ICT環境を整備して働き方の改善!テレワークで業務に支障を出さない
働き方
働きやすい快適なオフィス環境を整えることは、従業員の満足度向上や生産性向上の観点からも重要です。オフィスレイアウトを工夫したり、オフィス家具を見直すなどのさまざまなアプローチ法がありますが、その一つとして注力すべきなのがICT環境の整備です。
本記事では、ICT環境の概要と企業に取り入れるメリット、整備する流れや注意点について詳しく解説します。オフィスにICT環境を導入したいとお考えの企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ICT環境とは|教育用語の一つ
ICT(Information and Communication Technology)環境とは、情報通信技術を教育現場に取り入れて活用する環境を意味します。
■授業や教室にICT関連機器を取り入れた環境
教育現場におけるICT環境の具体的な機器は、たとえば次のものがあげられます。
- パソコン・タブレット・スマートフォン
- プロジェクター・電子黒板、モニター
- インターネット・校内LAN など
これらにさまざまなソフトを組み合わせることで、授業での利用や教員の業務効率化へつなげていきます。
- 出席や成績をデータ管理する
- 学習アプリを授業や宿題として活用する
- モニターやプロジェクターに映像コンテンツを映す
- 連絡事項をメールやサイトでおこなう
- インターネットで遠隔授業を実施する など
■ICT環境の整備は国が主導
ICT環境の整備は、文部科学省が主導して進めてきました。
文部科学省は2017年に「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」を策定、2018年より5年間をかけて、段階的に教育現場のICT環境を整えるとしました。単年度1,805億円の地方財政措置を講じ、環境整備に必要な経費として利用するとしています。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大でオンライン学習の必要性が高まったことを受け、2020年より児童・生徒1名に対して1台のコンピューター端末を整備する「GIGAスクール構想」も進められました。
なお、2023年1月に「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」が2024年まで2年間延長されると決められており、学校教育現場での持続的・継続的なICT環境整備が求められています。
■ICT環境の整備に期待される効果
ICT環境の整備によって、教育現場では次のメリットが期待されています。
- 児童・生徒がデジタル機器に慣れる
将来的には、デジタル機器が使えて当然という時代が来る。早い時期から利用しておくことで、将来にも備えられる
- 授業の効率化がすすめられる
ICT環境によって、画像や動画を使った授業や教材の共有がたやすくなるため、効率よく授業をすすめられる
インターネット環境やデジタル端末の不調で授業ができないデメリットも考えられますが、メリットの部分が大きいため、今後も環境整備の推進が予想されます。
ICT環境の整備には企業も注目
ICT環境の整備は教育現場だけにとどまらず、企業からも注目を集めています。
■オフィスのICT環境を整備するメリット
オフィスのICT環境を整備することで、さまざまなメリットが考えられます。
単純作業は「RPA(Robotic Process Automation、定型作業を自動化できるツール)」、情報管理には「社内情報共有ツール」といったICTツールを使うことで、業務負担を減らして生産性向上が期待できます。また、顧客対応や情報共有もツールの利用で効率化が可能です。
さらに、インターネット環境があれば、決裁権をもった担当者が外出している場合でも複数の連絡方法を取りやすく、意思決定のスピードアップも期待できるでしょう。
このように、ICT環境整備によってオフィス業務の大幅な効率化が図れます。
■ICT環境を整備してテレワークに対応
テレワークやリモートワークなど多様な働き方をする従業員のサポートも、ICT環境の整備でコミュニケーション不足やセキュリティの問題などを解決できます。
ICT環境で役立つツールの一例としては、次の表のとおりです。
ICT環境で役立つツール | 概要 |
コミュニケーションツール | ・メールより気軽にコミュニケーションが取れるビジネスチャットツール ・ファイル共有や音声通話もできる |
労務管理ツール | ・Webへのログインで勤怠管理できるシステム
・遠隔地の勤怠や長時間労働の監視も可能 |
