オフィスでの一人当たり面積の目安は?適切な広さで働きやすい環境
オフィスレイアウト・デザイン・設計
働き方改革や新型コロナウイルス感染症拡大により、テレワークやハイブリットワークなど働き方が多様化しています。それに伴い近年オフィス環境を見直す企業が増えているようです。
オフィス環境を見直すうえでポイントとなるのは、一人当たりの面積をいかに確保するかという点です。十分な面積が確保できていないと、労働生産性や従業員満足の低下を招くだけでなく、法令違反に問われる恐れもあります。
本記事では、オフィスの一人当たり面積の目安や計算方法を詳しく解説します。後半では、一人当たり面積を確保するアイデアなども紹介しているため、これから自社オフィスの移転・改修を検討されている経営者や企業担当者の方はぜひ最後までお読みください。
目次
快適なオフィス環境は「面積」で決まる
オフィスの適切な面積を確保することは、快適で働きやすいオフィスへと最適化する第一歩です。
単にオフィスの面積を広くするだけでなく、一人当たり面積が十分に確保されていないと、従業員がストレスを感じ、業務の効率や従業員満足度が落ちる恐れがあります。
ただし必要以上に広くしてしまうと、従業員や来訪者の動線が悪くなりかえって業務が捗らなくなる、賃料や光熱費などのコストが高くなるといったデメリットもあります。
まず、自社ではどのようなワークスタイルを望むのかを明確にすることと、どのくらいの広さが適切なのかを把握することが大切です。
オフィスにおける一人当たり面積の目安
オフィスにおける一人当たり面積の目安を、法律やオフィス家具メーカーの推奨数値から見ていきます。
◾️法律による一人当たり面積の目安は1坪
労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則には、オフィスの気積に関して次のような規定があります。
(気積)
第2条 事業者は、労働者を常時就業させる室の気積を、設備の占める容積及び床面から4メートルをこえる高さにある空間を除き、労働者一人について、10立方メートル以上としなければならない。 |
法律の規定において、オフィス面積は一人当たり約1.4坪(4.8平方メートル)以上確保すすることが必要です。ただしこの数値には設備類が含まれるので、実際には設備関連を除いたおよそ1坪が最低ラインであると言えるでしょう。
◾️オフィス家具メーカーの推奨面積は2坪から4坪
多くのオフィス家具メーカーで推奨する一人当たり面積は、およそ2~4坪(約6.6~13.2平方メートル)です。
推奨面積はメーカーによって幅がありますが、これは企業の規模や営業・事務・技術といった職種などによって、オフィスの利用方法が異なるためと考えられます。
新型コロナウイルスによるオフィス面積の捉え方の変化
新型コロナウイルス感染症拡大による新しい生活様式の導入以降、テレワークやハイブリッドワークが定着している企業では、オフィス面積の視座を「人」から「席」に転換させ、オフィス環境の見直しを図っています。
これは出社率が流動的になり、出社していない従業員分のスペースが余剰となってしまったためです。
新しいワークスタイルの導入に伴い「オフィス利用人数=在籍人数」ではないケースも出てきており、従来の「一人当たり面積」でオフィスの必要面積を算出することが難しい場合もあります。そこで注目されるようになったのが、オフィス面積を「出社率」と「席数」から計算する新しい考え方です。
オフィス面積の計算方法
ウィズコロナ時代になり、オフィス面積の捉え方が「人」から「席」へと転換し、新たな計算方法も加わるようになっています。ここでは、従来の出社型企業と、テレワークやハイブリッドワークを推進している企業、それぞれのオフィス面積の計算方法をご紹介します。
◾️従業員数から計算する方法
出社が基本となる従来型のワークスタイルでは、在籍人数を軸に必要なオフィス面積を計算します。
【従来のオフィス面積の計算式】
オフィス面積=(利用人数=在籍人数×出社率)×一人当たり面積 |
この計算式は、「人」に視座を置いた、従来の出社中心型企業のオフィス面積を計算する方法です。一人当たり面積を設定し、その面積とオフィスの利用人数を掛けて、オフィス全体の面積を算出します。
◾️出社率と席数から計算する方法
オフィスへの出社率が流動的なワークスタイルを採用している企業では、オフィス面積を次のように捉えられます。
【新たなオフィス面積の計算式】
オフィス面積=(席数=在籍人数×出社率×席余裕率)×一席当たり面積 |
この計算式は、「席」に視座を置いた、テレワークやハイブリッドワークなど、必ずしもオフィスに出社するわけではない新しいワークスタイルのなかで、企業にとって必要なオフィス面積を計算する方法です。
