ハイブリッドワーク・パラドックスからこれからの働き方を考える

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ハイブリッドワーク・パラドックスからこれからの働き方を考える

感染予防対策による在宅ワークの実施をはじめ、シェアオフィスやコワーキングスペースの利用増など、特にここ2年で日本での働くスタイル、働く場所は多様化しました。
働くスタイルの多様化は一過性のものではなく、既に定着してきています。
これはツールとして以前からあったものの、オンラインでできる仕事が増えた(気づいた)こと、そしてそれにより生産性が上がる、ライフワークバランスが良くなったなど、スタイルの多様化によって沢山のメリットが生まれたからでしょう。
総じて、「オフィスでしか仕事ができない」といった場所からの解放が進んだ2年であったと言えます。

ハイブリッドワークの定着

現在、日本の多くの企業では日々の業務内容等に応じてテレワークと出社を選択したり、勤務体系自体をテレワーク、オフィスワークの割合を決めたりしていて、日本においてもテレワーク・オフィスワークが同一企業、部署内で混在する、いわゆる「ハイブリッドワーク」が定着しつつあります。

ハイブリッドワークのメリットは多様にありますが、大きくは以下の2点にまとめられると思います。

・多様な働き方の普及

時間や場所に拘束されなくなることで、ワーク・ライフ・バランスが実現。
また、多様な働き方が可能となれば単に場所からの解放だけでなく、家庭で介護をしなければいけない方や身体的理由等、何らかの原因でオフィスワークが困難な方などにとって就職のハードルが下がるといった利点も生まれてきました。

・生産性の向上

個人で集中して行う業務は自宅などでテレワーク、議論を重ねて情報を共有する、雑談を踏まえてブレストを行う場合はオフィスへ、など仕事の内容や性質に合わせて相応しい場所を選択することで、より効率的な業務推進ができ、生産性も上がりました。

またオフィスに常時在席する人数が減ることで、ABWの推進やゆとりのあるオフィスデザインの実現、場合によってはオフィス縮小などが可能となります。

他方、デメリットがあるのも事実で、社員の労務管理の難しさから来る社員の健康管理や、社員間で、特にチーム外のメンバーとの情報共有が物理的に難しくなるなどが挙げられるでしょう。

ハイブリッドワークに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

ハイブリッドワーク・パラドックスとは

Microsoftそして傘下のLinkedIn、GitHubの研究者たちが集まり、研究イニシアチブ「New Future of Work」を結成。そこで次のような結果が出ています。

テレワークの良さを実感した現在、多くの社員が高い割合で在宅などテレワークを実施したいと考えている一方、オフィスの良さを改めて実感し働きたいと思う、相反した心理が存在。
更にキャリア別では管理職とそうでない一般社員間では、管理職の方がオフィスワークを望む割合が多いのです。この様にハイブリッドワークによって生産性が上がった一方、社員の求めるワークスタイルに矛盾が生じている事実があり、これをMicrosoft社のCEOであるSatya Nadella氏はハイブリッドワーク・パラドックス(逆説)と呼んでいます。

このハイブリッドワーク・パラドックスが、これからの働き方を考える上で課題となってくると言われています。
そのためには、そもそも人はなぜオフィスに行きたいのか、テレワークをしたいのかを改めて整理する必要があります。
オフィスに行きたい主な理由は先述の通りチームを超えた情報の共有、コミュニケーションの活性化、雑談などから生まれるブレインストーミングなどができるからであり、またテレワークは個人ワークに集中でき、ワーク・ライフ・バランスが実現できる、という理由が大きいです。
同時に、ワークスタイルの多様化によって時間的、距離的理由でオフィスワークができなかった人が雇用にアクセスできるようになった点も忘れてはいけません。

つまりこれら相反するようなものをどちらかに偏らせるのではなく、両立しながら進めていく必要があると考えられます。これがハイブリッドワーク・パラドックスの難しいと言われる点です。

ワーク・ライフ・バランスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

ハイブリッドワーク・パラドックスへのアプローチ方法

ここからはハイブリッドワーク・パラドックスに対するソリューションとして、幾つか例を挙げてみました。

・働き方を固定化させないアジャイルオフィス

アジャイルとは、「俊敏な」、「機敏な」といった意味であり、元はソフトウェア開発なので用いられてきた言葉です。

※アジャイル開発
従来の開発フローは企画設計や仕様をまず設定し、それをミスなく設計通りに開発・生産するために一つ一つ工程を踏んでいましたが、この方法は時間軸が長くなってしまう傾向にありました。そこで近年のニーズ変化のスピードに対応するために、まずは簡単な仕様や計画を立て、開発を進めながら小さい単位で実装とテストを繰り返し進めていくことでスピーディに、柔軟に対応しながら開発するスタイルをアジャイル開発と呼びます。

オフィス移転や改修時は、これからの働き方を想定して100点を目指して計画を進めてしまうことが多々あります。完璧を目指す志はとても大切ですが、昨今の劇的な働き方の変化があったように、働く中でオフィスの需要や求められるものは変わる可能性が高く、場合によっては計画時と移転や改修時でニーズが変わってしまうこともあります。
よって、これからのオフィスには、刻々と変化するニーズに対応できる柔軟性やフレキシビリティ、余白といったものが求められるでしょう。
業務自体をアジャイルできる、つまり働き方の多様性が同一オフィスで可能で、且つフレキシブルに変化できる空間づくりが大切になってきます。
ABWの様な働き方に加え、レイアウト変更などにも柔軟性を持たせた設計により、在宅でできなかった集中空間をオフィスで実現させたり、テレワーク率の変動にも柔軟に対応できたり、更にはテレワークとオフィスの仕事スタイルをシームレスに繋ぐことも可能になります。

ハイブリットワークの様子

・メタバースによる新しい「仕事場」の提供

メタバースとは、パソコンなどコンピューターやネットワークの中でしか存在しない仮想空間のことで、近年注目が高まってきています。このメタバースを利用し、例えば企業毎にカスタマイズしたバーチャルオフィスを作り、そこに出社しコミュニケーションを取ったりミーティングを行ったりすることが可能になります。
オフィスワークの人もテレワークの人もメタバースで作られたオフィスに出社することで、物理的に異なった場所で仕事をする社員たちが疑似的に同一空間で働くようになり、チームワークの醸成や、心理的距離感を縮めることが可能になるのです。

まとめ

ハイブリッドワーク・パラドックスという課題に対して、オフィスワーク、テレワークの人と人、それぞれの仕事をシームレスに繋ぐ考え方が方向性として増えていくのではないでしょうか。
先述しましたがテレワーク、オフィスワークにはそれぞれの良さやメリットがあり、どちらかに偏ってかんがえるのではなく、良さを最大化できる働き方の構築が重要です。
例えば在宅などで実現できた集中できる環境をオフィスでも実現する、オフィスで不自由なくできていたコミュニケーションをオフィス以外でもできるようにツールを整える。その上で働く場所を働く人自らが選択できる環境を整えることがこれからの働き方の方向性の一つであると言えるでしょう。

メタバースオフィスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

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