【中小企業向け】働き方改革関連法とは?適用時期や罰則を徹底解説

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【中小企業向け】働き方改革関連法とは?適用時期や罰則を徹底解説

働き方改革は、企業を対象に政府が主導で推進する取り組みのつです。2019年4月から働き方改革関連法が順次適用されており、項目によっては違反した場合の罰則も設けられています。働き方改革はすべての企業が対象となるため、大企業だけでなく中小企業にも義務が課されます。

この記事では中小企業向けに、働き方改革関連法の基礎知識や取り組みが必要な理由などを徹底解説します。後半では働き方改革関連法の項目や適用時期、罰則なども併せて解説するので、自社で働き方改革に取り組む際に役立ててください。

働き方改革に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

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目次

働き方改革関連法とは

最初に、働き方改革関連法の基本的な内容を解説します。

 

◾️働き方改革を推進するための法律

働き方改革関連法とは、政府が企業に対して働き方改革を促すための法律です。厚生労働省の公式サイトでは労働者が「個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革」と定義づけられています。

※出典元:厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」

正式名称は「働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律」で、既存の労働関係の法律に加えられた改正の総称です。法改正に至った背景には、日本が抱えている次の3つの課題があります。

  • 長時間労働
  • 雇用格差
  • 労働人口減少

長時間労働は健康への悪影響やワーク・ライフ・バランスの実現を阻む可能性があります。そして雇用形態による不合理な待遇差は、労働者の多様で柔軟な働き方を奪いかねません。このような状況により懸念される事態は人材の離職や将来の労働力不足です。

企業が健全かつ多様な働き方が可能な労働環境を提供することで、社員や従業員は「働き続ける」という選択肢を取りやすくなります。働き方改革では労働人口の減少を防ぐことが大きな焦点の一つです。

ワーク・ライフ・バランスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

◾️8つの労働法を改正

働き方改革関連法では次の8つの労働法が改正されました。

  • 労働基準法
  • 労働契約法
  • 労働安全衛生法
  • 労働時間等設定改善法
  • 労働者派遣法
  • パートタイム労働法
  • じん肺法
  • 雇用対策法

関連法の成立は2018年6月、施行は2019年4月から開始されました。ただし、すべての項目が一斉に施行開始になったわけではありません。企業の規模や業種によって開始時期が異なります。適用時期については記事後半の「【中小企業向け】働き方改革関連法の内容と適用時期および罰則」で詳しく解説します。

【中小企業】働き方改革への取り組みが必要な理由

ここからは、中小企業に働き方改革への取り組みが必要な理由を解説します。

 

◾️労働力確保は重要課題のため

少子化は将来的な生産年齢人口が減ることにつながります。労働力不足に陥ると安定供給が難しくなり、従業員一人当たりの負担が増える可能性があります。

日本の多くの労働者を抱えている中小企業にとって労働力の確保は非常に重要な問題です。独立行政法人中小企業基盤整備機構の公式サイトによると、全労働者4,678万9,995人のうち68.8%が中小企業に雇用されていることがわかっています。

大企業に雇用されている労働者数 1,458万8,963人
中小企業に雇用されている労働者数 3,220万1,032人

※出典元:独立行政法人中小企業基盤整備機構「日本を支える中小企業」

国立社会保障・人口問題研究所の調査では、生産年齢人口が将来的に大きく減ることが予測されています。

生産年齢人口の推計
2015年 7,728万人
2029年 7,000万人以下
2040年 6,000万人
2056年 5,000万人

※出典元:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口平成29年推計」

 

◾️働き方改革関連法は中小企業も対象のため

適用時期は異なるものの、働き方改革関連法はすべての企業が対象です。つまり大企業だけではなく中小企業にも遵守が求められます。

大企業から順次適用開始されていますが、項目によっては大企業と同時にすでに中小企業でも適用が開始されているものもあります。企業側には適用開始後に違反した場合の罰則が設けられている項目もあるため、取り組み内容に対する適用時期の確認が必要です。

 

中小企業の定義

自社が大企業と中小企業のどちらに該当するのかは、中小企業基本法で業種ごとに定められた基準で確認できます。中小企業基本法では、小売業・サービス業・卸売業・その他に分類されています。

業種 資本金または出資の総額 常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以上
その他 3億円以下 300人以下

 

※出典元:中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」

その他の業種には、製造業・建設業・運輸業などが含まれています。上記4つの業種で、「資本金または出資の総額」と「常時使用する労働者数」のいずれかに当てはまる場合はすべて中小企業と見なされるため、働き方改革関連法に沿った中小企業向けの取り組みが必要です。

【中小企業】働き方改革で必要となるおもな3つの取り組み

働き方改革は、働き方改革関連法に沿った内容で取り組む必要があります。安定した労働力の確保が重要課題の中小企業は、業務効率化・人材配置の適正化・賃金制度の見直しの3つのポイントを押さえて取り組みましょう。

 

