【オフィスにおける地震対策の重要性】対策のポイントやオフィス家具の転倒防止方法を紹介

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【オフィスにおける地震対策の重要性】対策のポイントやオフィス家具の転倒防止方法を紹介

近年の日本では、全国各地で規模の大きい地震が発生しています。企業にとって、いつ起こるかわからない地震への備えは非常に重要な問題です。企業の存続や従業員の命を守るため、万全な地震対策をおこなう必要があります。

この記事では、オフィスにおける地震対策のポイントをハード面とソフト面にわけて解説します。オフィス家具の転倒防止対策も併せて解説するので、自社で十分な地震対策を施し、万が一のときに備えましょう。

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オフィスにおける地震対策の重要性

地震が発生したときには、従業員やオフィスが被害に遭うリスクがあります。交通機関が麻痺すれば、帰宅できなくなる従業員もいるかもしれません。従業員やオフィスを守るためにも、企業には地震発生時の対策が求められます。

 

■従業員の安全を確保するため

労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められています。

※出典:e-GOV法令検索「労働契約法」

つまり、企業には、雇用関係にある従業員の安全を常に確保する義務があるというわけです。災害が発生した際には従業員の安全をいち早く確保し、被害を最小限におさえるよう努めなければなりません。企業としての社会的責任を果たすためにも、オフィスの地震対策は必要です。

 

■帰宅困難者に対応するため

災害時には交通機関が麻痺することも想定されるため、従業員が帰宅困難に陥るリスクがあります。国土交通省の調査によると、2011年に発生した東日本大震災の際に、首都圏では515万人程度の帰宅困難者が発生したと推計されています。

※出典:国土交通省「首都圏の交通への影響とその後の取り組み」

このような状況を受け、2012年9月に首都直下地震帰宅困難者等対策協議会の内容が最終報告書として取りまとめられました。報告書には、交通機関の復旧の見通しが立たない場合には、従業員をオフィスに一定期間待機させるよう明記されています。

※出典:首都直下地震帰宅困難者等対策協議会「最終報告(平成24年9月10日)」

首都圏以外にも、自治体のなかには従業員以外の帰宅困難者への対応を企業に求める条例を整備しているところもあります。災害時に従業員を含む帰宅困難者に対応するためにも、企業では地震対策が必要です。

 

■事業を継続させるため

災害が発生すると、事業運営に支障を来すリスクがあります。しかし、企業は万が一のときでも、事業を継続させることが重要です。通常通りに事業を継続させ、消費者にサービスや商品を提供することは、社会的安定をもたらすことにつながるためです。

企業として従業員をはじめとする人々の生活を守るためにも、災害時でも事業を継続できる体制を整備しておくことが大切です。平時には、災害時に備えてBPC対策をしておきましょう。BPC対策とは事業を継続するために、緊急事態に備えた対策をまとめた計画です。BPC対策をしておけば、緊急事態が発生したときでも事業を継続させ、早期復旧を目指すことが可能です。

なお、BPC対策の基礎知識や策定・運用のステップなどは、こちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひお読みください。

BCP対策とはなにか基本から解説|6つのステップで策定・運用しよう
企業のBCP対策、どこまで進んでいますか?

オフィスで必要な地震対策

オフィスでは、地震に備えておもに次のような対策が必要です。

  • 建物の耐震対策
  • オフィス家具の転倒防止策
  • 万が一に備えた防災対策

賃貸のオフィスビルの場合、地震対策はオーナーや貸主に委ねられているのが現状です。自社が所有しているオフィスビルの場合、自社で建物の耐震対策が必要です。まずは、オフィスビルが新耐震基準に適合しているかを確認してみましょう。

新耐震基準は1981年6月1日から施行され、現在も適用されています。新耐震基準で建てられた建物は、震度6強~7程度の地震が発生しても倒壊または崩壊のリスクがほとんどありません。

一方で旧耐震基準で建てられた建物は、震度6強以上の揺れが発生すると倒壊や崩壊のリスクが高いとされています。オフィスビルが旧耐震基準の場合は、新耐震基準を満たした建物への移転を検討しましょう。

