う企業に向いています。
セットアップオフィスのメリット

セットアップオフィスには入退去時にかかるコストをおさえられる、手間や時間をかけずにオフィスを移転できるといったメリットがあります。
■入退去時にかかるコストをおさえられる
オフィスを移転する際には、敷金や仲介手数料、内装工事費用などのイニシャルコストがかかります。セットアップオフィスは内装工事が完了した状態でレンタルできるため、内装工事費用をおさえることが可能です。さらに入居時にはオフィス家具も揃っているため、新たに購入する必要もありません。
また、セットアップオフィスは退去時の原状回復工事も不要です。賃貸オフィスの場合、入居先の工事は賃借後に行われます。そのため、入居先の工事期間及び退去したオフィスの原状回復工事期間中は、現状とオフィスと入居先のオフィスの賃料を同時に支払う必要があります。一方のセットアップオフィスは入退去時の工事が不要なので、家賃の二重払いを防げます。
■手間や時間をかけずにオフィス移転できる
セットアップオフィスはすでに内装工事が完了した状態でレンタルできるため、契約から入居までがスムーズです。そのため、レイアウトやデザインを決めるために、何度も業者と打ち合わせする手間が省けます。
セットアップオフィスは、内装工事の完了だけでなくオフィス家具も揃っているため、入居後はすぐに業務を開始できます。
■従業員のモチベーションアップが期待できる
セットアップオフィスの多くは、おしゃれで働きやすいデザインに設計されているため、従業員に良い影響を与えられる可能性があります。環境の良いオフィスで働くことで、モチベーションアップが期待できるためです。
また、おしゃれなオフィスは、ステークホルダーにも好印象を持ってもらえる可能性があります。セットアップオフィスに移転後、離職率の低減や商談機会の増加につながった企業もあるようです。
セットアップオフィスを利用する際の注意点

セットアップオフィスを利用する際には、一般的な賃貸オフィスよりも賃料が高い、内装やレイアウトが変更できないなどの注意点もあります。
■一般的な賃貸オフィスよりも賃料が高い
セットアップオフィスは借りる際に内装工事が完了した状態なので、一般的な賃貸オフィスよりも賃料が高く設定されています。賃料は、一般的な賃貸オフィスの1.5~1.7倍程度が目安です。
セットアップオフィスの場合、オーナー側で負担する初期投資額が多いため、その分賃料が高く設定されているというわけです。賃料は毎月変動しないため、入居期間が長くなるほど総支払い額も高額になります。
そのため、セットアップオフィスに移転する際にはイニシャルコストだけでなく、賃料が高くなることを踏まえて検討するようにしましょう。
■内装やレイアウトが変更できない
セットアップオフィスは内装工事が完了した状態で入居するため、希望するデザインやレイアウトがあっても変更できません。オフィス家具や間仕切りなどを変更できることもありますが、一部に限られます。
会議室の数やワークスペースの広さなどは、企業ごとにさまざまです。企業によっては、コーポレートカラーを積極的に取り入れたいケースもあるかもしれません。しかし、セットアップオフィスはテナント側で自由に変更できないため、デザインやレイアウトにこだわりがある場合は不向きです。
■物件数に限りがある
セットアップオフィスは、一般的な賃貸オフィスに比べると物件数が多くありません。近年、スムーズにオフィスを移転したい企業やスタートアップ企業を中心に、セットアップオフィスへのニーズが高まっています。
そのため、人気エリアやおしゃれなデザインなどの好条件の物件は、すぐに契約済みになるケースも多いのが現状です。特にデザインやレイアウトにこだわりがある場合は、希望に合う物件を探すのは難しいでしょう。
セットアップオフィスは物件数自体がまだ少ないため、移転を検討する場合は早めに探し始める必要があります。
セットアップオフィスを選ぶ際のポイント

セットアップオフィスを選ぶ際には、従業員数に適した広さを確保できるか、求める機能が備わっているかなどを十分に検討しましょう。
■従業員数に適した広さを確保できるか
セットアップオフィスの全体の広さは、50~100坪前後が多い傾向があります。この広さの目安は、10~30人のワークスペースを確保できる程度です。広さに余裕がない場合は、従業員がストレスを感じる可能性もあります。
会議室や休憩スペースなどを設置することも考慮し、従業員数に適した広さを確保しましょう。また、セットアップオフィスは、デザインやレイアウトの変更ができません。そのため、セットアップオフィスを選ぶ際には自社に適したレイアウトかを確認するようにしましょう。
■求める機能性が備わっているか
セットアップオフィスを選ぶ際には、自社が求める機能性が備わっているかを確認することが大切です。備わっている機能は、セットアップオフィスによって異なります。おもな機能は次のとおりです。
- 会議室
- オープンワークスペース
- 個室スペース
- 休憩スペース
- パーテーション など
たとえばオープンワークスペースのほかに個室スペースがあれば、作業に集中したい従業員が利用できるため、業務効率が上がる可能性があります。利用者が共有できる休憩スペースがあれば、専用スペースに設置する必要がないため、その分ワークスペースを広く確保できます。
■セキュリティレベルは十分か
セットアップオフィスによってセキュリティレベルが異なるため、自社にとって十分かどうかを確認するようにしましょう。セットアップオフィスはワンフロア占有で利用できるケースが多く、盗み見や盗聴などのリスクは回避できます。
しかし、来客対応が共有スペースになる場合や占有スペース以外で周辺のオフィスから音漏れする場合は、情報漏洩のリスクがあるので注意が必要です。共有スペースを利用する機会が多いと想定されるなら、セキュリティレベルを確認しておくようにしましょう。
セットアップオフィス事例
最後に、株式会社アトリウムが提供するセットアップオフィスをご紹介します。
■株式会社アトリウム

不動産事業を手がける株式会社アトリウムは、ベンチャー企業やスタートアップ企業向けのセットアップオフィスを都内でいくつか展開しています。「入りやすくて出やすい」というスキームを重要視しているため、短期間での利用が想定されています。
株式会社アトリウムのインタビューはこちらで詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
まとめ:セットアップオフィスならスムーズに移転できる

セットアップオフィスは、デザインやレイアウトなどの内装が完了した状態で借りられるため、工事に関する手間が省けます。オフィス家具も揃っているため、入居後すぐに業務を開始できます。
工事費用や家具の購入費用はおさえられますが、毎月の賃料は一般的な賃貸オフィスよりも高く設定されています。そのため、ベンチャー企業やスタートアップ企業などで、短期間の利用を想定している企業におすすめです。
賃貸オフィスに比べて物件数が少なく、すぐに契約済みになるケースが多いため、セットアップオフィスに移転する場合は早めに物件探しを始めましょう。