インターナルブランディングとは?メリットや実行する流れまで紹介
働き方
企業のブランディングには、従業員向けのインターナルブランディングと社外・ステークホルダー向けのアウターブランディングの2種類があります。従業員のモチベーションをアップさせるためには、インターナルブランディングが効果的です。
そこでこの記事ではインターナルブランディングとは何か、メリットや具体的な事例などを解説します。インターナルブランディングをするべき企業の特徴も解説するので、自社に必要な方法かを検討してみてください。
目次
インターナルブランディングとは
従業員に向けたブランディング活動のことで、「インナーブランディング」と呼ばれることもあります。インターナルブランディングの目的は企業理念や経営方針などを明確に示し、従業員に浸透させることです。
インターナルブランディングができていない場合、企業の価値や方向性などが伝わらずに従業員の企業に対する不満が増加し、社内の士気が低下する可能性があります。さらに不満によって離職する従業員が増加すれば、労働力不足に陥ります。
労働不足が続くと、事業規模の縮小や労働環境の悪化などを招くかもしれません。このような状況を回避するためには、働き方改革や人事制度の見直しなどの方法もありますが、今回はインターナルブランディングにフォーカスして解説します。価値観を従業員と共有できれば、企業に良い影響を与えます。
・インナーブランディングに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
インターナルブランディングをするメリット
インターナルブランディングによって企業理念やビジョンが従業員に浸透すれば、従業員のモチベーションアップや生産性の向上などが期待できます。ここからは、企業がインターナルブランディングに取り組むメリットを解説します。
■従業員のモチベーションアップ
インターナルブランディングは従業員の企業に対する帰属意識を高め、モチベーションアップが期待できます。従業員に企業の価値観を正しく、そして深く浸透させられると、仕事への理解を深められ、愛着や誇りを持ってもらえる可能性があるためです。
また、企業が従業員に対して自社のビジョンや理念、価値観などを共有・浸透できれば、帰属意識を高められます。それによって士気が上がれば、その成果が業績にも現れやすくなります。従業員のロイヤリティが高まることにより、離職率の低下を狙うことも可能です。
■生産性の向上
インターナルブランディングを図ると、従業員同士が同じ意識で業務に取り組むようになります。その結果、連帯感が強化され、会社全体としての生産性の向上を期待できます。
従業員が企業の一員であると意識することで連帯感が生まれ、従業員同士でサポートする機会が増えるためです。従業員一人ひとりの意識を高めて生産性の向上を実現させるためには、すべての従業員が同じ目標に向かって足並みを揃えるよう促すことが大切です。
■企業イメージの向上
インターナルブランディングの働きかけは、アウターブランディングにも寄与する可能性があります。アウターブランディングとは、消費者や取引先などの社外に向けたブランディング活動のことです。
従業員が経営理念やビジョンなどに共感してくれれば、企業情報を積極的に発信してくれる可能性があります。企業イメージが向上すれば人材市場でも有利になり、優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。
インターナルブランディングをするべき企業の特徴
インターナルブランディングはどの企業でも取り組んだほうが良い施策です。ここからは、特に意識してインターナルブランディングに取り組んだほうが良い企業の特徴を解説します。
■人の入れ替わりが激しい企業
従業員の入職や離職が多い企業は、インターナルブランディングに取り組んだほうが良いでしょう。企業理念や価値観などが浸透していないことが従業員の離職につながっている可能性があるためです。
入職から早い段階で企業のビジョンについて共通認識を持ってもらえれば、ミスマッチによる離職率の低下が期待できます。そのため、従業員の入れ替わりが激しい企業は、できるだけ短期間での浸透を目指しましょう。
■多角的に事業を展開している企業
インターナルブランディングは、事業を幅広く展開している企業におすすめです。企業のメイン事業から離れた業務に携わる従業員は、企業イメージと自身の業務内容にギャップを感じ、価値を見出すことが難しいためです。
