ワークエンゲージメントとは?意味から高めるメリット・方法を詳しく解説
働き方

ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対して抱くポジティブな心理状態を指します。ワークエンゲージメントを高めることは、従業員のメンタルケアや生産性の向上につながるため、働き方改革の推進にも欠かせません。本記事では、ワークエンゲージメントの意味やメリット、向上させる方法、測定方法について紹介します。
目次
ワークエンゲージメントとは

ワークエンゲージメントとは、「Work(仕事)」と「Engagement(愛着心)」からなる用語です。直訳すると「仕事への愛着心」となりますが、意味はそれだけではありません。まずは、ワークエンゲージメントの意味や要素、関連する概念を押さえておきましょう。
ワークエンゲージメントの意味と注目される背景
ワークエンゲージメントとは、仕事に対してどれだけポジティブで充実した心理状態であるかを示す尺度であり、日本語では「働きがい」とも言い換えられます。
2002年にオランダのウィルマー・B・シャウフェリ教授によって確立された概念で、2018年に厚生労働省の「平成30年度版労働経済の分析」※で言及されたことにより、日本でも注目を集めました。資料によると、労働者の健康増進と業務効率の向上を同時に実現するためには、ワークエンゲージメントが着目すべき有用な概念であると結論付けられています。
また、ワークエンゲージメントが重要視される背景には、労働人口の減少と人材の流動化も挙げられます。優秀な人材を確保し、定着させるためには、ワークエンゲージメントを高めることが重要であるといえるでしょう。
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ワークエンゲージメントの要素
ワークエンゲージメントは、「活力」「熱意」「没頭」の3要素で構成されています。
- 活力:仕事に取り組むエネルギーが高く、困難な課題にも挑戦できる状態。
- 熱意:仕事への関心が高く、やりがいや誇りを持って取り組める状態。
- 没頭:仕事にのめり込むことに幸福感があり、時間も忘れて熱中する状態。
ワークエンゲージメントを高めるには、これら3要素をバランスよく満たす必要があります。
ワークエンゲージメントに関連する概念
ワークエンゲージメントに関連する概念には、主に次の3つが挙げられます。
- ワーカホリック:仕事における活動水準は高いが、仕事や業務内容に対しては否定的な心理状態。
- 職務満足感:仕事や業務内容に対してポジティブな感情を抱いている心理状態。ただし、仕事そのものに対する満足感であるため、活動水準が低い場合も含まれる。
- バーンアウト:仕事への活動水準が低く、仕事や業務内容に対しても否定的な心理状態。
ワークエンゲージメントを高めるメリット

ワークエンゲージメントを高めることは、従業員のメンタルヘルスケアや生産性の向上など、さまざまなメリットをもたらすと考えられています。ワークエンゲージメントを高める4つのメリットを解説します。
1. 従業員のメンタルヘルスの向上
ワークエンゲージメントが高まると、メンタルヘルスの向上につながります。従業員が活力や熱意に満ちていると、ストレスそのものの発生を抑えることができ、不調の予防が可能です。もし一時的に不調を抱えても、活力があるため高い回復力が期待できます。
メンタルヘルスの問題が解消されると、従業員が充足感を持って働けるようになり、組織の活性化にもつながるでしょう。
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2. 仕事の生産性向上
ワークエンゲージメントが高い従業員は仕事への意欲が強いため、生産性の向上が期待できます。熱意を持って仕事に取り組むとアイデアが創出されやすくなり、新たな商品やサービスでビジネスチャンスを獲得する機会に恵まれるでしょう。さらにワークエンゲージメントが高まるとチャレンジ精神が旺盛になり、プレゼンで成約を勝ち取るケースも増えるかもしれません。
このように従業員の仕事への充実感が高まると労働生産性が向上し、企業の業績アップが期待できます。
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3. 離職率の低下
従業員の離職率は、多くの企業が抱える課題の一つです。ワークエンゲージメントが高まり、仕事で幸福感を得られるようになると、組織への愛着も高まり、業務内容が原因の離職を防ぎやすくなります。
4. 顧客満足度の向上
従業員のワークエンゲージメントの高さは、顧客満足度にもよい影響を与えます。これは、熱意を持って仕事に取り組む従業員が増えると、より質の高いサービスや商品を提供できるようになるためです。
また、熱意のある従業員に対しては、顧客が抱く印象も変わります。顧客が生き生きと仕事をする従業員を見ると、信頼や安心感を抱き、企業の印象アップにつながるでしょう。
ワークエンゲージメントを高めるために必要な2つの要素

ワークエンゲージメントを高めるための要素として、「個人の資源」と「仕事の資源」の2つが挙げられます。それぞれを詳しく見ていきましょう。
個人の資源(内的要因)
個人の資源とは、従業員一人ひとりが持つ内的要因を指します。具体的には、仕事に対するポジティブな思考、自尊心、自己効力感などが該当し、心理的ストレスの軽減やモチベーションアップのために重要です。
なかでも、自己効力感はワークエンゲージメントに大きく影響します。問題や課題に対して「自分であれば乗り越えられる」と思える認知状態である自己効力感が高いと、仕事にも前向きに取り組めるようになります。
仕事の資源(外的要因)
仕事の資源とは、外的要因を指します。具体的には、上司や同僚からのサポート、仕事に対する裁量権の付与、フィードバックやトレーニングの実施、多様なミッションなどが挙げられます。これらは、仕事の効率化、業務を通じた成長の実感、モチベーションの向上につながる要因です。
仕事の資源が充実しているほど、企業に対する信頼や仕事への意欲が高まり、ワークエンゲージメントも向上します。
ワークエンゲージメントを高める方法5選

