オフィスに社員食堂は必要?企業が設置するメリットや課題を解説
食堂
従業員の福利厚生の一環として、企業内にオフィスに社員食堂を設置するケースが多々見られます。
この記事では、オフィスに社員食堂を設置するメリットを解説します。また、事前におさえておきたいオフィスに社員食堂を設置する際の課題についても併せて解説するので、ぜひ役立ててください。
目次
オフィスの社員食堂の現状
社員食堂とは、オフィスで働く従業員のために企業が設置する給食施設や設備のことを指します。本来、オフィスの目的は従業員が働くことなので、食事を提供する場所は不要だと考える人もいるでしょう。
しかし、オフィスの立地によっては近隣に飲食店やコンビニがない、セキュリティ面の関係で出退勤以外は社外に出られないケースもあります。そのため、福利厚生の一環としてオフィスに社員食堂を設置する企業もあります。
独立行政法人労働政策研究・研究機構の調査によると、福利厚生の一環として社員食堂を設置している企業の割合は24.0%でした。社員食堂以外では、従業員に食事手当を支給している企業が20.6%でした。
※出典元:独立行政法人労働政策研究・研究機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査-企業/従業員アンケート調査結果-」
近年は、社員食堂の形が変化しつつあります。従来、社員食堂は従業員に食事を提供する場所でした。しかし、時代とともに設置目的やニーズが多様化し、健康増進やリフレッシュスペースとして併用するケースも増えています。
オフィスにおける社員食堂の運営方式
社員食堂の運営方式には直営方式、準直営方式、外部委託方式の3種類があります。それぞれ運営主体や従業員の雇用形態などが異なるため、社員食堂を導入する際には自社に適した方式を選ぶようにしましょう。
■直営方式
直営方式とは、社員食堂を自社で運営するスタイルです。調理師や栄養士といった運営に必要な人材は、企業が直接雇用します。直営方式は社員食堂で働く人の人件費が発生するため、資金に余裕がある大企業で採用されるケースがほとんどです。
内装やメニューなど社員食堂に関わることはすべて自社で決められるため、ほかの運営方式に比べて自由度は高いと言えます。直営方式の社員食堂は、自社の選考を受けに来た求職者や来客をもてなす場として活用されることもあります。デザイン性に優れた空間に仕上げれば、ブランドイメージの向上につながるでしょう。
■準直営方式
準直営方式は社員食堂専門の会社を別に設立し、運営を任せるスタイルです。会社を設立するために企業が出資するものの、実際に運営するのは別会社であり、準委託方式と呼ばれることもあります。
直営方式のように企業が直接運営しないため、人件費や食材費などのコストは発生しません。別会社への委託費は発生しますが、直営方式に比べて安価に収まるケースが多いようです。
■外部委託方式(アウトソーシング)
外部委託方式は、社員食堂の運営をすべて外部の会社に委託するスタイルです。運営に関わる従業員を雇用する必要がなく、メニュー開発も他社に任せられるため、人件費や開発コストも発生しません。
近年は、多様なニーズに対応した会社も多く登場しています。例えばオフィスに社員食堂を設置するスペースが十分に確保できない場合、限られたスペースを活用して給食のように、提供される食事を自席で食べるスタイルにすることも可能です。
【企業側】オフィスに社員食堂を設置するメリットと課題
オフィスに社員食堂を設置すると、コミュニケーションの活性化や従業員満足度の向上などが期待できます。その一方で導入コストがかかる、メニューが固定化しやすいなどの課題もあります。
■メリット
社員食堂を設置する企業側のメリットは、次のとおりです。
- コミュニケーションの活性化が期待できる
- 従業員の健康をサポートできる
- 従業員の満足度向上につながる
- さまざまな用途で活用できる
それでは、各メリットを詳しく解説します。
