オフィスで節電する有効な方法とは?今から始められるCSR活動
サステナブル・SDGs
近年では電力需給の見通しが厳しいため、国から節電に協力するよう呼びかけがなされています。一般家庭と比較して大量の電力を消費する企業には、より一層の節電意識を持って実行することが求められています。
しかし、具体的にどのように節電すれば効果があるのかわからず、うまく実行できていない企業も多いようです。
この記事では、オフィスですぐに実施できる節電方法を詳しく解説します。特に節電が必要となる夏場や冬場に気をつけるべき注意点もご紹介します。
夏に向けて、オフィスで実施できる正しい節電方法をしっかり確認しておきましょう。
目次
オフィスで節電を実施すべき理由
なぜオフィスで節電を実施すべきなのか、その理由を詳しく解説します。理由を理解したうえで、節電に取り組みましょう。
■経費削減につながる
まずオフィス全体で節電に取り組むべき理由として、電気代をおえられるため経費削減につながりやすいという点が挙げられます。
企業の経営維持のためには経費削減は非常に重要です。電気代の中でも空調の利用は季節によって大きく変動するため、経費を圧迫する要因になりやすいです。
一般的に、空調はオフィスで使用される電気代の約半分を占めています。加えて、照明とOA機器はそれぞれ2割ほどです。オフィスの空調や照明、OA機器の電気代をおさえることができれば、大幅な経費削減が期待できます。
特に消費電力が高まる夏は、節電効果が出やすい季節です。近年は地球温暖化の影響で気温が上昇しているため、夏の消費電力は年々高まっています。今こそ、しっかりと節電に取り組み、経費削減を実現させましょう。
■企業の社会的評価が高まる
企業全体で節電に取り組むことで、積極的に環境対策に取り組む企業イメージを外部に発信することにもつながります。結果的に、自社の社会的評価の向上にも期待できるでしょう。
地球温暖化や気候変動の影響から、省エネは世界規模で大きなテーマとなっています。電気の大口利用者である企業が率先して節電や省エネを実施することで、環境問題に向き合う姿勢をアピールすることが可能となるのです。
オフィスでできるSDGsへの取り組みに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
オフィスでの節電方法【空調編】
オフィスで使用される電気代の約半分を占める空調の電気代を節約できれば、オフィス全体の電気代も大幅に下げられる可能性があります。ここからは、オフィスで取り組める空調の節電方法を解説します。
■適切な温度設定を心がける
オフィスのような室内環境では、常に適切な温度設定を意識することが節電につながります。目安として夏は26〜27度以上、冬は22〜23度以下に設定するのが理想的です。
特にエアコンでの温度調節を必要以上に強くしないようにするのが大切です。エアコンのような空調機器は、室温と外気温に差があるほど電力を消費してしまうからです。
空調機器の温度設定だけではなく、服装を工夫するのも効果的です。季節に応じてクールビズやウォームビズを上手く取り入れることで、空調の温度を適切に保ちやすくなります。
空調だけではなく、夏場は団扇や扇子、サーキュレーター、冬場はひざ掛けなどを組み合わせて使用すれば、快適に働ける仕事環境を保ちつつ、消費電力を節約できるでしょう。
■こまめにフィルターを掃除する
フィルターがホコリや塵などで汚れていると目詰まりを起こして、設定温度を維持するための消費電力が大きくなります。フィルターをこまめに掃除すると節電につながります。
フィルターの掃除は、2週間に一度が理想です。フィルターは普段カバーに覆われて目に見えないため、汚れていても気が付きにくい部位です。掃除するのを忘れて、汚れたまま空調を使用し続けることがないように注意しましょう。
■就業時間を季節によって変更する
季節に応じて就業時間を変更することで、空調の消費電力を節約できます。夏は早朝など気温がまだ上がらない時間帯、冬は比較的暖かい日中の時間帯を上手に利用することを意識しましょう。