地震発生時にはオフィス家具が転倒し、従業員がケガをするリスクがあります。総務省消防庁の資料によると、1995年に発生した阪神・淡路大震災の内部被害によるケガの原因のうち、46%が家具の転倒や落下だったことがわかっています。

内部被害によるケガの原因 割合
家具等の転倒落下 46%
ガラス 29%
その他 18%
不明 3%
家屋の倒壊 3%

 

※参考:総務省消防庁「地震による家具の転倒を防ぐには」

オフィス家具の転倒はケガだけでなく、避難経路を塞ぐ可能性もあります。ハード面の地震対策としてあげられるのは、オフィス家具への転倒防止や地震に強いレイアウトの見直しなどです。ソフト面では万が一に備えて、防災マニュアルの策定や避難経路の確認などがあげられます。

【ソフト面】オフィスにおける地震対策のポイント

地震の発生を見据えて万全な体制を整備するには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。ここからはソフト面の地震対策のポイントを紹介するので、緊急時にも安全なオフィスづくりに役立ててください。

 

■担当者の選定とマニュアルの策定

自社で本格的に地震対策を進めていくには、地震対策に関する知識が豊富な担当者の専任が必要です。該当する従業員がいない場合は、外部機関が実施している防災担当者向けの研修を活用する方法もあります。たとえば一般社団法人日本防災共育協会では、防災担当者向けの研修を実施しています。

また、担当者の選定と同時に、防災マニュアルも策定しておきましょう。担当者を選定して防災マニュアルを準備しておけば、地震発生時でもどのように行動すべきかわかるため、従業員の混乱を避けられます。

 

■避難経路と避難場所の確認

災害発生時の避難経路と避難場所は、日頃から確認しておくことが大切です。消防法や建築基準法施行令では、避難経路の確保が義務づけられています。

消防法:第8条2の4 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
建築基準法施行令:第119条 両側に居室がある廊下の幅は1.6メートル以上、片側のみに居室がある廊下の幅が1.2メートル以上でなければならない。

※出典:e-GOV法令検索「消防法」

    e-GOV法令検索「建築基準法施行令」

通路に大量の荷物が置かれた状態だと動線がふさがれるため、避難経路としての機能を果たせません。法律で規定されている訳ではありませんが、避難経路の動線を確保するためにも、通行の邪魔になるものや危険になるものは置かないように心がけましょう。

 

■防災研修や避難訓練の実施

地震は、いつ発生するかわかりません。日頃から万が一のときを想定し、防災担当者だけでなく、すべての従業員が地震への備えをしておくことが重要です。オフィスでは従業員の防災意識を高めるために、定期的に防災研修や避難訓練を実施しましょう。

研修や訓練を実施すると、いざというときにどのような判断をすべきかをイメージできます。ときには、訓練を通じて課題が浮き彫りになることもあるかもしれません。課題を解決しながら訓練を繰り返すことで、より良い体制を整備できるようになるでしょう。

【ハード面】オフィスにおける地震対策のポイント

ハード面の地震対策のポイントをご紹介します。従業員の安全確保や帰宅困難時の対応、事業の早期復旧に役立つよう、万全な体制を整備しましょう。

 

■オフィス家具への対策

オフィス家具は、地震の揺れによって転倒するリスクがあります。転倒すると従業員のケガや避難経路の遮断につながるおそれがあるため、万が一に備えて家具を固定し、耐震対策をしておきましょう。

オフィス家具のなかには、強化ガラスや扉ラッチなどの耐震対策が施された商品もあります。具体的な対策方法は、「オフィス家具の具体的な転倒防止対策」で紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

■備蓄品の備え

地震によって従業員が帰宅困難になった場合を想定し、オフィスには食料品や日用品などの備蓄品を準備しておきましょう。オフィスに備えておきたい備蓄品のおもな品目は、次のとおりです。

