事務所移転の進め方は?流れや手続きと 成功のポイントも解説
オフィス移転

初めて事務所移転を任されると、何から手をつければよいか迷うものです。移転には物件選定から手続き、各機関への届出まで多くの工程があり、期限もそれぞれ異なります。この記事では、移転の流れや必要な手続き、成功のポイントをまとめて解説します。全体像をつかみ、抜け漏れなく進めましょう。
この記事の要約
- 事務所移転は物件選定から届出まで工程が多く、期限もそれぞれ異なるため、全体像を先につかむことが重要になる
- 移転の流れは「計画立案→物件選定→解約・退去予告→レイアウト決定→引越し→原状回復」の6ステップに整理できる
- 解約予告期間は6ヶ月前が一般的で、通知が遅れると退去後も賃料がかかるため早めの確認が欠かせない
- 移転を成功させる鍵は、チーム結成・余裕あるスケジュール・補助金の活用・専門業者の利用の4点にある
事務所移転の流れ

事務所移転は、思い立ってすぐに完了できる作業ではありません。物件探しから引越し、旧オフィスの明け渡しまで、いくつもの工程が連なっています。
初めて担当する場合は、まず全体像をつかむことが大切です。ここでは、移転当日までにたどる6つのステップを、順番に整理します。
移転先の規模にもよりますが、着手から完了まで半年前後を見込んでおくと安心です。
| ステップ | 主な内容 | 着手時期の目安 |
| 1. 計画立案 | 目的・予算・スケジュールを決める | ~8か月前 |
| 2. 物件選定 | 候補を比較し移転先を契約 | ~6か月前 |
| 3. 解約・退去予告 | 解約を通知し原状回復を段取り | 6か月前 |
| 4. レイアウト決定 | 内装工事と什器を確定 | 3〜4ヶ月前 |
| 5. 業者手配・引越し | 搬出・搬入を実施 | 2か月前~当日 |
| 6. 原状回復 | 旧オフィスを工事し明け渡す | 移転後〜解約日まで |
■1.オフィス移転計画を立案
最初に取り組むのは、移転の土台となる計画づくりです。
なぜ移転するのかという目的を、はっきりさせておきましょう。「手狭になった」「賃料を抑えたい」「立地を変えたい」など、目的によって選ぶべき物件は変わります。あわせて、使える予算の上限と、移転を完了させたい時期を決めます。この段階で大枠を固めておくと、後の判断に迷いが生じにくくなります。
■2.移転先オフィスの選定・物件比較
立てた計画をもとに、移転先の候補を探します。
立地や賃料だけでなく、面積や設備、契約条件まで含めて比べることが重要です。複数の物件を同じ基準で並べると、判断がぶれにくくなります。
内見の際は、通信環境やビルの共用部、入居時のルールも確認しておきましょう。
気に入った物件が見つかったら、条件を交渉したうえで賃貸借契約を結びます。
■3.現オフィスの解約・退去予告・原状回復
移転先の契約と並行して、今のオフィスを解約する手続きを進めます。
オフィスの賃貸借契約には「解約予告期間」が定められています。これは、退去する何ヶ月前までに解約を伝えるかを決めたルールです。
オフィスの場合、6ヶ月前という設定が一般的です。予告が遅れると、退去後も賃料を払い続ける事態になりかねません。
そのため、移転を決めたら早めに契約書を確認し、貸主へ解約を通知します。
同時に意識したいのが「原状回復」です。原状回復とは、借りたときの状態に戻して返す義務のことを指します。
撤去や補修の範囲は契約によって異なります。内容を早めに把握しておくと、後の費用やスケジュールを見積もりやすくなります。
■4.移転先オフィスのレイアウトや導入家具の決定
新しいオフィスの移転先物件が確定したならば、つぎはその物件の図面などを確認しながらレイアウトや導入するオフィス家具を決めていきます。
オフィス移転の目的を達成できるように設計していくことが大切です。新しい働き方に対応するために移転をする場合は、フリーアドレスを意識して固定的に割り当てるためのデスクを減らしたり、従業員が行き来しやすい動線を敷かなければなりません。
また、今ある家具をそのまま使うのか、新しく購入するのかも検討が必要です。現有の家具がリース品である場合には、リースを継続するのか、解約するのか、新しい家具のリースを受けるのかも判断しましょう。
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■5.各種業者を手配してオフィスの移転
移転先となるオフィスの工事や引越し、家具の購入・リースなどを承っている業者に手配をおこないましょう。順次、オフィス移転の作業を進めていくことになります。
工事の立ち合いや家具などの搬入などを問題なくおこなえるように、従業員には事前に移転スケジュールを周知します。住所変更による混乱を防ぐため、取引先企業への連絡も不可欠です。オフィス移転作業における役割分担もあらかじめ設定し、スムーズに引越しをおこなえるようにしておきましょう。
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■6.旧オフィスの原状回復
引越しが済んだら、旧オフィスを契約前の状態に戻す工事に入ります。
この原状回復工事は、内装の撤去やクロスの張り替え、床の補修などが中心です。
工事の発注先は貸主が指定するケースが多く、その場合は費用や工期を借主が自由に決めにくい点に注意します。
解約日までに工事を終えて明け渡す必要があるため、逆算して着工日を押さえておきましょう。
完了後は貸主の立ち会い確認を受け、鍵を返却して引き渡しが完了します。
事務所移転に必要な手続き

