オフィスワークとテレワークのどちらかを選ぶべき?両者の強みを活かした働き方を紹介
働き方
多様な働き方への対応や新型コロナウイルス感染症拡大などの影響を受け、近年はテレワークを導入する企業が増えました。しかし、感染症対策の緩和や第5類への移行を受け、オフィス回帰への動きが高まっています。
このような状況の中、オフィスワークとテレワークのバランスに悩む企業や担当者も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、オフィスワークとテレワークそれぞれのメリットや課題を解説します。
オフィスワークとテレワークの強みを活かした新たな働き方も併せて紹介するので、両者を上手く両立させたい企業やご担当者の方はぜひ役立ててください。
目次
【2023年最新版】日本におけるテレワークの現状
新型コロナウイルス感染症対策の緩和にともない、テレワークを主流としたワークスタイルから、オフィス回帰に動く企業が増えています。
一般社団法人日本オフィス家具協会の調査では、新型コロナウイルス感染症拡大前後でオフィスワークの実施率が大きく変化していることがわかっています。
【通常のオフィスの勤務日数】
オフィスワークの日数 | 感染症拡大前 | 緊急事態宣言発令中 | 2022年11月時点 |
週5日以上 | 87.7% | 59.9% | 70.9% |
週4日 | 4.1% | 8.4% | 9.8% |
週3日 | 2.8% | 10.9% | 7.0% |
週2日 | 1.0% | 6.8% | 5.4% |
週1日 | 6.8% | 4.4% | 3.3% |
週1日未満またはしていない | 3.0% | 9.5% | 3.6% |
新型コロナウイルス感染症拡大前は、毎日オフィスに出社する人の割合が87.7%でした。緊急事態宣言の発令を受けて59.9%まで減少したものの、調査時点での2020年11月には70.9%に増加しています。
勤務先からの指示の有無に関わらず、2020年11時点でテレワークを実施した人の割合は、全国で35.0%でした。
【所在地別|テレワークに関する勤務先からの指示と対応】
エリア | テレワークの指示があり、テレワークをした | テレワークの指示はなかったが、テレワークをした | テレワークの指示がなく、テレワークをしなかた | テレワークの指示があったが、テレワークをしなかった |
全国 | 26.8% | 8.2% | 56.8% | 8.2% |
北海道 | 18.3% | 10.1% | 65.3% | 6.4% |
東北 | 15.9% | 6.3% | 69.6% | 8.1% |
関東 | 33.3% | 9.4% | 47.9% | 9.4% |
中部 | 15.8% | 6.3% | 70.4% | 7.5% |
近畿 | 21.2% | 6.6% | 64.8% | 7.3% |
中国・四国 | 14.4% | 6.0% | 76.6% | 3.0% |
九州・沖縄 | 11.8% | 9.3% | 71.8% | 7.2% |
全国平均に対し、関東エリアは42.7%と突出している状況です。上記の調査からは、テレワークの実施率がエリアによって差があることがわかります
※出典元:一般社団法人日本オフィス家具協会「ウイズコロナ時代の働く場とオフィスについての調査」
また、公益財団法人日本生産性本部が2023年8月7日に公表した調査結果では、テレワークの実施率がコロナ禍以降で最低の15.5%だったことが判明しています。
【テレワークの実施率】
年月 | テレワークを行っていると回答した割合 |
2020年5月 | 31.5% |
2020年7月 | 20.2% |
2020年10月 | 18.9% |
2021年1月 | 22.0% |
2021年4月 | 19.2% |
2021年7月 | 20.4% |
2021年10月 | 22.7% |
2022年1月 | 18.5% |
2022年4月 | 20.0% |
2022年7月 | 16.2% |
2022年10月 | 17.2% |
2023年1月 | 16.8% |
2023年7月 | 15.5% |
従業員の規模別では、中小企業よりも大企業での低下が目立っている状況です。
【従業員の規模別・テレワークの実施率】
年月 | 全体 | 従業員100名以下 | 従業員101~1,000名 | 従業員1,001名以上 |
2020年5月 | 31.5% | 22.5% | 33.0% | 50.0% |
2020年7月 | 20.2% | 14.2% | 17.7% | 35.4% |
2020年10月 | 18.9% | 11.4% | 21.1% | 32.4% |
2021年1月 | 22.0% | 14.4% | 21.6% | 38.6% |
2021年4月 | 19.2% | 11.5% | 19.8% | 36.0% |
2021年7月 | 20.4% | 14.9% | 22.2% | 34.7% |
2021年10月 | 22.7% | 14.3% | 29.4% | 37.1% |
