オフィス移転マニュアル完全版|スケジュール通りに新天地で業務開始
オフィス移転
オフィス移転は普段の業務と平行して手間のかかる手続きや作業をおこなう必要があります。スムーズな移転を実現するには、事前に全体の流れやタスクを整理しておくと良いでしょう。
この記事は初めてのオフィス移転に役に立つ、必要な手続きやポイントをご紹介します。成功させるコツや、よくある疑問点もあわせて解説するため、オフィス移転を控えている場合はマニュアル作成の参考にぜひご覧ください。
目次
オフィス移転の成功のためにまず知っておきたいこと
オフィス移転は大規模なプロジェクトです。的確な計画を立てるためには、検討する段階で、次のポイントをおさえておくことが大切です。
- オフィス移転マニュアルの策定
- オフィス移転スケジュール
- オフィス移転費用の目安
それぞれの詳細を解説します。
■オフィス移転マニュアルの策定
オフィス移転をスムーズに進めるためにはマニュアルの策定など事前準備が重要です。
社内での周知や関係各所への通達、公的な申請など、オフィス移転でおこなうべきことは引越し当日の数カ月以上前のタイミングから発生するため、通常業務と並行します。通常業務を継続しながら、移転のタスクを計画し、実施するのは容易ではありません。
あらかじめマニュアルを用意しておけば、いざタスクに直面して慌てたり、やり方がわからず調査に時間をかけて業務に支障が出ることを防げます。移転に関わる従業員へのタスクの割り振りも計画的に進めていくことができるでしょう。
長期的な目線で無駄な労力や時間を省くためにも、マニュアルを作成しておくと良いでしょう。
■オフィス移転スケジュール
オフィス移転を計画してから実際に引越すまでには6カ月ほどの時間がかかるとされています。その6カ月の間に接するタスクは数多く存在しているため、スケジュールを組んで計画的に実施していくことが大切です。
スケジュールの一例としては、次のようなものがあげられます。
- 6カ月以上前:移転の立案
- 6~4カ月前:移転先選定と旧オフィス解約手続き
- 4~3カ月前:レイアウトなどの設計
- 3~1カ月前:業者の手配や備品の発注
- 移転実施日:引越し
- 移転後 :各種届出・手続き
各工程が期間内に終わるようにスケジュールを組むことが大切です。オフィス移転のスケジュールに関しては、次の記事でより詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
■オフィス移転費用の目安
オフィス移転には1坪当たり40万円ほどの費用がかかると考えられます。あくまで目安であるため実際の費用は企業それぞれの持つ事情、従業員数や備品によって増減しますが、ある程度まとまった予算が必要なことには変わりありません。
一口にオフィス移転費用といっても、内訳には次のようなものがあります。
- 引越し費用
- 原状回復費
- 移転先オフィスの賃料
- オフィス家具・備品廃棄費用
- オフィス家具・備品調達費用
- 工事費
- 住所変更に伴う諸費用
これらは見直しによって価格を安価にできる場合もあります。たとえば、家具・備品関連の費用であれば、これまで使っていたものを継続で使用する、中古品やリース品を利用することなどでコストカットが可能です。
賃料をおさえるために移転先を絞り込むという選択肢はありますが、オフィスが狭くて窮屈であったり、交通の便が悪い立地だと、業務の生産性や従業員のモチベーションが低下する恐れもあります。実用性を考慮した上で、コストパフォーマンスを判断して予算計画を立てることが重要です。
【オフィス移転マニュアル1】引越し前にやること
オフィス移転の引越し前に必要な手続きや作業は数多くあるため、マニュアルを作成してやるべきことを整理しましょう。たとえば賃貸オフィスに入居している企業の場合、次の12個のタスクが発生します。
- 社内への周知
- オフィス移転プロジェクトチームの結成
- オフィス移転の目的の明確化
- オフィス移転計画の立案
- 移転先オフィスの選定
- 現オフィスオーナーへの解約予告
- 退去後の原状回復工事の依頼
- 移転先オフィスのレイアウト検討
- 備品やオフィス家具の発注
- 移転先オフィスの工事や引越しの依頼
- ステークホルダーへの移転の連絡
- ライフライン・消防署・郵便局への届出
