小規模オフィスのレイアウトのコツ|課題と解決策を徹底解説
オフィスレイアウト・デザイン・設計
小規模なオフィスの場合、初期費用をおさえられる、統一感のある空間を実現しやすいなどのメリットがある一方で、複数の課題があるのも事実です。オフィスのレイアウトを検討する際には、メリットとデメリットのバランスを考慮して決断する必要があります。
この記事では、小規模なオフィスのレイアウトを検討している企業の担当者向けにメリットや課題、導入事例を解説します。課題に対する解決策も併せて解説するので、レイアウトの刷新を検討している担当者はぜひ最後までお読みください。
なお、本記事での小規模オフィスは、従業員10人程度の事業所を前提として解説します。
目次
小規模オフィスのレイアウトのメリット
小規模オフィスのレイアウトには初期費用をおさえられる、統一感のある空間を実現しやすいなどのメリットがあります。
■初期費用をおさえられる
オフィスを運営していくためには、次のようなオフィス用品の準備が必要です。
- 家具
- OA機器
- 備品
- 消耗品 など
従業員数が多いと必要なオフィス用品も多くなり、その分費用がかかります。しかし、従業員が10人以下の小規模オフィスの場合、その分オフィス用品にかける費用が少なくて済みます。
■統一感のある空間を実現しやすい
小規模オフィスは、大規模オフィスに比べて確保できるスペースや置けるものに限りがあるものの、空間全体のイメージを統一しやすくなります。スペースが広いほどさまざまなものやカラーが点在し、デザインの統一性に欠けてしまいがちです。
また、小規模オフィスは素材やデザイン、カラーなどにこだわり、個性的な空間を創り出しやすいという特徴もあります。
■社内コミュニケーションの活性化が期待できる
小規模オフィスは従業員同士の顔が見えやすいため、コミュニケーションも取りやすい環境です。オフィスの面積が広すぎると、コミュニケーションを取るために席の移動が必要なケースもあります。
スペースが限られた小規模オフィスは従業員同士の物理的距離が近い分、コミュニケーションの活性化が期待できます。また、声がかけやすい環境で仕事をすることで報告や相談がスムーズになり、コミュニケーション不足によるミスや人間関係のトラブルもおさえられるでしょう。
レイアウト検討の前にすべきこと
小規模オフィスのレイアウトを検討する前に、「従業員にどのような働き方を望むか?」「今のオフィスでの課題は何か?」という点を明確にしましょう。レイアウトを具体化するための方針として参考にできます。
例えば、小規模オフィスのメリットである社内コミュニケーション活性化を重視したいというコンセプトがあれば、従業員個々のデスク間の遮蔽物を減らし、目線や声を邪魔せず会話しやすいレイアウトにするという具体的な提案に結びつきやすくなります。
また、既存のオフィスにある課題や要望を従業員からヒアリングするのも良い方法です。オフィスを実際に使用する従業員の意見を取り入れることで、より実用的で快適な職場環境を作り出すことができます。
レイアウトの方針とともに、オフィスに必要な機能をおさえておくことも大切です。次の要素は、オフィスに欠けると業務が滞る恐れもある重要なポイントです。事前にチェックしておきましょう。
- 従業員に対するオフィスの面積
- 業務内容に応じた収納や設備
- ネットや電話回線の数
小規模オフィスのレイアウトではゾーニングが重要
オフィスのレイアウトにおいて、ゾーニングは重要な要素となります。ゾーニングは、場所や空間を用途別に分ける手段を刺す言葉で、スペースを効率的に利用するためには欠かせない作業です。
特に、利用できる空間の総面積の狭い小規模オフィスはスペースの総面積が限られているため、適切な割り振りが重要です。
次のポイントをおさえて、小規模オフィスでのゾーニングを成功させましょう。
- 一人当たりの必要面積を確保する
- 用途ごとのスペースの面積を配分する
- ミーティングスペースを設ける
■一人当たりの必要面積を確保する
従業員一人当たりの執務スペースに必要な面積を確保しましょう。個人用執務スペースは従業員一人につき2〜4坪程度を確保するのが一般的なゾーニングの目安です。
