法人の住所変更に伴う手続き|必要書類から申請期限まで詳しく解説【司法書士監修】

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法人の住所変更に伴う手続き|必要書類から申請期限まで詳しく解説【司法書士監修】

法人がオフィス移転をする際には、個人がおこなう引越し手続きとは異なり、法務局や税務署での事前手続きが求められます。各種手続きの中には、申請期限が決められているものがあるため、しっかりとした移転計画を立てる必要があります。

たとえば法務局での手続き期日は、移転日から2週間以内です。税務署は法務局の手続き後でも可能ですが、移転日からできるだけ速やかにおこなう必要があります。

本記事では、上記の詳細をはじめ、法人の住所変更に伴う手続きや必要書類、申請期限について詳しく解説します。後半では注意事項やよくある質問も紹介しているので、オフィス移転を予定している法人の経営者や移転プロジェクトの担当者にとって特に参考になるはずです。ぜひ、最後までお読みください。

なお、本店と本社の住所が異なる場合がありますが、本記事の法人の住所とは会社登記簿上の本店として解説します。

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オフィス移転後におこなう法人の住所変更とは

法人 住所変更_001

オフィスの移転後は、当初に届け出ていたさまざまな場所に住所変更を知らせる手続きが必要です。法人の住所変更には、個人が自宅を転居する場合と異なる手続きがあります。

ここでは、まず法人の住所変更とは何かを解説します。

 

会社登記簿の内容を変更する手続き

法人の住所変更は、会社登記簿の内容を変更する手続きが必要となります。起業時に法務局にて作成された会社登記簿の該当部分である本店に書き換えが必要となるためです。

項目 内容
商号区
  • 会社法人等番号
  • 商号
  • 本店
  • 公告をする方法
  • 会社成立の年月日
目的区 目的
株式・資本区
  • 発行可能株式数
  • 株券発行会社である旨
  • 発行済株式の総数並びに種類および数
  • 資本金の額
  • 株式の譲渡制限に関する事項
役員区
  • 取締役
  • 監査役
  • 代表取締役
会社状態区
  • 取締役会設置会社に関する事項
  • 監査役設置会社に関する事項
登記記録区 登記記録を起こした事由および年月日

会社登記簿に記載されている上記の基本情報のうち、法人の住所変更した時は、商号区の本店部分の内容を書き換えることになります。

 

住所変更にかかる費用は30,000円程度

法務局で会社登記簿の商号区の本店部分を変更する際には、30,000円の登録免許税がかかります。金額は、法務局の管轄内外での移転かで異なります。

移転先 登録免許税
管轄内の移転 30,000円
管轄外への移転 60,000円

管轄内の移転は30,000円、管轄外への移転は60,000円です。管轄外の登録免許税が管轄内の2倍になる理由は、移転元と移転先の両方で登録免許税が必要なためです。法人の住所変更の手続きは、経営者自身や社員でもおこなえますが、司法書士に依頼する場合は、さらに40,000~50,000円程度の報酬が必要です。報酬は司法書士事務所によって異なるため、依頼する際に確認しましょう。

【移転先別に解説】法人の住所変更をおこなう手順

法人 住所変更_002

法人の住所変更で必要な手続きは、法務局だけではありません。税務署や労働基準監督署などさまざまな場所での手続きも必要になるため、漏れがないように注意しましょう。

手続きの手順は、移転先が現住所と同じ法務局管轄の市区町村の場合と移転先が現住所のある法務局管轄外の市区町村の場合で異なります。

 

移転先が現住所のある法務局管轄外の市区町村の場合

移転先が現住所のある法務局管轄外の市区町村の場合、まずは、株主総会による決議からスタートします。

1.株主総会による決議

本店所在地は、定款の記載事項であり、住所変更で最小行政区画を変更する場合には、定款を変更する必要があります。定款を変更する場合は、会社の最高意思決定機関の株主総会での決議が必要です。定款を変更するには特別決議が必要で、議決権の過半数を有する株主の出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の株主による賛成が必要です。

