オフィスを改装するメリットとは。改装の種類や流れを解説
オフィスレイアウト・デザイン・設計
「自社のオフィスが経年劣化し、傷みが目立つようになった」そういった際には、オフィスの改装が選択肢に上がることでしょう。またオフィスの劣化だけでなく、ワークスタイルの変革やオフィスに必要な機能などの変化も改装に至る要因となり得ます。現状のオフィスが自社にとって最適でないと感じたときが、オフィス改装を検討してみる良いタイミングと言えるでしょう。
この記事では、オフィスの改装に感じる困難や、費用対効果への疑問を解消するための情報をご紹介します。また、オフィスを改装するメリットや実際の改装の流れ、改装を進めるときのポイントも詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
オフィスの改装とは
オフィスの改装とは、家具や内装、レイアウトなどを変えていくことを指します。
改装工事は入居時から機能面などを増強し、付加価値を向上させるため、より働きやすい環境を実現できます。オフィスレイアウトの変更やインターネット回線の整備などが伴うため、大規模な作業となることが多いです。
「改装」と混同されがちなものに、「改修」があります。改修はあくまでもオフィスの利用前の状態に戻す(原状回復)ための作業です。壁紙の張替修繕などが、改修の範疇であると考えましょう。
オフィスの改装では、余っているスペースを有効活用する、新しい設備を導入するなど、これまでのオフィスではおこなってこなかった試みを実装するため、「どのようなオフィスにしたいのか」をしっかりとプランニングする必要があります。
オフィスを改装する4つのメリット
傷んだオフィスを元に戻すだけなら簡単な改修でことが済みますが、これまでのオフィスにあった課題は解決できません。一方、オフィスの改装で次のようなメリットが見込めます。
- 生産性アップ
- 従業員のエンゲージメントアップ
- 企業のブランドイメージの向上
- オフィスのコスト削減
それぞれのメリットの詳細を順番に見ていきましょう。
■生産性アップ
オフィスの改装で仕事をしやすい環境を構築できれば、従業員の生産性を向上させられます。
具体的には、オンとオフを切り替えやすいスペースの配置や、オフィス内を行き来しやすいレイアウトの設計、仕事場所をデスクの割り当てに制限しない施策などです。
オンとオフを切り替えられるオフィスの実現
従業員のオンとオフを切り替えやすくするには、集中ブースやリフレッシュスペースの導入がおすすめです。
集中ブースの導入には、作業用の個室ブースや仕切りつきのデスクを使用します。従業員が周囲に気を取られず、安心して作業に向かうことができれば業務効率の改善が見込めるでしょう。
また、従業員の緊張をほぐしてストレスを緩和できる、リフレッシュスペースの導入もおすすめです。カフェやソファーブースのような落ち着きのある空間を用意すれば、ランチ時や行き詰ったときに従業員が気分転換に利用でき、部署間の交流も見込めます。
レイアウト変更でオフィス内を行き来しやすくする
通路の幅をしっかりと確保すると、オフィス内を行き来しやすくなります。たとえば、コピー機や関連用品の置き場が作業スペースから遠い、通路の幅が狭いほかのデスクや椅子とぶつかりがちという状態では、従業員にとってコピー機の使用が大きなストレスになります。加えて、単純に移動に時間がかかります。
レイアウトを変更して、従業員がオフィス内を行き来しやすくなると、業務効率が良くなり、生産性の向上につながるでしょう。
ABWの導入で多様な働き方に対応できる
ABW(Activity Based Working)とは、従業員が働く場所や時間を自由に選ぶレイアウトの考え方です。ABWをオフィスに取り入れることで、従業員はその日の業務内容や気分に応じ最適な仕事場所を選べるようになります。
現代のオフィスワークでは、「働く場所は選べる」という考え方が大きな広がりを見せています。カフェや自宅のほか、オフィス内で働く場所の選択肢を増やすのも一つです。
集中ブースやリフレッシュスペースの導入はこうした考え方にも関連します。集中したい気分のときは集中ブースを用いて仕事をおこない、行き詰ったときや新しいアイデアがほしいときはリフレッシュスペースで従業員同士の交流を促進できます。
ABWに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■従業員のエンゲージメントアップ