平日13〜16時の時間帯は電力消費のピークとなるため、多くの変動性料金プランでは高く設定されています。ピークとなる時間帯を避けて、早朝からの業務開始や、午後からの業務開始を検討するのも良いでしょう。
たとえば、日中気温が大幅に上昇する夏場は就業開始時間を早くすることで、エアコンがフル稼働する時間を減らして節電できます。また、空調の稼働時間を減らすことも考えましょう。残業が増えると空調の稼働時間が増えるため、節電の一環として残業を減らす工夫も効果的です。
■遮熱カーテンやブラインドを導入する
特に窓の多いオフィスでは、遮熱カーテンやブラインドを導入すると空調の稼働率を下げられます。遮熱カーテンは、夏では外気の熱気を遮断でき、冬では室内の暖かい空気を外に逃さない機能があります。
ブラインドは夏場の強い太陽光がオフィスに入ってくるのを防ぐため、室内の温度上昇を防げます。遮熱カーテンやブラインドを効果的に活用して、エアコンの消費電力を削減しましょう。
■空気を循環させ効率を上げる
オフィス内の空気を循環させると空調の効率を上げることができ、消費電力をおさえられます。空気を循環させると室内の温度はムラなく一定になります。エアコンの設定温度を2度下げても体感温度はほぼ変わらなくなるため、節電が望めるのです。
室内の空気を循環させるためには、空調と併せて扇風機やサーキュレーターなどを使用するのも効果的です。
扇風機とサーキュレーターは用途や機能が似ていますが目的が異なります。扇風機は人に風を当てて涼しさを感じさせ、サーキュレーターは遠くまで空気を届けるための機器です。
そのため、空気を循環させるのが目的であればサーキュレーターの方が向いています。サーキュレーターをエアコンの下に設置して、壁に向かって風をあてれば、効率的に空気を循環させることが可能です。
■自社の企業活動に最適な電力プランに見直す
契約している電力プランの見直しもおこないましょう。最適な電力プランの選択は、節電だけではなく経費の削減にもつながります。場合によってはプランだけではなく、契約する電力会社の切り替えを検討するのも良いでしょう。
一般的に電力プランは、使用する電力量によって低圧・高圧・特別高圧電力の3つの契約内容に分類されます。そのなかで、オフィスビルは契約電力が大きい特別高圧に該当します。
特別高圧電力の中でも契約電力や供給電圧によってさらに3つのプランに分かれており、1kWh当たりの価格が異なります。
実際の電気使用量に対して契約電力が大きすぎる場合は、最適な契約プランに変更すれば電力使用量を減らして経費も削減可能です。ただし、供給電圧が大きくなるほど電力量料金単価は安くなるため、単価と供給電圧のバランスの見極めが重要です。
オフィスでの節電方法【照明編】
オフィスで取り組める照明の節電方法を解説します。照明は、オフィス全体の電気代のうち約2割を占めると言われています。業務に支障のない範囲で上手に照明の電気代を節電できるようにしましょう。
オフィスの照明選びに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■使わない照明はこまめに消す
不必要な照明をこまめに消すのは節電の基本です。オフィスを利用する従業員一人ひとりが節電の意識を持てるよう、時間帯や部屋、滞在人数などに応じて照明を消すルールを設けるのも効果的です。
たとえば、節電アクションの指針として、資源エネルギー庁は昼休みの完全消灯を推奨しています。トイレや給湯施設などは、使用するときだけ照明をつけましょう。
ただし、夜は節電を意識しすぎると手元が見えにくくなってしまうので適度に照明を使用してください。
■人感センサーを導入する
常時照明をつけている必要がない場所は、人感センサー式照明の導入が効果的です。人感センサー式照明によって、室内に従業員が滞在しているときのみ照明がつくようにすれば、消し忘れがなくなります。
人感センサー式照明の導入が考えられる場所には次のような場所が考えられます。
- 廊下
- 非常階段
- トイレ
- 会議室
- 応接室
- 自動販売機コーナー
節電を検討する際は、自社オフィスで人感センサー式照明の導入が向いている場所がほかにもないか検討すると良いでしょう。
■照明の数を減らす
