オフィスでできるSDGsへの取り組みとは?実際の企業事例から補助金制度まで解説

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オフィスでできるSDGsへの取り組みとは?実際の企業事例から補助金制度まで解説

身近なところでも、SDGsへの取り組みやロゴなどを目にする機会が増えてきました。一方でSDGsを推進したいけれど、どの様に目標を設定して進めたら良いかなど、具体的に掲げられている企業はそう多くはありません。

この記事では、SDGsの意味や企業が取り組むメリットを解説します。さらにSDGsの推進としてオフィスでできることや、取り組みによって附随的に利用可能な補助金制度も紹介します。これから具体的な取り組みを考えている企業や担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

海洋プラスチックごみを再利用した椅子「VIGOR-OBP」

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SDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称で、「持続可能な開発目標」と訳されます。読み方は「エス・ディー・ジーズ」です。

国連サミットで採択されたSDGsは、世界的に普及しつつあります。SDGsが誕生した背景には、地球温暖化や貧困格差などの問題が関係しています。これら人類が抱えている問題を全世界で共有して、改善しながら次の世代へつなげていくための行動目標としてSDGsは生まれました。

SDGsは具体的に、次の17の行動目標が掲げられています。

  1. 貧困をなくす
  2. 飢餓をゼロにする
  3. すべての人に健康と福祉を届ける
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなに、そしてグリーンに
  8. 働きがいも、経済成長も
  9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 人や国の不平等をなくそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任、つかう責任
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさを守ろう
  16. 平和と公正をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

これらは、国連加盟国に対して2030年までに達成が望まれている目標です。そのため、日本でも積極的な取り組みを推進しており、その対象は公的機関だけではなく企業も含まれます。SDGsの目標は、近年社会的に取り組むべき内容として浸透してきています。

企業がSDGsに取り組むことで、新たな技術の確立や、企業が抱える課題への解決策につながることが期待されています。まさにSDGsへの取り組みは、社会貢献だけでなく、新たなビジネスチャンスが得られる場とも言えるでしょう。

企業がSDGsに取り組む3つのメリット

SDGsへの取り組みを通して、企業が得られるメリットを解説します。全社一丸となってSDGsを推進するためには、社員一人ひとりがそのメリットを知っておくことも大切です。

 

企業ブランディングにつながる

企業がSDGsを推進するメリットとして大きいのが、企業ブランディングの向上です。SDGsへの取り組みをアピールすることで、株主や顧客に対して、社会のためになる活動をおこなっている企業という企業姿勢が伝わります。

ESGと呼ばれる投資では環境や社会への貢献が重要視されるため、SDGsの推進は高く評価されます。ESGは「Enviroment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字を取った言葉で、ESG投資は「ESGに配慮した企業への投資」を意味します。資金調達がしやすくなることに加え、企業価値の向上により対外的なアピール力も高まると期待できます。

 

採用活動でアピールできる

またSDGsを推進することで、採用活動においてもアピールしやすくなります。実際のところ、最近の求職者は、企業のSDGsへの推進レベルを重視しているようです。

またSDGsが企業の評価基準の一つとなることで、取り組みをしていない企業に向けられる目は厳しくなる恐れがあります。社会的課題の解決に積極的ではない姿勢は、長期的な成長に欠けると判断される可能性があるためです。

 

新たなビジネスチャンスの開拓

SDGsは社会が抱える課題と密接な関係性があります。解決策を見い出す過程で生まれた新しいビジネスアイデアは、新たな事業機会の獲得につながります。

SDGsへの取り組みは、他にも新しいビジネスパートナーの獲得など、企業のさらなる成長への足がかりとして期待できます。SDGsは、決して大企業だけの課題ではありません。中小企業や零細企業でも推進していくことが可能です。ビジネスチャンスがあると言う視点を持ち、できる取り組みから初めていくと良いでしょう。

オフィスで実践できるSDGsの取り組み方

実際にオフィスで実践できるSDGsの取り組み方を解説します。さまざまな企業で実践されている例を取り上げますので、自社での導入を検討する際の参考にしてみてください。

 

1.ペーパーレス化

ペーパーレス化により自然環境の保全に貢献できます。紙の消費量を減らすことは、原料である木の伐採数低下や廃棄物の削減につながります。これらは、SDGsの目標である「陸の豊かさを守ろう」に関連深い施策と言えます。

また、ペーパーレス化は紙の消費量だけでなく、印刷にかかるインク代や電気代などのオフィスコスト削減にもつながります。

 

ペーパーレス化に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

2.省エネ

節電の意識を高めることで、CO2の削減に貢献できます。使用電力が減れば、SDGsの「エネルギーをみんなに、そしてグリーンに」に貢献できるほか、コスト削減の効果も期待できます。