必要なタスクをまとめたマニュアルを見ながらオフィス移転の業務をおこなえば、抜けや漏れも防ぎやすくなります。それぞれのやるべきことの詳細も把握しましょう。
■1.社内への周知
まずは社内に対し、オフィス移転に関する周知を進めることからはじめましょう。同時に、移転全体のスケジュールや引越し当日までの準備、当時の役割分担などの手順を記載した従業員向けのマニュアルを作っておくことも大切です。
まだ移転先も決定していない段階のため、全社への周知をおこなうのではなく、関係者のみに知らせるだけでも良いでしょう。社内のニーズ調査を実施する際や、移転先が決まった段階など、計画の進行とともに情報公開を進めるようにしましょう。
■2.オフィス移転プロジェクトチームの結成
オフィス移転の業務は多岐にわたるため、一人でこなせるものではありません。プロジェクトチームを結成して業務にあたりましょう。プロジェクトチームには移転計画の策定から実際の移転まで、全てのプロセスを統括する役割があります。
この段階から本格的に移転計画の詳細を詰めていく作業がはじまります。社内の調整がスムーズにできるよう、各部署から責任者を選出してチームメンバーに加えましょう。
■3.オフィス移転の目的の明確化
オフィス移転のきっかけとなった理由をブラッシュアップし、オフィス移転の目的を明確なものにしましょう。「なぜオフィス移転をするのか」というポイントが明確でないと、移転先の立地や内装工事などの方針が決まりません。
たとえば、「従業員の数が増えたので移転したい」という理由がきっかけにある場合には、現在のオフィスより広い物件を選ぶ必要があります。安さを理由に同じ広さの物件に移転してしまえば意味がないため、主な目的を計画の中心に置くことが大切です。
また、現オフィスの不満点をリストアップしておくことで、移転先のレイアウトや備品によって改善をおこないやすくなります。従業員に現在のオフィスに対する感想を求め、オフィス移転によって改善可能な点を探し出しましょう。
■4.オフィス移転計画の立案
移転先のオフィスにもとめる条件や移転スケジュールを決めたら、正式に計画を提案し、社内での決裁を受けましょう。計画には、予算の要求も必要になるため、立案をする前に移転にかかるおおよその費用を試算しておくことも大切です。
提案には明確化された目的に応じた仕様も盛り込みましょう。オフィスの広さや立地条件に関するニーズや、不満の解決を実現するためには予算が必要です。仕様を具体化しておくことで提案の説得力が増し、実際の物件探しにも役立ちます。
■5.移転先オフィスの選定
計画の決裁を受け、無事に移転計画が承認されたら、移転先のオフィスの選定をはじめましょう。物件探しには不動産会社への依頼や不動産ポータルサイトの活用といった手段が利用できます。
計画で決定した広さ、立地、家賃などの仕様から条件を絞り込み、物件を探します。ただし、全ての条件が満たされる物件を見つけることは難易度が高く、条件に優先順位をつけて選択することが重要です。
移転先に最も相応しい物件を見つけたら、その物件を管理する不動産会社へ連絡し、オフィス移転の旨を伝えましょう。
■6.現オフィスオーナーへの解約予告
オフィス移転の見込みが立ったら、なるべく早めに現在利用しているオフィスのオーナーへ解約予告をおこないましょう。
解約予告は、退去の3~6カ月前におこなうことが一般的です。一般的な住居用賃貸物件の解約と違い、オフィス賃貸の場合は新たな入居者が決まるまでに時間がかかる可能性が高く、早めの予告が求められています。
また、賃貸契約書から敷金や保証金の扱い、原状回復の必要性などを確認しましょう。指定された段階まで、借主負担での原状回復工事を実施することになります。
■7.退去後の原状回復工事の依頼
オフィスの借主には、退去後の原状回復の義務があります。原状回復とは、オフィスを賃貸契約前の状態に戻すことを指し、物件を使用した結果生じた損傷や変化を修復する作業が含まれます。原状回復工事の範囲をオーナーに確認し、工事業者に依頼しましょう。
利用する工事業者はオーナーによって指定されている場合があるため、工事範囲とあわせて依頼前に確認が必要です。また、いつまでに工事を完了させるべきかの確認も必要になるので、なるべく早くオーナーに問い合わせるようにしましょう。
■8.移転先オフィスのレイアウト検討
