フリーアドレスは苦痛?その理由や対策、成功した企業の事例を紹介
働き方
時代の流れとともにオフィスの在り方が変化し、近年はワークスペースにフリーアドレスを導入する企業が増えました。フリーアドレスにはコミュニケーションがしやすくなる、柔軟に働けるようになるなど、従業員にとってさまざまなメリットがあります。
しかし、すべての従業員がフリーアドレスで働くことに満足しているとは限りません。従業員のなかにはフリーアドレスに苦痛を感じ、固定席に戻して欲しいと考える人もいるのが現状です。
フリーアドレスを上手く運用していくためには苦痛の理由を把握し、対策を講じる必要があります。そこで本記事では、フリーアドレスを苦痛に感じる理由や具体的な対策などを解説します。
目次
従業員がフリーアドレスを苦痛に感じる理由
まずは、従業員がフリーアドレスのどのような点を苦痛に感じているかを確認しましょう。従業員がフリーアドレスを苦痛に感じるおもな理由は、次のとおりです。
- 毎日席を選ばなければならない
- 荷物の持ち運びや片付けが面倒に感じる
- 部署やチームでのコミュニケーションがとりづらい
- 個人ワークに集中しづらい
各理由の詳しい内容を見ていきましょう。
◾️毎日席を選ばなければならない
フリーアドレスは固定席を持たず、従業員が自由に席を選べるワークスタイルです。気分や業務内容に応じて席を選べる柔軟性が高く、業務効率の向上につながると期待されます。
一方で、毎日席を選ぶことに苦痛を感じる従業員もいます。また、席が固定されていないため、毎日周囲の従業員が変わることで精神的な負担を感じるケースもあるでしょう。
特に固定席を好む従業員は、毎日働く席が変わることに対し、居心地の悪さを感じやすくなるおそれがあります。
◾️荷物の持ち運びや片付けが面倒に感じる
フリーアドレスでは個別に席が割り当てられていないため、スペース内の机を従業員が共有することになります。
従業員は、終業時に机上を整理整頓しなければなりません。前の利用者が整理整頓していなければ、快適に使用できず、苦痛を感じることがあります。
また、従業員は仕事道具や私物を置いたままにできないため、移動するたびに持ち運ばなければなりません。
◾️部署やチームでのコミュニケーションがとりづらい
フリーアドレスの運用タイプには、大きく分けて完全フリーアドレスとグループアドレスの2種類があります。
完全フリーアドレスを採用している場合、部署やチームのメンバーが離れて座ると、コミュニケーションが不足しやすくなります。そのため、必要なタイミングで適切にコミュニケーションをとることが大切です。
また、フリーアドレス化によって、メンバーの勤務状況や作業の進捗状況を把握しづらく、不便だと感じる従業員もいます。
◾️個人ワークに集中しづらい
オープンスペースのフリーアドレスは、周囲の音や視線が気になりやすくなります。
周囲の音や視線のせいで集中力が妨げられれば、業務効率の低下につながりかねません。
特に静かで集中しやすい環境は、Web会議を実施する際にも重要な要素になります。映像と音声がクリアでなければ、作業が快適に進められません。周囲が騒がしくて静かさが保てないと、会議にも影響を受ける可能性があります。
このように周囲の雑談が気になり、個人ワークやWeb会議に集中しづらい従業員もいます。
フリーアドレスの導入に失敗するオフィスの特徴
従業員からフリーアドレス化による苦痛の声が寄せられている場合は、企業側の体制が不十分な可能性も考えられます。
従業員の苦痛を解消するには、フリーアドレス化に失敗したオフィスの共通点を把握し、自社の状況と比較することが重要です。もし自社の状況が失敗事例と類似している場合は、適切な対策を検討し、改善に取り組む必要があります。
◾️導入の目的が明確でない
フリーアドレスに失敗するオフィスの特徴の一つは、目的が明確でないまま導入してしまうことです。
オフィスに新しい取り組みを導入する際には、目的を明確にすることが重要です。目的が曖昧だと、従業員の理解が得られず、思うような効果が得られないばかりか、不満を招く可能性があります。
もし、目的が不明確であるようであれば、改めて設定し直してみましょう。例えば「従業員同士のコミュニケーションを活性化させたい」「従業員の柔軟な働き方をサポートしたい」などが考えられるでしょう。
従業員に対しては、フリーアドレス化の目的をしっかりと伝え、共感してもらうことが重要です。
◾️運用ルールが決まっていない
