今注目のホテリングとは?企業が導入するメリットや運用ポイントを紹介
フリーアドレス
近年は、ワークスペースにフリーアドレス制を採用する企業が増えました。これを機に、ホテリングが注目を集めています。ホテリングとは、従業員が仕事をする場所を予約するシステムのことです。
企業がホテリングを導入すると、従業員の居場所の把握や感染症対策などのさまざまな効果が期待できます。
この記事では、ホテリングの概要や企業が導入するメリットなどを詳しく解説します。
目次
ホテリングとは
ホテリングとは、オフィスの席を事前予約して確保するシステムのことです。おもに、固定席を設けないフリーアドレス制を採用しているオフィスで導入されています。ホテリング自体は、1990年代にアメリカで提案されています。
フリーアドレス制において使用する席は自由席であり、また全従業員に対応できるだけの座席が用意されていないケースも多く、使用したいときに「席が空いていない」という事態が発生することがあります。
そこで日本よりも早い時期にフリーアドレス制が普及したアメリカでは、スムーズに運用するためにホテリングが導入されるようになりました。日本でも、近年同じような課題を解消するために、ホテリングを導入する企業が増えています。
ホテリングが注目されている背景
近年、日本のオフィスでもホテリングが注目を集めている背景には、働き方に対する価値観や感染症に対する危機感の変化などが関係しています。
■多様な働き方を導入する企業が増えたため
ホテリングが注目されている背景の一つは、テレワークをはじめとする多様な働き方を導入する企業が増えたことです。
政府は、労働者一人ひとりの事情や希望に合った働き方ができる社会の実現を目指し、働き方改革を推進しています。働き方に対する価値観の変化により、多様な働き方を求める人も増えました。企業の間では働き方改革や働く人のニーズに対応するために、多様な働き方を導入する動きが加速化しています。
多様な働き方の導入を機に、ワークスペースをフリーアドレス制に切り替えた企業も少なくありませんでした。また、働き方の変化によってオフィスへの出社率が減るため、オフィススペースを縮小した企業もありました。
しかし、スペースを縮小すると従業員全員分の席を確保しづらくなり、出社しても席で仕事ができない従業員が出てくる可能性もあります。従業員が出社後すぐに仕事ができる体制を整備するためには、席を事前予約できるホテリングのようなシステムが必要です。
■感染症対策のため
フリーアドレス制を採用したオフィスでホテリングを導入すると、感染症対策に役立ちます。2020年以降は企業や個人に対し、長らく新型コロナウイルス感染症への対策が求められました。
当初、新型コロナウイルス感染症に関しては、濃厚接触者の特定が必要でした。しかし、フリーアドレス制は従業員の席が固定されていないため、濃厚接触者の特定が難しい側面があります。
新型コロナウイルス感染症以外でも、何らかの感染症が蔓延すれば、濃厚接触者の特定が必要になるでしょう。ホテリングを導入すると誰がいつどの席を使用したかを把握できるため、濃厚接触者の特定が容易になります。
企業がホテリングを導入するメリット
フリーアドレス制が普及しつつある中で、ホテリングに注目が集まっています。企業がホテリングを導入すると、従業員の居場所特定や感染症対策などのさまざまな効果が期待できます。
■従業員の居場所を把握できる
企業がホテリングを導入するメリットの一つは、従業員の居場所を把握できることです。フリーアドレス制のような自由席には、従業員がいつどの席を使用したかの把握が難しい側面があります。
従業員の居場所をすぐに特定できなければ、来客や電話の相手を待たせてしまうおそれもあります。上司の判断が必要なときに、居場所がわからなければ探す手間もかかるでしょう。
従業員がホテリングシステムで席を予約すると、仕事をしている席を確認することが可能です。出社している従業員の居場所も即座に把握できるため、来客や電話を取り次ぐ場合や特定の人の判断を仰ぐ必要がある場合にも、該当者をすぐに探せます。
■感染症対策ができる
ホテリングは、従業員の感染対策に役立ちます。ワークスペースは多くの従業員が一つの空間を共有するため、感染症の流行時に一人が感染するとオフィス内で蔓延する危険性があります。
また、フリーアドレス制は従業員が席を自由に選べるため、一部のエリアに集中してしまうこともあるでしょう。ホテリングシステムは、企業側で予約できる席を限定することも可能です。
一部の座席やエリアを予約できないようにするなどの対策を講じておけば、密集を避けられるため、感染症対策ができます。また、ホテリングの導入後は誰がどの席を使用したか把握できるため、万が一のときでも濃厚接触者の特定もしやすいでしょう。
■勤怠管理が容易になる
企業がホテリングを導入すると、勤怠管理が容易になります。多様な働き方を導入する場合、従業員がさまざまな場所で働くため、勤怠管理が難しくなる側面があります。フリーアドレス制では、誰がどこで何時間仕事しているかわからないことが課題の一つでした。