2022年1月 | 18.5% | 11.1% | 22.0% | 29.8% |
2022年4月 | 20.0% | 11.1% | 25.3% | 33.7% |
2022年7月 | 16.2% | 10.4% | 17.6% | 27.9% |
2022年10月 | 17.2% | 11.5% | 18.7% | 30.0% |
2023年1月 | 16.8% | 12.9% | 13.2% | 34.0% |
2023年7月 | 15.5% | 12.8% | 15.5% | 22.7% |
※出典元:公益財団法人日本生産性本部「第13回働く人の意識に関する調査」
新型コロナウイルスの位置づけが第5類に移行したことを受け、コロナ禍を理由にテレワークを採り入れていた企業でオフィス出社を求める動きが活発になっています。
オフィスワーク(出社)のメリットと課題
オフィスワークは企業や従業員にさまざまなメリットがある一方で、いくつかの課題もあります。オフィスワークのメリットと課題を把握し、テレワークと比較して自社にはどちらが適しているかを検討してみてください。
■オフィスワーク(出社)のメリット
オフィスワークには、従業員同士が顔を合わせる機会が多いからこそのメリットがあります。
コミュニケーションにおいてニュアンスや感情を伝えやすい
オフィスワークは従業員同士が顔を合わせる機会が増えるため、コミュニケーションが取りやすく、微妙なニュアンスや感情を伝えやすいことがメリットです。
テレワークでもコミュニケーションツールを活用することで、ある程度のコミュニケーションは可能です。しかし、言葉の細かなニュアンスや感情は、テキスト情報では伝わりにくく、認識の齟齬が発生しやすい点は懸念事項と言えます。
直接の対面でのコミュニケーションの方が、場の雰囲気を感じ取ったり、話し手の機微を捉えやすい傾向があります。
チームの一体感や信頼関係を作りやすい
同じワークスペースで業務をすると実際に肌で場の雰囲気を感じ取れるため、チームの一体感や信頼関係を構築しやすいメリットがあります。
オンラインでは相手の仕事の様子が見えないため、疑問や不安があっても話しかけるタイミングを掴むのが難しい側面があります。一方でオフィスワークはメンバーの様子をリアルタイムで確認できるため、適切なタイミングでコミュニケーションを図ることができ、信頼関係の構築にもつながるでしょう。
チームビルディングの面でもオフィスワークの方が適していると言えます。
従業員のモチベーションを維持しやすい
テレワークは自宅でおこなうケースが多いですが、自宅は生活空間でもあるため、オンとオフの切り替えが難しく、集中力やモチベーションの低下につながる懸念があります。業務に適した環境が整っているオフィスワークなら、オンとオフを切り替えやすく、従業員のモチベーションを維持しやすいでしょう。
また、上司が部下の仕事の様子を直接確認できるため、より実情に沿った人事評価が可能になります。人事評価に対する安心感が生まれれば、モチベーションをより高めることもできるはずです。
■オフィスワーク(出社)回帰にあたっての課題
オフィスワークを増やす場合、コストの増加や一部の従業員のモチベーション低下などが懸念されます。
コストの増加
従業員には出社にかかる交通費を支給する必要があります。また、オフィスで働く従業員の人数に応じて、家賃や光熱費も嵩むことになります。
テレワークの実施に伴う従業員の出社率の低下により、オフィス自体を縮小した企業も少なくありません。オフィスワークを増やすと、従業員の人数分の席やワークスペースが必要になるため、現状の設備や家具で不足する場合は、オフィス環境の整備に新たなコストもかかってしまうでしょう。
維持費や固定費などのさまざまなコストが増加するため、オフィス回帰にあたっては予算との兼ね合いも考慮するようにしましょう。
一部の従業員のモチベーション低下
オフィスワークを増やすことにより、一部の従業員のモチベーションが低下するおそれがあります。従業員の中には、オフィスワークよりもテレワークのほうが自分に合っていると感じている人もいるかもしれません。
一般社団法人日本オフィス家具協会の調査では、今後50%以上のテレワークを希望する人が63.6%だったことがわかっています。
オフィスワークとテレワークの希望割合 | 全体 | 一般・契約・派遣 | 部・課・係長 | 経営者・役員 |
オフィスワーク0%テレワーク100% | 14.2% | 17.7% | 8.5% | 15.1% |
オフィスワーク30%以下テレワーク70%以上 | 28.3% | 30.1% | 29.9% | 21.3% |
オフィスワーク、テレワークともに50% | 21.1% | 20.8% | 21.2% | 21.8% |
オフィスワーク70%以上テレワーク30%以下 | 25.6% | 20.4% | 30.5% | 30.2% |
オフィスワーク100%テレワーク0% | 10.7% | 11.0% | 9.9% | 11.6% |
一般的な従業員においては、68.6%とテレワークを希望する人が多いのが現状です。