移転先や移転日を決めるために取締役会を開催します。取締役会を設置していない場合は、取締役の過半数の一致で決定します。

法務局で手続きする際には株主総会議事録や取締役会議事録(または取締役決定書)が必要になるため、忘れないように作成しましょう。

2.引越し

株主総会や取締役会での決議が終了した後は、オフィスの引越しをおこないます。引越し後にすぐ事業が運営できるよう、オフィスレイアウトの変更やインターネット環境の整備など、準備すべきことが多岐にわたります。

オフィス移転で必要な各工程の詳細については、次の記事で具体的に紹介しているので、ぜひご覧ください。

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3.法務局での登記申請

オフィスの引越しが終了した後は、法務局で住所変更の手続きをおこないます。申請期限が移転日から2週間以内に限られるため、引越し後はできるだけ速やかに手続きするよう心がけましょう。

移転先が現住所のある法務局管轄外の市区町村の場合、移転元の法務局で移転先の手続きを同時におこなうことが必要です。法務局には、本店移転登記申請書や株主総会議事録、取締役会議事録(または取締役決定書)などの書類を提出します。

4.各種機関への届出

法務局で手続きが終了した後は、年金事務所や労働基準監督署などの各種機関への届出をおこないます。法務局と同様に申請期限が決められている機関もあるため、移転後は速やかに手続きしましょう。

なお、各種機関に提出する必要書類や申請期限などは、次章の「法人の住所変更における必要書類・届出先および申請期限」で詳しく解説します。

 

移転先が現住所と同じ法務局管轄の市区町村の場合

現住所と同じ法務局管轄の市区町村に移転する場合は、株主総会による定款変更の決議は不要です。ただし、定款で本店所在地を具体的に地番まで定めている場合は、定款の変更が必要になりますので、株主総会での特別決議が必要です。

そのため、まずは定款の本店所在地がどこまで記載されているかを確認しましょう。法務局管轄内の移転では基本的に取締役会のみを開催し、移転先や移転日の決議(取締役会を設置していない場合は取締役の決定)をおこないます。

株主総会や取締役会での決議以降の流れは、「移転先が現住所のある法務局管轄外の市区町村の場合」と同様です。引越し後は法務局や各種機関での手続きが必要ですが、詳細は「法人の住所変更における必要書類・届出先および申請期限」で解説します。

法人の住所変更における必要書類・届出先および申請期限

法人 住所変更_003
手続き場所 必要書類 申請期限
年金事務所
  • 健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届
  • 登記事項証明書
移転日から5日以内
労働基準監督署
  • 労働保険名称・所在地等変更届
  • 労働保険関係成立届
移転日の翌日から10日以内
公共職業安定所
  • 雇用保険事業主事業所各種変更届
  • 給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届
  • 登記事項証明書
移転日から10日以内
法務局
  • 本店移転登記申請書
  • 株主総会議事録(定款変更がある場合)
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録または取締役決定書(取締役会を設置していない場合)
  • 印鑑届出書(管轄外の場合)
  • 印鑑カード交付申請書(管轄外の場合)
移転日から2週間以内

※ただし、年金事務所での手続きの関係で5日以内に済ませる必要がある

税務署
  • 異動届
  • 所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
  • 登記事項証明書
法務局での手続き後できるだけ速やかに
その他 消防署
  • 防火対象物使用開始届出書
  • 防火対象物工事等計画届出書
  • 防火・防災管理者選任(解任)届出書
  • 消防計画作成(変更)届出書
移転日の7日前まで
郵便局 転居届 変更後の住所や移転日が決まり次第
警察署 自動車保管場所証明申請書 変更後の住所や移転日が決まり次第
金融機関
  • 通帳
  • 届出印
  • 本人確認書類
  • 登記事項証明書
変更後の住所や移転日が決まり次第
自治体
  • 法人等異動届出書
  • 給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届出書
  • 登記事項証明書
自治体によって異なる

ここからは、申請期限が早い順に法人の住所変更における必要書類や届出先を解説します。

 

