オフィスは地方移転したほうが良い?メリット・デメリットや事例を紹介

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オフィスは地方移転したほうが良い?メリット・デメリットや事例を紹介

近年テレワークが普及したことにより、多くの企業では従来よりもオフィスに出社する従業員の数が減少傾向にあります。出社率が下がることで生まれたオフィスの余剰スペースは、企業にとってオフィスレイアウトの変更やオフィススペース自体の縮小を検討する契機となっています。特に地価の高い立地にオフィスを構える企業では、賃料や維持費を削減する観点からオフィスの地方移転が選択肢に挙がることも増加しました。

しかし地方移転は利点だけでなく、移転に伴う課題もあわせて検討することが大切です。コスト削減できたとしても、一方で負の影響が大きければオフィス移転は有用とは言えません。

この記事ではオフィスの地方移転のメリットや課題を解説します。事例や成功のコツも紹介しますので、オフィスの地方移転を検討している企業・担当者の方はぜひ参考にしてみてください。

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オフィスの地方移転の現状

経済産業省が2021年におこなった動向調査によれば、有効回答となる680社のうち、18.4%(125社)が実際に移転・分散を実施しています。7.8%(53社)も移転を検討しており、少なくない数の企業が地方移転の必要性を感じていると言えるでしょう。

※出典:経済産業省「地方移転に関する動向調査結果【概要版】

また、帝国データバンクが2022年1月から6月におこなった調査では、首都圏から地方へ転出した企業は164社で、転入した数(125社)より多いことが判明しています。この転出超過の傾向は2021年から始まっており、今後も続く見込みです。

※出典:帝国データバンク「特別企画:首都圏・本社移転動向調査

オフィスの地方移転は着実に進行していることがわかります。コロナ禍による売上減をコスト削減で乗り切る企業の戦略や、通信技術やITの技術的進歩によるテレワークの実現の影響が大きいと言えるでしょう。

オフィスを地方移転する5つのメリット

オフィスの地方移転には、次のようなメリットがあります。

  • オフィスのランニングコストの削減
  • 補助金や税の優遇
  • BCP対策の一環
  • ワーク・ライフ・バランス改善への寄与
  • 企業の社会的価値の向上

企業の財政面へのメリットに加え、オフィスの一部を移転させることによるリスクマネジメント、経営の安定性や社会への貢献にもつなげることができます。それぞれの詳細を見ていきましょう。

 

■オフィスのランニングコストの削減

地方は首都圏よりも地価が安い傾向にあるため、移転によりオフィスの賃料や駐車場代などのランニングコストを削減することが可能です。不動産費用が気になっている場合、地価などが比較的安い地方への移転は有効な選択肢になるでしょう。

現在のオフィスと同じ賃料でも、より広く快適なオフィスを借りられる可能性も高いため、コストの削減に加えて、オフィスを利用する価値の向上ひいてはコストパフォーマンス(費用対効果)を改善できるという点でも地方移転は有効だと言えます。

地方移転でコスト削減を実現できれば、企業の経営効率の向上にも寄与します。

 

■補助金や税の優遇

政府や地方自治体は地方への企業招致のため、補助金や税の優遇措置などの支援を実施しています。

補助金はおもに各地方自治体が実施しており、オフィスの賃料や建物・土地の取得費などに一定割合の補助金を受けることができます。その他にも自治体独自の補助が提供されている場合もあるため、候補地の支援制度をよく確認しておくことが大切です。

税の優遇措置は、おもに国がおこなうものです。内閣府・内閣官房が提供する地方拠点強化税制と、厚生労働省が提供する雇用促進税制の2つがあります。

税の優遇 概要
地方拠点強化税制 特定業務施設(オフィスなど)を整備(移転・拡充)する場合、整備事業の計画について知事の認定を受けた事業者に対し、課税の特例等の措置が講じられる制度。

東京23区からの移転で利用できる移転型と、東京23区以外の地方から別の地方に移転する拡充型がある。
雇用促進税制 地方拠点で本社機能に従事する雇用者が増加するごとに、一人当たり最大90万円の税額控除を受けられる制度。