※出典元:一般社団法人日本オフィス家具協会「ウイズコロナ時代の働く場とオフィスについての調査」
また、従業員の中には、オフィスまでの通勤や人間関係にストレスを抱えている人もいるかもしれません。オフィスワークを増やす際には、従業員のモチベーションへ影響する可能性があることも念頭においておきましょう。
企業がテレワークを推奨するメリットと課題
テレワークには、優秀な人材の確保やコストの削減などさまざまなメリットが期待できます。
その一方でITリテラシーの差により、個人のパフォーマンスに影響を及ぼす場合や心身の健康管理が難しい場合もあります。
■テレワークを継続するメリット
テレワークを継続する場合、企業の魅力として社内外にアピールできる、維持費や固定費を抑制できるなどのメリットがあります。
優秀な人材の獲得と離職防止
テレワークの実施は多様な働き方に対応できるため、優秀な人材の獲得や従業員の離職防止が期待できます。近年は、オフィスワーク以外の多様な働き方を提供している企業への就職を希望している求職者が増えています。テレワークは企業のアピールポイントになるため、人材市場で有利に働く可能性もあるでしょう。
また、テレワークは働く場所に縛られないことから、育児や介護などの個別の事情がある従業員でも働き続けやすい環境を提供することが可能です。既存の従業員の離職を防止できるだけでなく、定着率の向上も望めるでしょう。
コストの削減
テレワークは従業員のオフィス出社が不要になるため、固定費や維持費の削減につながります。従業員の交通費は、企業が負担するケースがほとんどです。交通費が削減できれば、従業員の教育や設備投資などの別のことにコストを回すことができます。
また、オフィスに出社する従業員が減ると、これまでのような席やワークスペースが不要になります。出社率の減少にともなってオフィスを縮小すれば、家賃や光熱費などの削減にもつながります。
■テレワーク継続にあたっての課題
テレワークを継続する場合、従業員の健康管理やITリテラシーに差が出ないよう配慮する必要があります。また、テレワークが不向きな職種もあるため、従業員から不満が出ないように注意しましょう。
ITリテラシーの差がパフォーマンスに影響する
従業員によってITリテラシーに差があると、テレワークによる仕事のパフォーマンスに影響する可能性があるので注意が必要です。
近年は業務のデジタル化が進んでいるものの、すべての従業員が同じレベルのITリテラシーを持ち合わせているとは限りません。テレワークを実施するには、パソコンをはじめとした多くのITツールが必要です。ITリテラシーが低い場合は必要なツールを十分に使いこなせず、業務効率が低下する可能性があります。
また、セキュリティに対する意識が不十分だと、サイバー攻撃やスパムメールなどを起因とした情報漏洩につながり、企業に多大なダメージを与えかねません。
クリエイティビティーの高い業務には向いていない
テレワークは、すべての職種や業務に向いているわけではありません。たとえば、複数名でアイデアを出し合うブレインストーミングのような技法を用いる創造性の高い業務には不向きです。
ブレインストーミングでは、場の雰囲気や発信者の想いが重要な要素となります。また、創造性を高めるために、できるだけ多くの意見やアイディアを取り入れることが必要です。アメリカの複数の教授による研究でも、ブレインストーミングは対面のほうが効果的という結果が出ています。
※出典元:nature「仮想コミュニケーションは創造的なアイデアの生成を抑制する」
場の空気感や発言のニュアンスなど、機微を感じながら議論を進めていくような、クリエイティビティーの高い業務には不向きと言えるでしょう。
従業員の健康管理やメンタルケアが難しい
テレワークによって従業員同士が顔を合わせる機会が減ると、心身の不調の発見が遅れやすいため、健康管理が難しくなります。企業として、従業員の健康管理への配慮は重要です。
テレワークはオフィスへの通勤が不要になるため、運動不足になりがちと言われています。また、従業員同士のコミュニケーションが限られるため、心身に不調を来す従業員もいるかもしれません。テレワークを継続する場合は、従業員の健康を守る制度やルールを検討する必要があります。
オフィスワークとテレワークの強みを活かした働き方もある
オフィスワークとテレワークはどちらもメリットや課題があるため、「どちらが良い」とは一概には言えません。そこで、近年はハイブリッドワークに注目が集まっています。
ハイブリッドワークとは、オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方です。それぞれの利点を掛け合わせ、デメリットを補うことが可能なニューノーマルな働き方として導入する企業も増えています。
ワーク・ライフ・バランスの実現にも寄与できるなど、ハイブリッドワークには多くの効果も期待できます。テレワークを継続するべきか、原則出社に回帰すべきかを迷っているなら、ハイブリッドワークという選択肢も検討してみると良いでしょう。
ハイブリッドワーク についてはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