コミュニケーションの活性化が期待できる
社員食堂は、部署や役職を問わず多くの従業員が同じ時間に集まる場所となるため、普段仕事でのかかわりが少ない従業員間でコミュニケーションが発生する可能性があります。社員食堂では、仕事から離れてリラックスした状態で食事や休憩ができます。
気軽なコミュニケーションを取りやすくなるため、仕事以外の話で盛り上がることもあるでしょう。コミュニケーションの活性化は、良好な人間関係の構築につながるほか、新たなアイデアを生み出すきっかけになるかもしれません。
従業員の健康をサポートできる
企業にとって社員食堂は、従業員の健康をサポートする場にもなります。毎日のランチが外食では、栄養バランスが整った食事を摂るのは難しいでしょう。仕事に忙殺され、手作り弁当を持参する余裕のない従業員もいるかもしれません。
社員食堂では、栄養バランスに配慮したメニューが提供されているケースが多い傾向があります。ランチの一食でも社員食堂で栄養バランスが整った食事を提供すれば、従業員の健康増進につながります。
従業員の満足度向上につながる
オフィスに社員食堂を設置することで、従業員の満足度向上が期待できます。従業員の満足度が低い場合、仕事に対するモチベーションが低下し、生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。
モチベーションを向上させるためには、福利厚生を充実させることも重要です。社員食堂は、福利厚生の一環として従業員に提供できます。従業員自身や家族が食事を準備する手間が省けるため、心身の負担を軽減でき、満足度の向上に寄与するでしょう。
さまざまな用途で活用できる
本来、社員食堂は従業員に食事を提供する場所です。しかし、工夫次第では、食事や休憩以外のさまざまな用途で活用することが可能です。例えばランチタイム以外は、リフレッシュスペースとして併用する方法もあります。また、ミーティングスペースやABWにおけるワークスペースの選択肢にもなり得ます。
設置する際はフレキシブルな使用を想定し、収納できる家具の採用やレイアウトを工夫してみましょう。懇談会や研修などの多目的で利用できるようになります。
■デメリット
社員食堂を設置する企業側のデメリットは、次のとおりです。
- 導入・運営コストがかかる
- 設置には広いスペースが必要になる
- メニューが固定されやすい
それでは、各デメリットを詳しく解説します。
導入・運営コストがかかる
オフィスに社員食堂を設置する課題の一つは、導入や運営にコストがかかることです。社員食堂の導入や設置にかかるおもなコストは、次のとおりです。
- 工事費
- 設備・備品の購入費用
- 人件費
- 食材費
- 水道光熱費
- 衛生用品費
- メンテナンス費 など
コストがどのくらいかかるかは、運営方式によって異なります。特に直営方式はすべてを自社で手がけなければならないため、コストが高額になりやすいでしょう。社員食堂を設置する際には導入コストだけでなく、運営コストも考慮する必要があります。
設置には広いスペースが必要になる
ランチタイムは多くの従業員が社員食堂を利用するため、設置する際にはそれなりのスペースを確保しなければなりません。スペースは、従業員数が多いほど広さが求められます。
また、社員食堂は、労働安全衛生規則の基準に沿った設置が必要です。労働安全衛生規則で義務づけられているおもな基準は、次のとおりです。
- 食堂と炊事場は区別すること
- 食堂の床面積は一人当たり一平方メートル以上とすること
- 食堂には食卓や椅子を設置すること
- トイレや廃物だめから適当な距離のある場所に設置すること
- 食器や食材を消毒する設備を設置すること など
※出典元:e-GOV法令検索「労働安全衛生規則」
例えばトイレの近くにしかスペースを確保できない場合、労働安全衛生規則に違反することになります。オフィス内で十分なスペースを確保できなければ、社員食堂の設置は難しいでしょう。
メニューが固定されやすい
