役員室の役割とレイアウトの決め方|種類別の特徴や工夫するポイントも紹介

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役員室の役割とレイアウトの決め方|種類別の特徴や工夫するポイントも紹介

2022年現在、コロナ禍の影響からオフィスを縮小した企業やフリーアドレスなどの新しいオフィス形態を導入する企業が増加しつつあります。それに伴い、社長室や役員室は必要ないという考え方も広がってきているようです。

この流れのなか、オフィス移転などで改めて社内レイアウトの見直しが必要になり、これまで通り役員室を維持するか迷っている企業も少なくないようです。

本記事では、オフィスに役員室を導入する必要性を検討できるよう、役員室のメリットや役割を深堀りします。また、役員室のレイアウトについて初めて検討する方のため、役員室のおもなレイアウトタイプや工夫のポイントなどをご紹介しますので、ぜひお役立てください。

 

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役員室とは

まず初めに、役員室の基本的な役割や必要性について確認しておきましょう。

一般的に役員室とは、企業の取締役と言われる重役社員一人ずつに設けられる執務スペースのことをいいます。企業によって役割は異なりますが、社長室とは違い、通常執務や来客応対、商談や役員会議などさまざまな用途があります。

役員室を導入するおもなメリットは次のとおりです。

  • 役員が自身の重要執務に集中できる
  • 社外の取引先、顧客など重要な来客応対ができる
  • 出入りできる社員を管理することで、社外秘資料など機密情報を保管できる

役員は会社の中枢をつかさどる重要なポジションを与えられています。会社の業績に直結するような大切な業務を日々こなさなくてはなりませんが、一般社員と執務スペースが同じ場合、現場のこまかい問題が目に入り、自身の仕事がおろそかになってしまう可能性が生じます。

役員室を導入することで、役員が各々の重要な執務に集中できるメリットがあるのです。

また、入り口のセキュリティを強化して社員の出入りを管理することで、機密性も維持できます。たとえパーテーションで区切ったとしても一般社員と同じスペースでは話し声も漏れてしまう恐れがあります。

社内には外部の業者が出入りすることも考えられます。大切なクライアントと商談をおこなう場合にも、セキュリティの整った個室が用意されていれば会社としての信用度アップにつながるでしょう。

 

セキュリティ対策に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

役員室のレイアウトで必要とされる機能

役員室を導入する場合は、役員室のレイアウトで必要とされる機能を知っておく必要があります。この章では、役員室のレイアウトで不足が生じないよう、必須となる4つの機能をご紹介します。

■日々の執務に集中できる静かなスペース

役員は日々、社長の側近として重要な職務に取り組む必要があります。長時間デスクワークをおこなったり、たくさんの資料を広げて作業をしたりすることが多くなるので、大きめのデスクと疲れにくいチェア、静かなスペースを用意することが先決です。

また、秘書や部下と連携をとりながら執務をおこないやすいレイアウトを考えると良いでしょう。

■来客者がくつろげる応接スペース

役員室では来客に備えて応接スペースも必要です。特に役員となれば、会社の重役として大切な取引先の来客に応対するケースも多いでしょう。会社のイメージを損なわないよう、また気持ちよく接待が進められるように、高級感のある質の良い家具を揃える必要があります。

また重要なクライアントであれば商談が長丁場となることも考えられます。ゆったりとくつろげるソファや、気分転換のきっかけになりそうな飾りつけや眺望も考慮しましょう。

■ミーティングがしやすい設備・家具

役員室は役員個人のプライベート空間でありながら、4〜6人の小規模な社内ミーティングに使用されることも多いです。最近ではICT機器(情報通信技術)を使用した会議も増えていることから、そのような機器を使用できるレイアウトを検討するのも良いでしょう。

ただし、先述した通り役員室では上客の対応もするスペースでもあります。会議に使用する機器の配線や設置機材などで室内の環境や清潔感を損なわぬよう、十分な配慮が必要です。

■情報漏洩を防ぐ仕切りや個室スペース

社外秘のミーティングや来客との商談などで、機密性の高い情報を扱うことが多い役員室では、情報漏洩を防ぐために間仕切り壁や擦りガラスなどを用いて物理的な遮断性を高めることが重要です。

