オフィス移転の流れと行うべき手続きを解説!実用的なチェックリスト付き!
オフィス移転
オフィスの移転にはさまざまな準備や手続きが必要となるため、何から始めれば良いのか戸惑っている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
手続きに漏れがあると、移転が計画通りに進められないこともあります。予定通りに進行させるには、事前に必要な手続きや流れをおさえておくことが大切です。
そこでこの記事では、初めてオフィスの移転をする方向けに必要な手続きをご紹介します。また、スムーズに進めるための注意点も詳しく解説するので、オフィス移転を担当する方はぜひ参考にしてください。
目次
オフィス移転を成功させるために検討した方がいいこと
オフィス移転はやるべきことが多く、無計画なまま進めると失敗する可能性があるため、しっかりと準備しておくことが大切です。移転を成功させるために重要になるのは、オフィスを移転する目的です。
オフィスの移転を検討したら、まず目的を明確にするようにしましょう。移転目的を設定するポイントについては、後で詳しく解説します。
オフィス移転の流れ・スケジュール
オフィスの移転は企業の規模に関わらず、大規模なプロジェクトになります。移転先の選定や各種手続きに移る前に、まずはオフィス移転のおおまかな流れを把握しておくことも大切です。
■オフィス移転の流れ
オフィスを移転する際のおおまかな流れは次のとおりです。
- 計画の立案
- 移転先の選定
- 現オフィスの解約
- 新オフィスのレイアウト決定
- 業者の手配
- 引越し
- 原状回復の工事
- 移転の届出
一般的にこの流れを半年から1年間ほどかけて進めていきます。次章でそれぞれのフェーズを詳しく見ていきましょう。
■オフィス移転のスケジュール
計画の立案から移転の届出までは、順序を追って進めていくことが重要です。移転が完了するまでの期間は状況によって異なりますが、6~8カ月程度かかるのが一般的です。オフィス移転における工程ごとのスケジュールの目安は、次のとおりです。
工程 | スケジュールの目安 |
計画の立案 | 移転日の6~8カ月前 |
移転先の選定 | 移転日の6カ月前 |
現オフィスの解約 | 移転日の6カ月前 |
新オフィスのレイアウト決定 | 移転日の4カ月前 |
業者の選定 | 移転日の3カ月前 |
引越し | 移転日 |
原状回復の工事 | 現オフィス解約日の2カ月前 |
移転の届出 | 移転後 |
計画の立案は、最低でも移転予定日の6~8カ月前にはスタートしましょう。スケジュール通りに移転するためには、移転予定日から逆算して計画を立てることがポイントになります。
自社が希望する条件に合う物件は、すぐに見つかるとは限りません。移転先の選定は、移転予定日の6カ月前にはスタートさせましょう。このタイミングでは、現オフィスの解約予告時期も確認しておきます。
賃貸オフィスの場合、次の入居者が決まるまでに時間がかかりやすいため、賃貸住宅よりも解約予告時期が長めに設定されています。一般的な解約予告時期は、退去日の3~6カ月前です。解約予告時期は、賃貸契約書に記載されています。
新オフィスのレイアウトは、移転予定日の4カ月前までには決定します。レイアウトを決定する際に重要になるのが、ゾーニング計画です。レイアウトの作成は、オフィスデザインの専門業者に相談するのも手段の一つです。オフィスデザインの専門業者は実績が豊富なので、自社の課題の解決につながるレイアウトプランを提案してくれるでしょう。
内装工事をはじめとする業者の選定時期は、移転予定日の3カ月前が目安です。移転先の管理会社によっては、内装工事の業者が指定されていることもあるため、事前に確認しておくようにしましょう。
入居時に看板やパーテーションを取り付けた場合は、解約日までに撤去する必要があります。原状回復工事には1カ月以上かかることもあるため、現オフィス解約日の2カ月前には実施できるように準備しておきましょう。
移転後は、税務署や労働基準監督署などに届出が必要です。届出先によっては、書類の提出期限が定められているため、移転後は速やかに手続きするようにしましょう。
オフィス移転時に発生する業務
オフィス移転を行う際に発生する業務を詳しく見ていきましょう。
◾️現オフィスに発生する業務
オフィスの移転に必要な手続きは非常に多く、多岐にわたります。そのため、チェックリストを作成すると良いでしょう。手続きの種類と、その手続きをおこなうタイミングは次のとおりです。
手続きの種類 | 手続きをする時期 |
解約予告 | 退去する6ヶ月前程度(賃貸契約書の内容に依る) |
賃貸契約 | 入居審査に合格後 |
ライフラインの切り替え | 新オフィスの賃貸契約の締結後 |
引越しの依頼 | 移転スケジュール決定次第 |
原状回復工事の依頼 | 旧オフィスの契約期間中(詳しくは賃貸契約書の内容に依る) |
取引会社への移転連絡 | 移転スケジュール決定次第 |
