【インタビュー】株式会社KOMPEITO「オフィスで野菜が生む効果」

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【インタビュー】株式会社KOMPEITO「オフィスで野菜が生む効果」

オフィスで野菜 渡邉取締役

※感染対策を行った上で取材を行っています。

「食」から始める健康経営として全国各地の地産野菜をオフィスに取り入れる設置型の健康社食「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」のサービスを展開する、株式会社KOMPEITO様。
今回はそのビジネスのきっかけや「食」「健康」という観点からオフィスはどうあるべきなのか、詳しいお話を代表取締役 渡邉 瞬様にお伺いしました。

社員の健康に向けた動き

「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」というビジネスを始めたきっかけについて教えていただけますか?2014年から「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」(以下、オフィスで野菜)を始めまして8年ほど経ちました。
これは社員向けの食の福利厚生サービスで、冷蔵庫をオフィスでレンタルしていただき、そこにサラダやカットフルーツ、惣菜などを週1~定期的にデリバリーさせてもらうビジネスを展開しています。

今でこそオフィスに野菜を置くことは健康経営の一環として認識されつつありますが、始めた当初は「野菜」が「健康」とイコールになるとは全く意識していませんでした。

この気付きに至るまで遡ってお話させていただくと、私は元々新卒で日系のコンサルティングファームに就職していました。
そこで農業分野のコンサルティングに関わり、生産者の方々や組合など様々なところへヒアリングをしている中で、あることに気が付きました。

農業については「売り方」がとても少ない業界なのです。
組合に卸す、飲食店に卸す、Eコマースで販売するなど、数種類の方法しか確立されていませんでした。

そういったビジネススタイルでありながら、話を聞くと農業の担い手はどんどん高齢化し業界としてはシュリンク傾向にあるというのです。ですが、生きていくうえで「食」は非常に大切ですし、国産であることに対しての需要もある。では、どうすればこの業界が盛り上がるのかと考えました。

最初に始めたのは、生産者とエンドユーザーを繋ぐEコマースを作りました。
そしてその次に八百屋を始めました。
なぜ八百屋を始めたかというと、農作物を販売する上で基本となる売り方が八百屋だと思い、ここから業界の肌感覚を培いたいと思って始めました。

オフィスで野菜 渡邉取締役

※八百屋を展開していた当時から続くトレードマークのかぶりもの姿でも気さくに対応いただきました。
※感染対策を行った上で取材を行っています。

当然なかなか儲からず、売れ残った野菜を知り合いの会社に持っていくという毎日でした。
夕方や真夜中に「野菜を買ってください。」「売れ残っちゃってホントに厳しいんです。」というと皆さん仕方がなく1,000円ほどは買っていただけました。

その当時お世話になっていた、ある企業の社長さんから、「持って帰るのが面倒だからその場で食べられるようにした方がいいんじゃない?」と言われたのです。

確かに、シリコンバレーのIT企業やベンチャー企業ではサラダバーなどを福利厚生の一環として導入していることが一般的になってきていました。
日本でも需要があるのではないかというアドバイスを受け、「やってみよう!」ということで、まずはミニトマトをパック詰めしてオフィスに持っていくことから始めました。

無料だともちろん皆さん食べますし、100円だと買います。でも200円だとなかなか買わないということがわかってきました。

ところが100円では採算が取れずビジネスとして成り立ちません。
「だったら会社にお金を払ってもらって、従業員が100円で手に取れるようなサービスを作ろう。」ということでこの「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」というビジネスモデルができたのです。

オフィスで野菜 渡邉取締役

※感染対策を行った上で取材を行っています。

では元々は企業の健康促進を目的として始めたサービスではなかったということでしょうか?
そうですね。
「野菜」を企業に持っていくと「健康」にトランスファーされる。そこで野菜は「健康」なんだなと気が付きました。

日本の人口推移は2008年をピークとして以降、減少し続けています。そして総人口の減少だけでなく、出生率の低下によって総人口に占める65歳以上の割合がどんどん増えていく。そうした状況の中でも、企業が成長していくためには人材は必要不可欠です。
そうすると企業は将来的に必ず健康に投資をし始めて、人材の取り合いになると考えました。

