バーチャルオフィスツールとは?導入してリモートワークの課題を解決しよう
働き方
リモートワークは自宅やコワーキングスペースなど、オフィス以外の場所で業務をおこなうため従業員の柔軟な働き方に対応できます。しかし、従業員同士が顔を合わせる機会が減ることから、コミュニケーション不足を課題に抱えている企業も少なくありません。
そこで近年注目されている方法がバーチャルオフィスツールの導入です。本記事ではバーチャルオフィスツールとは何か、メリットなどを解説します。
目次
バーチャルオフィスツールが注目されている背景
近年、新型コロナウイルス感染症拡大や働き方改革などの影響を受け、リモートワークを導入した企業も数多く存在します。しかし、導入後は仕事のオンとオフの切り替えが難しい、業務状況の管理が難しいなどのさまざまな課題が浮き彫りになりました。
リモートワークはオフィスに出社しないため、従業員同士のコミュニケーション不足を課題に抱えている企業も少なくありません。またコミュニケーション不足により、孤独や不安を感じる従業員も多いようです。
このような課題を解決するために、バーチャルオフィスツールが注目されています。バーチャルオフィスツールはオフィス環境を仮想的に構築できるため、コミュニケーションの活性化を期待できます。
バーチャルオフィスツールとは
ここからはバーチャルオフィスツールとは何か、混同されやすいほかのサービスとは何が違うのかを解説します。
■仮想空間上でコミュニケーションできるツール
バーチャルオフィスツールとは、仮想空間上に構築するオフィスです。仮想的なオフィス環境に従業員がアバターを登場させ、仮想デスクへの着席や会議室の入室などをおこなえます。
各自の動向やステータスをリアルタイムで共有できるため、まるで実際のオフィスで働いているような環境を構築できる点が魅力の一つです。バーチャルオフィスツールを利用すれば気軽な相談やミーティングがおこなえるため、コミュニケーションの活性化を期待できます。
■バーチャルオフィスとの違い
バーチャルオフィスツールと混同されやすいサービスに、バーチャルオフィスがあります。バーチャルオフィスとは、物理的に実体を有しない仮想事務所のことです。
企業は、登記手続きや郵便物の受取などで住所が必要になります。バーチャルオフィスでは住所をレンタルできるため、物理的なオフィスがなくても利用できます。
新宿や渋谷などの都心の一等地に住所があるバーチャルオフィスサービスも多く、社会的信用性を高められるため、ブランディングの強化を目的に利用する企業もあるようです。
■メタバースオフィスとの違い
メタバースオフィスとは「meta」と「universe」を組み合わせた言葉で、仮想空間上に構築されたオフィスサービスのことです。参加者がアバターを使用し、ほかの参加者とコミュニケーションが取れます。必要に応じて画面や資料を共有できるため、離れた場所で仕事をしている従業員同士がリアルタイムで業務を進められます。
バーチャルオフィスツールとメタバースオフィスは、どちらもバーチャル空間でのコミュニケーションツールです。同じような機能が利用できるため、明確に区別されていないのが現状です。
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バーチャルオフィスツールを導入するメリット
ここからは、バーチャルオフィスツールを導入するメリットを解説します。
■気軽にコミュニケーションがとれる環境を構築できる
リモートワークでは、従業員同士が気軽にコミュニケーションが取りにくい点が課題の一つです。バーチャルオフィスツールでは仮想のオフィス空間に常時アバターを表示できるため、従業員がどこで何をしているのかを一目で把握できます。
一般的なチャットツールでは相手の状況を把握できないため、連絡を取るタイミングを図りにくい側面がありました。しかし、バーチャルオフィスツールでは相手の状況をリアルタイムで把握できるため、気軽にコミュニケーションが取れる環境を構築できます。
■リモートワークによる孤独感の解消につながる
リモートワークによって従業員同士のコミュニケーションが希薄化したことで、孤独を感じる従業員もいます。コミュニケーション不足による孤立化が加速し、メンタルの不調を訴える従業員もいるようです。
バーチャルオフィスツールでは、仮想空間上のオフィスにアバターでリアルな状況を表示できるため、オフィスに出社したような状況を作り出せます。