消防署への届出 | 防火対象物使用開始届出書は移転先オフィスの使用開始7日前、防火対象物工事等計画届出書は移転先オフィスの着工日7日前まで |
郵便局への届出 | 新オフィスの賃貸契約の締結後 |
税務署への届出 | 移転後なるべく早めに |
警察署への届出 | 移転後なるべく早めに |
年金事務所への届出 | 移転後、5日以内 |
労働基準監督署やハローワークへの届出 | 移転後、10日以内 |
法務局への届出 | 本店の場合、移転から2週間以内 支店の場合、移転から3週間以内 |
口座やクレジットカードの登録内容変更 | 移転後なるべく早めに |
1.解約予告
オフィスの移転を決めたら、まず現在入居しているオフィスの管理会社へ解約予告をする必要があります。解約予告をしなかった場合や賃貸契約書で定められた期間より後に解約予告をした場合は、解約手数料が発生する可能性があるため注意が必要です。
解約予告は退去する6ヶ月前程度にするのが一般的ですが、実際の解約予告期間は賃貸契約書で確認する必要があります。なお、一旦、解約予告をしたあとは基本的に取り消せません。そのため、オフィスの解約予告は、移転先の目処がついてからおこなうのが安全です。
オフィスの解約方法に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
2.原状回復工事の依頼
入居前の状態に戻すための原状回復工事も必要です。オフィスの原状回復は、法律で定められた義務となっているため、必ずおこなわなければなりません。
原状回復の期限は入居時に締結した契約書に記載されています。移転する際は契約書の内容を確認して、正確な期限を把握しておきましょう。
原状回復工事に要する期間は、オフィスの規模で異なります。目安として、30坪程度で1~2週間、100坪以上で1ヶ月程度、費用は1坪当たり数万円が相場です。
また、どこまで原状回復する義務があるのかも事前に契約書で確認しておきましょう。一般的な住居の場合、基本的に経年劣化や通常損耗するものについては原状回復する義務はありません。しかし、オフィスのような事業者が借りる物件は、原状回復の義務範囲が広い傾向にあります。
◾️新オフィスに関する業務
オフィスを移転する際には、新オフィスに関するさまざまな業務が発生します。新オフィスに関する業務と基本的な手順は、次のとおりです。
- 移転目的の設定
- 新オフィスの物件探し
- レイアウトプランニング
- オフィス家具の選定~発注
- 引越し業者の選定~打ち合わせ
- 社内用マニュアル作成
- 引越し準備~当日作業
- 各種届出
それでは、各業務を詳しく解説します。
1. 移転目的の設定
まずは、新オフィスへの移転目的を設定しましょう。たとえば、オフィスが手狭になったので広い場所に移転したい、家賃をおさえたいなどです。移転目的が曖昧な場合、新たなオフィスを選ぶ際の方針が立てにくくなります。
オフィスを移転しても課題が解消されず、さらなる課題が浮き彫りになることも想定されます。移転目的は、自社のオフィスに関する課題を解決できる内容にすることがポイントです。目的を明確にすることで、これまで抱えていた課題を解決できる可能性があります。
2. 新オフィスの物件探し
移転目的を設定した後は、新オフィスの物件探しに移ります。物件を探す際にはさまざまな要素を比較し、自社が抱える課題を解決できるかを十分に検討する必要があります。物件を探す際に比較するべきおもな要素は、次のとおりです。
- 立地
- 従業員の通勤時間
- 主要取引先へのアクセス状況
- 周辺環境
- 入居コスト
- 各種設備の状況
- 駐車場の有無
- ビルの使用可能時間 など
オフィスの立地は企業そのものや製品などに直結するため、慎重に選ぶ必要があります。移転によって従業員の通勤時間が長くなると、モチベーションの低下につながるおそれもあるため、アクセスが悪い場所は避けたほうが良いでしょう。
また、立地を決める際には、周辺環境もチェックしておくことも大切です。金融機関や役所など、行き来が多い場所が近くにあると便利です。オフィス内に社員食堂や飲食スペースを確保できない場合は、周辺に飲食店がどのくらいあるかも確認しておきましょう。
自社が希望する条件をすべて満たした物件は、見つけるのが難しいのが現状です。希望する条件に優先順位をつけておくと、物件を絞りやすくなります。
3. レイアウトプランニング
新オフィスの物件が決まった後は、レイアウトプランニングをしましょう。まずは、部署ごとに必要なスペースを洗い出します。次に従業員のみが使用する場所、来訪者と共有する場所を分けて配置を考えます。
従業員のみが使用する場所 |
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来訪者と共有する場所 |