照明の数を減らせないか検討するのも有効です。照明機器の数を減らせば、比例して消費電力も減少します。蛍光灯を多く使用しているフロアでは、間引きできないか検討すると良いでしょう。
なお、照明の数を減らすときや蛍光灯の間引きをする際は、暗くなりすぎないように注意しましょう。暗すぎるオフィスは仕事への影響があるため、業務や従業員の健康面に悪影響を及ぼしてしまう危険性があるのです。
照度計を使って適度な明るさかどうかを確認しながら、ちょうど良い照明の数を維持するようにしましょう。
■無線調光制御システムなどの照明を導入する
無線調光制御システム搭載の照明導入も、節電効果を期待できます。無線調光制御システムとは、時間帯や状況、季節などに合わせて光色や光量を半自動的に調整するシステムのことです。
設定した内容に応じて、オフィス全体の照明をコントロールできるので、効率的な運用を実現できます。たとえば、日中は標準的な明るさにして就業終了時間付近は照度を落とすなど、ムダな点灯時間を削減することができます。
また、オフィス全体ではなく、エリアごとにコントロールすることも可能です。たとえば、就業時間以降の残業時には従業員不在の場所のみ消灯するといった内容に設定できます。
サーカディアンリズム
無線調光制御システム搭載の照明を使用すれば、サーカディアンリズムに則って光量を変化させられます。サーカディアンリズムとは、地球の自転にあわせて24時間のリズムで動いている人の体温やホルモン分泌のことです。
サーカディアンリズムを意識して調光すると、体内時計が整い、適切な睡眠が確保できるようになるため、生産性アップも期待できます。
サーカディアンリズムについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
オフィスでの節電方法【OA機器編】
オフィスで取り組めるOA機器の節電方法を詳しく解説します。オフィスに設置されているOA機器は、機器の種類によってさまざまな節電方法があるので、チェックしていきましょう。
■スリープモードを使う
OA機器のスリープモードを活用すると消費電力をおさえて節電できます。スリープモードとは、動作を最小限におさえて、電源を落とすことなく節電できる機能のことです。
一定時間、操作がなかったら自動的にスリープモードへ移行するように設定しましょう。手動でも切り替えが可能なので、離席するときはこまめにスリープモードにするのがポイントです。離席時のスリープモード使用を会社のルールとして従業員に徹底するのも効果的でしょう。
以前は、スリープモードといえばパソコンに搭載されている機能でしたが、最近ではディスプレイやプリンターにも搭載している機種があります。スリープモードへ移行する時間を適切に設定して、効率的に節電しましょう。
■モニターの明るさを変更する
モニターの明るさを40%ほどに下げれば、10~20%ほど消費電力をおさえられます。
暗くすればするほど節電にはなりますが、見づらくなると業務効率の低下や従業員のストレスにもつながります。過度に暗くせず、適切な明るさに調節することが大切です。
■省エネ機能付きのOA機器に買い替える
現在使用しているOA機器に省エネ機能が搭載されていない場合は、自動的にスリープモードに切り替わる省エネ機能付きの機器に買い替えるのを検討すると良いでしょう。手動で電源をON・OFFする手間を省くことができるため、より効率的に節電ができます。
一定年数経過した古い機種は、消費電力が高い傾向にあるので注意が必要です。現在使用している機器の消費電力を確認して、著しく消費電力の大きな機器があった場合は、買い替えを検討すると良いでしょう。
オフィスで使いたい節電アイテム3選
オフィスで使いたい節電アイテムを3つご紹介します。どれもすぐに購入でき、コストもあまりかからないのでぜひ導入を検討してみるのはいかがでしょうか。
■LED照明
節電で大きく注目されているのが、LED照明です。蛍光灯の消費電力は約40Wなのに対し、LEDは約12Wと消費電力が半分以下です。そのため、オフィスの照明を蛍光灯からLED照明に変えるだけで大きな節電効果を期待できます。
1ヶ月の点灯時間を200時間(1日当たり10時間×20日)、電気代が30円/kWh、使用本数を50本とした場合の電気料金は次のとおりです。