  • 食料品
  • 飲料水
  • 日用品
  • 毛布
  • 医薬品
  • 防災用品
  • 雨具
  • 工具
  • 地図
  • ラジオ など

帰宅困難になる期間が長期化することも想定し、懐中電灯は電池式ではなく、ソーラー式や回転式のものがおすすめです。東京都首都直下地震帰宅困難者等対策協議会の最終報告書によると、備蓄量の目安は3日分とされています。

3日分の備蓄量の目安は、次のとおりです。

一人当たり1日3リットル:合計9リットル
主食 一人当たり1日3食:合計9色
毛布 一人当たり1枚

※参考:首都直下地震帰宅困難者等対策協議会「最終報告(平成24年9月10日)」

食料品や飲料水などの賞味期限がある品目もあるため、期限が切れないよう定期的に確認することも忘れないようにしましょう。

 

■データのバックアップ

万が一のときに備えて、定期的にデータをバックアップしておきましょう。災害発生後、速やかに事業を再開するためには、従業員が業務できる環境の整備が必要です。すべての従業員の安全が確保できても、地震の揺れでパソコンがダメージを受けてデータが消失すれば、早急な事業の再開は難しくなるでしょう。

災害時に早期復旧を目指すためには、データを守ることも大切です。外付けのハードディスクは本体が破損するおそれがあるため、クラウドサービスがおすすめです。

 

■レイアウトの見直し

オフィスのレイアウトは、防災を意識したものに見直すことも大切です。家具の配置次第では、地震対策につながります。オフィスのなかには、家具でスペースを仕切っているところもあるかもしれません。しかし、地震の揺れで家具が転倒すると、避難経路を塞いでしまう可能性があるため、背の高い家具を間仕切りとして使用することはなるべく避けましょう。。

また、デスク周辺に家具があると地震によって転倒し、従業員のケガにつながるおそれがあります。デスク周りには背の高い家具を配置しないようにし、従業員の安全や避難経路を確保するようにしましょう。

オフィス家具の具体的な転倒防止対策

オフィス家具を固定しておくと、地震で揺れても転倒を防止できます。ここからはオフィス家具の具体的な転倒防止対策を紹介するので、自社でも取り入れてみてください。

 

■デスク周辺

デスク周辺のオフィス家具は、次のような方法で転倒防止対策ができます。

  • デスクに付属された棚の上には重いものを置かない
  • ロック付キャスターはロックしておく
  • 引き出しはラッチ付きを使用する
  • デスクのアジャスターは出しすぎないようにする
  • デスクを連結する
  • デスクを床固定する
  • OA機器はオフィス家具に固定する
  • オフィス家具を固定する際には「M6」以上のボルトを使用する など

地震の揺れでデスクが大きく移動する可能性があるため、連結または床固定して安定させるようにしましょう。転倒防止対策をする際には、固定ストラップやゲルマットなどのグッズを使用する方法もあります。

 

■壁面収納家具

壁面収納家具は、次のような方法で転倒防止対策ができます。

  • 重いものは下段に収納する
  • 棚爪や棚板はきちんとセットする
  • 収納家具の上にものを置かないようにする
  • 必要時以外は扉を閉めるまたは施錠する
  • 引き違い扉付きの収納家具を使用する
  • 壁や床に直接固定する
  • 二段に重ねる場合は上下を連結したうえで壁や床に固定する
  • ガラスには飛散防止フィルムを貼りつける
  • ラッチ・セーフティロック付きの収納家具を使用する
  • 落下防止材を取り付ける
  • 家具を固定する際には「M6」以上のボルトを使用する など

壁にオフィス家具を固定する際には、アンカーボルトを打ち込んで固定すると強度が高くなります。二段重ねにする場合は上下をサイドジョイントプレートで固定し、壁や床にも固定するようにしましょう。

 