また、意図しない情報漏洩を避けるためには防音性も求められます。防音扉やサウンドマスキングなどを適用して、セキュリティ徹底に努めましょう。

役員室の3つのレイアウト種類と特徴

ここからは具体的に役員室のレイアウトを考えていきましょう。

役員室のレイアウトでは、おもに次の3つのタイプがテンプレートとなっています。それぞれの特徴を参考にして、自身のオフィスならばどのタイプが最適か検討してみましょう。

タイプ 特徴 機密性 コミュニケーションのとりやすさ 導入コスト
個室型 壁と扉で区切られた完全個室 × 高い
フルオープン型 社員の執務スペースとの区切りなし × 低い
半個室型 ガラス扉やパーテーションで区切られた半個室

一つずつ具体的に特徴を見ていきましょう。

■1.機密性が高い「個室型」

壁と扉で区切られた完全個室で、特にセキュリティ性を重視したい場合におすすめです。基本的に外から室内の様子が見えない造りのため、重要な機密情報の取扱いも安心です。

また、前章で紹介した役員室に必要な機能はすべてクリアできるほか、一般社員の執務スペースと明確に画することで、訪問した顧客に特別感を与えることができたり、各式高い家具や置物で演出してVIP客の応対も可能にしたりと活用範囲は幅広くなります。

■2.コミュニケーション重視の「フルオープン型」

一般社員の執務スペースとの区切りを造らない、完全開放型のタイプです。格式ばった扉がないため、役員と社員の間の通気性はよくなります。また、個室に必要なスペースや機器を排除できるので、導入コストも節約できます。

ただし「個室型」に比べてセキュリティ面では欠けるため、機密情報の取扱いや管理には十分な注意が必要です。フルオープン型は、社内交流を重視したい、役員が社内の環境を逐一把握しておきたい場合に適したタイプです。

■3.機密性とコミュニケーションを両立する「半個室型」

上記で紹介した個室型とフルオープン型の折衷案がこの半個室型です。間仕切りやパーテーション、ガラス扉で区切ることで機密性を保ちつつ、室内と外の双方の様子が目視できて社内交流も充実させることができる両立タイプです。

パーテーションを利用する場合であれば、会議や来客の人数によってパーテーションを移動して臨機応変にスペースを変形させることが可能です。

また、ガラス扉で区切る場合は擦りガラスフィルムなどにすればよりセキュリティ性も高まります。個室型かフルオープン型かで迷う場合は半個室型を検討してみると良いでしょう。

役員室をレイアウトする際の確認ポイント

ここまで、役員室の必要性やレイアウトの種類・特徴などを紹介してきましたが、実際に自社オフィスで役員室のレイアウトを検討する際、どのような点に留意したら良いのでしょうか。

この章では、具体的なレイアウトを考える際に優先して考えたいポイントを4つ取り上げて解説します。

■情報セキュリティ

前述したように、役員室は社外秘情報を取り扱う場であることや、重要な顧客との打ち合わせなどがおこなわれる応接スペースでもあります。そのため、情報セキュリティの面に十分に配慮して、部屋の配置から考えなくてはなりません。

たとえば、外部の人間の出入りが頻繁にあるエントランスから遠ざけ、一般社員の往来が少ない場所を選ぶのが望ましいでしょう。

また役員室の施錠を強化することはもちろんですが、入り口付近には受付やロッカーなどを設置し、盗撮・盗聴を防ぐために入室前にカメラ付き携帯を預かるようにするといった対策も効果的です。監視カメラを数カ所に設置するのも良いでしょう。

■他のワークスペースとのバランス

役員室の配置を決める際は、役員室以外のスペースとのバランスを取りながらゾーニングする必要があります。具体的に図面上で各スペースの面積を割り当てていく際は、次のような目安を参考にしてみてください。

なお、一般的に社員一人あたりに必要とされる面積の目安は3.71坪(12.26平米)とされています。

スペース スペースの役割 面積占有率の目安
役員スペース 役員1人ずつに与えられるスペースまたは個室 8%
ワークスペース 一般社員の共同執務スペースまたは大部屋 50〜60%
共有スペース 社員同士の交流を深められるカフェラウンジやバルコニー、社内のモチベーションアップにつなげるため企業イメージを反映した模型やインテリアを飾った空間など、企業により用途はさまざま 14%
リフレッシュスペース 社員の休憩スペースまたは休憩室 7%
収納スペース 業務に必要な書類や機器を収納するスペースまたは家具 4%
情報管理スペース 業務に必要な情報を保管・取り扱うためのスペースまたは個室 10%
交通スペース オフィス内の通路部分 2%

