【2022年最新版】テレワーク導入後の課題と解決策を徹底解説
働き方
新型コロナウイルスの広まりにより、感染症対策としてテレワークを導入した企業が増えました。しかし、準備や体制がきちんと整備されないまま導入に至った結果、徐々に不具合が出てきた企業も少なくないのが現状です。
業務をスムーズに進めるためには、表面化した課題を解決するための対策が必要です。この記事では、テレワーク導入後の課題と解決策を徹底解説します。今後起こり得る可能性がある潜在的な課題も想定し、万が一の事態にも備えておきましょう。
テレワークの実施状況と現状
働き方改革の一環としてテレワークを導入した企業も多いようですが、理由はそれだけではありません。ここからは、テレワークの実施状況と現状を解説します。
◾️「コロナ対策」として導入した企業が多い
近年、オフィス以外の場所で業務をおこなうテレワーカーが増加傾向にあります。テレワークが普及した背景には、世界中をパンデミックに陥れた新型コロナウイルス感染症の流行があります。
実際に日本で初めて緊急事態宣言が発出された令和2年4月以降は、テレワークを実施した企業が急激に増えました。緊急事態宣言の対象は令和2年4月7日から一部の都府県、4月16日からは全国に拡大しました。
総務省情報流通行政局の資料によると、令和2年4月23日以降に実施割合が急激に増えていることがわかっています。
期間(令和2年) | 3/2~3/8 | 3/27~4/5 | 4/23~5/12 | 5/28~6/9 | 6/29~7/4 | 8/28~9/8 | 11/9~11/16 |
大企業 | 33.7% | 48.0% | 83.3% | 83.0% | 55.2% | 61.3% | 57.4% |
中小企業 | 14.1% | 20.9% | 50.9% | 51.2% | 26.2% | 29.1% | 25.5% |
全体 | 17.6% | 25.3% | 55.9% | 56.4% | 31.0% | 34.4% | 30.8% |
※出典元:総務省情報流通行政局情報流通高度化推進室「令和3年版情報通信白書テレワークの最新動向と総務省の政策展開」
企業がテレワークを導入したことにより、同時にテレワーカーも増えました。国土交通省の調査によると、平成28年度から令和3年度までは上昇傾向にあることがわかっています。
雇用型就業者のうち、勤務先にテレワークを実施している人の割合は次のとおりです。
期間 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 |
割合 | 13.3% | 14.8% | 16.6% | 14.8% | 23.3% | 27.0% |
令和3年度は全国で27.0%に達しており、平成28年度の13.3%から2倍近く上昇しています。
◾️テレワークを取りやめる企業も一定数いる
総務省情報流通行政局の資料によると、2020年7〜8月の調査時点でテレワークを実施している企業のうち、40.5%は新型コロナウイルス感染症の収束後も活用を予定しています。その一方で、すでに活用を取りやめた企業が11.0%存在することがわかっています。
収束後の活用予定 | 活用予定 | 検討中 | 活用しない予定 | すでに活用を取りやめた |
割合 | 40.5% | 38.2% | 10.3% | 11.0% |
※出典元:総務省情報流通行政局情報流通高度化推進室「令和3年版情報通信白書テレワークの最新動向と総務省の政策展開」
実際、テレワークの導入後に浮き彫りになったさまざまな課題が一つの要因となり、活用を取りやめた企業もあるようです。しかし、テレワークは働き方改革の一環にもなり、生産性の向上や社員のワーク・ライフ・バランスの実現に寄与するなどメリットが多い施策でもあります。
企業側と社員側双方に利点がある働き方でもあるため、課題が増えてきたことを理由に全面的に取りやめるのは時期尚早です。自社に適した形での運用に見直し、テレワークのメリットを活かす方法を検討してみましょう。
テレワークの企業の動向や継続するためのポイントに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
【企業側】テレワークの課題と解決策
ここからはすでにテレワークを実施中の企業に向けて、企業が抱える課題と解決策を解説します。
◾️【課題1】ランニングコストがかかる
テレワークにかかるランニングコストに頭を悩ませる企業も多いようです。社員のテレワーク環境を維持するためには、たとえば次のような費用がかかります。
- ハードウェア費
- インターネット料
- ITツールの利用料
- テレワーク手当 など
端末や通信環境がない社員には、企業が費用をサポートするケースもあります。自宅でテレワークする場合は交通費が不要になる代わりに、水道光熱費や通信費などの手当の支給も検討する必要があるでしょう。
導入後にコミュニケーション不足や勤怠管理の難しさに直面すれば、新たなITツールの導入が必要になることも想定されます。
【対策】補助金の活用やオフィス固定費を見直す
