フレックス制度とは|制度の仕組みやデメリット・導入する際のポイントを総まとめ

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フレックス制度とは|制度の仕組みやデメリット・導入する際のポイントを総まとめ

働き方改革の一環として、フレックスタイム制の導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。フレックスタイム制を導入する際には仕組みを理解し、デメリットの対策を考えておく必要があります。

この記事では、フレックスタイム制の基礎知識やメリット・デメリットなどを解説します。よくある質問では、フレックスタイム制に適した業界や時間外労働の取り扱いなども解説しているので、導入する際の参考にしてください。

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フレックスタイム制とは

近年、テレワークやハイブリッドワークなどの多様な働き方を導入する企業が増えています。働く人の自由度が高い働き方として、フレックスタイム制にも注目が集まっています。

フレックスタイム制とは?コアタイムの意味や遅刻・早退・欠勤の扱い方

 

■従業員が始業・終業時間を自由に決められる制度

フレックスタイム制とは、始業と終業の時間を従業員が自由に決められる制度です。個人の都合に合わせて働き方を調整できるため、自由度が高い働き方の一つです。たとえば家族の通院に付き添う日は遅めに出社する、子どもの保育園の迎えがある日は早めに退社するといった働き方も実現できます。

ただし、勤務時間をいつでも自由に調整できるわけではありません。フレックスタイム制では、清算期間と呼ばれる一定期間内の総労働時間が予め決められています。勤務時間を調整できるのは、総労働時間の範囲内に限られます。

日本では1987年の労働基準法の改正により、1988年4月からフレックスタイム制が導入されています。しかし、実際に導入している企業はまだ少ないのが現状です。厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査の概況」では変形労働時間制を採用している企業のうち、フレックスタイム制に対応しているのは6.5%に留まっていることがわかっています。

割合 変形労働時間制の種類(複数回答) 割合
変形労働時間制を採用している企業 59.6% 1年単位の変形労働時間制 31.4%
1カ月単位の変形労働時間制 25.0%
フレックスタイム制 6.5%
変形労働時間制を採用していない企業 40.4%

※出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査の概況」

 

■勤務時間が完全に自由になるわけではない

フレックスタイム制には、清算期間・フレキシブルタイム・コアタイムといった予め決められた期間や時間があります。勤務時間は、決められた期間や時間に沿って決める必要があります。

ただし、スーパーフレックス制にはコアタイムが存在しません。スーパーフレックス制の詳細については、後述の「フレックスタイム制に関するよくある質問」で解説します。

 

清算期間

清算期間とは、従業員が勤務すべき時間を定める期間のことです。従業員は期間内で総労働時間を満たすよう、日々の勤務時間を調整します。清算期間には、3カ月の上限が設けられています。

これまでは1カ月が上限でしたが、2019年の労働基準法の改正により、3カ月に延長されました。法改正前は清算期間内の総労働時間に過不足があった場合、割増賃金の支払いや不足時間分の欠勤扱いなどの手続きが毎月必要でした。

しかし、上限が延長されたことにより、総労働時間の過不足分を翌月または翌々月に振り替えられるようになりました。

 

コアタイム

コアタイムとは、1日のうちで必ず勤務しなければならない時間帯のことです。ただし、コアタイムの設定は義務づけられているわけではありません。目的は、フレックスタイム制の中で柔軟な働き方を実現することです。

会議やチーム作業が必要な場合、従業員の勤務時間にばらつきがあると、予定が組みにくくなり、業務に支障が出るケースもあります。一方で、コアタイムがあるとすべての従業員が揃う時間帯があるため、滞りなく業務を遂行することが可能です。

以上のような理由により、フレックスタイム制を導入する際にコアタイムを設定する企業が多い傾向があります。

 

フレキシブルタイム

フレキシブルタイムとは従業員が勤務するか、または勤務しないかを自由に決められる時間帯のことです。たとえばフレキシブルタイムが7時~10時、16時~20時に設定されている場合、その時間内であればいつでも出退勤が可能です。