常に誰かとつながっている感覚で仕事をできるため、孤独感の解消が期待できます。
■業務状況を可視化できる
バーチャルオフィスツールでは「在籍中」や「離席中」、「会議中」「休憩中」などのステータスを表示できます。
リアルタイムで業務状況を把握できるため、相手の都合に合わせて連絡を取ることができます。また企業側も一目で稼働状況を管理可能です。
■適度な緊張感を与えられる
自宅でのテレワークはオンとオフの切り替えが難しいため、オフィスに出社するときのような緊張感を維持できない従業員もいるようです。
バーチャルオフィスツールでは、アバターで自分の業務状況を表示できます。
出社するのがアバターでも、出社している感覚や周囲の視線を感じる環境を作り出せるため、適度に緊張感を持って仕事に臨めるでしょう。
バーチャルオフィスツールを導入する際の課題
バーチャルオフィスツールを導入する際には、一定の操作スキルが求められる、従業員にストレスを与える可能性があるなどの課題があります。
■従業員に一定の操作スキルが求められる
バーチャルオフィスツールは近年登場した新しいツールです。導入しても使いこなせない従業員がいる可能性もあります。
従業員に一定の操作スキルが求められるため、慣れるまではツールの操作に集中し過ぎて、一時的に生産性が低下する恐れがあることを知っておきましょう。
従業員の混乱を来さないよう、事前に研修会を開いて導入目的や操作方法などを説明しておくことが大切です。また、導入後もスムーズに運用するために、操作方法を問い合わせできる窓口を設置するなど、従業員をサポートする体制を整えておきましょう。
■従業員にストレスを与える可能性がある
バーチャルオフィスツールは、従業員一人ひとりのステータスや業務状況をリアルタイムで把握できるメリットがあります。しかし、こうした状況を「常に監視されている」と捉える従業員がいるかもしれません。
従業員の精神的な負担を軽減するためには、導入の目的やメリットを説明し、十分な理解を得ることが大切です。また、導入後はオフラインにできる時間を設け、オンとオフのバランスを取りながら運用していくと良いでしょう。
■ランニングコストが発生する
多くのバーチャルオフィスツールでは、毎月料金を支払う月額課金制を導入しています。
また、ユーザー数やサービス内容に応じてさまざまなプランが用意されており、なかには初期費用がかかるサービスもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
料金だけでなく機能面やサポート体制などを比較し、自社に適したサービスを選ぶことが大切です。
■PCのスペックや通信環境の見直しが必要
従業員個人のPCを使用する場合、機種によってスペックが異なるため、スムーズに動作しないバーチャルオフィスツールもあります。ツールを導入する際には、必要に応じて従業員にPCやモバイルルーター貸与を検討しましょう。
また、インターネット回線の通信量に上限があるプランで契約している従業員もいるかもしれません。通信制限がかかった場合、日々の仕事にも影響をおよぼすため、無制限プランのモバイルルーターを貸与するなどの対策が必要です。ツールを導入する際には、従業員がストレスなく仕事ができる環境を整備しましょう。
バーチャルオフィスツールの選び方
ここからは、バーチャルオフィスツールを選ぶ際にチェックしたいポイントを解説します。ポイントを確認し、自社に導入できるかを検討してみましょう。
■機能性
バーチャルオフィスツールの機能は、サービスによってさまざまです。導入の目的を明確にし、自社で必要な機能が揃っているかを確認しましょう。バーチャルオフィスツールで利用できるおもな機能は、次のとおりです。
機能 | 特徴 |
コミュニケーション機能 |
|
画面・資料の共有機能 | 必要に応じてPCの画面や資料を共有できる |
座席・ルーム設定機能 | 誰がどこで何をしているかを把握できる |
バーチャルオフィスツールでは、チャット・ビデオチャット・音声チャットが利用できるため、状況に応じて使い分けられます。画面や資料を共有できるため、ほかの従業員に内容をチェックしてほしいときや画面を見て教えてほしいときなどに便利です。
また、アバターを使用して自分の状況を表示できるため、「会議中」「休憩中」の従業員などを把握できます。
■他ツールとの連携の可否