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各スペースの配置を決めた後は、具体的なレイアウトプランを作成しましょう。レイアウトプランを作成する際には、オフィスデザインの専門業者に相談するのも手段の一つです。レイアウトプランを作成後は、事前に決定した移転目的に沿っているかを確認します。
4. オフィス家具の選定~発注
オフィスを移転する際には、作成したレイアウトプランに沿って必要なオフィス家具を洗い出します。既存のオフィス家具がレイアウトプランにそぐわない場合や、劣化している場合は、購入、リース、レンタルのいずれかを検討しましょう。リースとレンタルでは、契約期間や途中解約の可否などが異なります。
契約期間 | 途中解約の可否 | 商品の選択肢 | 不要になった場合の処分方法 | |
リース | 長期間(2年以上) | 不可 |
|
リース会社が破棄 |
レンタル | 短期間 | 可 |
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レンタル会社に返却 |
リースは途中解約ができないため、今後レイアウトの変更や移転を予定している場合は、レンタルを選んだほうが良いでしょう。オフィス家具を選定後は見積りを依頼し、予算のバランスがとれているかを確認します。見積りの内容に問題なければ、オフィス家具を発注します。
5. 引越し業者の選定~打ち合わせ
オフィスの移転にともない、引越し業者を選定します。事前に次の項目をまとめておくと、業者を選定しやすくなります。
- 予算
- 移転規模
- オフィス面積
- 移転時期
- 依頼内容
同じ依頼内容でも業者によって料金が異なるため、予算は上限を設定しておきましょう。オフィスの移転には繁忙期があり、1~3月や9~12月は引越しの予約がとりにくくなります。移転時期が繁忙期と重なる場合は、早めに予約するようにしましょう。
また、業者によっては、依頼内容のすべてに対応できない可能性もあります。そのため、業者に見積りを依頼する際には、自社の依頼内容を正確に伝える必要があります。
6. 社内用マニュアル作成
新オフィスへの移転に関する社内用マニュアルを作成しておくと、スムーズに移転を進められます。移転はオフィスで働くすべての従業員に関係するため、移転が決まったら速やかに周知するようにしましょう。
従業員への周知は、一度により多くの従業員に伝えられる社員説明会がおすすめです。移転に関して、従業員に説明すべき内容は次のとおりです。
- 移転後のレイアウト
- 書類収納庫の棚割り
- パソコンをはじめとする電子機器の移動方法
- 廃棄物の処理方法
- 作業スケジュール
- 新オフィスのコンセプト
- 新オフィスでの働き方 など
社員説明会では従業員からの理解を得られるよう、目的やメリットをしっかりと説明しましょう。
7. 引越し準備~当日作業
移転当日に向けて、従業員個人や部署単位で移転物品や残留物品、廃棄物のリストを作成しておきましょう。現オフィスで使用している物品を新オフィスでも使用する場合は、移転前に梱包が必要です。
引越し業者の中には、データのバックアップサービスに対応しているところもあります。業者がバックアップサービスに対応していない場合は、専門業者への依頼も検討しましょう。
移転当日は、現オフィスに積み残しがないか、新オフィスへの搬入時にトラブルがないかの確認も必要です。現オフィス・新オフィスの両方で引き渡し作業が求められるため、専任の従業員を決めておくと良いでしょう。
8. 各種届出
新オフィスへの移転後は、関係各所に届け出が必要です。届出先によっては提出期限があるため、早めに手続きするよう心がけましょう。オフィス移転の際に必要となる手続きの届出先と提出期限は、次のとおりです。
届出先 | 提出書類 | 提出期限 |
税務署 | 法人税の取り扱いに関係する異動届出書 | 移転後1カ月以内 |
警察署 |
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移転後速やかに |
年金事務所 |
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移転後5日以内 |
労働基準監督署・ハローワーク |
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移転後10日以内 |
法務局 | 本店・支店移転登記申請書 |
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消防署 | 防火対象物使用開始届出書 | 使用開始の7日前まで |
郵便局 | 住所変更・転送届 | 住所変更または転送を開始したい日程まで |
新オフィスへの移転後は通常業務以外の作業も必要になるため、慌ただしくなりがちです。直前になって慌てることがないよう、早めに書類を準備し、期限までに提出するようにしましょう。
オフィス移転後の運用・効果検証について
