食事補助を導入するメリット|提供方法や福利厚生費として計上する条件を紹介
食堂
従業員の満足度向上につながる施策のなかで、福利厚生の充実は一つのポイントとなります。なかでも食事補助は、従業員を健康面からサポートできる福利厚生として注目度も高く、多くの企業で導入されている施策です。
しかし、一言で食事補助といっても、社員食堂の開設やデリバリーサービスの利用など、実施方法もさまざまです。会計上の処理方法など気になるポイントも数多くあります。
この記事では、福利厚生として食事補助の導入を検討している企業や担当者に向けて、食事補助を導入するメリットや提供方法、導入手順などをご紹介します。
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目次
福利厚生として食事補助を導入するメリット
はじめに、福利厚生として食事補助を導入することのメリットについてご説明いたします。
◾️従業員の健康をサポートできる
福利厚生として食事補助を導入すれば、食事を通して従業員の健康をサポートしやすくなります。従業員は栄養バランスが整った食事を摂れるようになり、食生活の乱れによる悪影響を避け、より健康な状態で仕事に取り組めるようになります。
従業員が健康的に働ける環境を作ることは道義的に重要というだけでなく、生産性や企業イメージの健全化の観点からも重要です。近年は多くの企業で健康経営への取り組みが推進されている点からも、労使ともに有用性の高い福利厚生の一つと言えるでしょう。
健康経営については、次の記事でより詳しく解説しています。ぜひこの記事とあわせてご覧いただき、福利厚生を実施する際にお役立てください。
健康経営についてわかりやすく解説|メリットや健康経営優良法人の認定基準などを紹介
◾️従業員満足度の向上が期待できる
食事補助は家賃補助などと同じく従業員に対する経済的支援の側面を持つため、従業員満足度の向上を期待できます。社員食堂などでより安価にランチを取ることができれば、食費をおさえやすくなるため、経済的な負担軽減につながるでしょう。
また、近年は物価高騰により人々の節約志向が高まっていることから、「食費をできるだけおさえたい」と考えている人も少なくありません。コンビニ弁当や外食は食費がかさみやすく、自炊により弁当を持参した場合も手間というコストがかかります。
食事補助によって「なるべく安く、手間の無いランチ」を実現することは、近年の人々のニーズに合致しており、従業員の支持を得やすいでしょう。企業選びで福利厚生を重視する求職者も増加傾向にあるため、採用市場でのアピール材料にすることも可能です。
食事補助の具体的な提供方法
福利厚生として実際に食事補助をおこなう場合、重要になるのは具体的な提供方法です。代表的な方法を4つご紹介します。「どの提供方法が自社に合っているのか」という点を意識して見ていきましょう。
◾️社員食堂
オフィス内に社員食堂を設置すれば、直接的に従業員に食事を提供できます。社員食堂の運営方法には、全てを自社で賄う直営方式、社員食堂専門の会社を別に設立する半直営方式、すべてを外部の会社にアウトソーシングする外部委託方式があります。
社員食堂はさまざまな部署の従業員が集まりやすいため、単なる食事補助だけでなく、部署を超えたコミュニケーションの活性化にもつながるでしょう。また、外食やコンビニへ向かう必要がないため移動時間などを削減でき、その時間分休息を取りやすくなります。
一方で、オフィス内に十分なスペースを確保できなければ設置が難しい点が課題となります。また、導入・運営ともに大きなコストがかかります。オフィス面積や資金のリソースの確保見込みを立てたうえで、社員食堂の採用を検討しましょう。
社員食堂については、次の記事でも詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
オフィスに社員食堂は必要?企業が設置するメリットや課題を解説
◾️デリバリー
食事補助の実施には、デリバリーサービスも有効です。外部業者と食品のデリバリーサービスを契約することで利用できます。宅配された弁当などの食品を、従業員が各自のスペースや休憩スペースで食べるかたちです。
社員食堂ほどのスペースを必要としないため、オフィススペースに余裕がない企業でも導入が可能です。近年ではオフィス向けのデリバリーサービスも増えているため、利用のしやすさが利点の食事補助と言えるでしょう。
一方、配送時間や最低注文個数に制限があるケースも多く、従業員の職種や勤務時間によっては運用が難しい場合もあります。気になったデリバリーサービスを見つけた場合には、対応可能時間や個数、配達範囲をチェックし、利用可能かどうかを確認しましょう。
◾️設置型社食