生産性の高いオフィスは従業員にとって仕事をしやすい環境であるため、そのオフィスに通う人々のエンゲージメント(つながりや熱意などを意味する)を高めることにもつながります。
働きやすいオフィスであれば、従業員は企業から大切にされているという愛着を感じることもでき、その企業で長く働きたいと考えるきっかけにもなります。
エンゲージメントの向上は人材流出の防止にもなるため、適切なオフィスの改装は経営視点と労働者視点の両方から大きなメリットのある施策であると言えるでしょう。
■企業のブランドイメージの向上
洗練されたオフィスを構えることで、そのオフィスを訪れた訪問者に好印象を与えることができます。色やデザインの統一などで企業のブランドイメージを提示できれば、訪問者に自社を強く印象付けられます。
オフィスの改装の際は、企業のブランドイメージを伝えられるような色づかいやデザインを意識することも大切です。
■オフィスのコスト削減
レイアウトの変更によるスペースの最大限の活用や、ABWの推進による固定デスクの削減で、オフィスのコスト削減を図ることもできます。加えて、空調や照明を最新のものに切り替えれば、電気代の面からもコストを減らせます。
空間における風の流れを意識して空調の効率が良くなるようなレイアウトとする、導入する照明は高性能なLEDとするなどを意識すれば、こうしたコスト削減の施策はより高い効果を得られるでしょう。
オフィスのコスト削減に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
オフィス改装の種類と費用の目安
オフィス改装には大きな効果がありますが、相応の費用がかかります。改装する範囲によってかかる費用も異なるため、どのような改装がどの程度必要かを把握すれば、より効率的に施策を進めることができるでしょう。
オフィス全体を改装する場合と、部分的な改装をおこなう場合の2パターンの費用を見ていきましょう。オフィスの改装費用は、坪単価で考えるため、自社のオフィスの広さを知っておくことも大切です。
■オフィス全体を改装する場合
オフィス全体の改装では、改装の坪単価は10~30万円程度です。
全体改装は建造物を残し、オフィス全体の空調システムや電気系などの内部設備から、オフィス家具の配置まで全てを配置しなおすため、レイアウトデザインの自由度は高い点が魅力的です。
しかしそれだけ工期も長く、坪当たりの費用も部分改装より多くかかる傾向にあります。
改装内容によっては、改装工事中その間は別の場所で仕事をする必要もあるため、抜本的なオフィス改善を実施したい場合の選択肢としましょう。
オフィスレイアウトに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■オフィスを部分的に改装する場合
オフィスを部分的に改装するのであれば、坪単価は10万円程度が相場です。
必要な部分だけ改修するため全体改装よりも費用がかからない点が特徴的ですが、その分できることは限られます。
レイアウトの整理による新しいスペースの設置やクロスのデザイン変更など、必要な改装の範囲が限られている場合には、部分的改装はコストをおさえた有効な選択肢と言えます。
オフィスを改装する流れ
オフィスの改装を実際におこなう際には、適切な手順を踏むことが大切です。次に紹介する流れを参考に、オフィスの改装計画を組み立てていきましょう。
- オフィスの改装目的を明確に設定
- 改装にかかる費用や期間の見積もり
- オフィスデザインや導入インテリアの決定
- オフィス改装の工事
■1.オフィスの改装目的を明確に設定
まずは、オフィスを何のために改装するのかを明確に定めておきましょう。現在のオフィスが抱えている悩みをピックアップしていくことが大切です。
改装で課題が解決できるのかどうかを考える必要があります。たとえば、「部署間の交流促進やABWの実施のためにレイアウトを変更したい」というニーズがある場合は、改装で実現できます。しかし、実施のために適切なスペースが確保できるかどうかは把握しておかなければなりません。
オフィスの悩みが物理的な空間の制限を原因としている場合は、改装での解決には限界があります。こうした場合はオフィスの改装ではなく、移転を選択肢としたほうが有効です。
課題があれば解決されることが望ましいため、改装で解決できるかどうかに関わらず、まずはオフィスにある課題を洗い出しましょう。アンケートや調査を実施し、浮上した課題が改装によって実現可能であれば、次の段階に進みます。
■2.改装にかかる費用や期間の見積もり
オフィス改装の方向性が決まったら、業者へ見積もりを依頼し、改修にかかる費用や期間を把握しましょう。