国や自治体ではテレワーク向けの補助金制度を設けています。活用できるものがないか一度確認してみると良いでしょう。なお、補助金の詳細は、記事後半の「テレワークに活用できる補助金」で詳しく解説します。
また今後もテレワークを継続予定の場合は、それを見据えたオフィスに変更すると固定費の削減につながります。一度に出社する人数の減少が想定されるのであれば、ABWやハイブリッドワークを前提にオフィスの縮小やレイアウトの変更をおこなうと効果的です。
ABWについてはこちらの記事も参考にしてみてください。
ABW型オフィスの導入で働き方改革!導入する流れから企業事例まで
◾️【課題2】セキュリティリスクが高まる
テレワークの推進に伴い、セキュリティに課題を抱える企業もあります。社員がオフィス以外の場所で業務をおこなうため、不正アクセスや端末の紛失などのセキュリティリスクが高まるためです。
たとえば、社員が利用するネットワークのセキュリティレベルは、すべてが高いとは限りません。特に暗号化されていないフリーWi-Fiには、第三者による盗聴や盗み見などのリスクがあるので注意が必要です。また、社員がオフィス外で端末やUSBなどを紛失するリスクもあります。
現在運用しているセキュリティルールに改善点はないか、実際に遵守されているかを定期的に確認する必要があります。
【対策】セキュリティルールを見直す
テレワークによる情報漏洩を防ぐためにはセキュリティルールを明確化し、すべての社員に浸透させることが大切です。情報や端末の持ち出しに関するルールが徹底されれば、セキュリティの強化が期待できます。
情報漏洩の防止に関するセキュリティルールの例は、次のとおりです。
- USBデバイスはパスワードをロックしたものを企業が提供する
- ネットワークへの接続は企業から支給されたWi-FiルーターまたはVPN回線に限る
- 不審なメールは開かない など
企業からWi-Fiルーターを支給すれば、自宅にインターネット環境がない社員のサポートにもつながります。
総務省では「テレワークセキュリティガイドライン」を公開しています。ガイドラインにはトラブル事例と対策が記載されているため、セキュリティルールを見直す際に役立つので、ぜひチェックしてみてください。
※参考元:総務省「テレワークセキュリティガイドライン第5版(令和3年5月)」
◾️【課題3】適切な人事評価ができない
テレワークの場合、社員は上司から直接目の届かない場所で業務をおこないます。そのため、従来の対面による評価を前提とした方法では、適切な人事評価ができない可能性があります。
また、進捗状況を把握できなければ、仕事の成果も見えにくいのが現状です。適切に評価されない環境は社員の不満やモチベーションの低下につながるかもしれません。企業側は、働き方に関わらず平等な人事評価ができる方法を見直す必要があります。
【対策】新しい評価制度やツールを導入する
既存の評価方法を見直し、不具合がある場合は新しい評価制度やツールの導入を検討してみましょう。
たとえば、勤怠管理システムを導入するとパソコンやスマホで出退勤を打刻できるため、管理しやすくなります。
また、テレワークにも対応できる評価方法に、360度評価があります。360度評価とは、上司や同僚など立場の異なる複数人が評価をおこなう方法です。評価対象である社員の納得度を高められるため、テレワークでも不平等が生まれにくくなります。
その他、オンラインでできる1on1支援ツールなどの利用もおすすめです。WEBカメラを通して、上司と部下など1対1で面談をおこなえます。
働き方による人事評価の不平等を解消するためには、適切な方法で評価することが大切です。
【社員側】テレワークの課題と解決策
ここからは、テレワーク実施中の社員が抱える課題と解決策を解説します。
◾️【課題1】集中できる環境の整備が難しい
テレワーカーにとって大きな課題となるのは「自宅では業務に集中しにくい」という点です。生活スペースである自宅では、どうしてもオフィスと同じような業務環境を作るのは難しいでしょう。
テレワーク環境の具体的な課題は、次のとおりです。
- 業務に適したデスクがない
- テレワークスペースを確保できない
- 近所の生活音が気になる
- 家族の生活音が気になる など
特に小さな子供がいる場合、Web会議やオンラインでの商談中に子供の声が入らないように注意する必要があるため、社員にとって大きなストレスになる可能性があります。
【対策】シェアオフィスなどを活用する
自宅での業務環境の整備が難しい社員向けに、自宅以外でもテレワークできる場所を確保しましょう。たとえば、シェアオフィスやレンタルオフィスの活用などが挙げられます。
自宅以外の場所を利用する際、利用料の一部をサポートする企業もあるようです。利用料の負担が社員の新たなストレスにならないよう、助成を検討してみると良いでしょう。
また、第三者がいる場での業務はセキュリティリスクが高まります。自宅外でのテレワークを容認する場合は、改めてセキュリティ対策を見直すほか、社員教育の徹底を図りましょう。
◾️【課題2】コミュニケーションが取りにくい
テレワークでは社員同士が顔を合わせる機会が減るため、コミュニケーションが取りにくくなります。業務中に疑問を感じることがあっても、近くの席の社員にすぐ質問できる状況ではありません。