社員食堂は福利厚生の一環として従業員に提供されるケースが多いため、一般的な飲食店よりもリーズナブルな価格設定にされています。しかし、コスパや栄養バランスを重視するあまり、メニューのバリエーションが少なくなる可能性があります。
頻繁に社員食堂を利用する従業員は、代り映えしないメニューに飽きてしまうことも想定されるため、定期的に内容の見直しが必要です。固定化を防ぐためには、日替わりや期間限定などでメニューにアクセントを加えるのも一つの方法です。
【従業員側】オフィスに社員食堂を設置するメリットと課題
オフィスに社員食堂を設置すると、従業員側には食費の節約や移動時間の削減などのメリットがあります。その一方でランチタイムは混雑しやすく、仕事の状況によっては利用できない従業員が出てくる可能性もあります。
■メリット
社員食堂を設置する従業員側のメリットは、次のとおりです。
- 昼食代を節約できる
- 移動時間を削減できる
- 栄養バランスの良い食事が摂れる
それでは、各メリットを詳しく解説します。
昼食代を節約できる
従業員にとって、オフィスに社員食堂があるメリットの一つは、昼食代を節約できることです。社員食堂の運営に関わる大部分のコストは、福利厚生の一環として企業が負担しています。
一般的な飲食店に比べてリーズナブルな価格で設定されているケースが多く、従業員はお得にランチを楽しむことが可能です。企業によっては、従業員に無料で食事を提供しているところもあります。
移動時間を削減できる
社員食堂はオフィス内に設置されているため、移動時間を削減し、貴重な休憩時間を有効活用できます。従業員の休憩時間は限られており、食事をするために社外に出る場合、移動時間を考慮する必要があります。
場所によっては移動に時間がかかり、食事をしてオフィスに戻るだけで休憩時間が終わってしまうケースもあるでしょう。社員食堂で食事を済ませれば、余った休憩時間を自由に過ごせるようになります。
栄養バランスの良い食事が摂れる
オフィスに社員食堂があれば、従業員は栄養バランスが整った食事を手軽に摂れます。社員食堂を設置するにあたって栄養士を雇用している企業や、雇用していなくてもメニューの監修者として迎えている企業もあります。
そのため、社員食堂では、栄養バランスに配慮されている食事が提供されていることがほとんどです。従業員自身が栄養バランスを把握できるよう、メニューにカロリーや塩分の使用量などを記載しているケースもあります。
■デメリット
社員食堂を設置する従業員側のデメリットは、次のとおりです。
- 営業時間に限りがある
- ランチタイムは混雑しやすい
それでは、各デメリットを詳しく解説します。
営業時間に限りがある
企業によっては、社員食堂を24時間稼働、従業員がいつでも食事を摂れる環境を整備しているところもあります。しかし、これはごく一部のケースであり、通常は平日のランチタイムを中心に営業時間が限定されています。
社員食堂の営業時間が限定的な場合、仕事やシフトの関係で利用できない従業員が出てくる可能性もあります。社内に利用しやすい従業員と利用しにくい従業員がいると、不公平感が生じ、満足度やモチベーションの低下につながるかもしれません。
ランチタイムは混雑しやすい
社員食堂は、ランチタイムを中心に営業されているケースがほとんどです。同じ時間帯に従業員が一斉に社員食堂に集まると、混雑状態となり、ゆっくりと食事を摂れない事態が発生する可能性があります。
特にスペースを十分に確保できない場合は、社員食堂で食事を摂りたくても、利用できない従業員が出てくることも想定されます。ランチタイムの混雑を解消するためには、休憩時間をずらす、キャッシュレス決済を導入するなどの検討も必要です。
社員食堂以外にも従業員に食事を提供する方法もある
オフィスに社員食堂を設置する場合、導入や運営にコストがかかります。また、十分なスペースが確保できない場合は、社員食堂の設置を断念せざるを得ないケースもあるでしょう。