■中間置収納家具

中間置収納家具は、次のような方法で転倒防止対策ができます。

  • 重いものは下段に収納する
  • 棚爪や棚板はきちんとセットする
  • 収納家具の上にものを置かないようにする
  • 引き違い扉付きの収納家具を使用する
  • 壁に固定できない場合は背合わせにして連結する
  • 床に直接固定する
  • 複数を並べて設置する場合は横連結する
  • ガラスには飛散防止フィルムを貼りつける
  • ラッチ・セーフティロック付きの収納家具を使用する
  • 家具を固定する際には「M6」以上のボルトを使用する など

複数の家具を並べて設置する場合、ダブルサイドジョイントプレートで固定すると安定しやすくなります。壁に固定できない家具は背合わせにして連結すると、奥行きが増すため、地震の揺れでも転倒しにくくなります。

 

■書架・物品棚・移動ラック

書架・物品棚・移動ラックは、次のような方法で転倒防止対策ができます。

  • 重いものは下段に収納する
  • 棚爪や棚板はきちんとセットする
  • 収納家具の上にものを置かないようにする
  • 許容積載重量を超えないようにする
  • 床・壁・天井と固定する
  • 上部をつなぎ材で連結した上で床固定する
  • 落下防止材を取り付ける
  • ブレースで補強する
  • 台車やレールがある棚には転倒防止金具を取り付ける
  • 棚を固定する際には「M6」以上のボルトを使用する など

台車やレール付きの棚は長周期の揺れで数メートル移動するだけでなく、その重量によって、挟まれたときの衝撃は計り知れません。キャスター部分にはストッパーを取り付け、転倒防止対策しておきましょう。

 

■ローパーテーション

ローパーテーションは、次のような方法で転倒防止対策ができます。

  • 壁や床に固定する
  • ガラスがある場合は飛散防止フィルムを貼り付ける
  • 複数を直線で連結する場合は補強パネルを挟む など

パーテーションのレイアウトは、おもにI型・L型・コの字型・H型の4種類があります。このうちI型とL型は安定性が低いため、コの字型やH型のレイアウトにし、地震による大きな揺れに備えておきましょう。

オフィスの地震対策に成功した企業の事例

地震対策をする際には、他社の事例を参考にするのも手段の一つです。最後に、オフィスの地震対策に成功した企業の事例をご紹介します。

 

■株式会社クリエアナブキ

株式会社クリエアナブキでは、オフィスの改装と同時に地震対策を施しました。ワークスペースでは、背の高いオフィス家具を排除しています。背の低い書庫を設置することで転倒リスクを軽減し、地震対策に成功しました。

また、デスクの棚にものを置いている場合は地震の揺れで落下し、従業員のケガや避難経路の遮断につながるリスクがあります。デスクには天板のみのタイプを採用しているため、万が一のときでも棚から物が落下する心配はありません。

 

■アイリスグループ淀屋橋オフィス

アイリスグループ淀屋橋オフィスはグリッド設計の採用による地震対策に成功しています。グリッド設計とは必要強度をグリッド単位で確保することで、安定した強度を実現する技術です。

オフィス空間(スペース)をグリッド設計しすることで、災害時でもスムーズに避難できる通路を確保できています。

 

■株式会社あなぶきハウジングサービス

株式会社あなぶきハウジングサービスは、地震対策の一環としてOAフロアを採用しています。OAフロアとは、電源やケーブルなどの配線を収納するための二重床です。配線が床にむき出しになっていると、地震発生後の避難時に従業員が足を引っかけ、転倒するリスクがあります。

OAフロアにすると配線が床下に収納されるため、避難時でも足をひっかけてつまづくリスクを軽減できます。

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OAフロアでスマートなオフィス!種類別の特徴や選び方を紹介

まとめ:オフィスと従業員を守るため地震対策の見直しを

地震はいつ発生するかわからないため、平時から十分な対策をしておくことが大切です。発生状況によっては従業員が帰宅困難者となり、オフィスでの避難を余儀なくされる可能性も考えられます。

災害時は混乱が起きやすいため、研修や避難訓練を実施して従業員の防災意識を高めておく必要があります。まずは防災担当者を選任し、防災マニュアルを策定することからスタートし、万が一のときに備えましょう。

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