情報共有ツール | ・クラウドサービスの利用でファイルの共有が可能
・用途と予算に合わせたツールを選ぶようにすると良い |
セキュリティ監視ツール | ・情報漏えいを防ぐには必須のツール
・アクセス制限を厳しくすると使い勝手が悪くなるのでバランスを考える |
■企業のICT環境の整備は国も支援
政府によって、企業へのICT導入を支援する制度が立ち上げられています。一例としては、次のとおりです。
- 厚生労働省「働き方改革推進支援助成金」
長時間労働の見直しに取り組む中小企業に対して、労務管理用ソフトウェアや機器の導入などに対して助成金が支払われる制度
- 経済産業省「IT導入補助金」
中小企業・小規模事業者が、自社の課題やニーズに合ったITツール(パッケージソフトの本体費用、クラウドサービスの導入・初期費用など)の導入を支援する補助金制度
- 総務省「無料コンサルティング」
テレワークに伴う労務管理や、適したICT機器やシステムに関する相談を、無料で受けてくれる制度
上記以外にも、各自治体で独自に実施している支援制度もありますので、自治体の窓口へ問い合わせてみると良いでしょう。
オフィスのICT環境を整備する流れ
オフィスのICT環境を整備するには、次の流れでおこなうと取り組みやすいでしょう。
- ICT環境を整備する目的の明確化
- ICT環境の整備を担うプロジェクトチームの構築
- 自社の現状確認
- 社内の体制・制度を再構築
- 従業員への教育・研修
それぞれについて、詳しく説明します。
■1.ICT環境を整備する目的の明確化
まずは、ICT環境整備の目的を明確化します。
ICT環境を整えるには、解消すべき課題の洗い出しが重要です。導入目的がはっきりしていないと、思うような効果を得られずに期待外れの結果となる可能性も否めません。
「オフィス業務の効率化」「テレワークの推進」「生産性の向上」など、どのような問題を解決したいか明確にし、方針を決めて取り組むことが求められるでしょう。
■2.ICT環境の整備を担うプロジェクトチームの構築
方針と目的が明確になれば、実際に環境整備するための体制を整えます。
ICT環境が整えられると、一つの部署だけではなく全社的に影響します。経営・人事・総務・システム・営業などの各部署から代表者を選出し、プロジェクトチームを発足させると、意見交換がスムーズにすすむはずです。
プロジェクトチームでは、労務管理や情報共有、情報漏えい防止対策などに利用するツールの選定といった、運用に関する大枠のルール作りが求められます。ICT環境整備の目的を共有し、円滑に作業が進められる体制を整えることに注力してください。
■3.自社の現状確認
社内でICT環境が現在どの程度利用されているか、現状を把握しましょう。次のような項目は、特に事前に確認しておくべきポイントです。
- 個人情報の取り扱い
- 機密情報の保管、閲覧
- 従業員の勤怠管理
- 情報共有の方法
- コミュニケーションツールの有無 など
これらの項目でICTツールは現在使われているか、使われている場合どういったルールで運用されているか、今後の運用に耐えられるものなのかといった内容を精査しましょう。
同時に、新たにICT環境の整備を整備した場合に、どのように運用方法が変わるのかイメージしておくようにします。
■4.社内の体制・制度を再構築
ICT環境の整備によって、新たに社内ルールを構築することが求められます。
たとえば、テレワークやリモートワークであれば、次のルールを決めるようにします。
- 勤怠の管理方法
- 電子化された社内文書の持ち出し方法
- 情報漏えいを防ぐセキュリティ管理方法
- コンプライアンス教育の徹底 など
また、コミュニケーションツールだけではケアできない安全衛生については、社内に相談窓口を設置するといった対策も求められるでしょう。
ICT環境によるソフト面だけではなく、従業員の健康管理といったハード面のルールも合わせて整えることが大切です。
■5.従業員への教育・研修
ICT環境が整備された際は、従業員が正しく利用できるための教育や研修が必要です。
企業側がいくらICT環境を整えても、実際に利用する従業員が使いこなせないと、導入したメリットを感じられないでしょう。また、どういった目的で整備されたのか従業員が理解していなければ、積極的な利用につながらない可能性も否定できません。
運用開始時には従業員への教育や研修を実施し、目的や利用方法の周知が求められます。従業員によっては、すぐに使いこなせないケースも考えられるため、フォロー体制も準備しておきましょう。
スムーズにICT環境を構築するポイント
ICT環境は、次の点に注意してすすめるとスムーズに構築できます。