従業員からフリーアドレスに対する不満が多く寄せられる場合は、運用ルールが決まっていない可能性があります。
ワークスペースの運用を変更する際には、それに応じた運用ルールを決めることが重要です。
固定席とフリーアドレスではワークスタイルが異なるため、それぞれ運用ルールを策定する必要があります。運用ルールが決まっていなければ、フリーアドレス化による十分な効果が得られません。
フリーアドレスでは、自由席ならではのトラブルが発生しやすいこともあります。例えば「離席時にデスクを整理整頓する」「仕事道具や私物の収納場所を決めておく」など、具体的なルールを設けて運用することが大切です。
◾️オフィス環境を整備できていない
ワークスペースの運用方法を変更する際には、それに応じたオフィス環境の整備が必要です。従来のオフィス環境のままフリーアドレス化した場合、対応しきれずに失敗するおそれがあります。
例えば、フリーアドレスでは従業員で席を共有するため、移動のたびに書類を持ち運ばなければなりません。書類の持ち運びが増えると、紛失や企業の機密情報や個人情報の漏洩のリスクが高まります。フリーアドレスに適したオフィス環境を整える際には、ペーパーレス化を進めることが重要です。
また、従業員が業務内容や気分に応じて働く場所を選べるように、集中エリアやミーティングエリアなど複数のエリアを設置するのも効果的です。
フリーアドレスの苦痛を解消させるための対策
従業員のフリーアドレスに対する苦痛を解消させたい場合は、課題に応じた対策を講じる必要があります。具体的な対策を紹介します
◾️モバイルバッグを用意する
フリーアドレスを導入後は、荷物の持ち運びや片付けが面倒に感じる従業員もいます。このような課題を解決するために、従業員一人ひとりにモバイルバッグを用意するのも一つの手です。
モバイルバッグとはノートパソコンや書類などの仕事道具を収納し、持ち運べるバッグです。近年はオフィスをフリーアドレス化する企業が増えており、さまざまなタイプのモバイルバッグが登場しています。
企業がモバイルバッグを用意すれば、従業員はバッグ一つで移動でき、片付けもしやすくなります。
◾️グループアドレスを導入する
部署やチームでのコミュニケーションがとりづらい課題を解決するためには、フリーアドレスの運用タイプを見直してみましょう。
フリーアドレスの運用タイプには、大きく分けて「完全フリーアドレス」と「グループアドレス」の2種類があります。
完全フリーアドレスは、部署やチームを問わずすべての従業員が自由に席を選べるタイプです。一方のグループアドレスはエリアを限定し、部署やチーム単位で席を自由に選べるタイプです。
グループアドレスはメンバー同士でまとまって仕事ができるため、コミュニケーションがとりやすく、席選びの苦痛の解消にもつながります。
なお、グループアドレスのメリットや注意点などは、以下の記事で紹介しています。
グループアドレスってなに?導入のメリットと注意点について解説
◾️集中エリアを設置する
フリーアドレスにおいて、個人ワークやWeb会議に集中しづらい苦痛を解消するには、集中エリアを設置し、従業員の業務内容や気分に応じて席を選べるようにする方法があります。
集中エリアを設置する際には、従業員にエリア分けしていることを周知する必要があります。集中エリアが上手く利用されない可能性があるためです。
併せて、快適な環境を整備するために、集中エリアの利用に関するルールも決めておくとよいでしょう。
◾️個室ブースの設置を検討する
ワークスペース内に集中エリアを設置しても、従業員の苦痛を十分に解消できない可能性があります。
従業員の業務のなかには、オープンスペースでの作業に適さないものがあるためです。例えばWeb会議は静かな環境が求められる上に、機密性が高い業務です。
フリーアドレスのワークスペースでWeb会議に適した環境を整備するためには、個室ブースを設置するのも一つの手です。個室ブースで周囲の視線や雑談を遮断することで、Web会議をはじめ、機密性が高い書類を用いた業務やミーティングもできるようになります。
オフィスに個室ブースを設置するメリットや方法は、こちらの記事で紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
個室ブースを設置するメリットと課題|課題を解消できるおすすめ商品も紹介
◾️リフレッシュスペースを設置する
