リモートワーク向けに拠点を確保!オフィスと連携して効率的に業務
働き方
リモートワークが急速に普及したことで働きやすさを感じる人は多いようですが、一方実際にやってみたからこその課題も明確になってきました。特に自宅でのリモートワークは仕事とプライベートの線引きが難しくなり、業務の効率も上がらないなどといった声が多く聞かれます。
このような問題を解決するために、リモートワークの拠点をオフィスと別に設置する企業も出てきています。
本記事では、リモートワークで拠点を設置する理由や選ぶポイントについて解説します。
目次
リモートワークで拠点が必要な理由
企業としてリモートワークの拠点を持つ必要性として、次の理由が挙げられます。
- 適切な業務環境を確保するため
- 従業員の心身のケア・モチベーション改善のため
- 対面でのコミュニケーション機会を創出するため
それぞれ詳しく説明します。
■適切な業務環境を確保するため
従業員に適切な業務環境を提供するため、企業側で拠点を確保するようにします。
リモートワークで業務をするには、通信環境を準備しなければなりません。近くにコワーキングスペースなどがなく、自宅にインターネット環境のない従業員は、インターネットを使える状態にしないと在宅勤務ができません。インターネット環境があっても通信速度が遅い場合、Web会議で不具合が起きる可能性もあります。
さらに、自宅でリモートワークをする際には、Web会議などでペットや同居人が写り込んでしまう可能性も考えられます。「自宅で飲食店を経営している」「ペットを飼っている」「自宅周辺の騒音が大きい」など、従業員によっては自宅の環境が業務に向かない状況というケースも考えられるでしょう。
そのような従業員に対して会社側で拠点を準備すると、リモートワークへの移行がスムーズにできます。
■従業員の心身のケア・モチベーション改善のため
リモートワーク拠点の設置は、従業員の心身のケアとモチベーション改善にも効果的です。
自宅勤務となった場合、仕事場とプライベートが同じ空間となるため、オンオフの切り替えが難しいと悩む声が多く聞かれます。業務時間が比較的自由になることから気が散ってしまい、モチベーションの低下を招く恐れもあるでしょう。生産性もあがらず、業務効率が大幅に下がることがあるかもしれません。通勤しなければ身体を動かす機会も減り、運動不足で体調にも影響が出る可能性もあります。
リモートワークの拠点があれば、外出する必要があるので気分転換にもなります。周囲に同僚がいることで集中して業務に取り組むことができ、モチベーションの維持改善も期待できるでしょう。
■対面でのコミュニケーション機会を創出するため
対面のコミュニケーション機会創出にも、リモートワーク拠点の設置が役立ちます。
業務連絡程度の連絡であれば、メールやチャットの利用で問題ありません。資料作成や事務作業などの業務も、一人で完結が可能です。
しかし、複数名でアイデアを出し合うブレインストーミングといったクリエイティビティの高い業務は、リモートワークには向きません。ブレインストーミングでは、場の雰囲気や話の流れを共有しながら取り組むことで多くのアイデアが生み出されます。このような業務を実施する際、複数の従業員が集まれる拠点があると対面のコミュニケーションが可能となるでしょう。
リモートワーク向けの拠点の種類と特徴
リモートワークの拠点としてよく使われる施設は、次の3種類です。
- サテライトオフィス
- コワーキングスペース・シェアオフィス
- レンタルオフィス
それぞれの特徴について、詳しく説明します。
■サテライトオフィス
サテライトオフィスは、本部機能のある拠点から離れた場所に設置される小規模なオフィスです。
支社や支店とは異なり、従業員の利便性を考えて設置されるオフィスとなります。通常のオフィスとほぼ同じ設備や環境が整っているので、リモートワークでも本社と変わらない業務に取り組めるのがメリットです。
サテライトオフィスは都市型・地方型・郊外型の3種類があり、通勤や移動の時間短縮や地方創生など、主要な目的によって設置される立地が異なります。事業規模により自社だけでサテライトオフィスを準備できない場合、他社とオフィスを共用するケースも見られます。