年金事務所

移転日からの申請期限が特に早いのは、年金事務所での手続きです。移転日から5日以内に、次の必要書類を揃えて住所変更の報告をおこないます。

  • 健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届
  • 登記事項証明書

ただし、登記事項証明書は移転後の内容が記載されている必要があります。そのため、年金事務所よりも先に法務局で手続きが完了していないと入手できません。

健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届は、次の日本年金機構の公式ウェブサイトからダウンロードできます。

日本年金機構「事業主の変更や事業所に関する事項の変更(訂正)があったとき」

 

労働基準監督署

管轄の労働基準監督署には、移転日の翌日から10日以内に次の書類を揃えて手続きする必要があります。

  • 労働保険名称・所在地等変更届
  • 労働保険関係成立届

労働保険名称・所在地等変更届は、移転後の所在地を管轄する労働基準監督署で入手できます。複写式用紙なので、窓口に手続きに行く前に種類を受け取りにいきましょう。

労働保険関係成立届は、次の厚生労働省の公式ウェブサイトからダウンロードできます。

厚生労働省「労働保険関係各種様式」

 

公共職業安定所

公共職業安定所には、移転日から10日以内に住所変更の報告をおこないます。ただし、先に労働基準監督署で労働保険関係成立届を提出しておく必要があります。

手続きの際に必要な書類は、次のとおりです。

  • 雇用保険事業主事業所各種変更届
  • 給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届
  • 登記事項証明書

雇用保険事業主事業所各種変更届はハローワークインターネットサービス、給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届は市区町村の公式ウェブサイトでダウンロードできます。

ハローワークインターネットサービス「雇用保険事業主事業所各種変更届」

また、登記事項証明書の提出が必要なので、公共職業安定所に行く前に法務局で手続きを済ませておきましょう。

 

法務局

申請期限は移転日から2週間以内ですが、遅くとも5日以内に済ませなければなりません。移転日から5日以内におこなわなくてはならない年金事務所の手続きでは、法務局で入手した登記事項証明書が必要なためです。

法務局での手続きでは次の書類を揃えます。

  • 本店移転登記申請書
  • 株主総会議事録(定款変更がある場合)
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録または取締役決定書(取締役会を設置していない場合)
  • 印鑑届出書(管轄外の場合)
  • 印鑑カード交付申請書(管轄外の場合)

本店移転登記申請書は、次の法務局の公式ウェブサイトでダウンロードできます。

法務局「商業・法人登記の申請書様式」

移転先が現住所のある法務局管轄外の市区町村の場合は、住所変更と同時に新しい印鑑カードの発行も済ませておきましょう。

 

税務署

移転後ではなく、移転前の管轄の税務署にて手続きをおこないます。申請期限は決められていませんが、法務局での手続き完了後に速やかにおこなうのが一般的です。

必要書類は次のとおりです。

  • 異動届
  • 所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
  • 登記事項証明書

登記事項証明書以外の書類は、すべて国税庁の公式ウェブサイトでダウンロードできます。

国税庁「[手続名]異動事項に関する届出」

国税庁「[手続名]所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出手続」

国税庁「[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」

 

その他

法人の住所変更をした後は、次の各種機関での手続きが必要です。

  • 消防署
  • 郵便局
  • 警察署
  • 金融機関
  • 自治体

移転先の自治体では、法人市民税の関係で法人等異動届出書と登記事項証明書の提出をおこないます。社員が居住する自治体には、給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届出書と登記事項証明書を提出します。

金融機関からの転送不要の郵便物は新住所に届かないため、新住所が決まり次第郵便局で手続きしましょう。なお、消防署の手続きの申請期限は、移転日の7日前までです。

法人の住所変更における注意事項

法人 住所変更_004

ここからは、法人の住所変更における注意事項を解説します。

 

移転先に同一商号が登記されていないかを確認

移転先の住所に同一商号が登記されている場合、住所変更を受理してもらえません。商業登記法第27条により、同一住所に同一商号を登記できないルールになっているためです。

特に大規模なオフィスビルのような複数の会社が集まる場所では、同一住所に同一商号が存在する可能性があります。そのため、移転を決議する前に商号調査をおこなっておきましょう。

商号調査とは、同一住所に同一商号の会社が登記されていないか調べることです。調査は、法務局や法務省の登録情報サービスなどでおこなえます。

 