しかし、面積の削り過ぎには注意が必要です。労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則ではオフィス面積を一人当たり1.4坪で求めていますが、設備を含む数値のため、実質的には1坪が法的な最低ラインとなります。
また、小規模オフィスのゾーニングでは面積の余裕が無く、個人の執務スペースも可能な限りスペースを削りたいという考えに寄ってしまいがちですが、狭すぎるスペースは円滑な業務の阻害やストレスの原因にもなりかねません。
業務によっては大きいデスクや収納が必要なため、より多くの面積が求められる可能性もあります。紙の書類を多く取り扱う事務職は必要面積が増える傾向にあるでしょう。従業員ごとの業務の性質を踏まえたうえで、柔軟にゾーニングすることも大切です。
■用途ごとの面積を適切に配分する
執務スペースや共有スペースなど、用途ごとにスペースを配分しましょう。小規模オフィスのゾーニングでは、デスクのある執務スペースに面積が割かれるケースが多いため、共有スペースには複数の用途を持たせることが求められます。
例えば、共有スペースをミーティングや応接、食事や休憩などに柔軟に使い分けられるレイアウトにしておけば面積の節約になります。家具にキャスター付きのデスクや椅子などを採用すれば、用途の切り替えもおこないやすくなるでしょう。
加えて、共有スペースをミーティングや会議に使用する想定の場合は、外からの視線や音を十分にシャットアウトできるかどうかも注意しましょう。多用途性や面積の節約を意識しすぎた結果、気が散って会議の進行の妨げになってしまっては、元も子もありません。
■コンパクトなオフィス家具を採用する
業務内容に応じて、オフィス家具のサイズを調整することも検討してみましょう。大きなデスクの要らない従業員にコンパクトなオフィス家具を割り当てて一人当たりの面積を節約できれば、小規模オフィスでも余裕のあるゾーニングが可能です。
例えば、外勤の営業職のデスクはコンパクト化がおこないやすい傾向にあります。資料作成を持ち運び可能なノートPCでおこなうのであれば、大きなデスクを用意する必要がありません。
一方で、内勤の事務職や経理職はデスクトップPCを使用することが多く、それなりのサイズのデスクが必要になるでしょう。全従業員のデスクを一律でコンパクト化してしまうと業務に滞る恐れがあるため、必要なサイズについてヒアリングすることも大切です。
アイリスチトセでは、オフィスの規模やニーズごとに最適なオフィス家具をご用意しております。オフィス家具の調達でお悩みがございましたら、ぜひアイリスチトセへご用命ください。
小規模オフィスのおすすめデスクレイアウト
デスクの配置レイアウトも小規模オフィスにとって重要な課題となります。限られた面積の活用にはもちろん、働き方や会社の方針に対する最適化のうえでも欠かせない要素です。
小規模オフィスに向いているデスクレイアウトを4つピックアップしてご紹介します。
- 対面式
- 同向式
- リンク式
- フリーアドレス
それぞれが異なった利点を持つため、自社の働き方や方針と照らし合わせ、最適なものを選びましょう。
■対面式
対面式は、数人のデスクを向かい合わせに配置し、グループを形成するデスクレイアウトです。従業員同士が顔を合わせやすく、チームワークを重視する組織に向いたレイアウトといえるでしょう。また、部署やチーム単位で区切りやすい点も特徴的です。
対面式レイアウトのメリットは、デスクを密着させることによる、コミュニケーションの取りやすさと面積の小ささにあります。一方、個人のスペースという側面は薄れるため、集中力を求める作業には向いていない場合があります。
小規模オフィスで対面式のデスクレイアウトを採用する場合、執務スペースにグループを1~2個形成するかたちとなるでしょう。社内コミュニケーションの活性化という小規模オフィス固有のメリットの促進を期待でき、面積の節約にもなります。
■同向式
同向式は、全てのデスクが一方向に向かって並ぶデスクレイアウトです。黒板と教壇を正面に置いた学校の教室をイメージするとわかりやすいでしょう。個別の作業が多い組織や、研修室などの教育用スペースに向いています。