地方移転はランニングコストをおさえる効果がありますが、移転をおこなうタイミングではどうしても出費がかさむため、こうした制度の利用が大切です。各種ガイドラインや規定を確認し、自社が制度を利用できるかどうかを確認しておくと良いでしょう。

 

■BCP対策の一環

地方移転は、BCP対策の一環としても有効な施策と言えます。BCP対策とは、災害発生時に企業のダメージを最小限化し、事業継続や復旧をスムーズにするための施策を指す言葉です。たとえば、本社は首都圏に置いたまま、一部機能を地方移転させることで万一の際の機能不全を避けることができます。

現代では自然災害に対する危機意識の高まりを受け、従業員の命や安全を守る防災対策に加えて、事業継続のためにおこなうBCP対策が重要視されています。都心に施設が集中している場合には、本社機能やデータセンターを各地方に分散するなどの対策が有効です。

BCP対策は自然災害だけでなく、新型コロナウィルスのような疫病にも有効です。例えば感染症法に基づき濃厚接触者の外出自粛を求められた際、オフィスに勤める従業員の一人が感染すると社内の濃厚接触者は出社できなくなり、オフィス全体が閉鎖・事業活動が止まってしまいます。オフィスを複数もうけることでそのようなリスクを分散させることが可能です。

BCP対策については次の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

BCP対策とはなにか基本から解説|6つのステップで策定・運用しよう

 

■ワーク・ライフ・バランス改善への寄与

人口密集地である首都圏を避けることで、従業員のワーク・ライフ・バランスの改善に寄与できます。ワーク・ライフ・バランスとは仕事と生活のバランスについて表現する言葉で、現代の新しい働き方にとって重要な要素の一つとなっています。

首都圏や都心部では、満員電車による長時間通勤や人込みなどで、従業員に対し通勤や生活に関するストレスを与えているケースが多くあります。都心を避け、自然豊かな地方で生活ができるようにすることは、ワーク・ライフ・バランス改善につながるでしょう。

ただし、地方への移転に伴い従業員も引越しが必要になるかもしれません。不満につながる可能性も否定できないため、移転に関する社内での意見を確認することが大切です。

 

■企業の社会的価値の向上

地方の雇用増加をはじめ地方創生にも寄与します。結果的に、企業の社会的価値を高めることができるでしょう。

地方創生は、首都圏への過度な人口密集を是正し、47都道府県それぞれの地域を活性化させ、全国的な活力のある日本社会へ発展・維持していくことを目指す政策です。東京へ集中した雇用やビジネスを地方へ広げることは、地方創生に欠かせない施策と言えます。

また、地方移転にはSDGsの目標達成にも貢献できるメリットがあります。地方に設備や従業員を移すことで、都心に集中する輸送やエネルギー消費を軽減や、地域社会に貢献できるためです。SDGsへの貢献は、企業が社会的責任を果たすうえで重要な要素となっています。

オフィスを地方移転する際の3つのデメリット

オフィスを地方に移転する際は、次のような課題があることをおさえておく必要があります。

  • 対面での営業活動の継続に支障が出る
  • 人材確保の難易度が高まる
  • 郵送・流通に時間がかかる

対策方法や自社への影響度を把握しておきましょう。

 

■対面での営業活動の継続に支障が出る

地方移転で取引先オフィスとの距離が離れてしまうと、対面での営業活動の継続に支障が出てしまいます。首都圏での対面取引をおこなってきた企業にとっては悩ましい問題と言えるでしょう。

地方のオフィスから首都圏へ出向く場合、交通費や時間などのコストがより多くかかります。以前のように気軽に対面の営業活動をおこなうことは、どうしても難しくなってしまいます。

オンライン会議などのインターネットを利用した手段を活用する、オフィスの全てを地方に移転するのではなく首都圏での業務に備えて一部を残しておくなどの対策が必要です。

 

