ワーク・ライフ・ミックスとは?ワーク・〇〇・〇〇の用語を総まとめ
働き方
ビジネスシーンでワーク・ライフ・ミックスと呼ばれる言葉が注目を集めるようになりました。類似用語には、ワーク・ライフ・バランスやワーク・ライフ・インテグレーションなどがあります。
この記事ではワーク・ライフ・ミックスとは何か、企業にどのようなメリットがあるのかを解説します。類似用語のワーク・〇〇・〇〇の意味や具体的な取り組み事例も解説するので、企業が取り組むことでどのようなメリットがあるのかを把握しましょう。
目次
「ワーク・〇〇・〇〇」が注目され始めた背景
「ワーク・〇〇・〇〇」が注目され始めた背景には、ライフスタイルや価値観の変化があげられます。終身雇用制度の影響を強く受けていた時代では、ひとつの企業で定年まで勤め上げるのが一般的でした。そのため、全体的に生活の時間よりも仕事に重きを置く傾向がありました。
しかし、近年では仕事も生活も両立させようといった考え方が広まりつつあります。従業員の満足度や多様な働き方の求めに応えるには、企業の働き方改革が必要です。
また、少子高齢化や求人倍率の上昇により、人手不足を課題に抱える企業が増えています。人手不足の状態で事業を継続すれば、個々の従業員にかかる負担が大きく、心身の不調による離職リスクもあります。
人手不足を解消し、企業としてもさらに成長を続けるためには、働き方改革に動かざるを得ない状況です。従業員が仕事と生活を両立できるよう、ワーク・〇〇・〇〇に取り組む企業が増えています。
近年「ワーク・ライフ・ミックス」が注目を集めている
ワーク・〇〇・〇〇という言葉は複数存在し、それぞれ意味が異なります。中でも最近では、ワーク・ライフ・ミックスに注目が集まっています。ワーク・ライフ・ミックスとは、仕事と生活の両方を充実させようといった概念です。背景には、育児や介護などのプライベートな事情による離職が増えていることがあげられます。
厚生労働省の調査によると、育児や介護などを理由に退職した人は、平成28年頃から上昇傾向にあることがわかっています。
育児や介護が理由の離職を防ぐには、企業側が働き続けられる環境を整備することが必要です。
また、ここ数年はテレワークが普及し、多様な働き方や労働環境整備の重要性が高まっています。従業員がどのようなライフステージに直面しても、キャリアを諦めず働き続けられるよう、ワーク・ライフ・ミックスに取り組む企業が増えています。
ワーク・ライフ・ミックスとは
ワーク・〇〇・〇〇の「ワーク」に続く言葉は、「ライフ」のケースが多いです。ワーク・ライフ・〇〇は、仕事(働き方)と生活、あるいは私生活をどのような価値観で捉えるかを指しています。ワーク・ライフ・ミックスとは、仕事と生活をミックスさせようといった考え方です。
■仕事と生活を区別せず両者の充実を目指す概念
ワーク・ライフ・ミックスとは仕事と生活の時間を区別せず、両者の充実を目指す概念です。
仕事と生活の時間を区別すると、オンとオフの切り替えが難しいケースもあります。たとえば仕事に重きを置くと生活の時間が犠牲になる、生活に重きを置くと仕事がおろそかになるなどです。ワーク・ライフ・ミックスを実現できれば、仕事と生活のどちらかを犠牲にしないため、人生が豊かになります。
■メリット|育児や介護による離職を防ぐ
ワーク・ライフ・ミックスは仕事と生活の時間をあわせてひとつの生活と考えるため、育児や介護を両立できます。近年は共働き世帯や高齢者が増えていて、人生の中で育児や介護に直面する従業員も多い傾向にあります。
しかし、オフィスに出社する働き方だけでは、仕事と生活の両立が難しい人もいます。たとえば子どもが通っている保育園の休園日と出勤日が重なった場合、オフィスに連れて行くわけにもいかず、仕事を休むしか選択肢がないという人もいます。
子育て中の従業員が直面するさまざまなトラブルを想定し、対応できる状況を整備していれば、仕事を休まず働くことが可能です。従業員がプライベートで抱える問題に対する受け皿があれば、育児や介護をきっかけとした離職の低減につながります。
■ワーク・ライフ・ミックスの取り組み事例
ワーク・ライフ・ミックスの代表的な取り組み事例は、次のとおりです。
- テレワークの導入
- オフィスやコワーキングスペースへの子連れ出勤
オフィスに出社する働き方のほかにテレワークを導入すると、自宅で子育てしながら仕事を続けられます。一部の大企業では、オフィスやコワーキングスペースへの子連れ出勤を許可しています。