■コワーキングスペース・シェアオフィス
コワーキングスペース・シェアオフィスは、いずれも共有の作業スペースで仕事をするオフィスです。個別ではなく共有スペースとなることから、部屋単位でオフィスを借りるよりもコスト面で有利になります。
机や椅子だけではなく電源や通信環境など事務作業で必要な設備も整っており、新たに準備しなくてよいのもメリットの一つです。多くの施設では日単位や時間単位での利用は契約なしで利用でき、月単位になると契約が必要となります。
周囲に他の利用者がいるので孤独を感じにくい反面、情報漏えいのリスクは否定できません。利用の際は、セキュリティ面での対策が必要となるでしょう。
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■レンタルオフィス
レンタルオフィスは、同じフロアにある小分けされたオフィスを借りて使用するものです。自社専用で使える専有スペースがあり、会議室や休憩所などのスペースは他の利用者と共有して使用します。
レンタルオフィスの広さは、1名用から数十名で使えるものまでさまざまです。机や椅子などのオフィス家具や通信設備は専有スペースに備えつけられており、賃貸オフィスを借りるよりもコストがおさえられます。IT担当者が常駐しているところや秘書サービスを実施するレンタルオフィスもあり、人件費削減も期待できるでしょう。
内装を変えるのは基本的に不可能であり、長期利用になるとかえってコストが割高になる点がデメリットです。
リモートワークにおける拠点を選ぶときのポイント
リモートワーク拠点を設置するには、次の点を考慮して選ぶようにします。
- 従業員のニーズに合っているか
- 費用対効果はどれほどか
- 必要なサービスが備わっているか
それぞれ詳しく説明します。
■従業員のニーズに合っているか
リモートワークの拠点が従業員のニーズに合っているか、事前に調査するようにします。
せっかくリモートワークの拠点を設置しても、従業員の利用がなければ費用の無駄になります。現在リモートワークをしている、またリモートワークを検討している従業員からアンケートを採り、実際抱えている問題点や希望する利用方法を調査しましょう。アンケート内容の例としては、次のとおりです。
- 設置場所
- 広さ、利用人数
- 利用時間
- 必要な設備 など
アンケート結果を分析し、どのような拠点であれば満足度や利用頻度が高くなるか検討するとよいでしょう。
■費用対効果はどれほどか
リモートワーク拠点の設置による費用対効果も、検討すべきポイントです。
いくら利便性がよくても、コストが高くなりすぎると費用面で問題となります。設置する拠点のイニシャルコストやランニングコストを把握し、従業員の利用見込みと享受するメリット、売上などを考慮して費用対効果を検討しましょう。
条件のよい拠点が見つかった場合、もともとのオフィスを縮小して必要最小限のスペースとすることでコスト削減が可能です。逆に、拠点の設置によってトータルのコストがアップするケースも考えられます。
設置前に具体的な数字を計算してシミュレーションし、想定している予算内で対応できるか、コストをかけて拠点を設ける利点があるかなど、十分に検討しましょう。
■必要なサービスが備わっているか
準備するリモートワーク拠点には、自社で必要になるサービスが備わっているか確認しておきます。
先ほど述べたとおり、リモートワーク拠点にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。自社の利用方法に合わせた施設を選び、その中で必要な設備やサービスがそろっているか精査して絞り込みましょう。
- 予約なしでも利用可能か、利用時間は
- 個室は設置されているか、広さは十分か
- セキュリティ対策はどうなっているか
- 会議室の利用はできるか
- インターネット環境は整っているか など
すべてを満たす設備が見つからない場合、どの部分を優先するか考えておくのが大切です。
リモートワークの拠点を無料で確保する方法
できるだけ費用をおさえるために、リモートワーク拠点が無料で利用できる施設を探すのも一つの方法です。例えば、次に挙げる施設では無料で使用できるものもあります。