一席当たり面積を設定し、その面積と席数を掛けて、オフィス全体の必要面積を算出します。
席数は在籍人数、出社率、席余裕率を掛けて算出します。席余裕率とは、オフィスに出社する従業員一人に対する席数を示す指標です。
オフィス面積を計算する際に考慮すべきこと
適切なオフィス面積を算出するときは、単純に計算式に当てはめた数値を求めるのではなく、実際の執務環境を考慮する必要があります。ここでは、加味して考慮するべき点をご紹介します。
◾️オフィスのスペース配分
オフィスに必要なのはワークスペースだけではありません。企業の顔であるエントランスや従業員のリフレッシュスペース、会議室など必要なスペースは多々あります。必要なスペースと配分は企業の特徴や導入するワークスタイルによって変わるため、自社に何が必要なのかを整理することが大切です。
たとえば次のようなスペースと配分を考慮する必要があります。
種類 | 目的 | 設計にあたっての注意点 |
エントランス | 来訪者に対する案内や自社のPRスペース | 企業の顔となるスペースのため、企業のイメージアップができるように、コンセプトやデザインを検討する
不審者などの侵入対策や情報漏洩対策にも配慮する |
ワークスペース | 従業員が日常的な業務をおこなうスペース | 機密情報や貴重品を守るため、セキュリティ面にも配慮する
業務をする上でストレスに感じない広さを考慮 |
ミーティングスペース | 経営陣や従業員が会議・打ち合わせをおこなうスペース | オープンスペース、個別の会議室、カーテン・パーテーションで仕切れる広間など、従業員数、来客数、ミーティングの内容・頻度などから検討する |
収納スペース | 書類・備品などを収納するスペース(キャビネットなど) | ペーパーレス化も検討 |
機器関連スペース | OA機器やサーバーなどの設置スペース | セキュリティ面や空調にも配慮する |
福利厚生スペース | ロッカールーム、休憩室、休養室、食堂など | 労働安全衛生法上の必置スペースでないか要確認 |
各スペースの配置については、できる限り関連するもの同士を近くに置くと良いでしょう。
たとえば、ミーティングスペースは会議・打ち合わせが頻繁におこなわれる部署の近くに、機器関連スペースはシステムの運用管理を担当する部署の近くに配置すると動線が短くなり、効率的に業務がおこなえます。
◾️オフィスレイアウト
デスクの配置によって、通路の幅・形やワークスペースの広さが変わるとともに、業務への集中度、上司・同僚などとのコミュニケーション方法も変わります。
代表的なレイアウトの種類を5つご紹介します。
種類 | 特徴 | メリット・デメリット |
対向型(島型) |
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【メリット】
【デメリット】
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背面型 |
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【メリット】
【デメリット】
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同向型(並列式) |
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【メリット】
【デメリット】
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クラスター型(左右対向式) |
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【メリット】
【デメリット】
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ベンゼン型 |
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【メリット】
【デメリット】
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オフィスレイアウトに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
◾️オフィスの通路幅
ワークスペースを十分に確保できたとしても、通路幅が狭いと移動がしにくく動線も悪くなります。業務効率が落ちる可能性もあるため、十分な検討が必要です。通路幅の目安は次のとおりです。