移転先のオフィスをどのようなレイアウトで運用するのかを検討しましょう。部署ごとの業務スペースや、エントランスや応接室などの共有スペースを確保しましょう。
オフィスのレイアウトは、業務効率化や従業員の満足度向上に大きく影響するため、適切なゾーニング(スペースの機能や用途ごとの区分け)が大切です。
効果的なゾーニングの例には、共有スペースからの視線が気になって業務に集中できない悩みに対し、仕切りやスペース配置によって視線を遮る、というようなものがあげられます。
また、従業員がスムーズに移動できるように、動線も考慮しましょう。通路の幅や備品とデスクの距離、配置などを整理することが大切です。
■9.備品やオフィス家具の発注
引っ越し当日までにオフィス家具や什器が納品、レイアウトされているように、発注の手配をしましょう。作成したレイアウトプランをもとに必要な家具と備品をリストアップし、調達したいものを選択します。値段やデザイン、使いやすさに注目して製品を選びましょう。
同時に、現オフィスの備品や家具のうち、移転先で継続して使用するものと処分するものを選別します。
■10.移転先オフィスの工事や引越しの依頼
移転先のオフィスでは、内装や電気、設備、セキュリティ、電話やネットワークの配線などの工事が必要となります。また、移転当日に向けて引越しの手続きも進めていかなければなりません。
引越しまでに工事が完了していることが望ましいため、スケジュールに無理がないかどうかをチェックしてから依頼をしましょう。
また、移転先の物件の管理会社によっては内装などの工事業者を指定している場合があります。業者を選ぶ前に管理会社に確認しておきましょう。
■11.ステークホルダーへの移転の連絡
オフィス移転に伴い住所や電話番号が変わるため、金融機関や取引先、リースやサポート会社、加入団体などのステークホルダーに変更の連絡をしましょう。関係性を重視している相手には、詳細な移転案内状を送り配慮を示すこともできます。
オフィス移転のお知らせに関しては、次の記事でも詳細な解説をしています。あわせてご覧ください。
オフィス移転のお知らせ例文を紹介|記載内容や送付までの手順を一挙解説
■12.ライフライン・消防署・郵便局への届出
移転前最後の手続きとして、ライフラインや消防署、郵便局への届出が必要です。機関ごとに、次の書類が求められます。
機関 | 提出書類 | 提出期限 | 提出方法 |
ライフライン |
|
各ライフラインによる | 各ライフラインによる |
消防署 |
|
移転日の7日前まで |
※地域によって変わる |
郵便局 |
|
任意 |
|
届出によっては提出期限が設けられているため、忘れず手続きを進めるようにしましょう。
また、法人の住所変更によって発生する手続きについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
法人の住所変更に伴う手続き|必要書類から申請期限まで詳しく解説【司法書士監修】
【オフィス移転マニュアル2】引越し後にやること
オフィス移転をおこなった後にも必要な手続きはあるため、マニュアルに沿って進めていきましょう。次の2つがやるべきことです。
- 公的機関への届出
- 原状回復工事が完了したオフィスの引き渡し
それぞれの詳細を解説します。
■1.公的機関への届出
引越し後にも次の公的機関への届出が必要です。提出する書類もあわせてご紹介します。
公的機関 | 提出書類 | 提出期限 | 提出方法 |
税務署 | 法人税の取り扱いに関係する異動届出書 | 移転後速やかにおこなう |
|
警察署 |
※ナンバープレートの変更が必要な場合 |
なし | 警察署窓口 |
年金事務所 | 適用事業所所在地・名称変更届 | 移転後5日以内 |
|
労働基準監督署・ハローワーク |
|
所在地変更の翌日から10日以内 |
|
法務局 | 本店・支店移転登記申請書 | 移転後2週間以内 |
|
期限のある届出でも少なくないため、忘れないようにしてください。移転後におこなう申請ではありますが、期限に遅れがないように、書類を事前に準備しておくようにしましょう。
■2.原状回復工事が完了したオフィスの引き渡し
旧オフィスのオーナーに予告した解約日までに、原状回復工事を完了させましょう。指定された条件どおりに工事が完了しているかを確認し、引き渡しとなります。