設置型社食は、オフィス内に冷蔵庫や冷凍庫を設置し、従業員が自由に食べ物や飲み物を購入できるシステムです。社員食堂に比べてコストや手間がかかりにくく、デリバリーほど時間の縛りが無い点にメリットがあります。
冷蔵庫や冷凍庫を設置できるスペースさえあれば、従業員が好きな時間に食事を取れるようになるため、多くの従業員に利用してもらえるでしょう。一方で、売り切れで購入できない従業員が出てくる可能性もあるため、注文する個数には注意する必要があります。
冷蔵か冷凍で保管できるメニューしか用意できない点も意識しておきましょう。暖かい食事を提供したいと考える場合には電子レンジなどを用意する必要もあります。
◾️食事チケット
従業員に食事チケットを配布することも食事補助になります。飲食店で利用可能な食事チケット(電子カードや食事券)を従業員に配り、外食の費用を補助するというかたちで実施できます。
チェーン店をはじめとした多くの飲食店が食事チケットに対応しているため、従業員は自らの好みに合わせて食事の内容を選べます。また、従業員がスマートフォンを利用していれば電子決済を使ってランチ代を補助することも可能です。
しかし、食事チケットを利用する従業員は飲食店に赴く必要があります。昼休みの移動時間がかかることはもちろん、近隣に加盟店がない場合は利用が難しくなることも考慮しておく必要があるでしょう。
食事補助を福利厚生費として計上するための条件
食事補助は法定外福利厚生に該当するため、法律で実施を義務づけられた制度ではありません。そのため、導入するかどうかは企業の裁量に委ねられています。
会計処理上の対象税目は源泉所得税ですが、一定の条件を満たす場合、福利厚生費として計上が可能です。
福利厚生費は経費であり、食事補助の費用をここに計上することで支払うべき税金も少なくなります。食事補助を福利厚生費として計上するためには、次の3つの条件を満たしている必要があります。
- 条件1:現物給付であること
- 条件2:従業員の負担額が半分以上であること
- 条件3:補助額が月額3,500円(税抜)以下であること
それぞれの条件の詳細を解説します。
◾️条件1:現物給付であること
食事補助を福利厚生費として計上する条件の一つとして、現物給付であることが求めらます。現物にあたるものは食事そのもの、食事券、電子カードなどで、現金給付は除外されます。
仮に食事補助をしようとして食事代を従業員に手渡すと、その金額は給与の一部と見なされます。給与は福利厚生費として計上できないため、食事補助にかかった費用により多く税金を支払う必要が出てしまうでしょう。
節税上の観点から、食事補助を実施する際には、現物給付をおこなうことが大切です。食事補助の実施の際には給付方法に注意しましょう。
◾️条件2:従業員の負担額が半分以上であること
食事補助を福利厚生費として計上するためには、従業員が食事費用の半分以上を負担することが必要です。この条件を満たさない場合も企業が提供する食事補助は給与と見なされ課税対象となるため、福利厚生費として計上できません。
仮に一人の一回の食事代が1,000円の場合、従業員が500円以上を負担しなければなりません。また、社員食堂で提供される食事の価格もこの基準に則って設定することが求められます。
従業員に対しては、会社の実施する食事補助は全額負担ではないことを理解してもらうことも大切です。半分以上の負担でも、コンビニ弁当や外食より安価な食事を提供しやすい点も加えて伝えましょう。
◾️条件3:補助額が月額3,500円(税抜)以下であること
食事補助を福利厚生費として計上するためには、補助額の金額が従業員一人当たり月額3,500円(税抜)以下であることも求められます。
補助額は、食事代全額から従業員負担額を差し引いた金額となります。たとえば、食事代が5,000円で従業員が2,000円を負担する場合、補助額は3,000円となるため条件を満たすことが可能です。
福利厚生としての食事補助導入の基本的な手順
実際に食事補助を導入する際のプロセスは次のとおりです。
- STEP1:提供方法の検討
- STEP2:食事補助の予算の検討
- STEP3:導入準備
- STEP4:運用開始
それぞれのステップでおこなうべきことを把握しましょう。
◾️STEP1:提供方法の検討
まずは「どのような手段で食事補助を提供するか」を明確にすることが大切です。自社が食事補助で解決すべき課題を明確化できれば、適切な提供方法を見つけ出すことができます。
たとえば「オフィスが飲食店から離れている」「飲食店への移動時間がかさんでしまい昼休みが削れている」といった課題がある場合には、オフィス内で食事を済ませられる社員食堂、または設置型社食が適した食事補助の選択肢となります。