移転そのものと並行して、事業を止めないための各種手続きも進めます。
連絡やインフラの切り替えは、対応が遅れると業務や取引に支障が出ます。ここでは、行政への届出を除いた、日常業務にかかわる主な手続きを取り上げます。
それぞれ早めに着手し、移転後すぐ通常業務に戻れる状態を整えましょう。
| 手続き | 主な内容 | 着手の目安 |
| 電話・インターネット回線 | 移設や新規契約の申し込み | 1〜2ヶ月前 |
| 取引先への連絡 | 挨拶状の送付・案内 | 移転の1ヶ月前 |
| 銀行・カード・各種契約 | 住所変更の届出 | 移転後速やかに |
電話・インターネット回線の移転
業務に欠かせない電話とインターネットは、早めの手配が肝心です。
回線の移設や新設は、申し込みから開通まで数週間かかることも珍しくありません。移転日に間に合わないと、電話が通じず取引に影響が出るおそれがあります。
現在の契約内容を確認し、移転先で同じ回線が使えるかどうかを調べておきましょう。
番号を引き継げるか、工事日をいつ押さえられるかも、あわせて確認します。
取引先への連絡・移転挨拶状
住所が変わることは、取引先へ確実に伝える必要があります。
連絡が漏れると、請求書や納品物が旧オフィスに届いてしまいます。
一般的には、移転の1ヶ月ほど前に挨拶状やメールで新住所を案内します。挨拶状には、新住所と移転日、新しい電話番号を明記しておくと親切です。
名刺や会社案内、ウェブサイトの住所表記も、忘れずに更新しましょう。
銀行口座・クレジットカード・各種契約の変更
会社名義の口座やカード、各種契約の住所も変更が必要です。
登録住所が古いままだと、重要な郵便物が届かない事態を招きます。
銀行やカード会社は、それぞれ所定の書類や手続きを求めます。リースや保険、サブスクリプション契約なども、対象に含めて洗い出しておきましょう。
どこに何を届け出るかを一覧にしておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。
事務所移転で必要な各機関への届出