照明の種類 | 1ヶ月の電気料金 | 1年間の電気料金 |
蛍光灯 | 約12,600円 | 約151,200円 |
LED | 約3,570円 | 約42,840円 |
※蛍光灯、LEDともに40形で比較
この場合、蛍光灯は月額12,600円程度になるのに対し、LEDは月額約3,570円となります。1ヶ月で約9,030円、年間では約108,360円の節約ができます。
ただし、導入してから10年程度が経過すると、経年劣化で照度が落ち、必要な電力も大きくなるため節電効果が低くなります。そのような場合は新しいLED照明に買い替えましょう。
■節電タップ
オフィスで電源タップを使用する場合は、スイッチのON・OFFを切り替えられる節電タップを使用しましょう。
OA機器はコンセントに繋いでいるだけで待機電力がかかります。コンセントの抜き差しだと、手間がかかってしまいますが、電源タップのスイッチで切り替えができれば手間をかけずに待機電力のカットを実現できます。
また、節電できるタップの中には、タップのスイッチでON・OFFの切り替えができる差込口と、スイッチに関係なく常にON状態の差込口の両方を搭載しているものもあります。常時電源接続が必要なOA機器がある場合は、常にON状態の差込口も搭載しているタップを使用すると良いでしょう。
■サーキュレーター
節電のために空調とサーキュレーターは併用しましょう。冷暖房から送り出される空気をサーキュレーターで循環させると効率的に空調を使えるため、消費電力をおさえることが可能です。
サーキュレーターは空気を循環させるだけではなく、夏場は扇風機の代わりとしても使えます。扇風機に比べると直接的に涼しさを感じさせる能力は劣りますが、暑い時期だけ代用品として使用するのも良いでしょう。
オフィスで節電に取り組む際の注意点
従業員の健康面や、業務効率を落とさないようにするなど、オフィスで節電に取り組む際の注意点を解説します。
■オフィス内の節電担当者を任命する
オフィスで節電に取り組む際は、節電担当者をアサインしましょう。オフィスの規模が大きい場合は、ほかの業務と並行して進めるのが難しいため、専属で節電担当者を置くのが理想的です。
オフィスに大きな倉庫や製造工場があるような企業は、節電管理が難しくなります。大型の機器が稼働している工場や、24時間稼働の物流倉庫などは、消費電力も大きいため、細心の注意が求められます。
■エアコンの使用を制限しすぎない
節電することに気を取られるあまり、エアコンの使用を制限しすぎないように注意してください。猛暑の中、仮にまったくエアコンを使わずにいると熱中症になる恐れがあるため、社員の健康を第一にして適切なコントロールを心がけるようにしましょう。
たとえば、日中は夏であれば27度前後、冬は22度前後に温度を設定し、無理なくエアコンを使用します。その代わり、従業員がいない部屋やエリアのエアコンは電源をオフにしましょう。空調を使用する箇所とそうでない箇所を見極めながら、節電を実施します。
節電の意識を持つことは大切ですが、暑い日は体調を崩さない程度にエアコンを活用することも必要です。
■照明を暗くしすぎない
照明を暗くしすぎて、従業員の健康や業務効率に悪影響を与えないように注意しましょう。照明を暗くしすぎたオフィスで働くと、疲れ目や視力の低下を招く恐れがあります。目だけではなく身体全体に疲れやすさを感じる人もいるようです。
暗すぎるオフィスは従業員の身体に対する影響だけではなく、業務効率の低下にもつながります。従業員が健康に過ごすためにも、節電で照明を暗くしすぎないように注意しましょう。
まとめ:従業員の健康面にも配慮して上手に節電しよう
オフィスで節電に取り組むと経費削減できるだけではなく、電力供給の維持や環境保護に対しても有効です。それだけではなく、環境対策に取り組む企業として社会的な評価が上がることも期待できます。
空調と照明、OA機器それぞれ適した方法で節約をしていきましょう。ただし、節電を意識するあまり、従業員が働きづらい状況にならないように注意してください。体調面にも気を配る必要があります。従業員の健康状態を維持できるよう注意しながら上手に節電しましょう。