- 導入ツールは使いやすさにこだわる
- ICT環境の整備は小さく始める
- オフィス移転に伴うICT環境の見直しは専門家にも相談
それぞれについて、詳しく説明します。
■導入ツールは使いやすさにこだわる
新たに導入するツールは、誰にでも使いやすいものを選ぶようにしましょう。
ツール選定は、基本的にプロジェクトチームのメンバーや経営陣など、一部の従業員によってすすめられます。選定するメンバーには使いやすいものでも、多くの従業員にとって使いにくいものだと、運用がうまくすすめられない可能性も考えられるでしょう。
導入を最終決定する前に、同じような機能を持つ複数のツールをテストすると、自社の運用方法によりマッチしたものを選定できます。無料版のあるものをいくつか試してみると、余分なコストをかけずに複数のツールを比較可能です。
■ICT環境の整備は小さく始める
ICT環境の整備はいきなり全体で取り組むのではなく、スモールスタートで様子を見ながらすすめると良いでしょう。
プロジェクトチームで熟考した計画であったとしても、実際に運用してみると思うような結果が出る保証はありません。また、全社的なシステムを大幅に変えてしまうと、問題が起こった際に業務が滞る可能性も考えられます。
一定の部署や少人数で、一部のツールを試験的に運用するといった方法が望ましいでしょう。
■オフィス移転に伴うICT環境の見直しは専門家にも相談
オフィス移転とともにICT環境の見直しを検討している場合、オフィス移転の専門家に相談してみるのも一つの方法です。
オフィス移転の場合、ICT環境に関連するインターネット回線だけではなく、電気・ガス・水道・空調などのインフラ整備も求められます。また、新しい働き方を考慮する場合は、オフィスレイアウトの変更も視野に入れる必要があるでしょう。
これらすべてを自社だけで対応しようとすると、担当者の負担が重くなりがちです。そのような際は、オフィス移転の専門業者に相談することで、担当者の負担軽減が図れます。
アイリスチトセでは、物件探しからインフラ整備、内装・家具のご提案や引越しまで、ワンストップでサポートするサービスを提供しています。オフィスづくりに関するあらゆるご相談を随時受け付けていますので、企業のご担当者様はお気軽にご相談ください。
ICT環境を整備する際によくある疑問
ICT環境を整備するにあたって、次の疑問がよくあげられます。
- ITやDXとなにが違うのか?
- ICT環境を整備しないことのデメリットは?
それぞれについて、詳しく説明します。
■ITやDXとなにが違うのか?
ICTとよく似た意味を持つ語句として、IT(Information Technology)とDX(Digital Transformation)があります。それぞれを簡単に説明すると、次のとおりです。
- ICT:情報通信技術
- IT:情報技術
- DX:デジタル技術を利用した改革
ITは、コンピューターやインターネット環境など、情報技術全般を指す言葉です。ICTは、ITを活用して情報を伝達し、コミュニケーションを取ることを意味しています。DXは、ICTやITといったデジタル技術を活用した改革を指しています。
企業内でのICT環境の整備は、企業が取り組むDXの一部だと言えるでしょう。
関連記事▼
オフィスをDX化するべき4つの理由|成功させる秘訣や補助金制度を解説
■ICT環境を整備しないことのデメリットは?
情報化社会となっている現代社会では、ICT環境の整備は企業にとって必要性の高い事案です。
ICT環境が整っていないと、整備されている企業と比較して生産性に差がつき、市場での競争に勝ちにくくなる可能性があります。また、アナログ的な働き方しかできない企業には、求職者から見て将来性を感じられず、人材が集まらないケースも考えられるでしょう。
ツール導入や運用、従業員の教育などにイニシャルコストはかかりますが、長期的に見ると、企業の成長にとってプラス面の方が大きくなります。
まとめ:ICT環境の整備は企業の成長には必要不可欠
ICT環境はもともと教育業界の用語ですが、企業のオフィス作りにも生かせる施策です。ICT環境を整えることで、生産性の向上や多様な働き方の構築に大きく寄与します。
ICT環境の整備は、企業のどういった問題を解決したいか目的をもって取り組む必要があります。スタートは一部の部署から小さく始めることが理想ですが、取り組みとしては全社的なプロジェクトとして進めるようにしましょう。
将来的には、ますます情報化社会が進むと考えられます。企業の長期的な成長を考えた場合、ICT環境の整備は必要不可欠です。新たな人材確保には、働きやすい環境や多様な働き方が認められる企業となることが求められるでしょう。