ホテリングシステムは、従業員が席を利用する時間を指定できます。実際に席を利用する時間をチェックインやチェックアウトで管理することで、従業員一人ひとりの勤務時間を把握しやすくなります。
また、予約時間から一定時間チェックインの操作を確認できなかった場合、自動で席の予約がキャンセルされます。キャンセルされた席はほかの従業員が予約できるため、席の稼働率を上げることも可能です。
■効率的にスペースを活用できる
ホテリングの導入は、ワークスペースの効率化にも役立ちます。フリーアドレス制の場合、一つの空間の中で利用率が高いエリアと低いエリアが生じることがあります。ホテリングシステムは席の利用率を把握するだけでなく、分析に活用することも可能です。
利用率が高いエリアと低いエリアを把握することで、ワークスペースを見直しできます。例えば利用率が低いエリアは、スタンディングワークやミーティングスペースに変更する方法もあります。
利用率が高いエリアは、従業員の感染対策を講じるために席を分散化する方法も検討できるでしょう。ワークスペースの最適化を図ることで、従業員が働きやすい環境の実現につながります。
■オフィスの省スペース化を図れる
ワークスペースの利用率を把握できれば、オフィスの省スペース化を図れる可能性があります。賃貸オフィスの場合、一般的にはオフィススペースが広いほど賃料が高いものです。賃料をおさえるためには、同時にオフィススペースが狭くなる可能性が高くなります。
しかし、ワークスペースの利用率が把握できなければ、オフィスの縮小に踏み切るかの決断もできないはず。そこでホテリングを導入すると、ワークスペース全体の利用率を把握できます。
フリーアドレス制の場合、すべての従業員がオフィスに出社するとは限りません。ホテリングでワークスペースの利用率が低いと把握できれば、オフィス縮小の可不可も見極めやすくなります。さらに、通常ではオフィスを縮小すると賃料だけでなく、光熱費などのランニングコストをおさえられます。
企業がホテリングを導入する際の課題
ホテリングの導入後は、さまざまな課題に直面する可能性もあります。スムーズに運用するためには導入前に課題を把握し、対策を検討しておく必要があります。
■予約せずに席を利用するケースが懸念される
ホテリングを活用する場合、従業員は座席を利用するために予約が必要です。企業にとっても、従業員が予約をして実際に利用することで、利用率の把握や分析が可能になります。
しかし、従業員によっては予約が面倒だと感じ、未予約で利用する人も出てくるかもしれません。
ホテリングシステムを効果的に活用するためには、従業員に目的や重要性を理解してもらう必要もあります。事前に説明会や研修会を開催し、従業員に十分周知してから実践するようにしましょう。
■席が固定化する可能性がある
企業がホテリングを導入する際の課題の一つは、席が固定化される可能性があることです。フリーアドレス制は、従業員が席を自由に選べるワークスタイルです。毎日異なる席を利用することで、部署を超えたコミュニケーションの活性化が期待できます。
しかし、ホテリングを導入して席の予約が必要になると、毎日異なる席を事前に選ぶのが面倒だと感じ、同じ席ばかりを予約する従業員が出てくるかもしれません。また、仲の良い従業員同士がまとまった席を予約し、席が固定化することも想定されます。
席の固定化を防止するためには、抽選機能が搭載されたシステムを選ぶのも一つの手です。抽選機能があればシステムがランダムに席を選んで予約するため、従業員が故意に同じ席を選ぶことを防止できます。
ホテリングの基本的な導入手順
ホテリングを導入する前に、基本的な導入手順を確認しておきましょう。
■1.目的の明確化と運用ルールの策定
まずは、ホテリングを導入する目的を明確にする必要があります。目的を定めると、それに向けて何をすべきか把握できるため、従業員からの理解を得やすくなります。ホテリングの導入目的の例は、次のとおりです。
- 従業員の出社時や帰社時にすぐに仕事を始められる環境を整備したい
- 感染症対策に役立てたい
- スペースを効率的に活用したい など
導入目的は、自社の現状や課題と照らし合わせて設定することがポイントです。目的を設定した後は、予約可能な期間や前日と同じ席を予約しないなど、ホテリングの運用ルールを策定しましょう。
■2.システムの選定・導入
オフィスでホテリングを導入するためには、座席管理システムが必要です。利用できる機能はシステムによって異なるため、自社の目的に合わせて選ぶようにしましょう。システムのなかには単なる予約機能のほか、抽選機能やカレンダーとの連携機能が利用できるものもあります。
席の使用履歴が残る機能が利用できるシステムを選べば、従業員の利用状況が把握できるため、感染症対策に役立つでしょう。ホテリングの導入後、従業員はワークスペースの席を利用するために予約が必要になります。従業員の予約の負担を減らすためには、操作性は軽視できません。
■3.オフィス環境の整備