原状回復が指定された条件通りにおこなわれていない場合、追加の工事が必要になる可能性もあります。オーナーや管理会社と意見の相違があるとトラブルに発展する可能性もあるため、事前の確認が大切です。
オフィス移転を成功させるポイント
オフィス移転を確実に成功させるためには、次のポイントをおさえておくことが大切です。
- オフィス移転のチェックリストを作成する
- オフィス移転支援サービスを活用する
それぞれの詳細を解説します。
■オフィス移転のチェックリストを作成する
マニュアルで紹介された項目からもわかるように、オフィス移転は多くのタスクが発生するため、同時並行作業をおこなうことになります。チェックリストを作成して、タスクの進行を管理できるようにしましょう。
視覚的に管理ができるチェックリストであれば、完了しているタスクと進行中のタスク、次にすべきタスクを整理できます。未チェックのタスクがあればサッと見て確認できるため、漏れや期限切れを防止しやすくなります。
次の記事ではオフィス移転に便利なチェックリストと使い方を紹介しています。ぜひご活用ください。
【PDF付き】オフィス移転で活用したいチェックリスト|必要な手続きを徹底解説
■オフィス移転支援サービスを活用する
無理なオフィス移転計画は失敗の元になるため、オフィス移転支援サービスの利用も検討しましょう。オフィス移転では数多くの作業や手続きなどが発生するため、自社だけでは対応可能なリソースが用意できない恐れもあります。
サービスによっては物件探しからオフィスデザイン、工事の依頼、引越しまでトータルのサポートが提供されています。コストパフォーマンスに優れたサービスを利用することで、自社の負担を大幅に軽減できるでしょう。
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オフィス移転に関する疑問
オフィス移転をおこなうときの担当者が抱きがちな疑問を2つピックアップしてご紹介します。
- オフィス移転費用をおさえるコツは?
- オフィス移転のベストなタイミングは?
疑問点となりうるポイントをあらかじめ把握し、対処法を理解することでスムーズなオフィス移転を実現しましょう。
■オフィス移転費用をおさえるコツは?
オフィス移転にかかる費用をさせるには、次の点を確認しておくと良いでしょう。
- 国や自治体の補助金
- ペーパーレス化
- 居抜き物件を移転先に選ぶ
補助金にはIT導入補助金やものづくり補助金といった国が提供する制度や、地方自治体が独自に展開しているものがあります。適用条件が定められているケースが多いため、自社が利用できるものを探してみてください。
ペーパーレス化は紙の書類を電子化するため、オフィススペースの縮小を図れます。広いオフィスが不要になるため、移転先の家賃をおさえやすくなります。また、ペーパーレス化に必要なソフトウェアやクラウドの費用が補助金の対象になることもあります。
居抜き物件への移転は、内装工事費用やオフィス家具・備品の購入費用を削減できます。旧オフィスの家具・備品を再利用すれば、更に購入費用をおさえられるかもしれません。
■オフィス移転のベストなタイミングは?
引越し業者の繁忙期である3~4月は避けると理想的です。この期間は一般家庭の引越しが多いため、料金の高騰や予約を取りにくい可能性があります。
また、自社の業務が忙しい時期も避けたほうが賢明と言えます。移転業務は通常業務と並行して移転のための業務が発生するため、影響を最小限にとどめられるよう努めたいところです。また、引越し当日付近のタイミングでは業務を停止せざるを得ないケースも多くあります。
まとめ:マニュアルを作成してスムーズなオフィス移転を実現しよう
オフィス移転によって発生するタスクは、その数が膨大というだけでなく、通常業務と並行しておこなう必要性もあり、担当者にとっては大きな負担となります。負担を軽減させるためにも、マニュアルを作成して手順に則った移転業務を進めることが大切です。
マニュアルを作成し、スケジュールを守って移転業務を実施できるように正確な計画を練るようにしましょう。自社だけでは対応リソースが足りないと感じた場合には、オフィス移転の専門業者の手を借りることも有効な選択肢です。
アイリスチトセでは、オフィス移転に関するトータルサービスを提供しています。オフィス移転でお悩みがありましたら、まずは気軽にご相談ください。