会社の所在地が変わると、法律で定められた行政への届出が発生します。
これらは提出先や期限がそれぞれ異なり、遅れると過料の対象になるものもあります。移転後に慌てないよう、必要な届出と期限を早見表で押さえておきましょう。
なお、期限や様式は改正されることがあります。提出前に、各機関の最新情報を確認してください。
| 提出先 | 主な書類 | 提出期限 |
| 法務局 | 本店移転登記申請書 | 移転日から2週間以内 |
| 税務署 | 異動届出書ほか | 移転後速やかに |
| 都道府県税事務所・市区町村 | 異動届出書 | おおむね10日以内 |
| 年金事務所 | 適用事業所所在地・名称変更(訂正)届 | 移転後5日以内 |
| 労働基準監督署 | 労働保険名称・所在地等変更届 | 移転翌日から10日以内 |
| ハローワーク | 雇用保険事業主事業所各種変更届 | 移転翌日から10日以内 |
| 消防署 | 防火対象物使用開始届出書 | 使用開始の7日前まで |
| 警察署 | 自動車保管場所証明申請書 | 定めなし(速やかに) |
法務局
まず対応すべきなのが、法務局での本店移転登記です。
会社法により、本店を移転した日から2週間以内の申請が義務づけられています。この期限を過ぎると「登記懈怠」とみなされ、代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。
登録免許税は、同じ法務局の管轄内なら3万円、管轄をまたぐ移転では6万円が必要です。
申請書はいずれの場合も、移転前の所在地を管轄する法務局へ提出します。
税務署・都道府県税事務所
税金に関する届出も、移転後すみやかに済ませます。
税務署には「異動届出書」を提出します。明確な期限はありませんが、移転後速やかに出すのが原則です。2017年4月以降は手続きが簡素化され、移転前の管轄税務署へ提出すれば足ります。
給与を支払う会社は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」も1ヶ月以内に必要です。
地方税については、都道府県税事務所や市区町村へ異動届を出します。おおむね10日以内が目安ですが、自治体で扱いが異なるため確認しましょう。
参考:A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁
参考:東京都主税局
年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク
従業員の社会保険と労働保険にかかわる届出も欠かせません。
年金事務所には「適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」を、移転後5日以内に提出します。管轄が変わる場合でも、移転前の年金事務所が提出先です。
労働基準監督署には「労働保険名称・所在地等変更届」を、移転の翌日から10日以内に出します。こちらは移転先の管轄が窓口になります。
提出時は登記事項証明書などの添付を求められることが多いため、事前に用意しておくと手続きがスムーズです。
参考:事業主の変更や事業所に関する事項の変更があったときの手続き|日本年金機構
消防署・警察署
建物の使用や車両にかかわる届出は、消防署と警察署が窓口です。
消防署には「防火対象物使用開始届出書」を、オフィスを使い始める7日前までに提出します。居抜きで工事をしない場合でも必要です。
内装工事を行うときは、「防火対象物工事等計画届出書」を工事着工の7日前までに追加で出します。
警察署では、社用車の駐車場を確保するために「自動車保管場所証明申請書」、いわゆる車庫証明を申請します。
車庫証明に明確な期限はありませんが、移転後はできるだけ早く済ませましょう。
事務所移転を成功させるポイント

オフィス移転を成功させた企業はどのようなポイントに注意してプロセスを進めていったのでしょうか。この項目では、オフィス移転を成功させるポイントをご紹介します。
代表的なポイントは次の3つです。
- オフィス移転のプロジェクトチームを結成する
- 移転のスケジュールに余裕を持たせる
- 補助金・優遇措置で移転費用を削減する
- オフィス移転の専門業者を利用する
それぞれのポイントの内容を解説します。
■オフィス移転のプロジェクトチームを結成する
プロジェクトチームを結成してタスクごとに担当者を決めておくと、移転計画を具体的に進めやすく、進捗の確認も容易になります。
オフィス移転は、そのオフィスで働く人すべてに影響の出る事柄であるため、複数の部署から人を募るようにしましょう。各部署の従業員の意見を汲み上げ、全員にとって利益となるようなオフィス移転を実現するためには、チームにも多様性が必要です。
集められた意見から、新オフィスにもっとも求められている要素はなにか、移転の目的とするものはなにかをチーム全体で検討しましょう。
独善的な計画によって実施された移転は目的を達成できず、また移転の実務においても混乱を招く可能性があります。オフィス移転のメリットを最大化するためにも、チームを組み、従業員が納得しやすく、確実に実行できる移転計画を組み立てていきましょう。
■移転のスケジュールに余裕を持たせる
手続きや準備が想定通りに進むとは限らないため、イレギュラーな事態が発生しても問題がないようにスケジュールに余裕を持たせるようにしましょう。
オフィス移転においては工事や業者、オーナーとの話し合いなど、自社都合だけではどうにもならない要素が多く、予定の詰まったスケジュールでは通常業務に支障をきたす可能性もあります。
一般的に、オフィス移転は少なくとも半年程度の時間を要するとされています。このことを念頭に置き、解約予告の日から逆算してオフィスの移転計画を組み立てていくことが大切です。
■補助金・優遇措置で移転費用を削減する
国や行政機関が提供する補助金や優遇制度を利用すれば、移転費用を削減できます。
オフィス移転の際は引越し費用、新オフィスの取得・工事費用、旧オフィスの原状回復費などなにかと出費が増えてしまいます。補助金や優遇措置を利用できれば出費を補えるため、欠かさず利用するようにしましょう。
利用できる制度には、ものづくり補助金や地方拠点強化税制などがあげられます。どのような企業でも無制限に利用できるものではないため、適用が可能かどうかはあらかじめチェックしておきましょう。
また、自治体が独自に支援をおこなっている場合もあるため、細かく調べるようにしましょう。
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■オフィス移転の専門業者を利用する
移転の際には専門業者を利用することで、より質の高いオフィスを実現できます。新オフィスのレイアウト設計など専門知識が必要な分野が関わってくるため、より精度の高い課題解決を実現する場合には業者の利用が確実です。
物件探しやレイアウトデザインに対する協力など、自社に適したオフィスづくりを提案してもらえます。また、オフィス移転の計画から実施までをワンストップでおこなってもらえるため、自社負担の軽減にもつながります。
オフィス移転の計画段階で、オフィス移転を専門とする業者に移転を依頼しましょう。複数の業者に見積もりを依頼し、実績やサービス内容、見積もり価格を比較して、納得のいく業者と進めていきましょう。
アイリスチトセでは、オフィス移転を含め、オフィスに関するあらゆる課題について相談を承っております。豊富な実績と蓄積したノウハウから、お客様のニーズに沿った課題解決方法をご提案します。
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事務所移転を実行する前によくある疑問