■人材確保の難易度が高まる

労働人口は首都圏のような人口密集地に集中しているため、地方移転で人材確保の難易度が高くなる可能性があります。移転を理由に退職する現従業員が発生する可能性もあるため、出社が必要な人材を確保・維持できるかどうかが問題となります。

出社が必要のない人材に関しては、フルリモートを前提とした求人や社内の働き方改革をおこなうことで確保できるでしょう。地方移転をおこなう際には社内のICT化(情報通信技術を活用した改善)もあわせて実施することが大切です。

 

■郵送・流通に時間がかかる

地方では首都圏と比べて、物の郵送と流通に時間がかかるケースがあることを留意しましょう。

郵送や流通の問題は、食品や衣類、家具、家電などの物理的な商品を取り扱う仕事だけでなく、単に備品を入手したいときにも発生します。通信販売で業務上必要なものを発注しても、地方によっては手に入るまでに2日以上かかるケースもあります。

移転先の流通事情についてはあらかじめ把握しておき、業務に支障が出る恐れがないか確認するようにしましょう。

オフィスの地方移転の事例

オフィスを地方移転させるにあたって、具体的にどのような施策方法があるのかをご紹介します。

  • 本社機能の一部を地方に分散
  • 製造業で本社を地方移転
  • 従業員も多数移住も想定

前述した課題を解決して移転を実現している例もあります。それぞれの移転例の詳細を見ていきましょう。

 

■本社機能の一部を地方に分散させる

本社機能の全てではなく、一部を地方に分散することで地方移転を実現する方法があります。たとえば社内業務が中心の総務・経営企画部門といった機能を移転し、残りの機能は都心に残すなどです。営業部など取引先と対面でやりとりする頻度が高い部門を首都圏に残すことで、営業活動に対する影響をおさえられます。

オフィスを分散させることで、BCP対策としてのリスクマネジメントにも有効です。

合同会社DMM.comでは、総務の業務の多くを地方に移して事業運営をしています。次の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

【インタビュー】合同会社DMM.com 「エリアをまたいだメンバーで行うオフィス改装プロジェクト」

 

■製造業の本社を地方移転させる

製造業を営む企業にとって本社を地方移転するメリットは大きいと言えます。オフィスのランニングコストを削減できるだけでなく、移転先の地域とのつながりを深めることで新しいアイデアの創出にもつながります。

また、移転先を厳選することで企業ブランディングにも役立ちます。たとえば食品や飲料の製造業の場合、質の良い原材料を想起させる自然が豊かな地方に移転すれば、より自社のブランドイメージをアピールできるでしょう。

 

■従業員も多数移住も想定する

オフィスを地方移転する際に、ワーケーションを同時に導入する方法もあります。実際、サービス業を中心に展開するとある企業が、のどかなリゾート地に従業員を移住させ、テレワークで業務をおこなう施策をおこないました。従業員のワーク・ライフ・バランス向上だけでなく、移転先での新たな事業展開も見込んでおり、レストランや商業施設もオープンしました。

周辺地域の観光需要も同時に誘発する施策として、地域の企業から注目を集めています。

オフィスを地方移転するおもな流れ

オフィスの地方移転は、計画から実施、完了まで長期的なスパンで考える必要があります。

  1. オフィス移転計画の立案
  2. 移転先の厳選
  3. 新オフィスの環境整備
  4. 新オフィスへの移転

それぞれの段階でおこなうことについて解説します。

 

■オフィス移転計画の立案

オフィスの地方移転は、全ての企業にとって最善の選択肢になるとは限りません。移転によるメリットとデメリットを踏まえた上で、自社にとっての有益性を検討することが大切です。

オフィス移転で見合ったメリットが得られると納得できたら、具体的な計画を立案しましょう。まずは地方移転の目的や規模、予算などを明確にします。立案から実行までをスムーズにできるよう、あらかじめ移転時期を決めておくことも欠かせません。オフィス移転には平均的に半年ほどがかかります。イレギュラーな事態が発生しても支障が出ないように、スケジュールにある程度の余裕を持たせることも重要です。