意思疎通が難しいと、チームワークの乱れや社員の孤独感が高まる原因につながります。また情報共有が不十分だと、個人が抱えるトラブルに気づきにくくなり、大きな問題に発展する可能性もあります。ヒヤリハット対策の面からも、コミュニケーションが取りにくい環境は改善したいところです。
【対策】ツールの見直しとルールを策定する
まずは既存のコミュニケーションツールがきちんと活用されているのかを把握することから始めましょう。現場の社員にヒアリングし、運用実態や使い勝手を確認します。問題がある場合は、より自社の状況に合ったツールへの変更を検討する必要があります。社員のニーズを把握した上で、現場が使いやすい手段を導入しましょう。
またコミュニケーションを促すために、連絡の頻度やどのような場合に連絡すべきかなど、ルールを設けておくのもおすすめです。
◾️【課題3】運動不足やストレスの懸念
テレワークが続くと、特に「出勤」が運動の一環となっている社員にとっては慢性的な運動不足になる可能性があります。また身体への影響だけでなく、出社時よりコミュニケーションが希薄になることから精神面への影響も懸念されます。厚生労働省の「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」でも、テレワーク下でのストレス要因の一例として、コミュニケーション不足による孤独感や孤立感が挙げられています。
※出典元:厚生労働省「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」
社員の健康は組織の活力に直結します。モチベーション高く業務をおこなえるよう、テレワークの導入後は社員の健康管理への配慮も必要です。
【対策】健康状態を定期的にチェックする
テレワークによる社員の健康課題を解決するためには、不調のサインをいち早く発見して適切な措置をおこなう必要があります。テレワーク実施下では社員に対して定期的にアンケート調査をおこない、健康の変化を把握するようにしましょう。
また社員が気軽に相談できる窓口を設置し、自ら健康の不調を感じた場合に相談できる環境も整備しておきましょう。社員の健康に配慮することは、企業の健康経営にもつながります。
テレワークに活用できる補助金
テレワークの運用方法を見直す際、新たにコストがかかることもあります。コスト面がネックになっている場合は、国や自治体が設けている補助金を活用すると費用をおさえられます。
募集の有無や適用条件は変更になる可能性があるため、詳しくは各サイトを確認するようにしましょう。ここからは、テレワークで活用できる補助金の一例をご紹介します。
◾️IT導入補助金2022
IT導入補助金2022はITツールを導入する中小企業や小規模事業者に対して、費用の一部を補助してくれる制度です。補助対象のITツールは次のとおりです。
- ソフトウエア購入費
- クラウド利用費
- 導入関連費
- ハードウェア購入費
ハードウェア購入費には、パソコンやタブレットも含まれています。
※出典元:独立行政法人中小企業基盤整備機構「IT導入補助金2022」
◾️小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者と一定の要件を満たした特定非営利活動法人に対して、費用の一部を補助してくれる制度です。
新型コロナウイルス感染症感染防止と事業継続を両立させるために、対人接触機会の減少に向けた取り組みに対して補助金が支給されます。補助対象の取り組みは次のとおりです。
- テレワークのためのシステム購入や開発
- Web会議ツールの導入
- イベントや契約書などのオンライン化
※出典元:中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構「小規模事業者持続化補助金」
◾️テレワーク促進補助金
自治体の中には、テレワークの導入にかかる費用を補助してくれるところもあります。テレワーク促進補助金は、公益財団法人東京しごと財団が設けている助成金制度です。対象の事業所の規模と助成金の上限は次のとおりです。
事業所の規模 | 助成金の上限 | 助成率 |
30人以上999人以下 | 250万円 | 2分の1 |
2人以上30人未満 | 150万円 | 3分の2 |
まとめ:課題と対策を見直してテレワークを上手く運用しよう
テレワークの実施によって、多くの企業がさまざまな課題に直面しています。一方でテレワークは企業と社員双方にとってメリットが多い施策でもあり、問題が発生したからと安易に運用を取りやめるのは時期尚早と言えるでしょう。
新たな課題が浮き彫りになった場合や解決できない場合には、行政機関の窓口に相談してみるのも手です。厚生労働省から委託を受けているテレワーク相談センターでは、テレワークに関するあらゆる相談を受け付けています。労務管理やICTに精通した専門家に相談できるため、企業の課題に適したアドバイスが受けられます。
課題を把握し一つずつ対策することで、自社に適したテレワークのかたちを模索してみてはいかがでしょうか。テレワークのメリットを上手く取り入れたワークスタイルを確立することで、社員の働きやすさや業務効率の向上、ひいては企業の成長を実現させましょう。