オフィスで取り組み可能な節電方法と実践するポイントは次のとおりです。

節電方法 実践するポイント
LED照明への切り替え 必要な明るさのLED照明に交換する。寿命が長いためコスト削減にもつながる。
不要な電気を切る 使っていない会議室や部屋は全て消灯する。
照明灯の間引き 業務に支障がでない明るさの範囲で蛍光灯のや照明の数自体を減らす。
空調の温度設定の変更 夏は28度、冬は20度程度にする(労働安全衛生法では17度以上28度以下が推奨)。
空調とサーキュレーターの併用 空調の温度設定は変えず、サーキュレータを併用して空気の循環を良くする。
PCやOA機器を省エネモード 省エネの設定がない場合は、昼休憩など長期で使わないときに電源を切る。

電力を太陽光や風力などの再生可能エネルギーでまかなうことで電力消費をおさえるのも効果的です。ただし電力契約はビル単位でおこなわれるため、自社ビルでない限り契約先を自由に選ぶことはできません。そのため、企業が再生可能エネルギーを利用するには、「再生可能エネルギー由来の電力」を導入しているビルに入居することがおもな手段となります。

再生可能エネルギーを使用してるかどうかは「非化石証書」を活用しているかで確認できます。非化石証書とは「発電時にCO2を出さない」という環境価値を証書化したものです。非化石証書の価値を組み込んだ電気プランが選択できるビルへ入居することで、CO2の排出量削減に貢献できます。

 

カーボン・オフセットに取り組む

カーボン・オフセットは、どうしても削減できないCO2などの温室効果ガスの排出について、他の活動で埋め合わせようという考え方です。

どんなに企業努力を重ねても、すべての温室効果ガスの排出をゼロにすることはできません。しかし、CO2削減活動への投資や「クレジット」を購入することで、自社がおこなえる以上の温暖化対策の実現が可能になります。

クレジットは温室効果ガスの削減・吸収量を見えるかたちにし、市場取引ができるようにした証明書のことです。クレジットはオフセット・プロバイダーと呼ばれる提供会社を通して購入できます。

 

省エネの照明選びに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

3.環境にやさしい製品を利用

使い捨てのプラスチック製品ではなく、リサイクルされた製品を利用することでプラスチック廃棄物の削減を図れます。廃棄物の削減は、SDGsで掲げられている「海の豊かさを守ろう」にもつながります。

すでに多くの企業がSDGsを推進する一環として、オフィスで使用するプラスチック製品の削減を実施中です。たとえば、カップやストローなどの紙製への変更、リサイクルした素材で作られたエコバッグやマイ箸の持参推奨などを実施する企業が多いようです。

 

4.働きやすいオフィスレイアウトの導入

社員が働きやすいオフィスの環境整備は、SDGsの「働きがいも、経済成長も」に関連しています。業務しやすい環境は作業効率の向上や社員のストレス軽減につながり、ひいては企業の成長への寄与も期待できます。

オフィスでできる代表的な環境整備の方法は次のとおりです。

オフィスの環境整備 効果
花や木などの緑を取り入れる 社員のリラックス効果とモチベーションアップ
オフィスにカフェを設置する コミュニケーションの円滑化と社員のリラックス効果

オフィス緑化に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

5.防災対策の強化

「住み続けるまちづくり」には、災害への備えも必要です。企業の防災対策を見直し、有事の際のリスクをおさえる体制作りをおこなう必要があります。

オフィス周辺のハザードマップを周知しておくことや、定期的に防災訓練や啓発活動を実施しておくことで、いざという時でも適切な避難行動ができるようにしておきましょう。災害発生に備えて水や食料などの備蓄の準備をしておくことも大切です。

 

防災対策に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

6.評価体制の見直し

SDGsでは、「ジェンダー平等の実現」も目標として掲げられています。企業においては、性別に関係なく能力を基準に評価することで、給料や管理職での男女差をなくすのが、実現の手段として考えられます。

実現させるためには、評価体制の見直しや社員一人ひとりの意識改革も必要です。現在の評価体制をジェンダー平等の観点からチェックして、課題や問題点を洗い出し改善しましょう。経営陣からのメッセージ発表や研修会などの実施で、社員の意識を改革していくのも大切です。

 

7.有給休暇の取得促進

有給休暇の取得促進は「すべての人に健康と福祉を届ける」への効果も期待できます。社員のワークライフバランスを保ちやすい環境を作り上げることで、個々のモチベーションアップにもつながります。

たとえば、結婚記念日や誕生日などの記念日に有給休暇の取得を推進している企業があります。そのほか、資格取得やキャリアアップなどを目指した勉強のために、最大5日間連続で休暇取得可能にし、さらに勉強にかかる費用も支援している企業や、半年間病欠がなかった社員に対して日だけ好きな日に休みが取得できる制度を設けている企業もあるようです。

有給休暇の取得を促進するには、制度作りだけでなく環境づくりも大切です。たとえば上司が部下に休暇取得について声かけをするほか、休暇中の社員の業務をフォローできるよう、日頃からチーム内でタスクを共有しておくと良いでしょう。