- 企業が独自に解放しているスペースを利用する
- 自治体が運営する施設を利用する
無料という性質上、常駐して業務するには向かない施設もあります。自身の利用方法でも問題ない場所であれば、利用を検討するようにしましょう。
それぞれ詳しく説明します。
■企業が独自に解放しているスペースを利用する
大手企業が独自に運営する無料スペースを利用する方法です。
サービスの一環として、コワーキングスペースを無料開放している企業があります。Wi-Fiや電源、簡単な打ち合わせのできるスペースなどが備えられており、気軽に利用できるのが大きなメリットです。
利用できる時間帯や日程が限られているケースもあるので、事前に確認することをおすすめします。また、誰にでも開放されているスペースであれば、利用したいときに満席で使えないことも想定しておきましょう。
■自治体が運営する施設を利用する
自治体が運営するコワーキングスペースやシェアオフィスで、費用のかからないところを利用する方法もあります。
自治体が運営しているため営業時間は昼間であることが多く、コワーキングスペースから個室利用できるところまで内容もさまざまです。費用がかからなくても予約が必要な施設もあるので、事前に確認するようにしましょう。
自治体の施設は無料ではなくても全体的に費用のおさえられたところが多く、地方創生と合わせて取り組んでいる自治体もあるので、いろいろと探してみるのもよいかもしれません。
拠点確保前にリモートワークの継続を判断
拠点を確保する前に、リモートワークを継続するか総合的な判断が必要です。
■リモートワークは減少傾向
2023年10月現在、リモートワークはおもに都市部では減少傾向が顕著です。
東京都が2023年9月に実施した調査では、都内企業でリモートワークを実施する企業は45.2%でした。緊急事態宣言時では60%を越えていたことを考えると、大幅な減少です。国土交通省の調査結果を見ても、令和4年度のテレワーク人口は前年と比較して0.9ポイント減少しており、全国的に減少傾向が今後さらに進むと予想されます。
リモートワーク減少の要因としては、次の理由が考えられます。
- 従業員のエンゲージメント低下が懸念される
- 従業員の平等性を維持したい
- 生産性低下が懸念される
新型コロナウイルスが第五類に移行したこともあり、今ではリモートワークを基本とした働き方から、原則出社という出社回帰の流れが出てきています。
■継続の判断は定量的に効果を分析してから
リモートワークが減少傾向であるとはいえ、自社で効果が見られている場合は取りやめる必要はありません。
リモートワーク実施におけるトータルコストや生産性、人材確保の状況や離職率などを数値化して分析し、継続か廃止のどちらかに舵を切るようにします。
もしくは、リモートワークとオフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」とするのも選択肢の一つとして考えられるでしょう。オンラインとオフラインのメリットを組み合わせることで、双方のデメリットを相殺できます。
「リモートワークを中心として、オフラインでやるべき仕事だけリアルの場で取り組む」といった企業の事例を、次の記事で紹介しています。ぜひ参考にしてください。
※参考:【インタビュー】株式会社ファイアープレイス「つながりをデザインする会社が考えるこれからの働き方とは?」 – IRISTORIES
まとめ:リモートワークを推進するなら拠点確保を検討しよう
リモートワークを従業員の自宅で実施する場合、業務環境の確保やモチベーション低下、コミュニケーション不足が懸念されます。それらを解決する施策として、リモートワーク拠点の設置は有効な施策です。
拠点を選ぶには、自社の運用方法に合った施設を選ぶことが大切です。従業員のニーズ、費用対効果、サービスの有無などを総合的に考慮して判断するようにしましょう。
最近ではオフィス勤務への回帰が進み、リモートワークは減少傾向となっています。拠点設置する前に、今後リモートワークをどのように進めるか、現状を分析して方向性を決めるのが重要です。リモートワークとオフィスワークを組み合わせた働き方も視野に入れ、リモートワーク拠点設置を検討するようにしましょう。