自社で利用しているツールを整理し、業務効率を上げるためにも可能な限り連携できるサービスを選びましょう。ツールによっては、カレンダーツールやWeb会議システムなど、さまざまなツールと連携できます。
連携できる場合はより作業効率が上がり、業務状況を確認しやすくなります。一方で連携できない場合は情報共有が二度手間になり、業務効率の低下を招く可能性があります。そのため、バーチャルオフィスツールを導入する際には、社内で利用しているビジネスチャットツールや文書管理ツールなどと連携できるかを確認することが大切です。
■セキュリティレベル
バーチャルオフィスツールは基本的にクラウドサービスのため、インターネット回線を介した情報漏洩のリスクがあります。そのため、ツールを導入する際にはセキュリティレベルを確認するようにしましょう。
セキュリティレベルのおもなチェックポイントは、次のとおりです。
- ISMS認証(ISO27001)を取得しているか
- 暗号化通信を採用しているか
- 入室規制やロック機能があるか など
ISMS認証とは「Information Security Management System」の略称で、情報セキュリティ対策が適切な企業やサービスのみ認定される評価制度です。認定には、気密性・安全性・可用性の3条件を満たす必要があります。
■カスタマイズ性
バーチャルオフィスツールによっては、レイアウトをカスタマイズできる機能が備えられています。オフィスを想定して利用する場合、リアルなオフィスと同じようなレイアウトにカスタマイズできるツールを選びましょう。
自社のコンセプトに沿ったレイアウトにカスタマイズすれば、仮想空間を通じて企業理念や価値観を従業員に伝えられます。
また、季節やイベントに合わせてレイアウトを変更すると、従業員同士で話題になり、コミュニケーションの活性化も期待できるでしょう。機密情報を扱うミーティングでは入室制限を設けることで、情報漏洩の回避につながります。
バーチャルオフィスツールに関するQ&A
最後に、バーチャルオフィスツールに関するQ&Aをご紹介します。
■どのようなシーンで活用できるのか
バーチャルオフィスツールはリモートワークだけでなく、オンラインイベントや講習会にも利用できます。講習会では講師のアバターを登壇させると、参加者はまるでリアルな会場にいるような感覚を味わえるでしょう。
ツール内のレイアウトをカスタマイズできるサービスを利用すれば、イベントスペースや教室などのさまざまなスペースを作成できます。
■導入費用はどのくらいか
バーチャルオフィスツールの導入費用の目安となる相場は、次のとおりです。
- 初期費用:0円~10万円程度
- 月額料金:10,000円~30,000円程度
上記はあくまでも目安で、実際にかかる費用はユーザー数や規模によって変動します。サービスによっては初期費用が無料のものや、一定期間の無料トライアルを設けているものもあるため、自社の予算に見合ったツールを選びましょう。
■自社に適したツールを見極めるポイントは
導入する際は、導入目的や優先して解決したい課題を明確にし、対応できるツールを選ぶことが大切です。自社でグローバルチームを編成している場合は、日本語以外の言語にも対応したツールを選ぶと良いでしょう。
また、ほとんどのツールで無料トライアル期間を設けています。動作環境や操作性、自社に適しているかなどを確認するためにも、無料トライアルを利用してみましょう。
まとめ:ツールを導入してリモートワークの課題を解決しよう
リモートワークの導入後、従業員同士のコミュニケーション不足を課題に抱える企業も少なくありません。コミュニケーションを活性化させるためには、バーチャルオフィスツールを導入する方法もあります。バーチャルオフィスツールでは仮想的なオフィス環境にアバターを表示でき、まるでオフィスに出社しているような環境を構築できます。
各自の動向やステータスをリアルタイムで共有でき、ほかの従業員に話しかけるタイミングに迷う必要はありません。リモートワークによる孤独感の解消にもつながるため、バーチャルオフィスツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
こちらの記事では、実際にバーチャルオフィスツールを導入した企業のインタビューを掲載しています。コミュニケーションを活性化させる施策や企業としての一体感作りなどもわかるので、ぜひチェックしてみてください。