- メイン通路:60~160cm
- 座席間の通路幅:160~210cm
- デスク間の通路幅:160~210cm
- 座席背面が壁の通路幅:85~120cm
- 座席背面に書棚や収納棚がある通路幅:105~145cm
また、車椅子ユーザーの従業員や来訪者もいます。車椅子の幅は70cm程度です。一人分の幅であれば最低でも90cm、人とすれ違うことを想定する場合は150cmは確保しておきましょう。
なお、通路幅に関する関連法令の規定は次のとおりです。
法令名 | オフィス内の通路幅に関する規定 |
建築基準法 | 規定なし(通路の両側に居室がある場合や廊下幅に関する規定はある) |
消防法 | 規定なし(避難経路の確保に関する規定はある。什器や荷物などの設置の際は要注意) |
労働安全衛生法・労働安全衛生規則 | 規定なし(照明や障害物設置に関する規定はある) |
◾️オフィスの実寸
レイアウトを決める際は可能な限り実寸を測りましょう。図面上のオフィス面積は壁の中心線から計算されたケースが多く、実際に使用できる面積とはズレが生じる可能性があるためです。図面だけで検討すると、想定よりも面積が狭く希望していたレイアウトが実現できないという恐れがあります。
現在のオフィスを改修する場合も同様です。手元にある図面と現況は異なる可能性があるため、たとえ現オフィスを使用する場合でも改めて実寸を計測したほうが安心と言えます。
◾️業種と来客数の多寡
業種や職種により必要なワークスペースやオフィススペースの種類は異なります。たとえば来訪者が多く、設備や資料などの設置スペースが必要な業種・職種は広い面積が必要になるため、4坪以上は確保しておくと良いでしょう。一方、職種やワークスタイルによっては4坪未満でも対応できることもあります。
区分 | 業種 |
広い面積が必要な業種・職種 |
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狭い面積でも対応できる業種・職種 |
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オフィスで十分な一人当たり面積を確保するコツ
オフィスの移転や改修時に十分なワークスペースが確保できそうにない場合、どのように対処したら良いのでしょうか。ここでは十分な一人当たり面積を確保するためのアイデアをご紹介します。
◾️ペーパーレス化により保管スペースを縮小する
ペーパーレス化の推進で紙文書を削減できれば、その保管スペースも縮小できます。書類を保管するはずだったスペースを別の用途に活用できるため、検討価値の高い施策と言えます。また、書類の電子化を並行して進めれば、より効率的に業務を進められるようになります。特にテレワークを推奨している企業にとって大きなメリットがあります。
オフィスの移転・改修を機に、文書管理の方法を見直してみましょう。具体的には次の方策が考えられます。
- 社内文書は原則としてデータ化する
- 社内文書を紙で作成する場合は原則として両面印刷にする
- 紙の文書は保存期間を決め、期間を満了したものは廃棄またはデータ化する
◾️テレワークを併用し出社比率を決める
従業員の出社率が高いと、出社するすべての従業員の席を用意しなければならず、一人当たり面積が確保できない恐れがあります。
テレワークを併用し出社比率を決めて、その比率に応じた席数を用意すれば、一人当たり面積の上乗せができるでしょう。
出社比率の低い部署はフリーアドレスにしておけば、テレワークをしていた人が出社したときのワークスペースを確保できます。
テレワーク導入に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
◾️共有スペースに複数の役割を持たせる
打ち合わせ、応接、食事、休憩など一つのスペースに複数の役割を持たせると個別にスペースを用意する必要がなくなり、オフィススペースを確保しやすくなります。共有スペースにする場合、机や椅子はキャスター付きなどレイアウト変更がしやすいものを設置するのがおすすめです。
ただし、次に掲げた休養室のように、労働安全衛生法、労働安全衛生規則、事務所衛生規則などで必置のスペース・設備もあるので、法令をよく確認する必要があります。
(休養室等)
第618条 事業者は、常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。 |
労働基準監督署や社会保険労務士に法令に適合しているか相談・確認すると良いでしょう。またオフィスづくりの専門業者に相談するのも一つの手です。