◾️1.業務効率化

働き方改革に取り組むうえで、業務効率化は重要なポイントです。従業員のワーク・ライフ・バランスを実現させるためには、短時間で効率的に仕事をこなせる環境を作る必要があるためです。

業務効率化を図ると長時間労働の解消につながり、生産性の向上も期待できます。無駄な作業がないかを洗い出し、必要な作業の効率を上げるための工夫を講じてみましょう。たとえば、業務マニュアルの作成やITツールの導入などです。単純作業は、アウトソーシングを活用するのも手段の一つです。

 

◾️2.人材配置の適正化

働き方改革は、企業と従業員の両方がより良い労働環境を目指すためのものです。従業員のニーズや状況に合わせて柔軟な働き方ができるように、人材配置を見直してみましょう。

適材適所の配置は従業員一人ひとりの生産性が向上するだけなく、優秀な人材の確保や離職率の低下にもつながります。人事担当者だけでは適材適所の見極めが難しい場合は、従業員とともに働く現場の上司の意見も参考にしてみましょう。

 

◾️3.賃金制度の見直し

働き方改革関連法には賃金に関する項目が数多く含まれているため、現状を把握したうえで適切かを見直してみましょう。働き方改革で中小企業が見直すべき賃金に関する項目は、次のとおりです。

  • 同一労働同一賃金
  • 時間外労働の割増率

勤務時間や業務内容が同じでも、正規雇用労働者と非正規雇用労働者で賃金に差があるなど、雇用格差も課題の一つです。同一労働同一賃金制を導入すると、雇用格差の解消につながります。

また、従業員同士の不合理な賃金格差を是正するために、インセンティブ制度を設けるのも一つの方法です。

中小企業が働き方改革に取り組む際のポイント

ここからは、中小企業が働き方改革に取り組む際のポイントを解説します。

 

◾️生産性の向上を視野に入れる

中小企業が働き方改革に取り組む際には、生産性の向上を視野に業務効率化も進めていく必要があります。長時間労働を改善しても業務効率化を図らなければ、労働者の負担が増えるためです。

また、中小企業にとって重要課題である労働力を確保できても、生産性の向上を意識しなければ利益は上がりません。まずは現在の業務状況を把握し、業務効率化を図ってみましょう。たとえば、ITツールの導入やペーパーレス化も働き方改革の一つです。

  ペーパーレス化に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

◾️従業員に周知徹底する

働き方改革に取り組む際には、従業員に対して具体的な内容を周知徹底するようにしましょう。従業員が企業の取り組み内容を把握していないと働き方改革が浸透せず、思うような成果や効果が得られなくなります。

働き方改革は企業と従業員の両方がより良い労働環境を目指すためのものです。そのため企業側だけでなく従業員にも意識してもらうことが大切になります。従業員への周知には、次のような方法があります。

  • 社内報
  • 社内研修
  • 掲示板
  • 社内情報共有ツール など

一つの方法だけではすべての従業員に周知できない可能性もあるため、複数を併用するとより効果的です。また、各部署でおこなうミーティングの際に、情報を共有する方法もあります。

 

◾️必要に応じて相談窓口を利用する

働き方改革の取り組み方法に悩んだときは、行政の相談窓口を利用してみましょう。厚生労働省では、「働き方改革推進支援センター」と呼ばれる相談窓口を設置しており、次の取り組みをワンストップでサポートしてもらえます。

  • 長時間労働の是正
  • 同一労働同一賃金等非正規雇用労働者の待遇改善
  • 生産性向上による賃金引き上げ
  • 人手不足解消に向けた雇用管理改善

相談方法には対面・電話・メールなどがあり、専門家が企業に出向く訪問相談サービスも受けられます。相談は1回2時間程度、3回までは無料です。

※出典元:厚生労働省「無料相談窓口働き方改革推進支援センター」

【中小企業向け】働き方改革関連法の内容と適用時期および罰則

ここからは、働き方改革関連法の内容と適用時期を時系列で解説します。

 

◾️2019年4月1日から適用

2019年4月1日は、働き方改革関連法の適用が開始された日です。中小企業には猶予期間が設けられているものもありますが、次の6つの内容はすでに大企業と同時に開始されています。

 

【労働基準法】毎年5日以上の有給休暇取得の義務化

労働基準法の改正により、年次有給休暇が10日以上付与されているすべての従業員に対し、毎年5日以上取得させることが企業に義務づけられました。基準日は、従業員に有給休暇を付与した日から1年間以内です。

さらに、企業側は有給休暇に関する次の内容を記載した管理簿を作成し、3年間の保存が必要です。

  • 従業員ごとの基準日
  • 基準日に付与した有給休暇の日数
  • 時季 など

時季に関しては従業員と協議したうえで企業が時季を指定し、年5日以上の有給休暇を与える必要があります。違反した場合は、企業に対して労働者一人につき30万円以下の罰金が科せられます。

 