ただし上記はあくまで目安のため、会社の特性によって割合を調整する必要があります。普段どのくらいの規模の会議が多いのか、デスクや書庫などの家具のサイズ・数はどの程度かといった、社内ニーズや社員の動線をしっかりと検討しましょう。

■執務スペースより通路は狭く設定する

役員室は基本的に人の移動が少ないため、執務スペースよりも通路幅は狭くても問題ありません。ソファと壁の間や執務デスクの背後など、日ごろ往来する可能性の低い通路は7〜800mm程度の幅もあれば十分です。

ただし役員の動線には気を遣いましょう。入り口付近や両開き扉の書棚の前など、頻繁に利用する通路に関しては1,000mmを目安に少し広めに確保すると機能的です。

■自社イメージに合ったカラーの選択

役員室の家具や壁などの配色は、会社のイメージに合うカラーをテーマにするのもポイントです。

テーマカラーを変えることで室内のイメージは大きく変わります。オフィスのテーマカラーとして導入されやすい色の特徴と人に与える印象は次のとおりです。

テーマカラー 印象 オフィスに取り入れるメリット オフィスに取り入れる際の注意点
茶系 温かみ・包容力・信頼感・堅実さ・パワー・忍耐力・調和・高級感・大地や木などの自然
  • 自然色なので飽きがこず癒し効果もある
  • ウッド感を活かしてラウンジ風の落ち着いたスペースを演出できる
  • 色味によって多数の用途がある
  • 配色を間違うと圧迫感を感じる場合がある
赤系 挑戦・情熱・活発・刺激・エネルギー・ポジティブ・アクティブ・太陽の色
  • 強い刺激を与える効果があり革新的なアイデアを創造する効果
  • 活発的な意見交換ができる
  • 色の面積が広いと興奮して血圧が上がってしまう場合がある
  • 配色を間違うと暴力的・危険といったマイナスイメージもつきやすい
黄系 陽気・活動的・警戒・ポジティブ・活発・純粋さ・有向的
  • 左脳を刺激する色なので、発想力や想像力を豊かにする
  • 理解力や判断力、記憶力を高める効果もある
  • 色の面積が広いと刺激が強い色なので落ち着いた話し合いができなくなる場合がある
  • 裏切り・嫌悪といったキリスト教からくるイメージを連想する可能性もある
緑系 安心・安定・調和・安らぎ・落ち着き・リラックス・衛生的・山や木などの自然
  • リフレッシュ効果や生産性の向上に期待できる
  • 観葉植物を置けば眼精疲労の軽減や空気清浄の効果もある
  • 色の面積が広いと癒し効果が強いので意欲が低下する可能性もある
  • 観葉植物を取り入れる場合は日頃の手入れが必要で予想よりコストがかかることもある
青系 知的・信頼感・冷静さ・誠実さ・宇宙や空などの自然
  • リラクゼーションと適度な緊張感を与えるため集中力アップや冷静な判断を促せる
  • 外務が多い部署なら帰社後にクールダウンの効果大
  • 色の面積が広いと落ち着きすぎて意欲が低下する可能性もある
  • 配色を間違うと悲しい・冷たいといったマイナスイメージもつきやすい
黒系 重厚感・高級感・モダン・シンプル・おしゃれ・流行に左右されない存在感
  • スタイリッシュで高級感のある演出ができる
  • 気持ちを引き締め、落ち着いて執務に臨める
  • 引き締め効果があるので黒一色にすると部屋の圧迫感が強くなる
  • 配色を間違うと暗い・怪しいといったマイナスイメージもつきやすい
白系 清潔感・爽快感・信頼感・洗練・安心感・神聖
  • 膨張色のため室内の圧迫感を軽減できる
  • 清潔感にあふれ過ごしやすく生産性を高める
  • 光の反射が強くなり疲れを感じやすい
  • 汚れが目立ちやすい
  • 配色を間違うと無機質・殺風景といったマイナスイメージもつきやすい

その他にもグレーやパープル、オレンジといったカラーも人気です。ただし、どれを基調色にするとしても色の面積やアクセントカラー、他の色との適度な配色バランスが重要です。企業のイメージを最大限に反映できる色を検討しましょう。