社員食堂の設置が難しい場合は、別の方法で従業員に食事を提供することも可能です。
■オフィスコンビニ
オフィスコンビニとは、食べ物や飲み物が入ったケースをオフィスに設置し、無人で販売するサービスです。無人なので人件費が発生せず、従業員の勤務状況に合わせて24時間稼働することも可能です。
食品や飲料のほか、コンビニのように日用品を販売できるタイプもあります。決済方法はサービスによって異なりますが、野菜の無人販売所のように箱にお金を入れる方法やキャッシュレス決済で支払う方法などさまざまです。
近年は従業員からのニーズが高まっていることもあり、福利厚生の一環としてオフィスに設置する企業が増えています。
■デリバリーサービス
デリバリーサービスとは、オフィス内に食事を販売しに来てくれるサービスです。販売スペースは社員食堂ほどの広さを必要としないため、オフィス内に十分なスペースが確保できない場合でも利用できます。
近年、オフィス向けのデリバリーサービスが数多く登場しており、社員食堂のスペースの確保が難しい都市部を中心にニーズが高まっています。福利厚生の一環として導入すれば満足度の向上に寄与する可能性もあるでしょう。
■設置型社食
設置型社食とは、食べ物が入った冷蔵庫や自販機をオフィス内に設置し、従業員に食事を提供するタイプです。デリバリーサービスと同様に社員食堂ほどのスペースを必要としないため、小規模なオフィスでも導入しやすいのが特徴です。
弁当や総菜などの食べ物は基本的に冷蔵庫で保管されているため、そのまま食べるには冷たい状態です。スペース付近に電子レンジを設置しておけば、温めてから食べることが可能です。
オフィスに社員食堂を設置した企業の事例
最後に、オフィスに社員食堂を設置した企業の事例を紹介します。近年は、おしゃれな社員食堂が増えています。社員食堂を応募者や来客をもてなす場として活用することを想定している場合は、デザイン性にこだわるとイメージアップも期待できるでしょう。
■全日本空輸株式会社(ANA Blue Base)
全日本空輸株式会社は、2019年に研修センターを新築しました。研修センター内の社員食堂は、食事を提供する場としてだけでなく、ユーティリティスペースとして機能する空間に仕上げています。移動や収納ができるタイプの家具を採用しているため、用途に合わせて容易にレイアウトを変更できます。
■住友電工電子ワイヤー
住友電工電子ワイヤー株式会社では、グループの鹿沼工業団地進出50周年を記念し、新たな厚生棟を新築しました。眺望の良い2階には、大規模な社員食堂を設置しています。
従業員が移動する際に交錯や混雑が生じないよう、食堂に続くスロープにはワンウェイプランを採用しています。スロープはメニューを見ながら歩ける動線に工夫されており、危険性のある階段上の待ち行列も解消されました。
■コーナン商事
コーナン商事は本部の移転を機に、オフィス内に社員食堂を設置しました。オフィスのスペース効率を考慮し、社員食堂は大会議室と兼用を想定して作られています。
現在は社内ミーティングのほか、派遣社員の業務スペースとしても使用されています。従業員の満足度は高く、社員食堂設置への感謝の声が寄せられているようです。
まとめ:社員食堂は多目的スペースとしても活用できる
本来、社員食堂は従業員に食事を提供するスペースです。しかし、近年は設置目的やニーズが多様化していることもあり、さまざまな用途で利用されるケースが増えています。ランチタイム以外は、会議や研修スペースとして利用するのも良いでしょう。
社員食堂には複数の運営方式があり、それぞれ運営主体や従業員の雇用形態などが異なります。導入や運営にはコストがかかるため、予算とのバランスを考慮し、自社に適した方式を選ぶことが大切です。
また、社員食堂のデザイン性を高めれば、ステークホルダーに良い印象を与えられます。おしゃれな社員食堂の設置を検討している場合は、オフィスデザインのプロであるアイリスチトセにご相談ください。自社の目的やニーズに寄り添い、納得いただけるプランをご提案いたします。