それであれば、「野菜」という「健康」はニーズとして確実にあるだろうし、今までにない売り方で生産者の流通経路として確立していけば面白いのではないかということが、このビジネスをスタートしたきっかけです。


このコロナ禍でリモートワークが一気に浸透しオフィスに出社しないという選択も増えてきました。
業績に変化はあったのでしょうか?
正直なことを言うと、初めは「このままではまずい」と思って個人宅向けのスムージー配送サービスを始めました。これもトントン拍子で導入いただいていましたが、初めの緊急事態宣言が解除されてからオフィスde野菜に関してのお問い合わせがとても増えました。

緊急事態宣言後のこの動きは、外的要因と内的要因があると考えています。

まず外的要因として、東京や大阪についてはトレンドとしてはダウンしていましたが、
それ以外の地方都市については、リモートワークになかなか移行できず対面でやらざるを得ない業態が多くありました。
首都圏であれば飲食店舗が夜営業はしないけれど、昼営業だけするという方法が成立しますが、地方都市はそもそも夜営業をしないのであれば、昼営業もしないお店が多く完全に閉まります。
また、一部のリモートワーク導入により社食運営が難しくなったり、中食することで感染リスクを緩和したいという声も多くありました。

そこで社内で食事が完結するような環境を作る必要が出てきたこと、そうした環境を作るのであれば健康的な方がいいということで我々にお問い合わせいただくことが増えました。これが内的要因です。

SDGsへの取り組み

オフィスで野菜 SDGs

話は変わりますが、SDGsに配慮しているものなどございますか。そうですね。地場野菜の活性化ということで「農業」と「健康」の側面から取り組んでいます。
提供している商品についても地域によって異なります。
できるだけエリアに近いところの食材を積極的に活用して地産地消に取り組んでいます。

私たちがサービスとして提供しているものは加工されているので、流通に出せない規格外食材なども積極的に使用し、フードロス対策として取り組んでいます。
流通に出せないと言っても古くなった野菜を使用しているということではなく、例えばにんじんの場合、一定の大きさを超えて大きくなりすぎると流通にのせることができません。そういった食材を積極的に加工して使用しています。

それは、もともとの立ち上げの原点は「どうすれば業界が盛り上がるのか」と考え始めたところからでしたので、
フードロス対策や地産地消などを通して一次産業が盛り上がるよう心掛けています。

企業が作るべきオフィスの姿

健康に関わるサービスを提供されている貴社ですが、貴社から見てオフィスとはこうあるべきだという考えはお持ちでしょうか?素直に思っているのは、オフィスに「来なさい」ではなく「来たくなる」オフィスを会社が作るべきだと思います。
そこは健康だとか、健康じゃないとかそういった視点とはまた別でみんなが「行きたい」と思うオフィスにすることが大前提だと思います。

具体的にはどういったオフィスを想像されていますか?まだ具体的に「来たくなるオフィス像」が固まっているわけではありませんが、「オフィスで野菜」も来たくなるオフィスにするためのツールのひとつとして使っていただけるのではないかと思います。

とある企業の方からご相談いただいたことがあるのですが、その企業は緊急事態宣言が発令された際に出社制限を実施したそうです。しかし、宣言が解除された現在も「リモートでいいじゃないか。」と社員の方々が中々オフィスに戻ってこなくなってしまったそうです。

会社の方針としては、コミュニケーションも含めて出社して欲しいと考えているものの、今までと同じオフィス環境のままでは難しいと考えて、「オフィスで野菜」のようなサービスを導入して、「来たい」と思ってもらえるオフィスにしたいというお話でした。

私たちも様々な企業の方にご提案する機会がありますが、やはり皆様リモートワークが普及したことによるコミュニケーションの在り方については、共通の課題として持っていると感じます。
そうですね。そこで「やっぱりオフィスって大事だよね。」と、どの企業も改めて感じていると思います。
当然、これからの時代は特にリモートもできる環境を持ちながら出社できるようにすることが大切だと考えていいます。