期限内の手続きが原則

法人の住所変更の手続きは、期限内におこなうのが原則です。期限を超過しても受理自体はしてもらえますが、ペナルティが設けられているので注意が必要です。

期限内に手続きしなかった場合、登記懈怠と見なされます。会社の代表者に対しては、ペナルティとして100万円以下の過料が課せられる可能性があります。超過日数が数日程度であればペナルティが課せられないケースもありますが、各種機関での手続きもあるため、移転後はできるだけ早めに手続きしましょう。

 

管轄内外で必要書類が異なる

移転先が現住所のある法務局管轄外の市区町村の場合、管轄内の移転に比べて必要書類が多くなります。増える書類は本店移転登記申請書が2部、印鑑届出書、印鑑カード交付申請書です。

管轄内の移転
  • 本店移転登記申請書
  • 株主総会議事録(定款変更がある場合)
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録または取締役決定書
管轄外への移転
  • 本店移転登記申請書(2部)
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録または取締役決定書
  • 印鑑届出書
  • 印鑑カード交付申請書

本店移転登記申請書が2部必要なのは、移転元で移転先の手続きを同時におこなうためです。また、移転元から交付された印鑑カードは使用できなくなるため、印鑑届出書と印鑑カード交付申請書もあわせて移転元の法務局に提出する必要があります。

法人の住所変更に関するよくある質問

法人 住所変更_005

最後に、法人の住所変更に関するよくある質問をご紹介します。

 

登記完了までどのくらいの期間が必要か?

法務局に必要書類を提出して登記が完了するまでにかかる期間は、1週間~10日前後が目安です。混雑状況によっては日数がかかる可能性もあるため、移転後は速やかに手続きをおこないましょう。

法務局の中には、窓口や公式ウェブサイトで登記完了予定日を掲載しているところもあります。予定日が把握できれば、各種機関で手続きするタイミングを図れます。

書類に不備がある場合は、通常よりも日数が長くなる可能性があるため、提出前には内容をきちんと確認するようにしましょう。

 

自社で手続きすべきか?それとも専門家に依頼すべきか?

自社でおこなう場合は司法書士に支払う40,000~50,000円程度の費用をコストカットできます。しかし、手続きが複雑な上に本店移転登記申請書の作成には専門知識が必要です。申請期限が決められた手続きもあるため、司法書士に依頼したほうがスムーズです。

変更登記に対応したツールの活用

できるだけ自社で手続きしたい場合は、変更登記に対応したツールを活用するのも手段の一つです。ツールを活用すると、一部の情報を入力するだけで住所変更に必要な書類を自動作成してくれます。

自社での作業は作成した書類に押印し、収入印紙を貼付して法務局に郵送するだけです。自社で書類を作成する手間が省けるため、法務業務の効率化が図れます。費用はツールによって異なりますが、10,000円程度のものが多いです。

 

オンライン申請は可能か?

法務局での住所変更の手続きは、代表取締役本人がマイナンバーカードを使用すればオンライン申請できます。マイナンバーカードの情報を読み取るためにはICカードリーダライタが必要です。オンライン申請の流れは、次のとおりです。

  1. 申請書情報の作成
  2. 申請書情報への電子署名の付与
  3. 申請書情報の送信
  4. 登録免許税の納付
  5. 必要書類の提出

必要書類は、法務局の窓口または郵送で提出します。

まとめ:法人の住所変更は計画的に進めよう

法人 住所変更_006

オフィスを移転する際には、住所変更だけでなく、移転先のレイアウト決めや取引先に案内状を送付するタイミングなど、検討すべき事項が数多くあります。移転前後も通常通り事業を運営するためには、住所変更の手続きも含め計画的に進めていくことが大切です。特に法務局と年金事務所での手続きは移転後5日以内が期日なので注意しましょう。

また、同時に移転先のオフィス家具の検討も必要となることが多いでしょう。アイリスチトセでは、適したレイアウトやオフィス家具の提案をおこなっています。移転先のオフィス作りに迷った場合は、ぜひアイリスチトセにご相談ください。

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