 

■移転先の厳選

移転先の決定は、オフィスの地方移転でもっとも重要な決定事項です。次の基準をもとに、移転先を厳選しましょう。

  • コスト
  • 営業への影響
  • 雇用への影響
  • 交通の利便性
  • 災害リスク

自社の持つ特有の事情にあわせて選ぶことが大切であるため、各部署への相談もおこなうようにしましょう。また、オフィスの全部と一部のどちらを移転するかも、この段階で決めることになります。

 

■新オフィスの環境整備

新オフィスをどのような環境にするのかどうかを考えましょう。オフィスのレイアウトは従業員の生産性や満足度に直結するため、適切な設計が欠かせません。

用途別のゾーニング(場所や空間を用途別に分けること)や動線(室内の設備や座席の移動経路)を扱いやすいように設計することが大切です。

オフィスの工事や備品の発注も忘れずおこないます。コスト削減を考える場合は、設備や備品を新品調達することにこだわらず、中古品の購入やリースの利用も検討してみましょう。

 

■新オフィスへの移転

すべての準備が完了したら実際に移転をおこないます。従業員には事前にスケジュールを通達して、当日を迎えるようにしましょう。取引先にも移転の連絡を済ませておき、これからの連絡手段なども計画しておきます。

また、法的な手続きも必要になることも忘れてはいけません。税務署や消防署、法務局などへの手続きもおこないましょう。

移転時におこなうべきことは多岐にわたります。次の記事ではオフィス移転で活用できるチェックリストを紹介していますので参考にしてみてください。

【PDF付き】オフィス移転で活用したいチェックリスト|必要な手続きを徹底解説

オフィスの地方移転を成功させるポイント

オフィスの地方移転をおこなう場合には、次のようなポイントをおさえておくことも大切です。

  • 業務のICT化を促進
  • オフィス移転サービスを利用

2つのポイントの詳細を解説します。

 

■業務のICT化を促進

オフィスの地方移転には、業務のICT化促進が欠かせません。テレワークやオンライン会議などの利用によって、首都圏から離れることのデメリットを最小化できます。クラウドサービスやビデオ会議ツールを導入し、社内ネットワークを整備しましょう。

ICT化が進めばオフィスの場所に関わらず仕事ができるようになります。業務効率やワーク・ライフ・バランスの向上にも役立つため、ICT化とオフィスの地方移転はセットでの実行が大切です。

 

■オフィス移転サービスを利用

オフィスの地方移転は計画立案や物件探し、工事の発注などやるべきことが多く、実務担当者の負担はどうしても大きくなってしまいます。専門的な知識が必要な場面も少なくないため、オフィス移転サービスの専門業者の利用も検討してみましょう。

オフィス移転サービスの専門業者を利用することで、自社でおこなうことの手間が省け、移転計画やレイアウト設計で適切なアドバイスを受けることができます。自社だけで計画を進める場合よりもスムーズな移転の実現が可能です。

アイリスチトセでは、オフィス移転サービスをはじめとして、オフィスに関する総合的なサービスを提供しております。オフィスの地方移転を検討の際には、ぜひともアイリスチトセにご用命ください。

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まとめ:目的を明確にしたうえでオフィスの地方移転を検討しよう

オフィスの地方移転はコスト削減や企業の価値向上にメリットがある一方、都心から距離が離れることによる営業活動や雇用面などでのデメリットがあります。メリットとデメリットを比較し、地方移転の実行が自社にとって有益かどうかを考えましょう。

実際にオフィス移転をおこなう場合には、地方移転の事例や前述した移転の流れを参考にするほか、オフィス移転のノウハウを持つサービスの利用も検討してみましょう。

アイリスチトセでは、年間1,000件を超える実績を持つオフィス移転サービスを提供しています。地方移転を含めオフィスに関してお悩みがありましたら、ぜひお気軽にアイリスチトセにご相談ください。

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