オフィスでSDGsに取り組む際のポイント

企業がSDGsに取り組む際のポイントを解説します。

1.まずは身近なことから取り組む

最初から初期費用がかかる施策に取り掛かると失敗したときのリスクも大きくなってしまうため、難易度の低い施策から一つずつ確実に推進していきましょう。たとえば、休憩時間は照明の照度を下げる、使わない部屋は電気を消すなどの節電はすぐにでも取り組めます。マイ箸やマイバック、マイボトルの推奨も取り組みやすい施策です。

まずは身近なことから始めて、少しずつ社員の意識を改革していくことで、将来的には大きな施策も実践しやすくなります。

 

2.SDGsに関する事業戦略を考える

企業内でおこなうSDGsの推進は、オフィスで働く社員一人ひとりの協力がなければ成功しません。意義や利点を共有し、主体的に取り組めるような体制を整えましょう。その際、SDGsの担当チームや担当者を決めるとより具体的に進めやすくなります。

また、実際に活動をおこなう現場の社員の意見を聞くことも大切です。アンケートやヒアリングを実施してアイデアを吸い上げましょう。自分たちの意見を元に施策が進められることで、当事者意識からより積極的な協力が得られる可能性が高まります。ワークショップや研修の実施も効果的です。

 

3.SDGsの専門家に相談する

効率的かつ成功確率を高めるためには、SDGsに知見のある企業の経営者や大学教授、コンサルタントなどの専門家に相談してアドバイスやサポートを受けるのが現実的です。

専門家への相談は料金がかかることもありますが、プロの観点からアドバイスを受けられるため、結果的にはコストの面から見ても一考の価値はあるでしょう。資料の提供を受けられる場合もあり、最新情報を見逃しにくいのもメリットです。

SDGsに関する研修会の実施やeラーニングサービスを提供している専門機関などもあるため、必要に応じて活用を検討してみてください。

オフィスのSDGsへの取り組みに付随して利用できる補助金

SDGsへの取り組みで活用できる補助金制度を紹介します。補助金によって対象となる取り組みは異なりますが、条件に当てはまればペーパーレス化やテレワークの導入にかかるコストをおさえられます。

条件や応募期間は変わる可能性があるため、事前に各特設サイトや自治体の公式サイトを確認しておきましょう。

 

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金は1企業当たり最大100万円、目標達成でも最大100万円の補助金がおります。助成対象となる経費の範囲は、次のとおりです。

  • 就業規則や労働協約、労働協定の作成および変更に関わる費用
  • 外部専門家に依頼したコンサルティング費用
  • テレワーク用の通信機器導入や運用に関わる費用
  • 労務管理担当者に対しておこなう研修費用
  • 労働者に対しておこなう研修費用

テレワーク勤務の一端として、リモートデスクトップサービスや仮想デスクトップサービスなどの経費も助成対象となります。おもな受給要件は次のとおりです。詳細は、厚生労働省の公式サイトでご確認ください。

  • テレワークの実施計画を作成し、管轄の労働局に提出して認定を受けていること
  • 計画認定日以降、機器等導入助成の支給申請日までに、テレワークに関する制度として、所定の内容を規定した就業規則又は労働協約を整備すること
  • 管轄の労働局に認定を受けたテレワーク実施計画に基づき、実際に取り組みを実施すること
  • 評価期間におけるテレワークの実施状況が基準を満たしていること
  • 労働者が企業内においてテレワークを実施しやすい風土づくりの取り組みをおこなっていること

 

IT導入補助金

経済産業省が公募しているIT導入補助金は、IT機器の導入に要した費用の半額を支給する補助金制度です。支給上限額は450万円で、通常枠では次に示す要件を満たしている事業が補助対象となります。

  • 日本国内で実施される事業
  • IT導入支援事業者が登録するITツールを導入する事業

経済産業省は補助金制度だけではなく、テレワークやECの導入、活用に関する悩みを専門家に相談できる「中小企業デジタル化応援隊事業」も実施しています。

 

各自治体が主導する防災グッズの補助金

国の機関だけではなく、全国各地の自治体でも独自の補助金制度を設けていることがあります。仕事に直接必要な機器やシステムだけではなく、たとえば防災用具を対象とした補助金もあります。

自治体によって制度の名前や限度額や対象などが異なるため、オフィスがある地域で活用できる補助金制度があるかどうか確認しましょう。

SDGsの意義やメリットを理解して会社全体で取り組もう

企業にとってSDGsの推進は、ブランディングや採用活動でのアピールに効果が期待できるほか、新たなビジネスチャンス創出などの利点があります。

オフィスで実践できるSDGsの取り組みは多岐にわたりますが、節電やペーパーレス化など、比較的実行しやすいものから始めていくと良いでしょう。何から始めれば良いかわからない場合は、専門家に相談しながら進めてみてください。

SDGsは個人、企業、国の全体で取り組むことで解決への活路が生まれます。主体的に取り組むことで環境改善に貢献していきましょう。

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