無事にオフィスを移転できても、必ず目的が達成できるとは限りません。そのため、オフィス移転後は運用の工夫や効果検証も必要です。移転効果を検証するためには、前オフィスでの課題や移転で見込める効果を明確にしておくことが大切です。
オフィス移転により、これまで抱えていた課題や見込める効果が実際に達成されたかを検証しましょう。たとえばハイブリッドワークを取り入れている企業の場合、従業員の出社率を可視化することで、移転後の効果を検証することが可能です。
このほかには、従業員にアンケートやヒアリングを実施し、快適性や業務成果を比較する方法もあります。検証後も課題が残るようであれば、より良いオフィス環境の実現に向けて、解決に向けた対策を検討しましょう。
オフィス移転事例
他社の事例は、オフィスの移転を成功させるために役立ちます。ここからは、オフィスの移転に成功した企業の事例を紹介します。
◾️事例1:コーナン商事株式会社
コーナン商事株式会社は、2020年6月に大阪府堺市から大阪市のホームセンターコーナン新大阪センイシティー店に本部機能を移転しました。大阪市への移転のきっかけになった要素の一つは、大阪市が陸や空の便が利用しやすいことです。
クリエイティブなオープンイノベーションができるオフィスを目指し、ワークスペースは交流やコミュニケーションの向上を意識したレイアウトに仕上げています。オフィス内に商談コーナーを作る際には、実際に商談をおこなう従業員の意見を参考にしています。
従業員すべての意見の反映は難しかったものの、自社の方向性とすり合わせ、できる限り図面に落とし込みました。その結果、移転後は従業員から商談スペースが使いやすいといった意見が多く寄せられています。
◾️事例2:ハドラスホールディングス株式会社
ハドラスホールディングス株式会社は、脱コロナ禍を見据えた2022年5月に東京都中央区の晴海トリトンスクエアにオフィスを移転しました。移転のきっかけになったのは、従業員にとって快適で働きやすい環境を実現したいと願う社長の想いでした。
移転前は東京都の施設にオフィスを構えていたものの、会議室は別に借りなければならない状況でした。コロナ禍ではWeb会議が主流となりましたが、オープンスペースでは周囲の雑音が入ったり、背景に従業員が映り込んだりする課題が浮き彫りになりました。
そのため、新オフィスへの移転にあたり、特に会議室のデザインや設計にこだわっています。会議室は完全に仕切られた空間であるものの、ガラスパーティションを使用することで、透明性を確保できています。また、ワークスペースには、Web会議がしやすいよう、集中ブースを設置しています。
◾️事例3:フジテック株式会社
フジテック株式会社は、2020年8月に横浜支店オフィスをJR横浜タワーに移転しました。移転前の課題は、支店規模の拡大によってオフィスが手狭になったことや、コミュニケーションが取りづらいレイアウトだったことです。
移転と同時にフリーアドレスを導入し、従業員同士がコミュニケーションをとりやすいワークスペースを実現しました。全国的にも珍しく、移転後の横浜支店では他社の従業員の利用も歓迎しています。
移転前は、会議をする際に時間を設定し、会議室にメンバーが集まっていました。しかし、移転後のワークスペースには打ち合わせテーブルを複数設置したため、ショートミーティングが増え、コミュニケーションの活性化につながりました。
オフィス移転をスムーズに進めるコツ
オフィス移転をスムーズに進めるためのコツを解説します。
■オフィス移転の担当者を決める
オフィスの移転は決めなければいけないことや、やらなければいけないことが非常に多くあります。スムーズに進めるためには、手続きや役割ごとに担当者や担当チームを決めると良いでしょう。
専任を決めることでより具体的に計画を進めることができ、進捗も確認しやすくなります。
■余裕を持ったスケジュールを組む
オフィスを移転するためにはさまざまな手続きが必要なため、不足の事態に備えて余裕を持ったスケジュールを組んだ方が良いでしょう。書類に不備があるとその分手続きは遅れ、全体のスケジュールに影響を及ぼす可能性があります。最悪の場合、移転予定日に間に合わないという事態もあり得ます。
手続きに必要な書類は、なるべく早めに準備しておくと安心です。自社がおこなう手続きだけではなく、移転候補のオフィスを管理している会社がおこなう入居審査にかかる日数などもあらかじめ計算にいれておきましょう。
■オフィス移転サービスを活用する
社員の負担を減らしたい場合や移転に関するアドバイスをもらいたい場合は、オフィス移転の専門業者に相談するのも一つの手です。費用はかかりますが、計画の立案から各種手配、移転先オフィスのレイアウトなどトータルで任せることができます。
アイリスチトセのオフィス移転トータルサービスは、年間1,000件以上の移転や改修実績を誇ります。計画の立案から物件紹介、オフィスデザイン、内装工事、オフィス家具の納品、引越し作業までトータルでサポートいたしますので、移転をお考えの方はぜひ一度ご相談ください。