インターナルブランディングを図ると、部署や従業員間での価値観の方向性を揃えられます。企業で働くすべての従業員にインターナルブランディングが浸透すれば、人事異動で業務内容が変わってもモチベーションが低下することなく業務を進められるしょう。
■吸収・合併をした企業
吸収や合併した企業では、もともと社内風土や理念が異なる従業員が集まって働くことになります。従業員が持つ心理的ジレンマを解消するためには、インターナルブランディングが効果的です。
社内風土や理念が異なる従業員が集まれば、コンフリクトが起きる可能性もあります。コンフリクトとは、異なる意見が衝突して緊張状態になることです。吸収や合併の直後からインターナルブランディングを図ればコンフリクトを回避し、企業としてまとまりやすくなります。
インターナルブランディングの基本の流れ
従業員にインターナルブランディングをおこなう際は、手順を把握しておくことも大切です。ここからは、インターナルブランディングの基本的な流れを解説します。
■1:従業員に伝えたいことを明確化
まずは、従業員に伝えたい企業の理念やビジョンを明確にしておきましょう。伝えたい内容が曖昧な場合、従業員に上手く伝わらない可能性があります。
従業員にヒアリングをおこない、自社に対して抱いているイメージや価値観などを把握しましょう。ヒアリングによって得られた傾向や課題は、価値観を再定義する際に役立ちます。
■2:従業員に伝える方法を検討・実行
従業員に伝えたい内容を明確化した後は、どのように伝えるかを検討しましょう。従業員に伝えるおもな方法は、次のとおりです。
- 経営層と従業員での対話集会
- 社内報や社内SNSでの情報発信
- 従業員が参加するイベントの開催
- ワークショップの開催 など
ワークショップを開催し、従業員が主体になって意見交換する場を設けるのも選択肢の一つです。部署が異なる従業員が集まり議論することで、個々の意識変革を狙えます。
■3:インターナルブランディングの継続
インターナルブランディングは、たった一度の働きかけで十分に浸透するとは限りません。すべての従業員に深く浸透させるためには、継続して働きかけていくことが大切です。
インターナルブランディングを実行した後は、どのくらい浸透しているかを検証し、必要に応じて内容を見直すようにしましょう。検証には、eNPSを用いるのも選択肢の一つです。eNPSとは従業員のアンケート結果をもとに、職場の推奨度を図る方法です。
インターナルブランディングの4つの事例
従業員に共感してもらうためには、工夫した方法で働きかけると効果的です。ここからは4つの事例を解説します。
■オフィスレイアウトの変更
インターナルブランディングを効果的に浸透させるためには、オフィスデザインにこだわるのも手段の一つです。しかし、漠然としたイメージでデザインするだけでは、十分な効果は期待できません。
インターナルブランディングの効果を高める手法として、企業のブランドをイメージできるデザインにし、従業員に認識を浸透させる方法があります。たとえば社名のロゴモチーフを用いたデザインをオフィス内に散りばめるなどです。また、ワークスペースにフリーアドレスを採用すると、従業員同士のコミュニケーションが活性化しやすくなります。
・オフィスレイアウトに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
・フリーアドレスオフィスに関する詳細はこちらの記事でも解説しています。
■社内向けの広報
インターナルブランディングには、次のような社内向けの広報を通じて浸透させる方法もあります。
- ポスター
- リーフレット
- 動画
- SNS など
SNSは従業員同士が気軽にコミュニケーションを取りやすいツールなので、他部署が何をしているかを知るきっかけにもなります。他部署の活動内容を知ることで相互理解が深まり、連帯感の強化につながります。企業によってワークスタイルが異なるため、インナーブランディングの手法も合わせて変えるよう工夫しましょう。
■福利厚生の充実
インターナルブランディングの方法として、福利厚生を充実させた企業もあります。福利厚生の具体例は、次のとおりです。
- 従業員だけが自社サービスをお得に利用できる
- 育児休暇や介護休暇を取得しても長期的なキャリア構築をしやすくする
- 従業員専用のカフェを設置する など
多彩な福利厚生を用意し、従業員に「従業員を大切にしている企業」だと思ってもらえると、企業への愛着心であるエンゲージメントを高められる可能性があります。
