オフィスに人工芝を取り入れる企業は多い?メリットや課題、導入事例を紹介
オフィスレイアウト・デザイン・設計

オフィス緑化とは、オフィスのさまざまな場所にグリーンを取り入れることです。グリーンの種類は観葉植物やフェイクグリーンなど多岐にわたり、人工芝もオフィス緑化の一つとして注目を集めています。
そこで本記事では、オフィス緑化に注目が集まっている背景や人工芝の種類、人工芝を取り入れるメリットなどを解説します。気になる費用や人工芝の配置に適した場所も併せてご紹介するので、自社への導入を検討する際にぜひ参考にしてみてください。
目次
オフィス緑化への注目が高まっている背景

近年オフィス緑化に取り組む企業が増えている背景には、働き方改革が関係しています。働き方改革の取り組みは長時間労働の是正や有給休暇の取得促進だけにとどまりません。業務環境の改善も重要な要素であり、オフィス緑化は働き方改革の一つと言えます。
緑化はリラックス効果や眼精疲労の緩和などのさまざまなメリットをもたらします。実際に農林水産省が公表した「グリーンを活かした取組事例集」では、オフィス緑化が環境問題を考えるきっかけになったケースや、内装のデザイン性が向上した事例など、あらゆる側面において良い効果が得られたと報告されています。
オフィス緑化の手法は、観葉植物の設置やグリーンパーテーション、人工樹木の導入などさまざまです。本記事ではその一つである人工芝について解説します。
なお、オフィス緑化がもたらす効果や導入ポイントなどの詳細は次の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせて参考にしてみてください。
オフィスに使われる人工芝とは

人工芝はナイロンやポリエステルなどの合成樹脂で作られた芝生です。オフィス以外にも野球場やサッカー場、ゴルフ場、家庭の庭でも使用されています。
天然芝は時間とともに芝が成長し、冬になると枯れるため、定期的なメンテナンスが必須です。一方、人工芝はメンテナンスがしやすく取り扱いにかかる手間が少ないため、オフィスシーンで人気が高い傾向にあります。
近年では見た目や感触が限りなく天然芝に近い商品も登場しています。芝の長さやカラーのバリエーションも豊富なので、組み合わせを工夫してデザイン性を楽しむことも可能です。
オフィスに人工芝を導入するメリット

人工芝を活用したオフィス緑化には、さまざまなメリットや効果が期待できます。オフィスに人工芝を取り入れるメリットを詳しくご紹介します。
■オフィスの景観がよくなる
オフィスに人工芝を取り入れると、空間全体の雰囲気を変えることができます。人工芝のグリーンが入ることで、オフィスにいながら自然を身近に感じられるような雰囲気を演出できます。
■バイオフィリア効果が期待できる
自然にはストレスを軽減させるバイオフィリア効果があるといわれています。バイオフィリアとは、生命や生き物、自然を表す「バイオ」と、愛好や趣味を意味する「フィリア」を組み合わせた造語です。
人工芝を取り入れたオフィスではバイオフィリア効果が期待できるため、従業員のストレスの軽減が期待できます。バイオフィリアの考え方に基づいたバイオフィリックデザインの一環として、人工芝の導入を検討してみるのもおすすめです。
なお、バイオフィリアに取り組む効果やメリットなどの詳細はこちらの記事で紹介しています。
バイオフィリアとは|オフィスに取り入れる効果や導入事例を紹介
■メンテナンスに手間がかからない
天然芝は自然の植物なので時間が経てば芝が伸びます。そのため、成長期には毎週または隔週を目安に芝刈りをしなければなりません。また毎年12月から翌年の3月半ばまでは休眠期に入るため、芝を取り除くサッチングと呼ばれる作業が必要です。
一方の人工芝は芝刈りやサッチングが不要です。メンテナンスに手間がかからない点は天然芝や植物よりもメリットが大きいと言えるでしょう。
オフィスに人工芝を導入する際の課題

人工芝をオフィスに設置するにあたってはいくつかの課題もあります。自社で導入する前に問題点を把握し、解消できる手段を確認しておきましょう。
■掃除に手間がかかる
人工芝は、基布と呼ばれる下地の布とパイルと呼ばれる芝糸で構成されています。基布には、水はけをよくするための細かい隙間があり、ゴミやホコリが入り込みやすいので注意しましょう。
基布に溜まったゴミやホコリは、掃除機で取り除くことが可能です。しかし、隙間から床に落ちると掃除機でも取り除くのが難しく、水分がこぼれた場合は簡単に拭き取れません。そのため、人工芝の上では飲食を避けるといったルールを設けるなどの工夫が必要です。
■静電気が発生しやすい
人工芝の素材には、ナイロンやポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチック系が使用されているケースがほとんどです。プラスチック系は帯電しやすい性質があるため、静電気が発生しやすい素材です。
静電気対策には、静電気防止スプレーの散布や人工芝の下に導電性ゴムマットを敷く方法があります。
オフィスに導入可能な人工芝の種類