オフィス移転の手続きに関する注意点
オフィスを移転する際には、さまざまな手続きが必要です。オフィス移転に関する手続きの注意点を解説します。
■解約予告は撤回できない
旧オフィスの管理会社に対しておこなう解約予告は、基本的に撤回できません。移転先のオフィスの用意が間に合わなかった場合でも、解約予告した期日には退去しなければいけないので、注意が必要です。
次の入居者が決まっていない場合は、解約予告をしたあとでも交渉に応じてもらえるケースもありますが、基本的には一度解約予告をしたら撤回できないと認識しておきましょう。
■入居審査に必ず通るとは限らない
希望のオフィスを決めたあとは、管理会社を通して入居審査がおこなわれます。入居審査で審査基準となるのは、資本金や業種などです。しかし、どんなに資本金が多くても、希望するオフィスの入居審査に必ず通る保証はありません。
入居審査を通りやすくするためには、仲介業者の選定も重要です。実績が豊富で、移転を希望するオフィスの系統を得意としている仲介業者を選びましょう。また、
実際におこなわれる入居審査の審査基準はオフィスごとに異なります。そのため、仲介業者の担当者にどのような傾向があるか、審査を通すためにできる対策があるか等、情報収集しておくと良いでしょう。
■「本店移転登記」はかかる労力が大きい
会社の登記簿に記載されている本店のオフィスを移転する際は、大きな労力がかかります。必要な処理や提出書類が多く、準備だけでも手間や時間がかかることを念頭に置いておきましょう。
特に自社で手続きする場合は見落としがないように注意してください。本店移転登記で必要となる書類は次のとおりです。
- 本店移転登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 取締役会議事録
- 印鑑届書
取締役会を設置している場合は取締役会議事録、取締役会を設置していない場合は取締役決定書を添付する必要があります。
オフィス移転で活用できる補助金・優遇措置
オフィスを移転するにあたって、活用できる可能性のある補助金や優遇措置をご紹介します。それぞれ補助や優遇の対象要件が定められているため、自社のオフィス移転が対象になるか必ず事前に確認しましょう。
■ものづくり補助金
ものづくり補助金は、おもに中小企業を対象に商品開発や設備投資で生産性を向上させることを目的として、その費用を補助するものです。オフィスを移転することによって生産性や効率性の向上が見込まれる場合、適用できる可能性があります。
大きく分けて一般型、グローバル展開型、ビジネスモデル構築型の3つがあり、それぞれの概要と補助金額の上限は次のとおりです。
種類 | 概要 | 補助金額の上限 |
一般型 | 革新的な事業計画実行のための設備投資等に対する補助 | 2,000万円 |
グローバル展開型 | 革新的な事業計画実行のための設備投資等に対する補助 | 3,000万円 |
ビジネスモデル構築型 | 革新的な事業計画策定のための支援プログラムに対する補助 | 1億円 |
※出典元:ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト
■地方拠点強化税制
地方拠点強化税制は、本社機能の一部または全部を地方に移転することで、税の優遇措置が受けられる制度です。内閣府地方創生推進事務局がおこなっている制度であり、移転先の自治体から受けられる優遇措置とは異なります。
地方拠点強化税制で優遇措置を受けるためには、都道府県知事から整備計画の認定を受ける必要があります。また、業種に制限は設けられていませんが、工場や店舗は対象外となっている点に注意が必要です。
地方拠点強化税制のおおまかな概要は次のとおりです。自治体によって実施の有無や条件、優遇内容などは異なるため、詳細は移転先の都道府県・市町村に確認してください。
対象となる企業 |
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条件 |
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控除される税金 | 建物等を取得した場合や、新たに従業員を雇い入れた場合の法人税等 |
まとめ:必要な手続きを把握してオフィス移転をスムーズに成功させよう
オフィスを移転する際には、さまざまな手続きが必要です。オフィスの移転が決まったら、余裕を持ったスケジュールを立てて、必要な手続きを確実におこないましょう。担当者を決め、漏れがないようチェックリストを作成すると良いでしょう。
規模の大きな企業の場合は、移転にかかる手間も大きくなります。場合によっては自社だけでおこなうのではなく、移転の専門業者を利用してトータルサポートしてもらうと確実です。
スムーズにオフィス移転を進められるよう、しっかり計画立てて早めに準備をおこないましょう。