駅から近く勤務時間や通勤時間に配慮された保育園があれば、子育て中の従業員のニーズを満たし、安心して仕事に取り組むことが可能です。通常の保育園は、子どもを預かってもらえる時間が限られているため、従業員に急な残業が発生しても対応できない保育園もあります。延長保育に対応した保育園でも、延長料金がかかるのが一般的です。ワーク・ライフ・ミックスを実現するには、子育て中の従業員が安心して働ける環境整備が必要です。
ワーク・ライフ・バランスとは
現在は、多くの企業がワーク・ライフ・バランスの実現に向けて取り組んでいます。企業がワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むと、企業イメージの向上や優秀な人材の確保が期待できます。
ワーク・ライフ・バランスとは?取り組み例やメリットを徹底解説
■仕事と生活のバランスを取るといった概念
ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と生活のバランスを取るといった概念です。アメリカでは、1980年後半から取り組みへの動きが始まったとされています。日本で広まったきっかけは、国が主導で推進した働き方改革です。
内閣府は、2007年に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を策定し、ワーク・ライフ・バランスが実現した社会を目指すことを掲げました。
■メリット|企業イメージの向上・優秀な人材の確保
企業がワーク・ライフ・バランスに取り組むと、企業側と従業員側の両方にさまざまなメリットをもたらします。企業側のメリットとしてあげられるのは、企業イメージの向上や優秀な人材の確保です。
企業の取り組みが社内外に広まると、従業員を大切にしている企業として、ステークホルダーに好印象を与えます。ワーク・ライフ・バランスを実現したい求職者も増えているため、採用活動で有利に働く可能性もあります。
従業員側のメリットは、自分に適した働き方が選べることです。ワーク・ライフ・バランスの実現により、生活を充実させた働き方が可能になります。
■ワーク・ライフ・バランスの取り組み事例
ワーク・ライフ・バランスの代表的な取り組み事例は、次のとおりです。
- 育児休暇や介護休暇などの休暇制度の充実
- 多様な働き方の提供
- 労働時間の削減 など
ワーク・ライフ・バランスを実現するには、子育て中や介護中の従業員も働き続けられるよう、休暇制度を充実させる必要があります。自分に適した働き方というのは、従業員ごとに異なります。そのため、個々の従業員が自分に適した働き方ができるよう、働き方の選択肢を増やしましょう。たとえばワーケーションを導入すれば、休暇を兼ねて仕事をすることが可能になります。
また、残業や休日出勤などで時間外労働が増えると、生活の時間が犠牲になりがちです。企業は従業員の労働時間を把握し、削減できるよう努めることも大切です。
ワーク・ライフ・インテグレーションとは
ワーク・ライフ・インテグレーションの「インテグレーション」には、本来、統合や融合などの意味があります。インテグレーションは、ITや福祉などのさまざまな分野で用いられています。
■仕事とプライベートを充実させ新たな価値を生む概念
ワーク・ライフ・インテグレーションとは、仕事と個人の生活の両方を充実させ、新たな価値を生むといった概念です。提唱者は、慶應義塾大学の教授や経済同友会とされています。
仕事とプライベートを融合し、新たな価値を生み出すには、両者の生産性を高める必要があります。従業員が仕事の生産性を高めるには、企業側のサポートが不可欠です。
■メリット|生産性の向上・従業員のスキルアップ
企業がワーク・ライフ・インテグレーションに取り組むには、労働環境の整備が必要です。労働環境が快適になると従業員のモチベーションや満足度が高まり、生産性の向上が期待できます。
ワーク・ライフ・インテグレーションは、仕事を人生の要素の一つと捉えるため、従業員の仕事に対する意欲が高まり、業務に関連する資格の取得や勉強に積極的に取り組むようになります。また、従業員は働き方の選択肢が増えるため、仕事とプライベートの両立が実現可能です。
■ワーク・ライフ・インテグレーションの取り組み事例
ワーク・ライフ・インテグレーションの代表的な取り組み事例は、次のとおりです。
- リエントリー制度の導入
- 役割フレックス制度の導入
- テレワーク勤務制度の導入
- 労働時間短縮制度の導入 など