・色調によってもイメージは変わる

さまざまなテーマカラーの印象などを紹介してきましたが、同じ属性色でも色調によってイメージが変わります。ここでは、特にオフィスに採用されている茶系のテーマカラーを例に、大きく3つの色調の違いについて説明します。

色調 印象 社内交流への影響
ナチュラル系 緊張感を和らげて親しみや温かみを感じさせる明るい色調 コミュニケーションの活発化に期待できる
ミディアム系 上質さや重厚感を感じさせる、やや暗めの色調 適度な緊張感を保ったコミュニケーションを可能にする
ダーク系 家具などとコントラストを効かせてモダンでおしゃれな空間を演出できる。深みのある暗めの色調 緊張感のある真剣なコミュニケーションを重視する環境を目指せる

自社において、どのような社内交流を目指したいかによっても色調の違いは重要です。テーマカラーを決定する際にはぜひ併せて検討してみてください。

■役員メンバーの意見を取り入れる

どれだけレイアウトを工夫したとしても、実際に利用する役員本人が使いづらいと感じるレイアウトになってしまっては意味がありません。

役員は日々、会社の中枢に関わる重要な業務をこなす必要があります。関連の深い中心部署と動線の良い場所や、秘書との連携がとりやすい場所など、役員のニーズに合わせたレイアウトを考えましょう。

また、場合によっては社内環境の改善や企業の業績アップを祈願して、役員室に風水を取り入れるといった考え方も多いです。役員の要望をできる限り反映させるため、さまざまなレイアウト例を参考にしながらイメージを具体化していきましょう。

 

カラーと配色の決め方に関する詳細はこちらの記事でも解説しています。

役員室のレイアウトに関するよくある質問

最後に、役員室のレイアウトについてよくある質問をFAQにしてご紹介します。気になっていたけれど調べ切れていない疑問などを振り返り、ここで解決しておきましょう。

■役員室の広さの目安はどのくらい?

役員室の必須家具として、執務用デスク、チェア、書棚やワードローブなどがあります。それらの家具を置いて十分な執務スペースを確保できる広さの目安は、5坪前後が妥当です。

さらに来客に備えて応接スペースを設置する場合は、10坪程度の広さを目安にすると良いでしょう。

■役員室にはどのような家具や小物があると便利?

必須ではありませんがあると便利な家具や小物も多数あります。

たとえば、書棚と奥行きサイズを合わせたサイドボードがあれば、簡易的な書庫として利用できるうえ、天板に花を生けたり空いた上壁に絵を飾ったりとインテリアにも活用できます。

また、立ったり座ったりの作業が多い場合には、立ったままでも利用しやすい電話台も便利です。700mm程度の高さがあれば柔軟に利用できます。

役員室が応接室の役割を兼ねている場合は、来客を想定した家具も用意しておくと良いでしょう。たとえば、サイドテーブルやポールハンガーです。お茶出しをする際は一旦サイドテーブルにお盆を置き、飲み物を両手で持ってお出しするのがマナーです。スマートなおもてなしができるよう用意しておきたい家具と言えます。また、ポールハンガーを立てておけば、スペースをとらずにスタイリッシュにコートや帽子などをさっとかけることができます。ポールハンガーもさまざまな素材やデザインのものがあるため、役員室の雰囲気に沿ったものを選びましょう。

役員室は機能性と高級感をバランスよく取り入れよう

役員室のレイアウトで求められる機能はおもに、執務に集中できる静かなスペース・来客用の応接スペース・小規模ミーティングがしやすい設備・機密性の4つです。どれも重要な項目ですが、利用する役員本人の要望もしっかりヒアリングし、最適なレイアウトを検討しましょう。

さらに、機密情報を取り扱うことが多い役員室はセキュリティ面に十分な配慮が必要ですが、社内の環境を汲み取って役員と社員との交流への影響も考慮したいものです。レイアウトタイプとして個室型・フルオープン型・半個室型の3つが主流となっていますが、機密性と社内コミュニケーションの活発化のどちらも両立したい場合は半個室型がおすすめです。

役員室は役員個人のための空間でありながら、大切な顧客応対をおこなうこともある重要なスペースでもあります。会社のイメージを損なわないよう高級感や重厚感も取り入れることも意識して、最適な役員室のレイアウトを完成させましょう。

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