テキストでのやり取りでよくあると思うのですが、「あれ?もしかして怒っているのかな…?」「このメッセージ読んでくれているのかな?」など、受け手側が勝手に受け取ってしまうことがあるのでこういった部分はリモートワークの難しい部分だと思います。

そして、間接的な情報が入ってこないですね。リモートワークだと、自分と相手だけの直接的なやり取りだけになる。
ですが、オフィスにいるとなんとなく周囲の会話が聞こえてくることもありますし、顔を合わせることによってちょっとした表情の変化など、体調やメンタルの不調などにも気が付くことができると思います。

あとは、やはりオフィスに行かなくなると1日の歩行数は明確に減っていると思います。
運動不足になってしまうということももちろんですが、精神的な不調をきたす人も増えているので、そこは企業側としてケアしてあげないといけない部分だと思います。

具体的にいうと運動する機会を促す取り組みだったり、あとは食という部分で身体にいい食べ物を食べて健康に気を付けていきましょうということだったり、できることは色々あると思います。

ちなみに貴社はリモートと出社の割合はどれくらいなのでしょうか?弊社は元々コロナ禍になる前から自由にしていました。
「仕事をしてくれればいい」というスタンスなのでオフィスに出社しようが、しなかろうがどちらでもいい。
そういったスタンスにしているのですが、みんな出勤してくるんですよ。(笑)
在籍者数35名の内、だいたい20名以上が出社してきますね。

まさに「来たくなるオフィス」ですね。オフィス環境として何か工夫されているのでしょうか?雰囲気としてはリラックスして仕事はしやすいのではないかと感じています。
あまりとやかく言うこともないですし、眠い時は寝ていたり、しゃべりたいときはしゃべっていたり、自由にやっています。そこは良い部分だと思います。

できる限り無理なく仕事をして欲しいと考えているので、仕事でより良いパフォーマンスをしてもらうために、それ以外のストレスはなるべく排除したいと思って、オフィス内土足厳禁など工夫はしています。

オフィスで野菜 渡邉取締役

※感染対策を行った上で取材を行っています。

自社のオフィスに対してこういったものを今後取り入れていきたいなということはありますか?ふたつありましてひとつは「運動できる場所」。そしてもうひとつは「サウナ」です(笑)

まず運動できる場所については、先ほども少しお話させていただきましたが、コロナ前と比べて歩行数が減っているからです。

これは僕個人の記録なのですが、1日平均8,000歩から現在は6,000歩になっているんです。
それが日常になっているということは、歩行によるカロリーのアウトプットが3割減っているわけじゃないですか。
トレーニング器具などを導入して、社内でそのカロリーをアウトプットしやすいような環境を作りたいと思っています。

もうひとつは「サウナ」です。
聞いてみるとサウナにいく社員がとても多い。
これだけみんな会社終わったあとや休みの日にサウナに行くのであれば、社内にサウナを置いたらいいんじゃないかなと考えているんです。

一見ふざけているようにも思われますが、実はこれにもちゃんと狙いはあって、自社の社員の満足度だけではなく社員が誰かを誘って来る、そうするとそこでまた会社の紹介もできる。

そして最後に、フラットかつオープンなオフィスにしたいと思っています。
目的はやはりコミュニケーションです。
フロアが分かれると行き来する必要が出てくるので、できる限り見通せてオープンなオフィスにしたいです。

社員同士のコミュニケーションを活発にしたい。その姿勢を「場として形で会社側が示す。」ここは意識したいと思います。

「食」の福利厚生サービスを展開するまでに紆余曲折を経て、現在の「オフィスで野菜」にたどり着いた株式会社KOMPEITO 代表取締役 渡邉様にお話伺いました。
インタビュー中も八百屋時代のトレードマークである「かぶりもの」姿で気さくにお話いただきましたが、
時代に先駆け社員が自ら選べる働き方やストレスフリーなオフィス環境の整備などその手腕を感じるお話ばかりでした。
今回お伺いしたオフィスについても木目とグリーンを基調に穏やかな空気が流れ、社員自らが進んで出社するとういうお話がとても分かる素敵なオフィスでした。

本日はありがとうございました!

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