◾️コンパクトなオフィス家具を設置する
ワークスペースのデスクは、幅1,200mm(120cm)×奥行700mm(70cm)がスタンダードです。ただし業務によってはそれより小さくても支障がないこともあります。たとえばノートPCなどで資料作成を中心とする部署はコンパクトなサイズのデスクやフリーアドレスを導入すると良いでしょう。一方、大きな図面や多くの資料を卓上に広げることが多い設計・デザインなどの専門職は大きめのデスクが必要です。
コンパクトな家具で事足りる場合は、そのほうがスペースを確保できます。
幅 | 特徴 | おすすめの職種 |
1,000mm(100cm) |
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1,200mm(120cm) |
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1,400mm(140cm) |
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1,500mm(150cm) |
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奥行 | 特徴 | おすすめの職種 |
600mm(60cm) |
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700mm(70cm) |
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800mm(80cm) |
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オフィスの移転・改修は専門業者への相談がおすすめ
オフィスの移転・改修はプロジェクトの規模も大きいため、オフィスづくりの専門業者に依頼するのも一つの手です。ここでは、専門業者を活用するメリットや業者の選び方をご紹介します。
◾️専門業者を活用するメリット
専門業者に相談することで、自社オフィスの問題点が客観的に分析・評価され、それに基づく的確なアドバイスが得られます。
また、専門業者にはオフィスづくりのノウハウやリソースがあるため、移転・改修の計画・準備から実行まで、効率的に作業を進めてくれます。この間、従業員は基本的に本来業務に専念できるため、負担軽減にもつながるでしょう。法規に則っているかも検証してもらえるため、法令遵守の観点からも安心です
◾️専門業者の選び方
オフィスの移転・改修には、オフィス家具メーカー、設計事務所、デザイン会社、不動産会社、内装工事会社、引越し業者など、さまざまな業者が関わってきます。
それぞれ別の業者に依頼する手もありますが、特にオフィスの規模が大きい場合、個々の業者に依頼すると個別に打ち合わせ等をおこなう必要があり、その分手間も費用もかかる恐れがあります。そのような場合は、オフィスの移転・改修作業全体を請け負ってくれる業者に依頼すると良いでしょう。移転・改修作業にかかる労力と費用を軽減できる可能性も高くなります。
専門業者を選ぶ際は次の点を確認しておきましょう。
- これまでの実績
- 自社のニーズにあったサービス内容かどうか
- アフターフォロー
- 費用とサービスが見合っているか
また、可能であれば評価や口コミなども確認しておくと安心です。
アイリスチトセでは企業様の働く環境を理解したうえで、企業様のオフィスを最適化するソリューションサービスを提供しています。オフィス移転やリノベーションなど、オフィスづくりに関するあらゆるご相談を承りますので、ぜひお気軽にご連絡ください。
オフィス移転の業者の選び方に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
まとめ:ワークスタイルに合わせたオフィス面積を検討しよう
近年の働き方改革と新型コロナウィルス感染拡大は、ワークスタイルに大きな変化を及ぼしました。特に、テレワークの普及・定着は、これまでの「オフィス利用人数=在籍人数」に「出社率」と「席数」を加味する動きが加速しています。これによって、「一人当たり面積」に加えて、「一席当たり面積」を考慮しなければならない業種・職種も出てきています。
オフィスの一人・一席当たり面積を十分に確保し、従業員が動きやすいレイアウトにすると、より快適で働きやすい環境ができます。そうなると、労働生産性と従業員満足度が向上し、業績アップにもつながると言えるでしょう。
オフィスの移転・改修でお困りごとがある場合は、ぜひアイリスチトセにお気軽にご相談ください。