課題発見のためにはオフィス内に務める全従業員を対象にヒアリングなどの調査をおこなうことも大切です。担当者・関係者の一存で福利厚生を決めてしまうと、一方的な施策となります。「食事チケットを導入したが、オフィス周囲の飲食店に需要が無いため福利厚生の効果が出ない」といったケースは避けたいものです。
従業員満足度の向上という食事補助のメリットを得るためにも、従業員に対ししっかりとニーズ調査をおこなうようにしましょう。
◾️STEP2:食事補助の予算の検討
自社の課題解決に適した提供方法を決定した後は、食事補助の予算を検討しましょう。また、食事補助が福利厚生費として認められるためには、税務戦略も考慮しなければなりません。
従業員の負担額が食費総額の半分以上である、補助額限度は従業員一人当たり月額3,500円(税抜)以下といったポイントを意識して予算を決め、その範囲で十分なメリットを得られる食事補助を実施することが求められます。
また、税務面だけでなく、導入および運営コストを考慮することも重要です。「食事補助を無理なく継続実施できるか」という観点も踏まえて予算を決定しましょう。
◾️STEP3:導入準備
食事補助の提供方法や予算を決定したあとは、本格的な導入準備を進めましょう。提供方法によっては大掛かりな準備が必要になることも多いため、計画的な実施が大切です。
例えば、社員食堂を自社で運営する直営方式で導入するなら、設置工事や食堂の調理師などの人員確保、メニュー開発などが必要です。デリバリーサービスを利用する場合は、サービスの運営会社の選定、プランの策定、必要個数の決定などの準備が要ります。
また、導入前に試食会などを開催することも有効な選択肢です。試食を通じて複数社のデリバリーサービスを比較検討し、従業員にとって好ましいものを選ぶことができれば、導入後の満足度向上をより期待できるでしょう。
◾️STEP4:運用開始
導入準備の完了後、いよいよ食事補助の運用開始となります。すぐに施策の効果が出るとは限らず、また施策を導入したことによる新たな課題が発見されることもあるため、運用状況を注視することが大切です。
運用開始後の利用状況や不満、改善点などを発見するためには、従業員に対するアンケート調査が有効です。従業員が食事の量や質、価格や栄養、メニューの豊富さなどをどう評価しているのかを受け止め、課題が発見されたら改善策を講じるようにしましょう。
食事は毎日摂るものである以上、食事補助も長期的に実施される取り組みとなります。従業員の満足度を高めるためにも、継続的な改善ができる運用体制を構築できるようにしておきましょう。
福利厚生として食事補助を導入する際のポイント
福利厚生として食事補助を導入する際には、次のポイントも意識しておきましょう。
- 平等性を重視する
- オフィスづくりの専門家へ相談する
それぞれの詳細を解説します。
◾️平等性を重視する
食事補助をはじめとして、福利厚生を導入する際には「可能な限り多くの従業員が平等に制度を利用できる」点に注意する必要があります。
福利厚生には特定の従業員しか利用できないものがあります。食事補助であれば、社員食堂やデリバリーなど提供可能な時間が限られるものが挙げられるでしょう。日勤者と夜勤者が分かれている組織では、日勤者しか食事補助を受けられない可能性が出てきます。
従業員の間で差ができてしまうと、福利厚生を利用できない不満から従業員満足度を低下させてしまう恐れがあります。日勤者と夜勤者の両方が居るオフィスでは設置型社食を導入するなど、できる限りすべての従業員が利用できる平等な福利厚生を意識しましょう。
◾️オフィスづくりの専門家へ相談する
食事補助の提供方法によっては、オフィスの大幅なレイアウト変更が必要になる場合があります。例えば、社員食堂を設置する際にはキッチンや給排水工事が必要となり、制度導入が大規模なプロジェクトになることは避けられないでしょう。
工事だけでなく、食堂のデザイン検討や信頼できる工事業者の選定など、やるべきことは多岐にわたります。専門知識が必要な場面も多く、自社だけで全てを賄おうとすれば負担は大きいため、オフィスづくりの専門業者の手を借りることも検討してみましょう。
アイリスチトセはオフィス作りに関するノウハウや実績を豊富に保有しており、企業それぞれのスタイルに適したオフィスレイアウト変更の提案が可能です。社員食堂に関する次の記事もお読みいただき、ぜひ利用を検討してみてください。
まとめ:従業員のニーズを調査して食事補助を福利厚生に加えよう
食事補助の導入は、従業員の健康維持や満足度向上に大きく貢献します。従業員に対する健康的・経済的な支援になるだけでなく、福利厚生の充実化によって企業イメージの向上や求職者増加も期待できる施策です。
食事補助の提供方法としては社員食堂、デリバリー、設置型社食、食事チケットなどの複数種類があります。オフィスに勤務する従業員にニーズ調査をおこない自社に最適なスタイルを導入しましょう。