フリーアドレス化したワークスペースでは、従業員が集まります。多くの従業員が常に動き回るワークスペースでは、オンとオフが上手く切り替えられず、精神的な負担を感じる従業員がいるかもしれません。
オープンスペースのなかでも集中力を高め、業務効率を上げるためには、オンとオフを切り替えられるリフレッシュスペースの設置が効果的です。
リフレッシュスペースは従業員がリフレッシュするためのスペースで、カフェやファミレスのような雰囲気を演出する場所を指します。
オフィス内にリフレッシュスペースがあれば、従業員は気軽にリフレッシュできるため、ストレス軽減にもつながります。なお、リフレッシュスペースを設置する際のポイントは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
オフィスにリフレッシュルームを設置する際のポイントとは|成功事例も紹介
◾️定期的にレイアウトを見直す
オフィスでフリーアドレスを成功させるためには、定期的にレイアウトを見直すことも必要です。フリーアドレスを導入してから、予期しなかった問題が発生することがあります。
例えば完全フリーアドレスを導入したものの、部署のメンバーの位置を把握しづらく、電話や来客時に探す手間が増えるケースです。このような場合は、部署やチーム単位で席をまとめるグループアドレスに変更するとよいでしょう。
グループアドレスに移行する際には、部署やチームの規模に合わせたエリア分けが重要です。フリーアドレスには、さまざまなレイアウトがあります。こちらの記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
フリーアドレスの導入に成功した企業の事例
最後に、フリーアドレスの導入に成功した企業の事例を紹介します。
◾️東洋刃物株式会社
東洋刃物株式会社は、2023年12月の新棟建設を機にフリーアドレスを導入しています。
従業員が気分や仕事内容に応じて働く場所を選べるよう、ワークスペースにはテーブル席のほか、ソファ席や個室ブースを設置しました。
◾️アース環境サービス株式会社
アース環境サービス株式会社は、2023年12月の改装を機にフリーアドレスを導入しました。ワークスペースには、従業員がリラックスできるよう、さまざまな場所にグリーンを配置しました。
近年は、オフィス緑化に取り組む企業が増えています。オフィスにグリーンを取り入れると、さまざまな効果が期待できます。なお、オフィス緑化で得られる効果や導入ポイントは、こちらの記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
オフィス緑化で得られる効果とは?導入ポイントから費用相場まで解説
また、同社では、ワークスペースとは別にフリースペースも設置しています。フリースペースは通常の休憩時間のほか、仕事中に気軽にリフレッシュできる場所としても活用できます。
アース環境サービス株式会社 | オフィスデザイン・レイアウト事例
◾️株式会社ミュゼプラチナム
株式会社ミュゼプラチナムは、2023年11月の本社移転を機にフリーアドレスを導入しました。オフィス内は可能な限り壁を設けず、全体を見渡せるレイアウトにしたことで、従業員同士が声をかけ合いやすい環境を実現しました。
座席はソファとテーブルを組み合わせたファミレス席や、集中ブース、会話を楽しめるラウンジも設置しています。仮眠ができるシエスタルームを設置したことで、従業員がリフレッシュしながら働ける環境になっています。
同社でも、ワークスペース内にグリーンが散りばめられています。ワークスペースには自然光が上手く取り入れられており、ホワイトを基調とした空間がより明るく感じられるよう工夫されています。
まとめ:原因を特定してフリーアドレスの苦痛を解消しよう
近年は、多くのオフィスがフリーアドレスを導入するようになりました。フリーアドレスには多くのメリットが期待できる一方で、すべての従業員に合うとは限らないといった側面もあります。
従業員のためにフリーアドレス化しても、毎日の席選びや荷物の持ち運びなどに苦痛を感じている人も少なくありません。ワークスペースをフリーアドレス化した後は、従業員にヒアリングし、定期的に満足度を確認することも重要です。
従業員のフリーアドレスに対する苦痛を解消するためには、原因を特定し、適切な対策を講じる必要があります。レイアウトに課題がある場合は、見直しを検討しましょう。アイリスチトセでは、課題の解決に導くレイアウトプランをご提案させていただきます。ぜひ一度ご相談ください。