同向式レイアウトは個々人の執務スペースを並べるようなかたちとなるため、他の従業員の視線を遮りやすく、集中力を求める作業に向いているというメリットがあります。等間隔にデスクを配置することで四角い部屋を有効活用しやすい点もあげられるでしょう。
しかし、従業員同士が向き合わないレイアウトのため、コミュニケーションが取りにくい点には注意が必要です。チームワークよりも個々人の集中力を求める業務の多いオフィスで採用したいデスクレイアウトといえます。
■リング式
リング式は、120度ほどの角度を持つ3台のデスクで1グループを形成するデスクレイアウトです。ブーメラン式と呼ばれることもあります。デスクの正面に他者がいないため視線が合いにくく仕事に集中でき、首を振れば簡単にコミュニケーションを取れます。
リング式のメリットは、コミュニケーションの取りやすさを担保しつつ、一人一人のデスクのサイズを大きめに確保できる点にあります。デスクトップPCやマルチモニターを使用しつつの組織的な業務に向いています。
主なデメリットとして、他のデスクレイアウトよりも多くの面積を使用してしまうことがあげられます。小規模オフィスで使用する場合は、机のサイズとチームワークを両立したい一部の部署のみリング式を採用し、他は対面式を採用するなどの工夫を施しましょう。
■フリーアドレスもおすすめ
外勤の従業員が多いオフィスの場合は、フリーアドレス化も検討しましょう。フリーアドレスは、従業員に固定のデスクを割り当てず、空いた席を自由に選んで業務をおこなうスタイルのオフィスを指す言葉です。
フリーアドレスのオフィスは従業員一人ひとりに席を用意する必要がないため、スペースの節約に向いています。小規模オフィスにとっても有効な選択肢といえるでしょう。フリーアドレス化で浮いたスペースは、他の用途に使用できます。
フリーアドレスのレイアウトや採用事例については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
パターン別・少規模オフィスのレイアウトのポイント
小規模オフィスのレイアウトを考える際には、そのオフィスにどの程度の利用者が居るのかを軸に考えることが大切です。オフィスに出入りする人の数、滞在時間、滞在の目的をしっかりと考慮しましょう。
人の出入りによってオフィスが目指すべき方向性も異なります。次のポイントを意識しておくことが大切です。
- 内勤者が多いならスペースを兼用して活用
- 外勤者が多いならフリーアドレスがおすすめ
- 来客が多いなら可変式の応接室
上記の3ポイントのいずれかを軸に、小規模オフィスのレイアウトを検討しましょう。
■内勤者が多いならスペースを兼用して活用
内勤者が多い場合は、スペースの兼用を意識するようにしましょう。個々の従業員に固定の執務スペースが求められるため、共用スペースでは限られた面積を最大限に活用することが大切です。
例としては、リフレッシュ用のスペースを会議室としても利用することがあげられます。ソファーなどの椅子類を机を挟むかたちで設置しておけば、普段はリラックスや食事に利用できる空間として運用しつつ、必要に応じて会議に用いることもできます。
内勤者はデスクトップPCや書類を取り扱うことが多いため、個々人の執務スペースは十分に活用しておくようにしましょう。コミュニケーションや個人の集中など、職種ごとに求められる要素を意識したデスクレイアウトも欠かせません。
■外勤者が多いならフリーアドレスがおすすめ
外勤者が多い会社・部署は、フリーアドレスの採用も検討しましょう。固定のデスクを廃し執務スペースを共用化すれば、小規模オフィスでも各スペースのゾーニングに余裕を持たせられるでしょう。
フリーアドレス化の際には、必要席数が足りているかどうかに注意しましょう。出社人数が最大になったときの人数を想定して、その際に全員が作業できるための椅子やスペースが確保できているようにします。
また、フリーアドレス化では個人の収納スペースが足りなくなるケースが多いため、個人用ロッカーが求められる可能性もあります。収納物が書類などの電子化可能なものの場合は、ペーパーレス化をあわせて検討することも有効です。
■来客が多いなら可変式の応接室
社内外からの来客が多い場合は、可変式の応接室を用意できるようにしておきましょう。小規模オフィスで会議やセミナー専用の部屋を常設しておくとスペースの無駄が発生するため、必要に応じて用意できることが重要です。
