オフィスレイアウトを考える際の図面作成手順・方法とは?
オフィスレイアウト・デザイン・設計
オフィスの使い心地は、従業員の働きやすさに影響する要素のひとつです。デスクの距離や通路の幅などは、日頃の行動一つひとつの動きやすさに直結します。家具の配置や動線はわかりやすく、使いやすい状態にしておきたいものです。
オフィスを改善することで労働環境の快適さを向上できますが、そのためにはどのようなレイアウトで家具を配置していけば良いのでしょうか。部屋全体の設計は平面図を使って計画的に配置することになりますが、平面図は何を使って、どのように作成するものなのか、担当者にとっては悩みの種となることもあるでしょう。
本記事では、オフィスの環境改善のための設計と、そのために欠かせない平面図の作成方法を詳しく解説します。作成時に注目したいポイントや使用するツールなどもあわせて取り上げていくため、オフィスの環境を改善していくための参考としてください。
目次
オフィス設計における平面図の重要性
既存のオフィスの改善や新規オフィスの立ち上げに関わらず、オフィスの設計において平面図はとても重要な役割を果たします。平面図があることで社内スタッフとの間で新オフィスのイメージを共有できるため、実際にオフィスを使用する人々からフィードバックを受けたうえで新オフィスの具体的な設計を進めることができます。
改良の余地がある点や従業員の希望などを拾い上げていくとイメージも固まりやすくなり、オフィスデザインの会社に依頼をする際にもよりスムーズにニーズを伝えることが可能になります。
また、平面図上でオフィスのイメージを固めておくことで、オフィスの機能性や法令遵守ができているかどうかなどの検証もおこないやすくなります。照明や空調の設置位置は適切か、火災報知器は問題なく設置されているか、といったポイントをオフィス新調の事前にも事後にも確認しやすくなる点も、平面図を作成するメリットのひとつです。
オフィスレイアウト図面作成の手順
オフィス改善に向けた平面図を作るためには、次のプロセスを踏んでいきましょう。
- レイアウトの変更で解決したい課題を調査
- オフィスコンセプトの明確化
- オフィス全体のゾーニングを検討
- 平面図でオフィスのレイアウトを作成
実際に平面図を作成する前に、新オフィスの方向性やニーズを明確にするための調査を検討することが大切です。利用者である他の従業員の意見を幅広く取り入れるなど、実際に運用する際の利便性を吟味していきましょう。
■1.レイアウトの変更で解決したい課題を調査
まずはオフィスを一新することで解決したい課題を明確にします。漠然とした見通しではオフィスを新しくしたとしても根本的には何も変わりません。目的が明確になることで適したオフィスのかたちも見えてきます。
課題を検討する際、一部の部署やレイアウト変更を担当するプロジェクトのチーム内だけでおこなうと、他の従業員との意識にズレが生じるかもしれません。ニーズを適切に汲み取るため社内全体にヒアリングやアンケートを実施して、現状のオフィスでの改善点を調査しましょう。
・オフィスレイアウトの考え方に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■2.オフィスコンセプトの明確化
課題と併せて、新しいオフィスのコンセプトを検討しましょう。コンセプトを明確にすることで、どのように課題を解決するかアプローチの仕方が絞れます。
オフィスコンセプトの設定においては、企業の理念や事業内容を参考に言語化をおこなっていきましょう。オフィスのデザインが持つ目的は、中心軸・骨子であるコンセプトの主導で決定します。
たとえば、企業のイメージカラー(コーポレートカラー)を前面に出すコンセプトでレイアウト変更をすることになるとします。その際には、自社がホームページや看板、広告などの主体としている色にあわせて、同色の家具や適切な配置を選んでいく…といった道筋ができあがります。
このように、コンセプトを具体的な物の用意・配置につなげやすくする意味合いでも、平面図は欠かせないものです。抽象的なイメージから段階的に具体化できるよう、オフィスコンセプトは明確に定めておきましょう。
・オフィスデザインのコンセプトに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■3.オフィス全体のゾーニングを検討
従業員が働くスペースと来客者向けの応対スペースを分けるのはもちろん、従業員が働くスペース内でのゾーニングも大切です。
たとえば、「社内でのコミュニケーションを図りたい」という課題があり、「従業員が交流しやすいオフィス」というオフィスコンセプトが明確化されている場合には、社員の行き交いの多いエリアにラウンジを設けるなど、コミュニケーションを促進する共有スペースを適正な場所に配置することが重要になります。。
反対に、「一人ひとりが集中して仕事をしたい」という課題がある場合には、仕切りや個室などで集中できる環境づくりに務める必要があります。
このように目的やテーマにそって、オフィス空間を区分することが大切です。共有スペースやワークスペースなどを分けて、従業員にとって快適で働きやすい空間を実現しましょう。
・オフィスゾーニングに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■4.平面図でオフィスのレイアウトを作成
オフィスの課題やコンセプト、ゾーニングの方向性が決まったら、それらを具体化するため、実際に平面図にレイアウトを起こしていきます。
平面図でオフィスレイアウトを作成する際には、動線計画を決めていくことが大切です。
動線とは、空間を使用する人が自然に移動経路に使うであろう道筋を指します。オフィスにおいては、デスクの配置や通路の間隔などを考慮することで、使いやすい動線を実現可能です。