フレキシブルタイムは日ごとに変更できるため、月曜日は7時に出勤して16時に退社、火曜日は9時に出勤して18時に退社といった働き方もできます。フレックスタイム制を導入する際には、始業と終業の時間帯にフレキシブルタイムを設定する企業が多い傾向があります。

【企業側】フレックスタイム制を導入するメリット

フレックスタイム制を導入すると人件費や離職率など、企業が抱える課題の解決につながることがあります。

 

■人件費のコスト削減につながる

フレックスタイム制は時間外労働が発生しないよう勤務時間を調整できるため、残業時間が減り、人件費のコスト削減が期待できます。従来の働き方では、残業した日の残業時間分を別の日で相殺できない仕組みでした。

フレックスタイム制は繁忙期に多く時間をとり、閑散期に時間を減らすなど、一カ月の中で勤務時間を調整できます。清算期間内で効率的な時間の使い方ができるため、残業時間の削減につながります。

 

■離職率の低減が期待できる

フレックスタイム制を導入すると、たとえば育児や介護に直面した従業員でも働きやすくなるため、離職率の低減につながります。従来の働き方では仕事と家庭の両立が難しく、退職を余儀なくされた従業員も少なくありませんでした。

しかし、フレックスタイム制は勤務時間を柔軟に選択できるため、育児や介護のライフステージを迎えても、働き続けやすい環境になります。また、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすくなり、エンゲージメントが高まることも期待できます。

エンゲージメントとはなにか?意味や向上させる方法を徹底解説

 

■人材市場で有利になる可能性がある

フレックスタイム制は、人材市場で有利に働く可能性があります。少子化による生産年齢人口の減少や求人倍率の上昇などにより、労働者不足を課題に抱える企業も増えているのが現状です。

厚生労働省の「労働経済動向調査(令和3年8月)の概況」によると、多くの業界が労働者不足に陥っていることがわかっています。

業種 労働者不足の割合
建設業 50%
製造業 35%
情報通信業 35%
運輸業・郵便業 42%
卸売業・小売業 18%
金融業・保険業 10%
不動産業・物品賃貸業 33%
学術研究・専門・技術サービス 34%
生活関連サービス業・娯楽業 16%
宿泊業・飲食サービス業 33%
医療・福祉 45%
サービス業(他に分類されないもの) 31%

特に建設業や医療・福祉は、慢性的に労働者不足の状態です。

※出典元:厚生労働省「労働経済動向調査(令和3年8月)の概況」

労働者不足を補うには、人材を確保する必要があります。しかし、魅力的な企業でなければ応募者が集まりにくく、企業は求職者に魅力を感じてもらう工夫が必要です。

近年は、多様なワークスタイルを提供する企業に魅力を感じる求職者も増えています。フレックスタイム制は人材市場でアピールできるため、応募者が集まり、優秀な人材の確保が期待できます。

【従業員側】フレックスタイム制を導入するメリット

フレックスタイム制を導入すると、従業員側にさまざまなメリットをもたらします。働き方改革の一環となり、労働環境の改善につながる可能性もあります。

 

■通勤ラッシュを回避できる

企業がフレックスタイム制を導入することで、通勤ラッシュなどの従業員のストレスを軽減できる可能性があります。従来の働き方では多くの社会人と通勤時間帯が重なるため、通勤ラッシュにストレスを感じている従業員は少なくありません。

公共交通機関で窮屈な思いをすると余計な体力を消耗し、業務効率に支障が出ることも考えられます。しかし、フレックスタイム制を利用して出社時間をずらせば、通勤ピークに当たる時間帯を避けて通勤できるようになります。

 

■ワーク・ライフ・バランスを実現できる

フレックスタイム制は始業と終業の時間を自由に決められるため、従業員の個別事情に応じて勤務時間を調整できます。たとえば朝の体調が悪い場合、会社に連絡を入れず、医療機関で診察を受けてから出社しても問題ありません。