リエントリー制度とは、やむを得ない理由で離職した従業員に対し、採用試験に再応募できる制度です。たとえば出産を機に離職をしても、子育てが終わった時点で再び働けるチャンスがあります。
役割フレックス制度とは、役職者がやむを得ない理由で役職を続けるのが難しくなったときに、一時的に役職を離れられる制度です。従業員のさまざまな事情に対応できる、テレワーク勤務制度や労働時間短縮制度を導入するといった方法もあります。
ワーク・アズ・ライフとは
ワーク・アズ・ライフの「アズ」には、「~と同じように」という意味があります。言葉どおり、ワーク・アズ・ライフは仕事とプライベートを同じように扱うといった考え方です。
■仕事と生活を区別しない働き方のこと
ワーク・アズ・ライフとは、睡眠以外の時間は仕事を含め、すべてが生活の一部であるといった概念です。仕事と個人の生活を区別しない点では、ワーク・ライフ・ミックスと同じです。ワーク・アズ・ライフの概念が生まれた背景には、仕事と生活を区別するのは、仕事にストレスを感じているからという考え方があります。
■メリット|従業員のモチベーションアップ・離職率低減
ワーク・アズ・ライフは仕事と生活を一体化した概念なので、仕事に自分の時間を費やしているといった意識が薄くなります。その結果、仕事に対するモチベーションアップが期待できます。
仕事にストレスを感じていれば、長時間労働が負担になるでしょう。しかし、仕事と生活を区別せず、どちらも自分の生活の一部であり、しいては人生の一部だと捉えれば、仕事に対してストレスを感じにくくなります。業務内容や職場環境が原因の離職が減り、離職率の低下につながります。
■ワーク・アズ・ライフの取り組み事例
ワーク・アズ・ライフは、基本的に個人が主体的に取り組む必要があります。たとえばパラレルキャリアとして趣味のブログを仕事にする、日常的に発信しているSNSを仕事につなげるなどです。
企業側は、従業員が仕事と趣味を可能な限り近づけられるようサポートすることが大切です。取り組み事例として、従業員が自由に閲覧できる社内情報を発信する方法があります。従業員が気になる情報を発信すると、仕事と趣味の接点を見つけやすくなります。
ワーク・ライフ・シナジーとは
ワーク・ライフ・シナジーの「シナジー」には、複数存在するもの同士が作用し合い、効果や機能を高めるという意味があります。
■仕事と生活の相乗効果を目指す概念
ワーク・ライフ・シナジーとは、仕事と生活の両方を充実させつつ、相乗効果を生み出そうといった概念です。仕事と生活を区別する場合、オフの時間はリフレッシュやリラックスに費やそうとする人も多いかもしれません。
しかし、ワーク・ライフ・シナジーでは、仕事の成果を上げるためにも、生活で得た知識や体験を仕事に活かそうという考え方です。そのため、ワーク・ライフ・シナジーは、複数の仕事を掛け持ちするパラレルワーカーに向いているといわれています。
■メリット|従業員の心身の健康を促進
ワーク・ライフ・シナジーは仕事と生活の両方が充実できるため、ストレスが減り、メンタルヘルスの保持増進が期待できます。また、自分の好きなことや得意なことを収入につなげられるため仕事と生活の両方を充実させられます。
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■ワーク・ライフ・シナジーの取り組み事例
ワーク・ライフ・シナジーはワーク・アズ・ライフと同様に、基本的には個人が主体的に取り組むことです。たとえば料理に使用する食材の原産地や歴史を調べる、洋画のセリフをもとに語学勉強に取り組むなどです。
企業の取り組み事例には、副業制度の推進や多様な働き方の提供などがあります。副業が許可された企業なら、メインの仕事が自分の好きなことに直結していなくとも、副業でチャレンジすることができるため、ワーク・ライフ・シナジーの実現につながります。
まとめ:従業員のニーズを調査して自社に適した取り組みを実施しよう
ワーク・ライフ・ミックスをはじめ、ワーク・〇〇・〇〇という言葉は数多くあります。言葉自体は類似していますが、それぞれ概念やもたらすメリットなどが異なります。自社での取り組みを検討する際には、従業員が何を求めているかを把握することが大切です。
たとえばパラレルキャリアを希望している従業員が多い場合は、ワーク・アズ・ライフやワーク・ライフ・シナジーが適しています。また、企業にもたらすメリットも把握し、企業と従業員にとってどの選択が適しているかを十分に検討しましょう。