予算が決まっている場合は、その額も伝えておくことでよりスムーズにプロセスを進められます。業者サイドがニーズや予算に応じたプランを提案してくれることもあるため、提示できる情報はあらかじめ準備しておくことが大切です。
見積もりの結果を比較して、依頼する業者を決定しましょう。
全体改装でオフィスの一時移転が必要な場合には、改装費用と期間の見積もりと合わせて移転費用・期間も見積もることを忘れないようにしましょう。
■3.オフィスデザインや導入インテリアの決定
オフィス改装を依頼する業者が決まったら、オフィスデザインをより具体的に決めていきましょう。オフィスの改装目的を考えた際に必要だと感じた設備やスペース、インテリアを実装するために、レイアウトや製品を選定します。
オンとオフの切り替えやABW施策の推進のための集中ブース・リラックススペースの追加、作業効率改善のための整理された動線、電気代削減のための新型空調やLED照明など、目的に対応したものを選ぶことが大切です。
また、デザイン変更の際には、改装のメリットであるブランドイメージ向上の効果を得られるように、コーポレートカラーを反映させましょう。落ち着きのある寒色や、熱意や暖かさを思わせる暖色など、企業の気質に合った色を選びます。
オフィス家具の色味や形状も全体と調和が取れるものがおすすめです。壁や床の色味に合ったデスクや椅子があれば、より洗練された印象を与えることもできます。
オフィスデザインに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
オフィスインテリアに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■4.オフィス改装の工事
改装内容が決まったら、実際のオフィス工事に移ります。施工業者に工事をおこなってもらいましょう。改装内容によっては、壁や床、天井などの内装工事のほか、電気設備や空調の工事など、大がかりな工事になります。
全体改装を代表に、業務に支障のでる規模の改装をおこなう際にはオフィスを事前に一時移転しなければならない可能性もあります。また、改装後のオフィスに配置する家具類も事前に発注しておくことを忘れないようにしましょう。
オフィスを改装する際のポイント
オフィスの改装を計画する際には、次のポイントに注意しましょう。
- 賃貸オフィスは改装をオーナーに相談
- 改装案は従業員の意見を反映
- 工事中の業務スペースを確保
- オフィスデザインは消防法を厳守
- 改装の依頼先は複数社で比較
それぞれのポイントを解説します。
■賃貸オフィスは改装をオーナーに相談
賃貸物件に入居するオフィスの場合、まずはオーナーに相談します。
賃貸オフィスでは、入居者に許可された工事の範囲が建物ごとに定められているため、オーナー側に確認を取らないと改装の範囲を決めることもできません。
また、退去時に定められた原状回復(入居前の状態に戻すこと)の問題もあります。オフィスのレイアウト変更で取り外したパーテーションなども元に戻さなくてはいけない場合があるため、後の手間や問題が増えてしまうことがあります。
こうした条件の多くは個々のオーナーによって異なるため、まずは改装をしたい旨をオーナーに伝え、改装や原状回復の範囲の確認を取ることが大切です。
■改装案は従業員の意見を反映
オフィス改装では、従業員から広く意見を募り、改装に反映していく必要があります。
「改装すれば生産性が上がる」として、担当者や経営者など特定の人だけでプロセスを進めると、全体最適にならない可能性があります。生産性は従業員の働きによって変動するため、計画の推進者が従業員と合わない考えを持っていれば逆効果となりかねません。
オフィスの改装は、個々の従業員の意見を統合し、オフィスで働く人全体に利益のあるかたちで実装されることが理想的です。オフィス全体規模でヒアリングやアンケートを実施して意見をくみ上げ、改装計画に反映させるようにしましょう。
■工事中の業務スペースを確保
改装工事中の業務スペース確保についても、事前にしっかりと確保しておきましょう。
特に、全体改装の場合は一時移転先の仮オフィスが必要になります。レンタルオフィスやシェアオフィスといった、短期間の利用を前提としたサービスがあるため、近隣で利用できるものがないかどうかを確認しましょう。
■オフィスデザインは消防法を厳守
オフィスデザインは消防法を守る必要があります。火災時の被害をおさえ、従業員がスムーズに避難するためにも欠かせません。避難経路はしっかりと確保しましょう。