子育て中の従業員は、保育園の送り迎えに合わせて出社と退社の時間をずらすことも可能です。プライベートの時間を多くとることもできるため、ワーク・ライフ・バランスの実現につながります。

ワーク・ライフ・バランスとは?取り組み例やメリットを徹底解説

 

■仕事の効率化が図れる

フレックスタイム制は業務内容や進行状況に合う時間の使い方ができるため、仕事の効率が上がる可能性があります。繁忙期に勤務時間を集中させ、業務が落ち着いた閑散期に早めに帰宅するといった働き方が可能です。

また、従業員自身で勤務時間を管理しなければならないため、タイムマネジメント能力が身につきます。

厚生労働省が実施した「裁量労働制等に関するアンケート調査」では、フレックスタイム制の導入によって感じた効果に「効率よく仕事を進めるように従業員の意識が変わった」と回答した企業が61.5%だったことがわかっています。

導入した効果として感じていること(複数回答) 割合
従業員のモチベーションが向上した 29.7%
効率よく仕事を進めるように従業員の意識が変わった 61.5%
従業員の間で競争意識が高まった 5.6%
労働時間短縮につながった 19.9%
人件費の抑制につながった 16.5%
企業業績の向上につながった 9.9%
多様な人材の活用につながった 15.3%
その他 3.4%
特に効果として感じていることはない 12.3%
不明 4.7%

※出典:厚生労働省「裁量労働制等に関するアンケート調査」

業務内容や業務量に応じて勤務時間のバランスがとれれば、時間外労働の削減にもつながります。

フレックスタイム制のデメリット

フレックスタイム制には従来の働き方にはない、いくつかのデメリットがあります。導入前にデメリットを把握し、必要に応じて対策を検討しておくことが大切です。

 

■従業員全員が揃う時間帯が少なくなる

フレックスタイム制を導入すると、従業員の出社時間にばらつきが生じるため、従来に比べて全員が揃う時間が少なくなります。

職種や業務内容によっては、従業員が揃わないと支障を来す業務もあります。たとえば、社内会議やチーム作業などです。チーム作業の場合、メンバー間のスケジュール調整が必要になるなど、手間や負担が増える恐れもあります。

フレックスタイム制を導入後も滞りなく業務を遂行するには、コアタイムの設定が効果的です。コアタイムを設定すると従業員全員が揃う時間帯を確保できるため、業務に支障が出にくくなるでしょう。

 

■顧客や取引先との連絡が取りにくくなる

従業員の勤務時間にばらつきが生じると、取引先や顧客から問い合わせがあったときに、担当者と連絡が取りにくい状況が発生しやすくなります。担当者が不在ですぐにレスポンスできない状況が続くと、信頼関係を損なうリスクがあるので注意が必要です。

そのため、フレックスタイム制を導入する際には、社外ともコミュニケーションが取りやすい体制を整備しておく必要があります。担当者を複数配置する場合は、従業員同士がコミュニケーションを十分にとり、伝達ミスが起こらないようにしましょう。

 

■勤怠管理が難しくなる

フレックスタイム制は従業員ごとに出社時間が異なるため、従来の方法では勤怠管理が難しくなる可能性があります。

厚生労働省の「裁量労働制等に関するアンケート調査」では、フレックスタイム制導入済みの企業の約40%が「タイムカード・ICカード」で勤怠管理していることがわかっています。

実労働時間の把握方法 割合
タイムカード・ICカード 39.4%
PCのログイン・ログアウト 13.1%
自己申告制 34.6%
管理監督者の視認 2.0%
予め一定時間数を定めている 1.5%
把握していない 0%
不明 9.4%

※出典:厚生労働省「裁量労働制等に関するアンケート調査」

34.6%の企業は自己申告制を採用していますが、個々の従業員がきちんと管理できていない場合、総労働時間の不足を招く可能性もあります。導入後も適切な勤怠管理をおこなうには、フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムの導入が効果的です。