また、エントランスや待合室にも十分な広さを確保することが重要です。応接室に入るまでの動線が狭い場合、混雑して人の密度が上がり、プライバシーや感染症対策上の問題が発生する恐れがあります。執務スペースと隣接すれば、情報漏洩のリスクも高まります。
常勤者と違って、来客の数は読みにくいものです。応接室に収容可能な人数を柔軟に増やせるように、レイアウトを変更しやすいオフィス家具を取り入れておきましょう。取り外しやすいパーティションやキャスター付きデスク、椅子が便利です。
小規模オフィスのレイアウトの注意点
小規模オフィスのレイアウトには音へのストレスに配慮する、増員の可能性も考慮するなどの注意点があります。
■音へのストレスに配慮する
小規模なオフィスは音が響きやすく従業員がストレスを感じることがあるため、音が出るものを置く場所に配慮する必要があります。
たとえば音が大きいコピー機やシュレッダーは、作業スペースから遠い場所に置くのも手段の一つです。狭いオフィス内ではトイレの音漏れも起きやすいため、トイレと作業スペースの間に収納スペースを設置するのも良いでしょう。
また、オープンスペースでWeb会議をする際には、音漏れが気になって集中できないケースもあります。作業スペースに集中ブースを設置すると周囲の視線を遮断できるだけでなく、音漏れを気にする必要もありません。
アイリスチトセでは、Web会議に最適な遮音性の高い集中ブースを取り扱っています。社内で集中ブースの設置をされる際には、ぜひTELECUBE AIR by アイリスチトセをご検討ください。
オフィスの防音対策に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■増員の可能性を考慮する
小規模オフィスに移転する際には、将来的に従業員数が増員する可能性を考慮してレイアウトを検討しましょう。増員によってオフィスが手狭になった場合、大幅なレイアウトの変更や大規模な工事が必要になり、その分費用もかかります。
将来的な増員を考慮してレイアウトを計画すれば、レイアウトの変更や工事の手間が省け、コスト削減にもつながるでしょう。省スペース化を実現できれば、従業員が増員した場合でもレイアウトの変更に対応できます。
小規模オフィスのレイアウト事例
最後に、小規模オフィスのレイアウト事例をご紹介します。
■博光電気株式会社
博光電気株式会社は福岡県福岡市にオフィスを構え、生活に必要不可欠なライフラインの一環である電気通信分野をサポートしている企業です。
高さの高いテーブルとチェアを組み合わせたことでスタンディングワークも可能となるなど、社員の健康にも配慮したワークスペースです。また、鮮やかなカラーのチェアは会議室の堅苦しいイメージを排除し、コミュニケーションが取りやすい雰囲気を演出しています。
■アケボノ産業株式会社
アケボノ産業株式会社は愛知県名古屋市にオフィスを構え、築炉工事やサーモグラフィー調査などの幅広い事業を手掛ける企業です。
対向型レイアウトのオフィスに導入されたフリーアドレスデスクは、パーテーションの置き方次第で広い作業スペースを確保できます。デスク以外のオフィス家具はブラックカラーを選ぶことで、シックなオフィス空間を実現しました。
まとめ:小規模オフィスでも多彩なレイアウトが実現できる
小規模オフィスは大規模オフィスに比べて初期費用がおさえられ、統一感のある空間を実現しやすいなどの魅力があります。その一方で、確保できるスペースが限られる小規模オフィスならではの課題もあります。
課題に直面しても、工夫次第で希望に近いレイアウトの実現が可能です。そのためには、ゾーニングやデスクレイアウトを重視して慎重に検討する必要があります。オフィスに勤務する従業員の職種や、組織の働き方も意識しましょう。
最適なレイアウトは会社や部署の事情によって異なるため、専門業者に相談しながら進めることも視野に入れてみてください。
アイリスチトセでは、レイアウトのプランニングから引越しまでをトータルでサポートするサービスを提供しています。オフィス移転・縮小や働き方改革など、企業が抱える悩みに寄り添い、グループの総合力で課題を解決いたします。オフィスレイアウトでお悩みの際には、ぜひお気軽にご相談ください。