また、天井まで届くパーテーションを設置した場合は個室扱いとなるためスプリンクラーや火災感知器を設置することが義務付けられます。
従業員から希望があっても、消防法を守れないようなデザインであれば却下するか、折衷案を提示することになります。消防署の立入検査がおこなわれ、問題が発覚した場合には強い命令を受けることになるでしょう。消防法の命令に違反すると刑事罰が課されることにもつながります。
■改装の依頼先は複数社で比較
オフィス改装の依頼先は、一社に限らず、複数社で比較してから決定するようにしましょう。見積もり額の比較はもちろん、実績やアフターサービスなどの質でも比較します。
アイリスチトセでは、オフィスづくりに関して広く相談を承っております。豊富な実績と蓄積したノウハウから、お客様のニーズに沿ったレイアウトや家具の調達・配置などをサポートいたします。。
オフィスの改装を検討されている場合はぜひ一度アイリスチトセにご相談ください。
オフィスの改装で利用できる補助金・助成金
国や行政からの補助を利用すれば、より効率的にオフィスの改装を実施できます。オフィス改装で利用できる補助金や助成金についても把握していきましょう。
利用可能な補助金・助成金の内容は次の表のとおりです。
種類 | 概要 | 補助・助成額の上限 |
IT導入補助金 | 仕事を効率化するためのITツール導入に対して補助金 |
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ものづくり補助金 | 新規事業のための設備投資で適用される補助金 | 補助額上限は人数で変動
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事業承継・引継ぎ補助金 | 事業承継を契機とした取り組みをする中小企業などへの支援制度 |
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小規模事業者持続化補助金 | 小規模な法人や個人事業主を対象とした生産性向上の支援制度 |
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受動喫煙防止対策助成金 | オフィス内での禁煙・分煙のための費用に適用 |
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それぞれの条件が適用できるかどうかを確認しましょう。
オフィス改装の事例
実際のオフィス改装の事例を知ることで、自社の改装イメージを深めていくことも大切です。ここでは、アイリスチトセの納入実績から、具体的な事例をご紹介します。
■ハドラスホールディングス
グレーや黒を基調としたソリッドなオフィス空間へ植物や木材の色味を足すことで、緊張をやわらげ、清涼感のある空間を実現しました。
ボックス型の集中ブースや、円卓型のコミュニケーションスペースも隣接しており、多様な働き方を受け止めることのできるオフィスとなっています。
■マツキヨココカラ&カンパニー
白を基調とした清潔感のある空間を実装することで、オフィスのなかにリラックスできるスペースを生み出しています。
アクセントとなる緑や大きな窓から差し込む日光は、屋内に居ながら活動的な感触をあたえ、フレッシュなアイデアを生み出すことにもつながるでしょう。
■あなぶきハウジングサービス
すだれ調のブラインドや円形の吊り下げ照明で和のテイストを取り入れながら、涼を感じられるような空間を作り上げました。
フロアマットの色の境界線と緑のマット側に置かれた植物は、視覚的にオンとオフの切り替えを感じさせます。リラックスと集中を両立したオフィスの一形態と言えるでしょう。
まとめ:オフィスの改装で生産性を向上させよう
オフィスは改装をおこなうことで傷んだオフィスを改善し、生産性の向上を狙うことができます。おしゃれで洗練されたオフィスは、従業員の働き方や意欲に訴えかけ、訪問者にも良い影響を与えるでしょう。
改装には相応の費用がかかりますが、改装の目的と内容をしっかりと定めることで効率的な改善が可能です。また、省エネ化などをおこなえば長期的なコスト削減にもつながります。オフィス改装の際には、オフィスで働く従業員の意見を取り入れ、改装事例や複数社の提示プランを参考にしてみてください。
改装を通じてオフィスの質を高めて働く意欲や職場への愛着を持てるような空間を実現し、業務の生産性を向上させましょう。アイリスチトセではオフィスづくりのあらゆるご相談を承っております。オフィス環境の見直しを検討される際はぜひ一度ご相談ください。