【労働基準法】調整や清算可能な期間の上限延長

労働基準法の改正により、労働時間の調整や清算が可能な期間の上限が1ヵ月から3ヵ月に延長されました。ただし、すべての企業ではなく、フレックスタイム制を導入している場合に限られます。

改正前は1ヵ月で法定労働時間超の時間外労働があった場合、割増賃金の支払いが必要でした。改正後は法定労働時間超の時間外労働が発生しても、3ヵ月以内で調整や清算できれば割増賃金の支払いが不要です。

中小企業への適用は、大企業と同時に開始されました。違反した場合の罰則は設けられていません。

 

【労働基準法】高度プロフェッショナル制度の導入

労働基準法の改正により、高度な専門知識が必要な業務に従事する労働者に対し、労働基準法の規定適用を除外する高度プロフェッショナル制度が創設されました。制度の対象は、次の条件を満たす労働者です。

  • 職務の範囲が明確に定められている労働者
  • 年収が1,075万円以上の労働者

企業側には、労働者との合意や年間104日以上の休日確保や健康面への配慮が求められます。中小企業への適用は、大企業と同時に開始されました。現時点では、違反した場合の罰則は設けられていません。

 

【労働安全衛生法】労働時間の客観的な把握を義務化

労働安全衛生法の改正により、すべての労働者の労働時間を客観的な方法で把握することが義務化されました。改正のポイントは、これまでは対象外だった裁量労働制が適用される労働者や管理監督者が含まれたことです。中小企業への適用は、大企業と同時に開始されました。

労働時間には、企業から指示された清掃や研修なども含まれます。労働時間を適切に管理するためには、勤怠管理システムの導入や残業申請方法の見直しが必要です。なお、現時点(2022年9月時点)では、違反した場合の罰則は設けられていません。

 

【労働安全衛生法】産業医の機能強化を義務化

労働安全衛生法の改正により、産業医による面接指導や健康相談などの強化が義務づけられました。義務化の理由は、長時間労働による労働者の心身の健康リスクを見逃さないためです。

企業側は産業医に対して長時間労働の労働者の状況を情報提供し、勧告を受けた場合はその内容を衛生委員会に報告する必要があります。中小企業への適用は、大企業と同時に開始されました。現時点では、違反した場合の罰則は設けられていません。

 

【労働時間等設定改善法】勤務間インターバル制度の導入

労働時間等設定改善法の改正では、労働者の健康確保とワーク・ライフ・バランスの推進を目的に、勤務間インターバル制度が創設されました。この制度は、業務終了後から翌日に業務を開始するまでの間に、一定時間以上の休息を確保するものです。

一定時間以上の休息を確保できない場合は、残業時刻の上限の設定や翌日の業務開始時刻をずらすなどの対応が必要です。中小企業への適用は、大企業と同時に開始されました。現時点では努力義務のため、違反した場合の罰則は設けられていません。

 

◾️2020年4月1日から適用

ここからは、2020年4月1日から適用された内容と罰則を解説します。

 

【労働基準法】時間外労働の上限規制を導入

労働基準法の改正により、時間外労働に罰則付きの上限が設けられました。上限は月45時間、年間360時間までです。特別な事情があり労働者との合意を得られている場合でも、月100時間未満、年間720時間を超える時間外労働は不可です。

大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用が開始されています。違反した場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

 

◾️2021年4月1日から適用

次に、2021年4月1日から適用された内容と罰則を解説します。

 

【パートタイム労働法・労働契約法・労働者派遣法】雇用格差の是正

パートタイム労働法・労働契約法・労働者派遣法の改正では、雇用形態による不合理な待遇差を設けることが禁止されました。目的は、正社員と非正規社員などの雇用形態による待遇格差の解消です。

たとえば勤務時間や業務内容が同じ場合は、雇用形態に関わらず同一労働同一賃金を導入する方法があります。大企業では2020年4月から適用が開始されています。なお、違反した場合の罰則は設けられていません。

 

◾️2023年4月1日から適用

最後に、2023年4月1日から適用される内容と罰則を解説します。

 

【労働基準法】一定以上の残業に対する割増賃金率の引き上げ

労働基準法の改正により、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が引き上げられます。法改正前は大企業の割増率が50%、中小企業が25%でした。しかし、2023年4月1日からは、割増賃金率が大企業と同じになります。

大企業は2010年4月1日からすでに適用開始されています。違反した場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

まとめ:適用時期までに取り組みの準備が必要

働き方改革関連法の適用は、中小企業基本法で定められた基準に当てはまる企業も対象です。大企業から順次適用が開始されており、内容によっては中小企業に猶予期間が設けられているものもあります。今後適用時期を迎える内容は、万全な体制で開始できるようにしっかりと準備しておくことが大切です。

まずは、自社が働き方改革関連法に沿った取り組みができているかを確認しましょう。働き方改革は企業側と従業員側双方にとってメリットの多い取り組みです。働きやすい環境は社員のモチベーションや能率を高め、ひいては企業の成長につながります。働き方改革を契機に企業のさらなる成長方法を模索していきましょう。

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