実際に計画を動かす前に、オフィス移転を考える企業が頻繁に直面する疑問を把握しておきましょう。疑問を先回りで解消しておけば、よりスムーズに計画を進められます。
■フレキシブルオフィスは移転先として有用か
フレキシブルオフィスとは、内装や設備が整った状態で、必要な分だけ借りられるオフィスの総称です。レンタルオフィスやシェアオフィスなどが代表例です。初期費用を抑えやすく、契約期間の自由度が高い点が利点です。一方で、専有面積やカスタマイズには制約があります。人数や働き方に合うかどうかを、見極めましょう。
すぐに入居したい場合は、セットアップオフィスも有力な選択肢です。これは、内装や什器を貸主があらかじめ整えた状態で貸し出す賃貸オフィスを指します。
共用型のフレキシブルオフィスと違い、自社専用の空間として使えます。内装工事が不要なため、移転にかかる時間と初期費用を抑えられます。
ただし、レイアウトの自由度は低く、賃料は相場より高めになる傾向があります。目的や予算に照らして選びましょう。
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■移転に反対意見がでたときはどうする
経営者側に強い移転の意思があれば移転の強行は可能です。しかし合意の取れない施策は従業員との間に軋轢を生む原因となり、従業員のエンゲージメントや離職率に影響を与えることは見逃せません。
オフィスの移転を考えた経営陣が「移転費用があるならば給料を上げてほしい」と大反対を受けたような例もあります。お互いに意見を譲れず議論が荒れてしまえば労使間の信頼関係を損ない、移転による生産性の向上など見込めないような状況に陥ります。
経営者の強行を禁ずる法律はありませんが、従業員のモチベーション低下によって業績が悪化してしまっては本末転倒です。移転先でも納得して仕事をしてもらうため、議論を尽くして移転の必要性を納得してもらうことが最善と言えるでしょう。
■オフィス移転は途中で中止できるのか
既にオーナーに解約予告を出してしまっている場合、中止は難しい可能性があります。賃貸物件の経営は入居者が居なければ利益を生まないスタイルのビジネスであるため、既に次の入居者と契約済みである可能性があります。
新たな入居者が現れている場合は中止は困難ですが、新しい入居者が決まっていないならば交渉の余地はあります。しかしその可能性は、期待をかけるにはあまりにも不安定なものです。
移転の中止を迫られるような事態とならないため、計画的にプロセスを進めていきましょう。
まとめ

事務所移転は、計画立案から届出まで工程が多く、初めてだと戸惑いやすい業務です。
しかし、全体の流れをつかみ、期限のある手続きから逆算して動けば、抜け漏れは防げます。特に、解約予告や各機関への届出には決められた期限があります。早い段階で押さえておきましょう。
アイリスチトセではオフィス移転を含め、オフィスのリノベーションなどオフィスに関するあらゆる課題について相談を承っております。豊富な実績と蓄積したノウハウにより、課題の把握から解決までトータルで最善の方法をご提案させていただきます。オフィスに関するお悩みはぜひお気軽にご相談ください。