袋小路の通路など、動線を複雑にしてしまうとオフィス内の移動が非効率的になり、生産性が落ちることになりかねません。また、オフィス内のブースが個室扱いとなると、動線幅に建築基準法の法規上守らなくてはいけない条件などが発生するため注意が必要です。
※出典:建築基準法施行令
レイアウトの作成にはエクセルやパワーポイント、フリーソフトを使用できます。これらのツールのより詳細な使い方は、記事の後半で解説します。
オフィスレイアウト図面作成時にあると役立つ資料
オフィスレイアウトの図面を作成する際には、建物に関する図面と入居工事関連資料を準備しておきましょう。これらの資料を準備しておくと、オフィスレイアウトの図面を作成する際に役立ちます。各種資料を自社で保管していない場合は、不動産会社やビル管理会社などに問い合わせて取り寄せておきましょう。
■建物に関する図面
図面作成に役立つ建物に関する代表的な資料は、次のとおりです。
- 躯体図
- 天井伏図
- 電気系統図 など
躯体図は構造や柱の位置、寸法などを示したもので、建物を構築するために必要な施工図の基本となる図面です。天井伏図には、天井の照明や火災報知器などの設備の配置が示されています。各種設備は、特殊な記号で示されています。
電気系統図は、どこでどのような目的で電気が使用され、どの位置にどの機器が取り付けられているかを明確にした図面です。電気接続に関係する構成要素と配線が可視化されているため、電気工事の担当者をはじめとする関係者が正確に情報を把握できます。
建物に関する図面に記載された内容は、すべて正しいとは限りません。過去にレイアウトの変更履歴がある場合、その部分が反映されていない可能性があります。情報の信憑性が疑われるときには、専門業者に現地調査および実測を依頼しておくようにしましょう。
■入居工事関連資料
オフィスレイアウトの図面を作成する際には、次のような入居工事関連資料も準備しておきましょう。
- 登記簿謄本
- 建築計画概要書
- 貸し方基準
登記簿謄本には建物や土地といった不動産の所有者についての情報のほか、工事の規則や工事区分、搬入時の注意事項なども記載されています。建築計画概要書とは、建築確認の許可が下りた建物の概要を示した書類です。
オフィスビルの入居者は、管轄の消防署に防火対象物計画書を提出する義務があります。登記簿謄本や建築概要書に記載されている内容は、防火対象物計画届を提出する際にも役立ちます。
建築計画概要書は、道路幅員による容積率制限や加重平均による容積率などが記載されている書類です。建物を建てる際には、建築基準法に基づいているかを確認する建築確認申請が必要です。建築確認申請では、建築確認書と建築計画概要書を役所に提出します。
建築確認の許可が下りた後は、建築計画概要書が一般に公開されます。貸し方基準とは、建物の構造や階数、フロア面積、防火地域などの情報が記載された書類です。入居工事ガイドラインにも、貸し方基準と同様の情報が記載されています。
オフィスレイアウト図面作成を自社で行う場合の注意点
オフィスレイアウトの図面は、自社で作成することも可能です。ただし、自社で図面を作成する際には、建築基準法をはじめとする各種法令に基づいているかを確認するようにしましょう。
また、図面と実際の寸法に違いがある場合、レイアウトの作成や工事に支障を来すおそれもあるので注意が必要です。
■オフィスづくりに関わる法令に準拠する
快適なオフィスを作るためだけでなく、オフィスに関連する各種の法令を遵守しなくてはならない観点からも、関連法規の確認は怠らないようにしましょう。「法律で定められた義務だから」というだけでなく、火事や災害などの有事で従業員の安全を守ることにもつながります。
オフィスに関連する法令は建築基準法、消防法、労働安全衛生法の3つです。
建築基準法では建物を建築する際の通路幅について規定があり、廊下の両側に部屋がある場合は160cm以上の通路が、片側のみに部屋がある場合には120cm以上の通路が求められます。ただしここで言う通路幅は建物を建築する際に守るべき基準であり、オフィス内のレイアウトで作成する通路は該当しません。オフィス内の通路幅に限定した規制はないため、レイアウトは動線や避難路を想定して作成するようにしましょう。
「オフィス一室の再設計であれば関係ないのでは?」と考えても、消防法によってパーテーションやブースが個室空間となった場合、部屋と見なされるため注意しましょう。このケースではスプリンクラーや非常灯の追加も必要です。
労働安全衛生法においては、労働者の安全と健康、快適な職場環境の維持が必要です。前述した労働者一人当たり最低1坪が必要なことに加え、事務所の照明の明度は150ルクス以上のものが求められます。(※2022年12月1日~)
■実際の寸法と利用できる面積の違いに注意する
オフィスの図面の寸法は、壁の中心から測ったものが一般的です。そのため図面の寸法で平面図のレイアウトを決めてしまうと、壁の厚さの分だけ幅が足りなくなってしまう可能性があります。「スペースに大きく余裕を持たせれば良い」と考えても、壁の厚さを把握していなければ設計ミスにつながりかねません。
平面図に使用する図面の数字は、どこから計測したものか確認しましょう。オフィス購入時に見た広告図面や建築に使用した竣工図面は壁の厚さ込みのものであるため、実測した寸法などを使用することが大切です。
まとめ:オフィスの再設計は正しい平面図で検討を
オフィスの再設計のためには動線計画やオフィス家具の配置などのレイアウトを適切におこなう必要があります。平面図を作成すれば、計画的なオフィスの再設計を実現できます。
平面図の作成のためには、法令や基礎的な知識の把握に加え、オフィスを利用するスタッフの意見や課題意識を汲み取り、オフィスのコンセプトを設定することが大切です。コンセプトを軸に、課題解決や機能面での肉付けをおこないます。ツールやテンプレート、必要情報の書類を用意すれば作業もスムーズに進められます。
正しく作成された平面図を使い、オフィスの再設計を通じて業務の生産性を向上させていきましょう。