フレックスタイム制の導入に必要な要件

フレックスタイム制を導入する際には、就業規則への記載や労使協定の締結など必要な手続きがあります。

 

■就業規則に記載する

フレックスタイム制を導入するには就業規則にその旨を明記し、労働基準監督署に届け出る必要があります。就業規則に明記する項目は、次のとおりです。

  • 適用労働者の範囲
  • 清算期間および総労働時間
  • 標準労働時間
  • その他

就業規則には、始業と終業の時間を従業員の決定に委ねると記載しなければなりません。就業規則の規定例は厚生労働省の公式サイトに掲載されているため、自社で作成する際の参考にしてください。

※出典:厚生労働省「フレックスタイムのわかりやすい解説&導入の手引き」

 

■労使協定を締結する

清算期間が1カ月を超える場合は、従業員と労使協定を締結する必要があります。労使協定で定める事項は、次のとおりです。

  • 適用労働者の範囲
  • 清算期間
  • 清算期間における総労働時間
  • 標準となる1日の労働時間
  • コアタイム
  • フレキシブルタイム

適用労働者の範囲は従業員ごと、部署ごとなど、労使で十分に話し合って決めるようにしましょう。清算期間を定める際には期間の長さだけでなく、起算日を定めなければなりません。なお、コアタイムとフレキシブルタイムの時間帯は、労使協定で自由に定めることが可能です。

フレックスタイム制に関してよくある質問

最後に、フレックスタイム制に関するよくある質問をご紹介します。

 

■フレックスタイム制に適している業界や職種は?

一般的にはエンジニアやプログラマなどのIT関係の職種に、フレックスタイム制が適用されるケースが多い傾向があります。

フレックスタイム制に適しているおもな職種は、次のとおりです。

  • デザイナー
  • 企画職
  • 事務職 など

上記の職種は仕事が細分化されており、外部の人と接する機会が少ないことが理由としてあげられます。

一方で顧客と接する機会が多い職種や、他部署と連携して業務を進めることが多い職種は、フレックスタイム制に不向きです。たとえば、実店舗での接客が必要な職種や営業職、総務や会計部門などがあげられます。

 

■時間外労働の取り扱いは?

労働基準法では、フレックスタイム制における時間外労働は原則として認められていません。ただし、従業員との間で労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出た就業規則にも明記されている場合は、時間外労働が可能です。

フレックスタイム制で時間外労働に該当するのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間です。清算期間の暦日数を7日で割った数値に、1週間の法定労働時間をかけた時間が、清算期間における法定労働時間の総枠になります。

たとえば清算期間の暦日数が28日の場合は160時間、30日の場合は171.4時間が1カ月の法定労働時間の総枠です。

 

■スーパーフレックス制とは?

フレックスタイム制のなかには、スーパーフレックス制と呼ばれる制度が含まれています。スーパーフレックス制とは、フレックスタイム制よりもさらに自由度の高い働き方です。企業ごとに決められている月間総労働時間を満たせば、出退勤時間を自由に設定できます。

また、スーパーフレックス制には、コアタイムが存在しません。コアタイムがあると、育児や介護との両立が難しくなるケースもあります。仕事と家庭の両立が難しく離職する従業員を減らすために、コアタイムがないスーパーフレックス制が導入されました。

離職率の低下や優秀な人材の確保を狙い、導入する企業も多いようです。

まとめ:フレックスタイム制は今が導入するチャンス

フレックスタイム制は1988年から導入されているものの、対応している企業はまだほとんどありません。しかし、導入すると従業員自身で勤務時間を調整できるため、ワーク・ライフ・バランスの実現に貢献できます。

近年の求職者は、多様な働き方を提供する企業に魅力を感じる傾向があります。多くの企業が対応していない今だからこそ、フレックスタイム制を導入するチャンスです。フレックスタイム制は人材市場でアピールポイントになるため、今のうちに導入して他社との差別化を図りましょう。

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