■社内イベントの開催
インターナルブランディングを従業員に浸透させるために、社内イベントを開催するのも選択肢の一つです。社内イベントの具体例は、次のとおりです。
- 周年イベント
- 社員総会
- 社内表彰 など
業績アップに貢献した従業員や行動方針にふさわしい行動をした従業員を表彰すると、モチベーションアップにつながります。社内イベントは理念や経営方針など、企業が伝えたい内容をテーマに盛り込むことがポイントです。
他部署の従業員と交流できる機会が増えるため、従業員同士の結びつきが強くなる可能性も期待できます。
インターナルブランディングで失敗しやすい例
企業の施策次第では、インターナルブランディングが失敗に終わるケースもあります。ここからはインターナルブランディングで失敗しやすい例を紹介するので、自社で施策を検討する際の参考にしてください。
■時代にそぐわない施策の実施
時代の流れとともにビジネスシーンでも価値観が変化しているため、時代にそぐわない施策は避けるようにしましょう。
型通りの施策はインターナルブランディングを浸透させるどころか、逆効果になってしまうかもしれません。
たとえば経営理念の唱和は、時代にそぐわない施策の一つです。従来では当たり前とされてきた施策でも、現代では同調圧力と捉えられる可能性があります。インターナルブランディングを上手く浸透させるためには、義務や矯正ではなく従業員自ら行動できるよう促していける方法を模索するようにしましょう。
■短期間で結果を求める
インターナルブランディングは、施策を施してもすぐに結果が出るとは限りません。そのため、短期間で結果を求めず、中長期的な視点を持って臨むようにしましょう。短期間で意識改革を図るために強引に進めようとしても、従業員の反発を招く可能性があるためです。
定期的に評価し、インターナルブランディングがどのくらい浸透しているかを把握する機会を設けましょう。十分な効果が得られない場合は、施策を変更するなどの見直しも必要です。
■経営層だけでインターナルブランディングを検討
インターナルブランディングを上手く浸透させるためには、経営層と従業員との信頼関係が影響します。従業員が経営層に強い不信感を持っている場合、インターナルブランディングの大きな妨げになる可能性があるためです。
経営層だけで施策を検討すると、従業員との間に意識の隔たりがあっても気づきにくいのが現状です。そのため、施策を検討する際には経営層だけでなく、現場をよく知る従業員も参加させ、アイデアや意見に耳を傾けるようにしましょう。
インターナルブランディングを効率的に進める方法
最後に、インターナルブランディングを効果的に進める方法を解説します。
■担当者は資格の取得やセミナーに参加
具体的な施策を検討する前に、インターナルブランディングに関する知識を深めておきましょう。担当者が自力でゼロからスタートするよりも、全体像を把握できる知識を身につけていたほうが、スムーズにプロジェクトを進められるためです。
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会では、インターナルブランディングに特化したコースを開設しています。短期間でプラクティショナーの資格を取得できるプログラムがあるので、ぜひチャレンジしてみてください。
■インターナルブランディングの専門家へ相談
自社に適した施策を検討する際は、インターナルブランディングの専門家が在籍しているコンサルタント会社に相談するのも手段の一つです。コンサルティング会社では現状分析や施策案の設計などをサポートしてもらえるため、自社に適したインナーブランディングが実現できます。このほかには、インターナルブランディングに関する相談ができる人が在籍しているメンターサービスを利用する方法もあります。
メンターサービスとは、特定の知識を持った人に相談や質問ができるサービスです。どちらもコストが発生しますが、知識が乏しいまま社内で施策を実行するよりは、短期間での意識改革が期待できます。
まとめ:インターナルブランディングで従業員の意識改革を図ろう
従業員のモチベーションが思うように上がらない場合、企業理念や経営方針などが正しく浸透していない可能性が考えられます。意識改革を図るためには、インターナルブランディングで企業の思いを伝えることが大切です。
インターナルブランディングの方法は複数ありますが、適した方法は企業ごとに異なります。必要に応じて専門家やメンターサービスを利用し、効果的に意識改革を進めていきましょう。