ホテリングの導入後、上手く運用するためにはオフィス環境の整備にも十分に目を向けましょう。想定される出社人数を洗い出し、必要に応じてワークスペースのレイアウトを変更します。ワークスペースの適切な席数は、従業員に対して7~8割程度だとされています。
例えば従業員数が100人の場合は70~80席程度、50人の場合は35~40席程度を確保しましょう。また、複数の職種が同じワークスペースを利用する際には、職種に応じて業務しやすいエリアを設ける必要もあります。今後、レイアウトを変更する可能性も想定し、オフィス家具は移動しやすいキャスター付きのものを選ぶと良いでしょう。
企業がホテリングを導入する際のポイント
オフィスでホテリングを上手く運用していくためには、いくつかのポイントをおさえておくことも重要です。
■トラブルの対応策を検討しておく
ホテリングを導入する際には、さまざまなトラブルを想定し、対応策を検討しておきましょう。導入後、予約に関するトラブルが発生するおそれがあります。予約に関するトラブル例は、次のとおりです。
- 未予約の従業員が別の従業員が予約した席を利用している
- 重複予約が発覚した など
予約やキャンセルなどの操作は、基本的に従業員でおこないます。キャンセルし忘れた従業員がいた場合、システム上は満席状態にも関わらず、物理的な空席が発生し、利用できない人が出てくる可能性もあります。
予備の座席を確保しておくなど、万が一に備えた対応策を検討し、トラブル発生時に速やかに対処できるようにしましょう。
■用途に応じたレイアウトを考える
ホテリングの第一目的は、効率的な運用です。スペースを有効活用しつつ、従業員に快適な労働環境を提供するためにも、用途に応じたレイアウトを検討する必要があります。
フリーアドレス制のワークスペースでは、利用率が高い席と低い席が発生することもあります。また、業務内容によっては、集中できる環境での個人ワークや打ち合わせが必要になることもあるでしょう。
ワークスペース内には、個人ワークに集中できる席やコミュニケーションしやすい席などを設け、用途に応じて使い分けられるようにすることも重要です。ホテリングの導入後はシステムで利用状況を把握し、従業員のニーズに応じて適正な席数をバランス良く配置するようにしましょう。
■定期的に運用を見直す
ホテリングの導入後はさまざまな課題が見つかる可能性もあるため、定期的に運用を見直すようにしましょう。課題の例には想定よりも出社率が低い、個室ブースが足りないなどがあげられます。
想定よりも出社率が高い場合は、ワークスペース内の座席数を増やす必要があります。個室ブースが足りない場合は、ブースを増設するほか、パーティションで間仕切りしたエリアの新設も検討しましょう。ホテリングをスムーズに運用していくためには、ルールやレイアウトなどの定期的な見直しが必要です。
ホテリングが向いている企業の特徴
最後に、ホテリングが向いている企業の特徴をご紹介します。自社が向いている企業の特徴に当てはまる場合は、ホテリングを効率的に活用できる可能性が高いでしょう。
■多様な働き方を導入している
ホテリングが向いている企業の特徴の一つは、オフィス出社以外の働き方を導入していることです。テレワークをはじめとする多様な働き方を導入している企業は、ワークスペースの座席数を従業員数よりも少なくしているケースがほとんどです。
特にすでにリモートワークを導入している企業の場合、オフィス出社以外でも働ける環境を整備できているため、ホテリングをスムーズに導入できるでしょう。新たにホテリングを導入する際には、従業員への周知徹底も必要です。
■セキュリティ対策を強化している
警備員の配置や監視カメラの設置、入退室管理などにより、自社のセキュリティ対策を強化している企業は、ホテリングの導入に適しています。フリーアドレス制のワークスペースは固定席ではないため、さまざまな従業員の出入りがあります。
顔を合わせる機会が少ない従業員との接点が増える一方で、部外者がワークスペースに侵入しても気づきにくい側面もあるのが現状です。そのため、フリーアドレス制のワークスペースを導入する際には、既存のセキュリティを見直す必要もあります。セキュリティ対策を強化している企業は、ホテリングを導入しても第三者の侵入を防止できるでしょう。
まとめ:事前準備を徹底してスムーズにホテリングを導入しよう
フリーアドレス制のワークスペースで席を管理するためには、ホテリングシステムの導入が有効です。ホテリングを導入すると、スペースを有効活用できる、オフィスの省スペース化を図れるなどのさまざまな効果が期待できます。
しかし、ホテリングの導入後は、未予約での利用や席の固定化などの課題に直面する可能性もあります。ホテリングを上手く運用していくためには、あらゆる課題を想定し、事前に対応策を検討しておくことがポイントです。
また、ホテリングシステムで利用率を把握することで、より快適な労働環境を構築できます。従業員の労働環境を改善するためには、ホテリングシステムで得たデータをもとに分析をおこない、必要に応じてレイアウトを見直すことも重要です。
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