ワークエンゲージメントの向上に欠かせない、「個人の資源」と「仕事の資源」を充実させる具体的な方法を紹介します。
1. 参加型討議
日頃抱えている悩みや課題について、従業員同士が解決策を出し合える場を提供しましょう。事前にアンケート調査を実施して内容をまとめ、さらに人望のある聞き上手な人を進行役にすると、参加者が意見を出しやすい雰囲気がつくれます。
また、その場限りで終わらせず、テーマごとにグループメンバーを変更するなど、コミュニケーションを活性化させる工夫も必要です。
2. ジョブ・クラフティング
ジョブ・クラフティングとは、従業員の仕事の捉え方にアプローチし、仕事にやりがいを持てるよう導く手法です。認知、作業、人間関係の3つの視点から見直し、仕事への主体性を引き出します。
ジョブ・クラフティングの研修をおこなう際の主な内容と流れは、次のとおりです。
流れ | 内容 |
1. 講義 |
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2. 事例を用いたワーク |
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3. ジョブ・クラフティング計画づくり |
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4. 計画カードづくり |
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事例を用いたワークでは仕事で行き詰まっていることに対し、どのようにすればより前向きになれるかを参加者が考えます。事例は、参加者の特性やニーズに適したものを準備するとより効果的です。
計画カードづくりでは、今後1ヵ月間に実践するジョブ・クラフティング計画を立案します。内容は「何を・いつ・どこでおこなうか」までを詳細に記載すると、実践しやすくなります。
3. CREWプログラム
「Civility(礼節)Respect(敬意)and Engagement(エンゲージメント) in the Workplace(職場)」の略語であるCREWは、従業員同士が敬意を持って接することで、より働きやすい職場環境づくりを目指すプログラムです。
「仕事で大事にしていることは何か」「職場で自分が大切にされていると感じるのはどのようなときか」など、テーマに沿って従業員同士で対話するのが主な内容です。テーマを変え、週に1回や隔週など、実施しやすい頻度で継続し、短時間でおこなうことが望ましいとされています。
4. 360度評価
従業員が適切に評価されていないと感じると、モチベーションの低下につながり、ワークエンゲージメントを高めることが難しくなります。既存の人事評価制度を見直して従業員の努力を正当に評価することで、ワークエンゲージメントを高められるよう実践しましょう。
すべての職種を対等に評価できるとして注目されているのが、360度評価です。上司・同僚・後輩などさまざまな立場の関係者が評価をおこないあう制度であるため、上司からの一方的な評価を避け、多面的な評価がおこなえると考えられています。
5. 思いやり行動
思いやり行動とは、職場で困っている人に対して、自発的なサポートを誘発するプログラムです。自分がサポートできる内容を具体的に話し合い、実践します。また、実践後に再度話し合いの場を設け、結果や考察などをフィードバックすることも重要です。従業員同士でサポートし合えるため、人間関係の強化につながります。
ワークエンゲージメントの測定方法3つ

さまざまな方法を試した後は、従業員のワークエンゲージメントがどのように変化したかを検証することが大切です。ワークエンゲージメントの測定方法について解説します。
1. UWES
ワークエンゲージメントの測定方法の一つに、UWES(Utrecht Work Engagement Scales)があります。ワークエンゲージメントの要素である「活力」「没頭」「熱意」に対する質問に回答してもらう形式で、ワークエンゲージメントの高さを直接測定できるため、広く活用されています。
UWESの質問は、次の17項目です。
要素 | 質問項目 |
活力 |
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没頭 |
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熱意 |
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本来は17の質問項目で構成されていますが、9項目からなる短縮版もあります。
2. MBI-GS
MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)は、UWESのようにワークエンゲージメント自体ではなく、バーンアウトの測定に用いられる方法です。バーンアウトとは仕事へのやる気が枯渇している状態で、「燃え尽き症候群」とも呼ばれます。
疲労感・シニシズム・職務効力感の3つの要素に対する質問を行い、どれだけバーンアウトしているのかを測定します。各要素の質問項目は、次のとおりです。
要素 | 質問項目 |
疲労感 |
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シニシズム |
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職務効力感 |
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バーンアウトはワークエンゲージメントと対極の概念であるため、この測定結果が低いとワークエンゲージメントが高いと判断できます。
3. OLBI
OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)は、MBI-GSと同様にバーンアウトの状態を測定する方法です。ネガティブな項目である疲弊と離脱の2要素についての質問を通じて測定します。各要素の質問項目の例は、次のとおりです。
測定結果の数値が低いほど、ワークエンゲージメントが高いと考えられます。
要素 | 質問項目の例 |
疲弊 |
|
離脱 |
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まとめ:まずは従業員の悩みやニーズを把握することが大切

ワークエンゲージメントとは、従業員が現在の仕事にポジティブな感情を抱き、充実した心理状態であることを指す概念であり、さまざまな方法で測定が可能です。従業員のワークエンゲージメントの向上は、生産性の向上や離職率の低下など、企業にとって多くのメリットをもたらします。参加型討議や360度評価など、自社に適したワークエンゲージメント向上の方法を検討してみましょう。