人工芝は形状やパイルの長さによっていくつかの種類に分けられます。自社で設置するスペースにあわせて適したものを選びましょう。
■形状
人工芝の形状は、おもにロールタイプとジョイントタイプの2種類です。
ロールタイプ
カーペットやラグのように1枚の巻物状になったタイプです。転がしながら敷けるため、広いスペースでも比較的簡単に設置できます。1枚当たりの幅は1~2メートル、長さは1~10メートルが目安です。
スペースに合わせたサイズにカットすることも可能です。継ぎ目がないため、まるで天然芝のような仕上がりが期待できます。凹凸がある場所では浮きやすくなりますが、専用ピンで固定すればめくれや剥がれを軽減できます。
ジョイントタイプ
ジョイントタイプは、正方形の人工芝をパズルのようにはめ込んでいくタイプです。デザインが異なるものやほかの素材と組みあわせてアレンジすることも可能です。たとえば、人工芝とウッドパネルを交互に配置すれば、市松模様を作れます。
サイズが約30センチメートル四方と小さく、スペースが広いほど多くのパネルが必要です。広いスペースでは継ぎ目が目立ちやすいため、ジョイントタイプはオフィスのベランダやバルコニーなどの狭いスペースに適しています。
■パイルの長さ
人工芝のパイルの長さは、ショートとロングの2種類あります。
ショートパイル
ショートパイルは丈が短く軽量なタイプです。パイルの長さは20~45ミリ前後が一般的です。30~40ミリ前後のタイプなら、天然芝に近い見た目や触り心地を得られるでしょう。
丈が短いためクッション性は低いですが、隙間にゴミやホコリが入っても取り除きやすい点はメリットと言えます。
ロングパイル
ショートパイルよりもパイルの丈が長く、50~70ミリ前後が一般的です。芝の形状やカラーにこだわったものも多く、商品によってはより天然芝に近い見た目を演出できます。
丈が長いためクッション性が高く、ショートパイルに比べて座り心地の良さも高いです。
オフィスに人工芝を取り入れる際の費用

人工芝の費用は芝の種類や業者などによって変動しますが、1平米当たり1,500~3,000円程度が相場です。また、造園を手がける専門業者に依頼すると、1平米当たり6万円程度の施工費用も必要になります。
価格をおさえて導入したい場合はロールパイルの人工芝を選択すると良いでしょう。ジョイントタイプよりもロールパイルの方が安価な傾向にあります。またロングパイルよりもショートパイルの方が安いです。
天然芝は1平米当たり500円程度が相場です。天然芝の方が安価ではありますが、ランニングコストは人工芝の方がかかりません。総合的な費用を考慮して導入する芝の種類を検討すると良いでしょう。
オフィス内で人工芝の導入に適した場所

人工芝はゴミやホコリが中に入り込むと掃除しにくいため、土足のスペースで活用するには適していません。そのためオフィス内に人工芝を取り入れるなら、従業員が靴を脱いで過ごす場所がおすすめです。
■リフレッシュスペース
靴を脱いで人工芝の上を歩くと、パイルが足裏に心地よい刺激を与えます。リフレッシュスペースに人工芝を取り入れれば、リラックス効果を高められるでしょう。
リフレッシュスペースとは、従業員が仕事の合間に心身をリフレッシュするためのスペースです。カフェのようなスタイルやソファーブースを設置した空間など、こだわりのデザインをする企業も増えています。人工芝を使ったリフレッシュスペースを設置する場合はスペース内にクッションやバランスボールなどを配置すると、より高いリラックス効果が期待できます。
■ミーティングスペース
ミーティングスペースも人工芝の設置に適している場所です。
人工芝の足裏への刺激はリラックスに役立つだけでなく、脳の活性化を促進する効果も期待できます。またグリーンは目や体の疲れを軽減してくれるなど、身体への良い影響も与えてくれるでしょう。リフレッシュしつつ思考を活性化させることで、新しいアイデアが生まれたり効率的な業務進行につながると考えられます。
人工芝によるオフィス緑化の導入事例
人工芝を活用したオフィス緑化の導入事例をご紹介します。
■アイリスオーヤマ株式会社 アイリス心斎橋ビル


アイリス心斎橋ビルでは、オフィス内のさまざまな場所にグリーンが取り入れられています。
ミーティングスペースには観葉植物とあわせて人工芝が取り入れられています。ロールタイプなので継ぎ目が目立たず、またスペースの形状にあわせてカットすることでよりなじみの良い空間を作り出しています。
ワークスペースの一角には、人工芝が敷かれたフリースペースが設けられています。ブラックが基調のオフィスで人工芝のグリーンを差し色とし、ほかのスペースとは異なる雰囲気が演出されています。
まとめ:スペースや目的に合わせた人工芝を取り入れよう

人工芝は快適なオフィス環境を整備する手段として役立ちます。存在感が強いため、一部に導入するだけでもオフィス空間全体の雰囲気を変えることが可能です。
人工芝は形状やパイルの長さに種類があるため、スペースや目的にあわせてて選びましょう。また、足裏への程よい刺激は脳の活性化が期待できることから、リフレッシュスペースはもちろんのことミーティングスペースへの導入もおすすめです。
人工芝をオフィスにうまく導入すれば、より働きやすい環境づくりが実現可能です。この機会に一度検討されてみてはいかがでしょうか。