ハイブリッドワークのメリットと期待できる効果
ハイブリッドワークには従業員の満足度が向上する、優秀な人材が確保できる可能性が高まるなどのさまざまなメリットがあります。従業員が快適に働ける環境を構築するためにも、ハイブリッドワークの導入も検討してみましょう。
■生産性の向上
ハイブリッドワークは、業務内容や気分に応じて働く場所を選べるため、生産性の向上が期待できます。「自宅のほうが落ち着いて業務に臨める」「オフィスのほうが業務に集中できる」など、働き方の相性は従業員によってさまざまです。
働き方をオフィスワークとテレワークのいずれかに絞った場合、相性の良し悪しで業務効率が低下する従業員が出てくるかもしれません。相性が良い環境で働くことによって集中力が高まり、効率良く業務を進められるようになるでしょう。
■従業員満足度の向上
ハイブリッドワークを導入すると業務内容だけでなく、従業員の個別の事情に応じて働く場所を選べるようになるため、満足度の向上が期待できます。育児や介護を担っている従業員の場合、時間や場所に縛られるオフィスワークが難しいこともあります。
ハイブリッドワークはオフィスワークが難しい従業員にも対応できるため、離職の防止にもなるでしょう。また、従業員が働き方を選べるようになれば、主体性や自律性が高められ、仕事への意欲そのものに良い影響を与えることがあります。
■優秀な人材確保への寄与
ハイブリッドワークは企業のアピールポイントになるため、優秀な人材を確保できる可能性が高まります。近年は少子高齢化による生産年齢人口の減少の影響を受け、より魅力的な企業に優秀な人材が集まりやすくなっているのが現状です。
また、企業選びの際には、働きやすさを重視する求職者も増えてきました。働きやすい環境へのニーズが高まっている中、ハイブリッドワークを企業の魅力としてアピールできれば、優秀な人材からの応募を期待できるでしょう。
ハイブリッドワークを導入する際のポイント
最後に、ハイブリッドワークを導入する際のポイントを解説します。
■出社頻度についてルールを策定する
ハイブリッドワークを導入する際には、出社頻度のルールを定めておきましょう。働き方の相性は従業員によって異なるため、働く場所を選べるようになることで、オフィスワークとテレワークが二極化する可能性があります。
出社頻度に差が出ると上手くコミュニケーションが取れなくなるケースもあるため、出社頻度をあらかじめ定めておくことが大切です。また、従業員の業務の進捗状況が把握できるよう、コミュニケーションに関するルールも定めておきましょう。
■ハイブリッドワークに対応できるツールを準備する
多様な働き方に対応するためにも、さまざまなツールを準備しておきましょう。ハイブリッドワークに対応できるおもなツールは、次のとおりです。
- Web会議システム
- コミュニケーションツール
- 勤怠管理システム
- プロジェクト管理システム
- グループウェア など
多くのコミュニケーションツールにはチャットだけでなく、グループチャットやビデオ通話、ファイル共有などのさまざまな機能が搭載されています。チームやプロジェクトごとにグループを作成し、進捗状況を報告し合うようにしておくと、コミュニケーション不足が解消され、スムーズに業務を進められるでしょう。
■オフィス環境を見直す
オフィスワークを選択する場合でも、業務内容に適した場所は異なるため、ハイブリッドワークを導入する際にはオフィス環境の見直しも必要です。フリーアドレスや集中ブースなどを取り入れると、業務内容に合わせて働く場所を選びやすくなります。
集中ブースは周囲の視線や雑音を遮断できるため、Web会議や個人ワークに適しています。オープン空間の中にミーティングスペースを設置しておけば、気軽に会議や打ち合わせがしやすくなるでしょう。
ハイブリッドワークの導入に合わせてオフィス環境を見直すなら、アイリスチトセにご相談ください。アイリスチトセは、年間1,000件以上にも及ぶ移転や改修実績があります。アイリスグループの総合力で自社に適したプランを提案いたしますので、オフィス環境を見直す際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ:従業員のニーズに対応した働き方を導入しよう
働き方の相性は、従業員のライフスタイルや業務内容によって異なります。テレワークのほうが自分に合っていると感じている従業員もいれば、オンとオフをきちんと切り替えるためにオフィスワークを希望する従業員もいるかもしれません。
テレワークとオフィスワークのどちらかに絞ると、従業員の不満につながる可能性があります。まずは従業員にヒアリングし、どちらの希望者が多いかを把握することから始めてみるのも良いでしょう。
また、ワークスタイルにはテレワークとオフィスワークの強みを活かしたハイブリッドワークという選択肢もあります。ハイブリッドワークを導入する際には、ルールの策定やツールの導入だけでなく、従業員が働きやすいようにオフィス環境を見直すことも必要です。
自社に適した働き方を見極めて、従業員満足度や業務効率の向上など、企業のさらなる成長につなげていきましょう。